LLDP および LLDP-MED の設定
この章では、Catalyst 3560 スイッチで Link Layer Discovery Protocol(LLDP)および LLDP Media Endpoint Discovery(LLDP-MED)を設定する方法について説明します。特に明記しないかぎり、 スイッチ という用語はスタンドアロン スイッチおよびスイッチ スタックを意味します。
(注) この章で使用するコマンドの構文および使用方法の詳細については、このリリースに対応するコマンド リファレンスおよび『Cisco IOS Configuration Fundamentals Command Reference』Release 12.2 の「System Management Commands」を参照してください。
この章で説明する内容は、次のとおりです。
• 「LLDP および LLDP-MED の概要」
• 「LLDP および LLDP-MED の設定」
• 「LLDP および LLDP-MED のモニタリングおよびメンテナンス」
LLDP および LLDP-MED の概要
ここでは、次の概要について説明します。
• 「LLDP の概要」
• 「LLDP-MED の概要」
LLDP の概要
Cisco Discovery Protocol(CDP)は、すべてのシスコ製デバイス(ルータ、ブリッジ、アクセス サーバ、およびスイッチ)のレイヤ 2(データ リンク レイヤ)上で動作するデバイス検出プロトコルです。ネットワーク管理アプリケーションは CDP を使用することにより、ネットワーク接続されている他のシスコ製デバイスを自動的に検出し、識別できます。
スイッチでは他社製のデバイスをサポートし他のデバイス間の相互運用性を確保するために、IEEE 802.1AB Link Layer Discovery Protocol(LLDP)をサポートしています。LLDP は、ネットワーク デバイスがネットワーク上の他のデバイスに自分の情報をアドバタイズするために使用する近隣探索プロトコルです。このプロトコルはデータ リンク レイヤで動作するため、異なるネットワーク レイヤ プロトコルが稼働する 2 つのシステムで互いの情報を学習できます。
LLDP は一連のアトリビュートをサポートし、これらを使用して隣接するデバイスを検出します。アトリビュートには Type、Length、および Value があり、これらを TLV と呼びます。LLDP をサポートするデバイスは、ネイバーとの情報の送受信に TLV を使用できます。設定の情報、デバイスの機能、デバイス ID などの詳細情報は、このプロトコルを使用してアドバタイズできます。
スイッチは、次の基本管理 TLV をサポートします。これらは必須の LLDP TLV です。
• ポート記述 TLV
• システム名 TLV
• システム記述
• システム機能 TLV
• 管理アドレス TLV
次の IEEE 固有の LLDP TLV もアドバタイズに使用されて LLDP-MED をサポートします。
• ポート VLAN ID TLV(IEEE 802.1 に固有の TLV)
• MAC/PHY コンフィギュレーション/ステータス TLV(IEEE 802.3 に固有の TLV)
(注) スイッチ スタックは、ネットワーク内で 1 つのスイッチとみなされます。したがって、LLDP は個々のスタック メンバーではなく、スイッチ スタックを検出します。
LLDP-MED の概要
LLDP for Media Endpoint Devices(LLDP-MED)は LLDP の拡張版で、IP 電話などのエンドポイント デバイスとスイッチなどのネットワーク デバイスの間で動作します。LLDP-MED は、特に VoIP アプリケーションをサポートし、検出機能、ネットワーク ポリシー、Power over Ethernet(PoE)、およびコンポーネント管理に関する TLV を提供します。
LLDP-MED では、次の TLV がサポートされます。
• LLDP-MED 機能 TLV
LLDP-MED エンドポイントは、接続装置がサポートする機能と現在イネーブルになっている機能を識別できます。
• ネットワーク ポリシー TLV
ネットワーク接続デバイスとエンドポイントはともに、VLAN 設定、および関連するレイヤ 2 とレイヤ 3 アトリビュートをポート上の特定アプリケーションにアドバタイズできます。たとえば、スイッチは使用する VLAN 番号を IP 電話に通知できます。IP 電話は任意のスイッチに接続し、VLAN 番号を取得してから、呼制御の通信を開始できます。
• 電源管理 TLV
LLDP-MED エンドポイントとネットワーク接続デバイスの間で拡張電源管理を可能にします。スイッチおよび IP 電話は、デバイスの受電方法、電源プライオリティ、デバイスの消費電力などの電源情報を通知することができます。
• コンポーネント管理 TLV
エンドポイントは、スイッチにエンドポイントの詳細なコンポーネント情報を送信することが可能です。コンポーネント情報には、ハードウェア リビジョン、ファームウェア バージョン、ソフトウェア バージョン、シリアル番号、メーカー名、モデル名、Asset ID TLV などがあります。
(注) LLDP と LLDP-MED は、ネットワーク内で同時に動作できません。デフォルトでは、ネットワーク デバイスは、エンドポイント デバイスから LLDP-MED パケットを受信するまで、LLDP パケットのみを送信します。そのあとネットワーク デバイスは、LLDP パケットのみを受信するまで、LLDP-MED パケットを送信します。
LLDP および LLDP-MED の設定
ここでは、次の設定情報について説明します。
• 「デフォルト LLDP 設定」
• 「LLDP 特性の設定」
• 「LLDP のグローバルなディセーブル化およびイネーブル化」
• 「インターフェイス上での LLDP のディセーブル化およびイネーブル化」
• 「LLDP-MED TLV の設定」
デフォルト LLDP 設定
表26-1 に、LLDP のデフォルト設定を示します。デフォルト設定を変更するには、LLDP グローバル コンフィギュレーション コマンドおよび LLDP インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
表26-1 デフォルト LLDP 設定
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LLDP グローバル ステート |
イネーブル |
LLDP ホールドタイム(廃棄までの時間) |
120 秒 |
LLDP タイマー(パケット更新頻度) |
30 秒 |
LLDP 再初期化遅延 |
2 秒 |
LLDP tlv-select |
イネーブル(すべての TLV を送受信可) |
LLDP インターフェイス ステート |
イネーブル |
LLDP 受信 |
イネーブル |
LLDP 送信 |
イネーブル |
LLDP med-tlv-select |
イネーブル(すべての LLDP-MED TLV を送信可) |
LLDP 特性の設定
LLDP 更新の頻度、情報を廃棄するまでの保持期間、および初期化遅延時間を設定できます。送受信する LLDP および LLDP-MED TLV も選択できます。
これらの特性を設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
(注) ステップ 2 ~ 5 はすべて任意であり、どの順番で実行してもかまいません。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
lldp holdtime seconds |
(任意)デバイスから送信された情報を受信側デバイスが廃棄するまで保持する期間を指定します。 指定できる範囲は 0 ~ 65535 秒です。デフォルトは 120 秒です。 |
ステップ 3 |
lldp reinit |
(任意)任意のインターフェイス上で LLDP の初期化の遅延時間(秒)を指定します。 指定できる範囲は 2 ~ 5 秒です。デフォルトは 2 秒です。 |
ステップ 4 |
lldp timer seconds |
(任意)LLDP 更新の送信頻度(秒)を設定します。 指定できる範囲は 5 ~ 65534 秒です。デフォルトは 30 秒です。 |
ステップ 5 |
lldp tlv-select |
(任意)送受信する LLDP TLV を指定します。 |
ステップ 6 |
lldp med-tlv-select |
(任意)送受信する LLDP-MED TLV を指定します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
デフォルト設定に戻すには、各 LLDP コマンドの no 形式を使用します。
次に、LLDP の特性を設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# lldp holdtime 120
Switch(config)# lldp reinit 2
Switch(config)# lldp timer 30
その他の LLDP show コマンドについては、「LLDP および LLDP-MED のモニタリングおよびメンテナンス」を参照してください。
LLDP のグローバルなディセーブル化およびイネーブル化
LLDP はデフォルトでイネーブルです。
LLDP をディセーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
no lldp run |
LLDP をディセーブルにします。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ディセーブル化されている LLDP-MED をイネーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
lldp run |
LLDP をイネーブルにします。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
次に、LLDP をディセーブルにする例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# no lldp run
次に、LLDP をイネーブルにする例を示します。
Switch# configure terminal
インターフェイス上での LLDP のディセーブル化およびイネーブル化
LLDP 情報を送受信するために、サポートされるすべてのインターフェイスで LLDP はデフォルトでイネーブルになっています。
(注) インターフェイスがトンネル ポートに設定されていると、LLDP は自動的にディセーブルになります。
インターフェイス上で LLDP をディセーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP をディセーブルにするインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
no lldp transmit |
インターフェイス上で LLDP パケットは送信されません。 |
ステップ 4 |
no lldp receive |
インターフェイス上で LLDP パケットは受信されません。 |
ステップ 5 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
ディセーブル化されている LLDP をインターフェイス上でイネーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP-MED をイネーブルにするインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
lldp transmit |
インターフェイス上で LLDP パケットは送信されます。 |
ステップ 4 |
lldp receive |
インターフェイス上で LLDP パケットは受信されます。 |
ステップ 5 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
次に、インターフェイス上で LLDP をイネーブルにする例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface GigabitEthernet0/1
Switch(config-if)# lldp transmit
Switch(config-if)# lldp receive
LLDP-MED TLV の設定
デフォルトでは、スイッチはエンド デバイスから LLDP-MED パケットを受信するまで、LLDP パケットのみを送信します。デバイスは LLDP パケットのみを受信するまで、LLDP-MED パケットの送信を続けます。
lldp インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用することで、 表26-2 に示された TLV を送信しないようにインターフェイスを設定できます。
表26-2 LLDP-MED TLV
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inventory-management |
LLDP-MED コンポーネント管理 TLV |
network-policy |
LLDP-MED ネットワーク ポリシー TLV |
power-management |
LLDP-MED 電源管理 TLV |
インターフェイス上で TLV をディセーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP-MED TLV を設定するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
no lldp med-tlv-select tlv |
ディセーブルにする TLV を指定します。 |
ステップ 4 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
インターフェイス上で TLV をイネーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP-MED TLV を設定するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
lldp med-tlv-select tlv |
イネーブルにする TLV を指定します。 |
ステップ 4 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
次に、インターフェイス上で、ディセーブル化されている TLV をイネーブルにする例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface GigabitEthernet0/1
Switch(config-if)# lldp med-tlv-select inventory management
LLDP および LLDP-MED のモニタリングおよびメンテナンス
デバイス上の LLDP および LLDP-MED をモニタリングおよびメンテナンスするには、特権 EXEC モードで次の手順を 1 つまたは複数実行します。
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clear lldp counters |
トラフィック カウンタをゼロにリセットします。 |
clear lldp table |
ネイバーに関する情報を格納する LLDP テーブルを削除します。 |
show lldp |
送信頻度、送信するパケットのホールドタイム、LLDP 初期化の遅延時間など、インターフェイス上のグローバル情報を表示します。 |
show lldp entry entry-name |
特定のネイバーに関する情報を表示します。 アスタリスク(*)を入力してすべてのネイバーを表示することも、情報が必要なネイバーの名前を入力することもできます。 |
show lldp interface [ interface-id ] |
LLDP がイネーブルに設定されているインターフェイスに関する情報を表示します。 必要なインターフェイスの情報だけを表示できます。 |
show lldp neighbors [ interface-id ] [ detail ] |
デバイス タイプ、インターフェイスのタイプや番号、ホールドタイム設定、機能、ポート ID など、ネイバーに関する情報を表示します。 特定のインターフェイスに関するネイバー情報だけを表示したり、詳細表示にするため表示内容を拡張したりできます。 |
show lldp traffic |
送受信パケットの数、廃棄したパケットの数、認識できない TLV の数など、LLDP カウンタ類を表示します。 |