この製品のマニュアルセットは、偏向のない言語を使用するように配慮されています。このマニュアルセットでの偏向のない言語とは、年齢、障害、性別、人種的アイデンティティ、民族的アイデンティティ、性的指向、社会経済的地位、およびインターセクショナリティに基づく差別を意味しない言語として定義されています。製品ソフトウェアのユーザーインターフェイスにハードコードされている言語、RFP のドキュメントに基づいて使用されている言語、または参照されているサードパーティ製品で使用されている言語によりドキュメントに例外が存在する場合があります。シスコのインクルーシブランゲージに対する取り組みの詳細は、こちらをご覧ください。
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固定電話および携帯電話のユーザは、番号をダイヤルして相手に電話します。番号ベースのダイヤルは、一般に E.164 または PSTN ダイヤルと呼ばれます。PSTN の番号には、国番号、市外局番、および市内番号などさまざまな要素があります。PSTN のサービス プロバイダーは、このダイヤルされた番号を市内番号、長距離番号、国際電話番号として解決し、発信者と受信者を接続します。同様に、組織では、外部ダイヤル トーンに 9 または 0 などのプレフィックスを使用して、サービスを識別します。ユーザはこのプレフィックスをダイヤルしてから、電話番号をダイヤルします。組織内の番号をダイヤルする場合にも、プレフィックスを使用することで、E.164 番号全体でなく短縮番号をダイヤルすることができます。組織によっては、簡略式のダイヤル プランを使用し、組織内のユーザが社内の同僚に電話するのに 4 桁または 5 桁の番号のみをダイヤルするようにしています。
これが、各ネットワークのユーザが相手に連絡できるよう、さまざまな会社、モバイル ネットワーク、および PSTN を接続するダイヤル プランの基礎になります。長距離電話や国際電話のコストを意識する組織では、番号ダイヤル プランを使用して電話を制限し、特定ユーザのみに長距離または国際電話のダイヤルを許可することができます。同様に、組織は、電話勧誘販売の業者からの迷惑電話をブロックできることも必要です。また、番号ベースのダイヤル プランを使用する場合は、電話ハッカーの侵入阻止方法も考えておく必要があります。
電子メールが導入されて以来、現代的なインターネットによるコミュニケーションが普及しています。電子メール アドレスは、ユーザを一意に識別する方法となり、いまや新しいアイデンティティになっています。このアイデンティティは、ユーザが Uniform Resource Identifier(URI)で表される場合にユーザに連絡するのに使用できます。チャットに使用されるインスタント メッセージでは URI が使用され、Voice over IP(VoIP)でも URI を使用してコールを送信します。URI の形式は < user-id > @ < domain-name > です。この形式はユーザにとってわかりやすく、概して番号より記憶しやすいものになっています。
URI またはそれを使用するデバイスにコールがルーティングされるよう、URI で表されるエンティティを特定する高度なシステムが必要です。そのようなシステムでは、ドメインおよびそのドメインを表すサーバを識別できるだけでなく、コールも処理できることが必要です。少なくとも、ドメイン ネーム システム(DNS)などの外部の依存関係を考慮する必要があります。H.323 などのさまざまな VoIP プロトコルではこの目的で Electronic Numbering(ENUM)を使用する場合がありますが、この方式は広くは使用されていません。URI のダイヤルは、Web 技術に由来する SIP によりさらに一般的になりました。さまざまなタイプのダイヤル方式があることで、ユーザや企業はフレキシブルな方法で電話をかけることができ、到達可能性が提供されますが、それらさまざまなタイプのダイヤル エクスペリエンスをユーザに提供するシステム間のトランスレーションをうまく行うなんらかの方法が必要になります。
PSTN の広範な到達範囲について議論する場合、ダイヤル プランの依存関係を把握することが重要です。
• E.164 ベースのダイヤル プランでは、可変の桁数を使用できます。サービス プロバイダーとテレフォニー システムは可変長の着信者番号に対応できる必要があり、ユーザはそのような番号をダイヤルすることに慣れる必要があります。さまざまな長さの着信者番号がある場合、サービス プロバイダーによるそれらの番号の処理方法は、組織によるそれらの処理方法と異なります。サービス プロバイダーでは発信者 ID の番号を標準化する必要があるのに対し、組織では、ダイヤル イン(DID)または国固有のダイヤル プランのために番号を標準化する必要があり、このため発信番号または着信者番号をトランスフォームする必要が生じることがあります。
• 音声およびビデオ システムを外界に接続するには、PSTN または IP 接続で、他のデバイスとの間で発信および着信できることが必要です。IP ベースのシステムは、外部ネットワークへの接続を必要とし、直接ピアリングを使用するか、または IP ネットワークを介してダイヤル プランを解決するその他なんらかのメカニズムを使用する必要があります。
• IP ベースのネットワーク同士のダイヤル プランを解決するには、いくつかのメカニズムが必要です。
– 番号ベースの発信には、Electronic Numbering(ENUM)が使用されます。ENUM により、E.164 の番号を対応する IP アドレスにトランスレーションすることができます。このサービスは ENUM サーバによって提供されます。このサービスのサブスクリプションとネットワーク接続が必要なほか、DNS サービスも必要です。
– DNS サービス(SRV)は、URI によるダイヤルをサポートするシステムに必要です。DNS SRV のレコードは、ドメイン ネーム情報のほかに、H.323 または SIP プロトコル、UDP または TCP タイプ、およびコール エージェントが使用できる追加のパラメータなどのコール サービスに関する情報を提供します。コール エージェントはこの情報を使用してコールをホストに送信します。
• 1 人のユーザが、複数のエンドポイントまたはデバイスを持つことがあります。このような場合、単一の番号または URI がダイヤルされたときでも、ダイヤル プランではすべてのユーザ デバイスに到達できる必要があります。このため、番号ベースのシステムは共有回線をサポートする必要があり、URI ベースのシステムはエイリアスをサポートする必要があります。
番号ダイヤル プランは最も広く導入されています。PSTN システムおよび H.323 システムでは、番号を使用してエンドポイントに到達します。PSTN システムおよび IP PBX システムでは、独自のダイヤル プランを持ち、エンドポイントに番号を割り当てています。エンドポイントにはダイヤル プランがあり、エンドポイントはコールをルーティングできるようダイヤル プランをシステムと共有するので、H.323 ネットワークはダイヤル プランをエンドポイントから取得します。これらのシステムのダイヤル プランを解決するために、ダイヤルされた番号の完全一致または最上位桁の一致が使用されます。
米国の E.911 ネットワークなどの緊急医療サービス ネットワークは、別のタイプの番号によるダイヤルを使用するシステムです。番号によるダイヤルは、サービスに到達するためだけでなく、発信者に到達するためにも使用されます。これは、救急医療サービスを提供するために発信者のロケーションに関する追加情報を使用できるからです。
ソフトウェア ベースのビデオ エンドポイントを使用すると、URI に簡単にダイヤルできます。これは、ほとんどのアプリケーションでは、ワン クリック コール機能を提供することで、さらに簡単になっています。電子メール ID によって簡単にダイヤルできることは、ユーザにとって非常に魅力的です。大部分の導入では、Lightweight Directory Access Protocol(LDAP)などの一般的なディレクトリ サービスを使用して共通のアイデンティティ システムを参照し、ユーザがダイヤルできるよう電子メール ID を提供します。このため、組織の LDAP システム外への発信には、外部の依存関係が使用されます。
DNS は、インスタント メッセージ システムと同様に、ドメインを使用してコールをルーティングできるよう、ドメインに関する情報を提供します。DNS は、一般的ネットワークとして Business-to-Business(B2B)コミュニケーションに広く使用されている最も一般的なシステムです。DNS では、組織が相互に外部コールを行えるよう、組織への接続方法が入手可能です。
コール エージェントは、ダイヤル情報を使用して、コールをルーティングする方法を決定します。電話番号の一般的な処理方法では、番号の完全一致または、コール エージェントが処理するルートの最上位桁の一致が使用されます。エンドポイントには固有の E.164 番号があります。コール エージェントは、国固有の情報またはプレフィックス情報を識別して、個々のエンドポイントまたは着信者番号を処理するネイバーへのコール送信を決定することができます。また、コール エージェントは救急医療サービスおよび市内電話のコールを解決して、コールがローカル ゲートウェイに送信されるようにする必要があります。番号によるダイヤルの場合、ローカル エリア コードのコンセプトは、コールをローカル リソースに送信するか、またはローカルでないシステムに送信するかを識別する手段として役に立ちます。
デバイスを URI に登録することによっても、ユーザは固有性を利用できるようになります。コール エージェントが URI に基づいて宛先を識別できるようになるからです。複数のロケーションにまたがる複数のサーバで 1 つのドメインを処理できるため、コール エージェントはドメインおよび、特定の URI として登録されているサーバを解決できる必要があります。宛先のロケーションが使用不能な場合は、救急医療サービス、ローカル IP トランク、またはホップ オフ ゲートウェイへのコールの解決を決定するその他の方法が必要です。また、URI を使用して会議サービス用にルーティングする必要があるコール エージェントは、参加者に最も近い会議ブリッジを選択できる必要があります。
外界への通信には、PSTN へのインターフェイスと IP ネットワークが必要です。ISDN 経由で PSTN に接続するゲートウェイは、PSTN への音声接続を可能にします。このゲートウェイは、番号ベースの PSTN ネットワークとのインターフェイスを取るときに、発信者番号と着信者番号を標準化する重要機能を備えています。PSTN ゲートウェイには、電話ハッカーの侵入阻止を使用する必要があります。
ボーダー要素または IP ゲートウェイは、サービス プロバイダーまたは一般のインターネットを介して、IP ベースの PSTN への接続を可能にします。このゲートウェイは、社内 IP ネットワークのトポロジ非表示機能とコールの標準化機能を備えています。このゲートウェイは、サービス拒否攻撃およびそれを危殆化する試行を防止する追加のセキュリティ対策を備える必要があります。
コール エージェントは、発信者の情報を標準化するために、発信者番号および着信者番号を透過的に変更することで、ダイヤル プランを変換します。変換は、コールのユーザ情報を標準化する、コール エージェントの重要機能です。これは、応答されなかったコールの情報を中継するためにも重要です。これにより、ユーザが電話する時間があるときに、発信者に折り返しダイヤルできるからです。組織では、変換を使用して、発信者 ID をマスクしたり、標準化された一般的なフォーマットでコールバック情報を表示したりしています。PSTN コールでは、組織はユーザの社内番号を公開せずに、発信用のパブリック番号を使用します。URI ベースのシステムでは、変換を使用して、ドメイン内のコールおよび外部組織からのコールを標準化します。
また、組織によっては、DID を使用して社内ユーザを外部の ISDN 回線にオーバーサブスクライブします。これにより、組織はそのすべてのユーザにエンドポイントを提供すると同時に、外部コール用に適切な回線を選択することができます。URI への登録により、オーバーサブスクリプションの概念は、エンドポイントの番号範囲でなく、コールで使用されるキャパシティに制限されます。
コール ルーティングを支援するため、さまざまなシステム要素における発信者情報または着信者情報のいろいろな要素が変更されます。発信者情報を操作するのは、発信者または着信者に表示される情報が標準化されるようにするためです。これはまた、コールが応答されず、ユーザが不在着信または着信に関する情報を参照する必要がある場合にも役立ちます。番号によるダイヤル プランの場合、このような目標は簡単に達成できますが、URI によるダイヤルの場合、コール エージェントには目的の目標を達成するためのメカニズムが必要となります。
コール エージェントは発信者情報を操作してコールを解決します。コール エージェントは、番号を E.164 形式に変更してルーティングするために、市外局番を追加することができます。このような操作を実現するには、基本的なパターン マッチングおよび置換機能が必要になる場合があります。URI でのダイヤルの場合は、コール エージェントが URI を処理するために、ドメインの標準化を使用できます。英数字コンテンツの検索および置換機能を実現するには、正規表現を使用した精巧なメソッドが必要です。正規表現を使用すると、英数字の URI 形式に柔軟にマッチングできるようになりますが、数字によるダイヤル プランの操作ほど簡単ではない場合があります。
一般に、組織では、ユーザによって特定のサービスへのアクセスを許可したり拒否したりします。最も一般的なケースは、長距離電話および国際電話に対する制限です。発信者および着信者に関する制限は、発信者番号および着信者番号を使用する場合は簡単に実装および導入できますが、URI によるダイヤルの場合は複雑になる可能性があります。また、制限を使用して、フリーダイヤルの宛先への発信と電話勧誘販売業者からの着信を防止することもできます。番号によるダイヤル プランは、1-888 のコレクト コール番号などの番号範囲を認識してコールをブロックするために使用できます。URI によるダイヤルでは、これは困難な場合があります。URI に基づいてコールを制限するには、制限する URI のリストが必要なだけでなく、これらの URI をコール エージェントが設定して、コールの制限クラス ポリシーを定義しておく必要があるためです。