Cisco ソフトウェアを使用する ICPIF 値の計算は、主として音声品質を損なう 2 つの主要因(遅延パケットと損失パケット)に基づいています。パケット遅延およびパケット損失は IP SLA で測定できます。したがって、完全な ICPIF
式(Icpif = Io + Iq + Idte + Idd + Ie - A )は、Io、Iq、および Idteの各値が 0 であると仮定して、次のように単純化できます。
総劣化係数(Icpif) = 遅延劣化係数r(Idd) + 機器劣化係数(Ie) - 期待/アドバンテージ係数(A)
つまり ICPIF 値は、遅延パケットの測定値に基づいた遅延劣化係数と、損失パケットの測定値に基づいた機器劣化係数を加算して算出されます。ネットワーク内で測定されたこの総劣化の合計値から劣化変数(期待係数)を引くと、ICPIF になります。
これは、Cisco Gateways が受信した VoIP データ ストリームの ICPIF を計算する際に使用する式と同じです。
遅延劣化係数
遅延劣化係数(Idd)は、2 つの値に基づいた数値です。1 つの値は、固定値です。(ITU 規格で規定された)コーデック遅延、先読み遅延、およびデジタル信号処理(DSP)遅延の固定値を使用して算出されます。2 番めの値は、変数です。測定された一方向遅延(ラウンドトリップ時間測定値を
2 で割った値)に基づいています。一方向遅延値は、G.107(2002 年版)の分析式に基づいたマッピング テーブルを使用して数値にマップされます。次の表に、IP SLA によって測定された一方向遅延と遅延劣化係数値の対応関係の例を示します。
表 4. 一方向遅延と ICPIF 遅延劣化係数の対応関係の例
一方向遅延(ミリ秒)
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遅延劣化係数
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50
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1
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100
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2
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150
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4
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200
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7
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機器劣化係数
機器劣化係数(Ie )は、測定されたパケット損失量に基づいた数値です。測定されたパケット損失量は総送信パケット数の割合として表され、コーデックによって定義される機器劣化係数に対応します。次の表に、IP SLA によって測定されたパケット損失と機器劣化係数値の対応関係の例を示します。
表 5. 測定されたパケット損失と ICPIF 機器劣化の対応関係の例
パケット損失(送信済みパケットの総数のパーセント)
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PCM(G.711)コーデックの機器劣化値
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CS-ACELP(G.729A)コーデックの機器劣化値
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2 %
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12
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20
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4 %
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22
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30
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6 %
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28
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38
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8 %
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32
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42
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期待計数
アドバンテージ係数(A )とも呼ばれる期待計数は、アクセスの容易性の代償としてユーザがある程度の品質の劣化を許容するという事実を表すことを目的としています。たとえば、到達困難な場所にいる携帯電話ユーザは、接続品質が従来の固定電話接続ほど良好ではないことを予測している可能性があります。この変数は、向上したアクセスの利便性と音声品質の低下の釣り合いを保つことを目的としているので、アドバンテージ係数(アクセス
アドバンテージ係数の略)とも呼ばれます。
次の表は ITU-T 勧告G.113 を改良したもので、A の暫定最大値のセットを、提供されるサービスごとに定義しています。
表 6. アドバンテージ係数の推奨最大値
通信サービス
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アドバンテージ/期待係数
A の最大値
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従来の有線(固定電話)
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0
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建物内のモビリティ(セルラー接続)
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5
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地域内または車内のモビリティ
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10
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到達困難な場所へのアクセス(たとえば、マルチホップ衛星接続を介したアクセスなど)
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20
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これらの値は推奨値に過ぎません。意味のある値にするには、係数(A)と特定のアプリケーションで選択した係数値を、採用する任意のプランニング モデルで一貫して使用する必要があります。ただし、上の表の値は、A の絶対的な上限と見なす必要があります。
IP SLA VoIP UDP ジッター動作のデフォルトのアドバンテージ係数は常に 0 です。