Knocking on the Dream | |
人類初の宇宙旅行を体験したソ連のガガーリンが「地球は青かった」とつぶやいてから約半世紀。その間、アストロノーツ (宇宙飛行士) となった人間は全世界で約 430人に過ぎない。その中で、たった二人しか民間アストロノーツはいない。ところが 2004年 10月、民間企業だけで開発した有人宇宙船「Space Ship One」が大気圏外飛行に成功して以来、一般の宇宙旅行の夢は一歩実現に近づいた。1,000万円台で宇宙旅行ができる時代が到来したからだ。
初の民間アストロノーツが 1週間滞在した国際宇宙ステーション |
実現が難しい夢であればあるほど憧れは強くなる。大金をはたいても夢の宇宙旅行を実現したいという人が現れても不思議ではない。しかし、有人宇宙飛行を行っている米国 NASA は民間人への門戸を固く閉ざしている。大枚を積んでも首を縦に振ることはないからだ。一方、ソ連崩壊後のロシアは、TBS の秋山豊寛さんが宇宙飛行した例があるように、民間人を閉め出しているわけではない。ただ、正規のアストロノーツと同じように、厳しい訓練を受けなければならなかった。
ところが、2001年 4月、アメリカ人実業家で 60歳のデニス・チトー氏が、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地からロシアのソユーズ宇宙船を使って国際宇宙ステーションに約 1週間滞在し、民間アストロノーツ第一号になった。そのために、チトー氏は 2,000万ドル (約 22億円) という大金を支払った。若いときに NASA の技術者として働いていたチトー氏は投資家として成功を収め、22億円を投じて長年の夢を実現させたのだ。その後 2002年には、南アフリカの IT 起業家のマーク・シャトルワース氏が、同じく 2,000万ドル支払って宇宙旅行を体験している。
これが半世紀でたった二人の民間アストロノーツだ。費用を TBS が負担している秋山さんや、国家予算を使って宇宙旅行を行った人たちは、厳密な意味での民間アストロノーツとしてはカウントされない。
「チトーさんの後日談があるのです」と語るのは、民間宇宙旅行を企画しているスペースアドベンチャー社 (コラム1参照) 日本語デスクの横山龍宏氏 (株式会社 NTT トラベルサービス営業部・担当課長) だ。スペースアドベンチャー社は2001年4月チトー氏の民間宇宙旅行を成功させた企業である。
「チトーさんは最初 NASA に依頼したのですが門前払いを受けたので、ロシアの宇宙船に乗って夢を実現させたのです。その結果、民間アストロノーツ第 1号ということで、世界的有名人になったチトーさんの元に取材が殺到したそうです。多くの講演依頼、さらに CM 出演の依頼もあり、会社の株価も上がって、思いもよらず最終的には 22億円の投資に対して 5倍のリターンを得たという話です」