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TCP は、データ転送で使用される、データと確認応答のフォーマットを規定したプロトコルです。TCP は、通信の参加者がデータ転送の前に接続を確立する必要があるため、コネクション型のプロトコルです。フロー制御やエラー訂正を行うことで、TCP では順序通りにパケットが配送される信頼性が保証されます。IP パケット が損失する場合や順序通りに到達しない場合、TCP は正しいパケットを受信するまで再送を要求するので、信頼性があると見なされます。この章では、TCP に関する概念と、ネットワーク上での TCP の設定方法について説明します。
ご使用のソフトウェア リリースでは、このモジュールで説明されるすべての機能がサポートされているとは限りません。最新の機能情報と注意事項については、ご使用のプラットフォームとソフトウェア リリースに対応したリリース ノートを参照してください。この章に記載されている機能の詳細、および各機能がサポートされているリリースのリストについては、「TCP の機能情報」 を参照してください。
プラットフォーム サポートとシスコ ソフトウェア イメージ サポートに関する情報を入手するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
• 「用語集」
TCP タイムスタンプ、TCP 選択的確認応答、および TCP ヘッダー圧縮
TCP タイムスタンプは送信と応答の双方で常に送られ、ヘッダーのタイムスタンプ値は常に変化するので、TCP ヘッダー圧縮では発信パケットを圧縮しません。シリアル リンクでの TCP ヘッダー圧縮を許可すると、TCP タイムスタンプ オプションはディセーブルにされます。シリアル ラインで TCP ヘッダー圧縮を使用する場合、TCP タイムスタンプと TCP 選択的確認応答はディセーブルにする必要があります。どちらの機能もデフォルトではディセーブルです。TCP 選択的確認応答がイネーブルの場合、ディセーブルにするには、 no ip tcp selective-ack コマンドを使用します。
TCP は IP 環境で信頼性のあるデータ転送を提供します。TCP は Open Systems Interconnection(OSI)参照モデルのトランスポート層(レイヤ 4)に対応します。サービスの中で、TCP が提供するものとして、ストリーム データ転送、信頼性、能率的なフロー制御、全二重通信、およびデータ多重化があります。
ストリーム データ転送では、TCP はシーケンス番号で識別される構造化されないバイト ストリームを配送します。このサービスの利点は、アプリケーションがデータを TCP に渡す前にブロックに分ける必要がないことです。TCP は、バイト列をセグメント単位にグループ化し、IP に渡して配送させます。
TCP は、インターネットワークを介したエンドツーエンドの確実なパケット配送というコネクション型動作で信頼性を実現します。これは、受信側への確認応答で、発信側が次に受信を予期するバイト位置をその確認応答の番号として示し、バイト列を順序づけすることによって行います。指定された期間に確認応答がないバイト列は再送されます。TCP の信頼性メカニズムを使用すれば、デバイスで、消失、遅延、重複、または破損したパケットを処理できます。タイムアウト メカニズムを使用すれば、デバイスで、消失パケットを検出して、再送信を要求できます。
TCP は効率的にフローを制御します。これは、受信 TCP プロセスが、送信元に確認応答を返すときに、内部バッファをオーバーフローさせずに受信可能な最も高いシーケンス番号を指定することを意味します。
信頼できる転送サービスを使用するには、TCP ホストは相手側とコネクション型のセッションを確立する必要があります。接続の確立は、「スリーウェイ ハンドシェイク」メカニズムを使用して実行されます。
スリーウェイ ハンドシェイクでは、接続の端点からの初期シーケンス値を両側で合意することで双方を同期します。また、このメカニズムでは、両側でデータ転送が可能になっていることと、お互いに相手側も転送が可能だと認識されることが保証されます。スリーウェイ ハンドシェイクは、セッションが確立されている間か終了した後で、パケットを転送しないため、または再送するために必要です。
各ホストは、送信しているストリーム内のバイト位置を追跡するために使われるシーケンス番号をランダムに選択します。その後、スリーウェイ ハンドシェイクは次のように進行します。
• 最初のホスト(ホスト A)が、初期シーケンス番号(X)と接続の要求を示すために同期開始(SYN)ビットを設定したパケットを送信して、接続を開始します。
• 2 番目のホスト(ホスト B)が SYN を受信し、シーケンス番号 X を記録し、SYN 確認応答(ACK = X + 1)によって応答します。ホスト B は自分自身の初期シーケンス番号(SEQ = Y)を含めます。ACK = 20 は、そのホストがバイト 0 ~ 19 を受信済みで、次はバイト 20 を予期していることを示します。このテクニックは前方確認応答と呼ばれます。
• ホスト A は、ホスト B が送信したすべてのバイトを受け取ったことに対し、ホスト A が次に予期する受信バイト位置(ACK = Y + 1)を示す前方確認応答でこれに応答します。次にデータ転送が始まります。
Cisco IOS ソフトウェアが TCP 接続の確立に試行する待ち時間を設定できます。接続試行時間はホスト パラメータなので、デバイスを通過するトラフィックについてではなく、デバイスを起源とするトラフィックについてだけ関連するものです。TCP 接続試行時間を設定するには、グローバル コンフィギュレーション モードで ip tcp synwait-time コマンドを使用します。デフォルトは 30 秒です。
TCP 選択的確認応答機能は、1 つの TCP データ ウィンドウから複数のパケットが損失する場合のパフォーマンスを改善します。
この機能ができる前は、累積する確認応答から使用できる限られた情報で、TCP 送信者はラウンドトリップ時間に関する 1 つの損失パケットについてだけ知ることができました。積極的な送信者は、早い段階でパケットを再送信できますが、そのような再送信セグメントがすでに正常受信されている可能性があります。
TCP 選択的確認応答機能はパフォーマンスの改善に役立ちます。受信側の TCP ホストは送信側に選択的確認応答パケットを返し、送信側に受信済みのデータを知らせることができます。言い換えると、受信側はパケットを順序通りに受け取らなかったということを通知できます。送信側は、それで(最初の損失パケット以降すべてではなく)欠けているデータ セグメントだけを再送できます。
選択的確認応答の前に、TCP が 8 パケット ウィンドウのうちパケット 4 と 7 を損失すると、TCP はパケット 1、2、および 3 の確認応答だけ受信します。パケット 4 ~ 8 を再送信する必要があります。選択的確認応答を使うと、TCP はパケット 1、2、3、5、6、および 8 の確認応答を受け取ります。パケット 4 と 7 だけを再送信する必要があります。
TCP 選択的確認応答は 1 つの TCP ウィンドウ内で複数のパケットが損失したときだけ使われます。この機能がイネーブルでも使用しない場合、パフォーマンスに影響はありません。TCP 選択的確認応答をイネーブルにするには、グローバル コンフィギュレーション モードで ip tcp selective-ack コマンドを使用します。
TCP タイムスタンプ オプションによって、TCP ラウンドトリップ時間の計測精度が向上します。タイムスタンプは送信と応答の双方で常に送信され、ヘッダーのタイムスタンプ値はいつも変化するため、TCP ヘッダー圧縮では発信パケットを圧縮しません。シリアル リンクでの TCP ヘッダー圧縮を許可すると、TCP タイムスタンプ オプションはディセーブルにされます。TCP タイムスタンプ オプションをイネーブルにするには、 ip tcp timestamp コマンドを使用します。
TCP タイムスタンプの詳細については、RFC 1323 を参照してください。TCP ヘッダー圧縮の詳細については、『 Cisco IOS Quality of Service Solutions Configuration Guide 』の「 Configuring TCP Header Compression 」の章を参照してください。
Telnet や rlogin で、TCP が入力キューから一度に読み込むことのできる最大の文字数は、デフォルトで非常に大きな値(32 ビット整数で正の最大値)です。TCP 最大リード サイズ値を変更するには、グローバル コンフィギュレーション モードで ip tcp chunk-size コマンドを使用します。
PMTUD は TCP 接続 エンドポイント間のネットワーク帯域幅利用効率を最大化する方式で、RFC 1191 で説明されています。IP PMTUD を使用すると、ホストは経路上のさまざまなリンクで許容される Maximum Transmission Unit(MTU; 最大伝送ユニット)サイズの差異をダイナミックに検出し、対処できます。フラグメンテーションが必要(パケットが interface コンフィギュレーション コマンドを使用してインターフェイスに対して設定した MTU よりも大きい場合)なのに、「don't fragment」(DF)ビットがセットされているため、ルータがデータグラムを転送できない場合があります。中間ゲートウェイが、「Fragmentation needed and DF bit set」Internet Control Message Protocol(ICMP)メッセージを送信ホストに送信して、問題を警告します。この ICMP メッセージを受信すると、ホストは仮定のパス MTU を減らし、その結果として経路上の全リンクの最小パケットサイズに適した、より小さなパケットを送信します。
デフォルトでは、TCP PMTUD はディセーブルです。この機能がイネーブルかディセーブルかに関わらず、既存の接続は影響を受けません。
異なるサブネット上のシステム間でバルク データを移動するために TCP 接続を使用する場合、この機能をイネーブルにすることを推奨します。Remote Source-Route Bridging(RSRB; リモート ソースルート ブリッジング)を TCP カプセル化、Serial Tunnel(STUN; シリアル トンネル)、X.25 Remote Switching(XOT; X.25 リモート スイッチング、X.25 over TCP とも呼ばれます)、および何らかのプロトコル変換構成で使用している場合も、この機能をイネーブルにすることを推奨します。
ホストとして動作するルータが開設した接続への PMTUD をイネーブルにするには、 ip tcp path-mtu-discovery グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
PMTUD の詳細については、『 Cisco IOS IP Application Services Configuration Guide 』の「 Configuring IP Services 」の章を参照してください。
TCP ウィンドウ スケーリング機能は、RFC 1323「 TCP Extensions for High Performance 」内のウィンドウ スケーリング オプションに対するサポートを追加します。Long Fat Network(LFN; 広帯域高遅延ネットワーク)と呼ばれる大きな帯域遅延積の特性を持つネットワーク経路での TCP のパフォーマンスを改善するため、より大きなウィンドウ サイズが推奨されます。TCP ウィンドウ スケーリングの強化で、そのサポートを提供します。
Cisco IOS ソフトウェアでのウィンドウ スケーリング拡張は TCP ウィンドウの定義を 32 ビットに拡大し、この 32 ビット値を TCP ヘッダーの 16 ビットウィンドウ フィールドに適合させるため、スケール係数を使用します。ウィンドウ サイズはスケール係数 14 まで大きくすることができます。典型的なアプリケーションは、広帯域高遅延ネットワークで動作するときにスケール係数 3 を使います。
TCP ウィンドウ スケーリング機能は RFC 1323 に準拠しています。最大ウィンドウ サイズは、1,073,741,823 バイトに増加しています。より大きなスケーラブル ウィンドウ サイズによって、広帯域高遅延ネットワーク上での TCP のパフォーマンスを向上できます。TCP ウィンドウ サイズを設定するには、グローバル コンフィギュレーション モードで ip tcp window-size コマンドを使用します。
TCP スライディング ウィンドウにより、ホストは確認応答を待つ前に複数のバイト列やパケットを送信できるため、ネットワークの帯域幅をより効率的に使用できます。
TCP では、受信側は現在のウィンドウ サイズをすべてのパケットに設定します。TCP はバイト ストリーム 接続を提供しているため、ウィンドウ サイズはバイト単位で表現されます。ウィンドウは、送信者が確認応答を待機する前に送信できるデータ バイト数です。初期ウィンドウ サイズは接続確立時に示されますが、フロー制御によってデータ転送の間に変わる可能性があります。ウィンドウ サイズ が 0 のときは「データ送信禁止」を意味します。デフォルトの TCP ウィンドウ サイズは 4128 バイトです。ルーターが大きなパケット(536 バイトよりも大きい)を送信していると確認できない限り、デフォルト値をそのまま使用することを推奨します。デフォルトのウィンドウ サイズを変更するには、 ip tcp window-size コマンドを使用します。
たとえば、TCP スライディング ウィンドウの動作で、ウィンドウ サイズが 5 バイトの受信側に送るバイト シーケンス(1 ~ 10 の番号が付いた)があるとします。送信側は、最初の 5 バイトを取り囲むようにウィンドウを配置して、それをまとめて送信します。送信側はその後、確認応答を待ちます。
受信側は、ACK = 6 で応答します。これは 1 ~ 5 バイトを受け取り、次に 6 バイト目を予期していることを示します。同じパケットの中では、ウィンドウ サイズが 5 だと示します。送信側はスライディング ウィンドウを右に 5 バイト分ずらし、6 ~ 10 バイトを転送します。受信側は、ACK = 11 で応答します。これは、次に 11 バイト目を予期していることを示します。このパケットで、受信側はウィンドウ サイズが 0 であると示すことができます(例えば、内部バッファがいっぱいになったため)。この時点では、受信側からウィンドウ サイズが 1 以上の別パケットが送信されるまで、送信側はこれ以上のバイト列を送信できません。
接続に TTY が関連付けられている場合(たとえば Telnet 接続など)、接続ごとの TCP 発信キューサイズはデフォルトで 5 セグメントです。接続に関連付けられている TTY がない場合、デフォルトのキューサイズは 20 セグメントです。デフォルト値を 5 セグメントから変更するには、 ip tcp queuemax コマンドを使用します。
TCP 輻輳回避機能を使用すると、単一のウィンドウ内で複数パケットが損失しているとき、TCP 送信側に対する確認応答パケットをモニタできます。以前は、送信側は高速リカバリ モードを終了するか、3 以上の重複確認応答パケットを待ってから次の未応答パケットを再送信するか、または再送タイマーのスロー スタートを待ちました。これは、パフォーマンスの問題になることがありました。
RFC 2581 および RFC 3782 の実装では、高速リカバリの期間に受信する部分確認応答への応答を組み込む高速リカバリ アルゴリズムの改良に対応し、単一のウィンドウ内で複数パケットが損失している状況でのパフォーマンスを改善します。
この機能は、既存の高速リカバリ アルゴリズムの強化です。この機能をイネーブルまたはディセーブルにするコマンドはありません。
debug ip tcp transactions コマンドの出力は、次の状態を表示することによって、確認応答パケットをモニタするように拡張されています。
Explicit Congestion Notification(ECN; TCP 明示的輻輳通知)機能では、中間のルータが端点のホストにネットワーク輻輳が差し迫っていることを通知できるようになります。また、Telnet、Web 閲覧、音声や映像データの転送を含む、遅延やパケット損失の影響を受けるアプリケーションに関連付けられた TCP セッションのサポートも強化されています。この機能の利点は、データ転送時の遅延やパケット損失の軽減です。TCP 明示的輻輳通知をイネーブルにするには、グローバル コンフィギュレーション モードで ip tcp ecn コマンドを使用します。
TCP MSS 調整機能では、ルータを通過する一時的なパケット(特に SYN ビットが設定された TCP セグメント)の Maximum Segment Size(MSS; 最大セグメント サイズ)を設定することができるようになります。中間のルータで SYN パケットが切り捨てられないように最大セグメント サイズ値を指定するには、インターフェイス コンフィギュレーション モードで ip tcp adjust-mss コマンドを使用します。
ホスト(通常は PC)がサーバと TCP セッションを開始するときは、TCP SYN パケットの MSS オプション フィールドを使って IP セグメント サイズをネゴシエートします。MSS フィールドの値は、ホスト上の MTU 設定によって決まります。PC のデフォルト MSS 値は 1500 バイトです。
PPP over Ethernet(PPPoE)標準は、1,492 バイトのみの MTU をサポートします。ホストと PPPoE での MTU サイズの不一致は、ホストとサーバの間にあるルータで 1500 バイトのパケットが損失し、PPPoE を介した TCP セッションが終了する原因となる場合があります。たとえホストでパス MTU(パス全体から正しい MTU を検出します)がイネーブルでも、パス MTU が機能するためにホストからリレーする必要がある ICMP エラー メッセージをシステム管理者がディセーブルにすることがあり、セッションが損失する場合があります。
ip tcp adjust-mss コマンドで TCP SYN パケットの MSS 値を調整すると、TCP セッション損失防止の役に立ちます。
ip tcp adjust-mss コマンドは、ルータを通過する TCP 接続に対してのみ有効です。
ほとんどの場合、 ip tcp adjust-mss コマンドの max-segment-size 引数の最適値は 1,452 バイトです。この値に IP ヘッダーの 20 バイト、TCP ヘッダーの 20 バイト、および PPPoE ヘッダーの 8 バイトを足すと、イーサネット リンクの MTU サイズに適合する 1500 バイトのパケットになります。
設定手順については、「一時的な TCP SYN パケットに対する MSS 値、および MTU の設定」を参照してください。
TCP アプリケーション フラグ拡張機能によって、TCP アプリケーションに関する追加のフラグが表示可能になります。フラグには、ステータスやオプションという 2 種類のタイプがあります。ステータス フラグは、再送タイムアウト、アプリケーション クローズ、リスンの同期(SYNC)ハンドシェイクなど、TCP 接続のステータスを示します。追加のフラグは、VPN Routing and Forwarding(VRF; VPN ルーティングおよび転送)インスタンスが設定されているかどうか、ユーザが待機中かどうか、キープアライブ タイマーが動作中かどうかなどの設定オプションのステートを示します。TCP アプリケーション フラグを表示するには、 show tcp コマンドを使用します。
TCP Show 拡張機能では、ホスト名形式ではなく、IP 形式でアドレスを表示したり、接続に関連付けられた VRF テーブルを表示したりする機能が導入されています。全エンドポイントのステータスを IP 形式のアドレス付きで表示するには、 show tcp brief numeric コマンドを使用します。
Cisco IOS Release 15.0(1)M、12.2(33)XNE、12.2(33)SXI1、および 12.2(33)SRE と Cisco IOS XE Release 2.5 よりも前のリリースでは、ルータ上でゼロフィールド TCP パケットが受信されると、TCP パケット カウンタがインクリメントされました。
Cisco IOS Release 15.0(01)M、12.2(33)XNE、12.2(33)SXI1、および 12.2(33)SRE と Cisco IOS XE Release 2.5 以降のリリースでは、ルータ上でゼロフィールド TCP パケットが受信されると、TCP パケット カウンタがインクリメントされません。
show ip traffic コマンドが設定されているときに、ゼロフィールド TCP パケットが受信されると、それが TCP 統計情報フィールドの下に 0 として表示されます。 debug ip tcp packet コマンドが設定されており、ゼロフィールド TCP パケットが受信された場合は、次のようなデバッグ メッセージが表示されます。
TCP MIB for RFC 4022 サポート機能で、RFC 4022「 Management Information Base for the Transmission Control Protocol (TCP) 」に対するサポートが導入されました。RFC 4022 は、TCP の管理容易性を向上させるための TCP MIB の増分変更です。
選択されたプラットフォーム、Cisco IOS リリース、およびフィーチャ セットの MIB を検索してダウンロードするには、次の URL にある Cisco MIB Locator を使用します。
• 「TCP パフォーマンス パラメータの設定」(任意)
• 「一時的な TCP SYN パケットに対する MSS 値、および MTU の設定」(任意)
• 「TCP パフォーマンス パラメータの確認」(任意)
• ウィンドウ スケーリングをサポートするには、リンクの両側を設定する必要があります。設定しないと、最大ウィンドウ サイズとしてデフォルトの 65,535 バイトが適用されます。
• リモートピアとのスリーウェイ ハンドシェイク中に ECN の機能がネゴシエートされるため、ECN をサポートするには、リモート ピアが ECN 対応である必要があります。
3. ip tcp synwait-time seconds
4. ip tcp path-mtu-discovery [ age-timer { minutes | infinite }]
ルータを通過する一時的なパケット(特に SYN ビットが設定された TCP セグメント)の MSS を設定し、IP パケットの MTU サイズを設定するには、この作業を実行します。
ip tcp adjust-mss コマンドと同じインターフェイス上で ip mtu コマンドを設定する場合は、次のコマンドと値を使用することを推奨します。
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ip tcp adjust-mss max-segment-size |
ルータを通過する TCP SYN パケットの MSS 値を調整します。 • max-segment-size 引数には、MSS をバイト単位で指定します。指定できる値の範囲は 500 ~ 1460 です。 |
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1. show tcp [ line-number ] [ tcb address ]
ステップ 1 show tcp [ line-number ] [ tcb address ]
TCP 接続のステータスを表示します。引数およびキーワードは次のとおりです。
• line-number :(任意)Telnet 接続ステータスの絶対行番号。
• tcb :(任意)ECN 対応の接続の Transmission Control Block(TCB; 転送制御ブロック)。
• address :(任意)TCB アドレス(16 進数)。有効な範囲は、0x0 ~ 0xFFFFFFFF です。
次に、ECN が利用可能な接続に関する詳細情報を 16 進数アドレスで表示する show tcp tcb コマンドの出力例を示します。
次に、ソフトウェア モジュラリティ イメージから show tcp tcb コマンドの出力例を示します。
ステップ 2 show tcp brief [ all | numeric ]
TCP 接続のエンドポイントに関する簡潔な説明を表示するには、 show tcp brief コマンドを使用します。Domain Name System(DNS; ドメイン ネーム システム)ホスト名形式のアドレスですべてのエンドポイントに関するステータスを表示するには、オプションの all キーワードを使用します。このキーワードを使用していない場合は、LISTEN ステートのエンドポイントは表示されません。IP 形式のアドレスですべてのエンドポイントに関するステータスを表示するには、オプションの numeric キーワードを使用します。
(注) ルータで ip domain-lookup コマンドがイネーブルになっていて show tcp brief コマンドが実行された場合、出力表示のためのルータ応答時間は非常に遅くなります。応答時間を早くするには、ip domain-lookup コマンドをディセーブルにします。
次に、ユーザが Telnet でシステムに接続している間の show tcp brief コマンドでの出力例を示します。
次の例は、 numeric キーワードを使用して IP 形式のアドレスが表示された後の IP アクティビティを示しています。
ステップ 3 debug ip tcp transactions
状態変化、再送、重複パケットのように重要な TCP トランザクションに関する情報を表示するには、 debug ip tcp transactions コマンドを使用します。このコマンドは、データリンク レイヤ上層に分離される TCP/IP ネットワークでのパフォーマンス上の問題をデバッグするときに特に有用です。
次に、 debug ip tcp transactions コマンドの出力例を示します。
debug ip tcp transactions コマンド出力の次の行は、TCP が高速リカバリモードに移行したことを示しています。
debug ip tcp transactions コマンド出力の次の行は、TCP が高速リカバリ モードのときに重複確認応答が受信されたこと(1 行目)と、部分確認応答が受信されていたこと(2 行目)を示しています。
ステップ 4 debug ip tcp congestion
debug ip tcp congestion コマンドは、TCP 輻輳イベントに関する情報を表示するために使用します。また、 debug ip tcp congestion コマンドは、データリンク層上で切り分けた、TCP/IP ネットワーク上の性能上の問題をデバッグするために使用できます。さらに、このコマンドは、TCP の送信ウィンドウ、輻輳ウィンドウ、および輻輳しきい値ウィンドウ内のばらつきに関する情報も表示します。
次に、 debug ip tcp congestion コマンドの出力例を示します。
Cisco IOS TCP では、New Reno がデフォルト輻輳制御アルゴリズムです。ただし、アプリケーションで Binary Increase Congestion Control(BIC)を輻輳制御アルゴリズムとして使用することもできます。次に、BIC 輻輳制御アルゴリズムを使用した debug ip tcp congestion コマンドからの出力例を示します。
次の例では、TCP ECN が設定されていることを確認する方法を示します。
次の例では、指定された接続(ローカル ホスト)上で、TCP が ECN 対応かどうかの確認方法を示します。
次の例では、1 つのアドレスについて簡易情報を表示させる方法を示しています。
次の例では、IP TCP ECN デバッグをイネーブルにする方法を示します。
TCP 接続が ECN を利用するときは、それ以前にホストは、Echo Congestion Experience(ECE; エコー輻輳経験)および Congestion Window Reduced(CWR; 輻輳ウィンドウ減少)ビットがヘッダーに設定されている ECN-setup SYN(synchronization)パケットをリモートの端点に送ります。ECE および CWR ビットを設定すると、輻輳のことではなく、送信中の TCP が ECN 対応であることをリモートの端点に示します。リモートの端点は、ECN-setup SYN-ACK(確認応答)パケットを送信側ホストに送ります。
この例の「out ECN-setup SYN」テキストは、ECE ビットと CWR ビットが設定された SYN パケットがリモート エンドに送信されたことを意味します。「in non-ECN-setup SYN-ACK」行は、リモートの端点は ECN 要求を承認する確認応答をしなかったため、このセッションでは ECN を利用できないことを示します。
次のデバッグ出力は、双方の端点で ECN 機能がイネーブルであることを示します。ECN-setup SYN に対し、相手側の端点が ECN-setup SYN-ACK メッセージを使用して承認の確認応答を返しました。この接続の以後のセッションでは、ECN を使用できます。
次の例では、図 1 に示すトポロジ例のインターフェイス調整値を設定して確認する方法を示します。ルータ B で、インターフェイスの調整値を設定します。
MSS 調整が設定されたルータ B を使用して、ルータ A からルータ C に Telnet します。
ルータ B で設定されたとおりに MSS が 500 に調整されます。
次の例は、MSS 値を 1452 にした PPPoE クライアントの設定を示します。
次の出力は、 show tcp コマンドを使用して表示されたフラグ(ステータスとオプション)を示しています。
次の例は、 numeric キーワードを使用して IP 形式のアドレスを表示する IP アクティビティを示しています。
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IP アプリケーション サービス コマンド:コマンド構文、コマンド モード、コマンド履歴、デフォルト設定、使用に関する注意事項、および例 |
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• 『TCP Out-of-Order Packet Support for Cisco IOS Firewall and Cisco IOS IPS』 • 『Configuring TCP Intercept (Preventing Denial-of-Service Attacks)』 |
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『 Internetwork Troubleshooting Handbook 』の「 Troubleshooting TCP/IP 」の部分 |
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選択されたプラットフォーム、シスコ ソフトウェア リリース、およびフィーチャ セットの MIB を検索してダウンロードするには、次の URL にある Cisco MIB Locator を使用します。 |
表 1 に、この章に記載されている機能および具体的な設定情報へのリンクを示します。
プラットフォーム サポートとソフトウェア イメージ サポートに関する情報を入手するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator を使用すると、特定のソフトウェア リリース、フィーチャ セット、またはプラットフォームをサポートするソフトウェア イメージを確認できます。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
(注) 表 1 に、特定のソフトウェア リリース トレイン内の機能に対するサポートが導入されたソフトウェア リリースだけを示します。特に断りのないかぎり、そのソフトウェア リリース トレイン以降のリリースでもその機能がサポートされます。
LFN :Long Fat Network(広帯域高遅延ネットワーク)。高スループットで伝送距離が長い場合のネットワークで、帯域が広く遅延が大きいもの。衛星中継のネットワークは LFN の一例です。衛星リンクは伝播遅延が大きく、通常広い帯域幅を持ちます。
TCP :Transmission Control Protocol(伝送制御プロトコル)。信頼性のある全二重方式データ転送を提供するコネクション型のトランスポート レイヤ プロトコル。TCP は TCP/IP プロトコル スタックの一部です。