基本的な BGP について
Cisco NX-OS は BGP バージョン 4 をサポートします。BGP v4 に組み込まれているマルチ プロトコル拡張機能を使用すると、IP マルチキャスト ルートおよび複数のレイヤ 3 プロトコル アドレス ファミリに関するルーティング情報を BGP に伝送させることができます。BGP では、他の BGP 対応デバイスとの間で TCP セッションを確立するための、信頼できるトランスポート プロトコルとして TCP を使用します。
BGP ではパスベクトル ルーティング アルゴリズムを使用して、BGP 対応ネットワーク デバイスまたは BGP スピーカ間でルーティング情報を交換します。各 BGP スピーカはこの情報を使用して、特定の宛先までのパスを判別し、なおかつルーティング ループを伴うパスを検出して回避します。ルーティング情報には、宛先の実際のルート プレフィックス、宛先に対する自律システムのパス、およびその他のパス属性が含まれます。
BGP はデフォルトで、宛先ホストまたはネットワークへのベスト パスとして、1 つだけパスを選択します。各パスは、BGP ベストパス分析で使用される well-known mandatory、well-known discretionary、optional transitive の各属性を伝送します。BGP ポリシーを設定し、これらの属性の一部を変更することによって、BGP パス選択を制御できます。詳細については、ルート ポリシーおよび BGP セッションのリセットを参照してください。
BGP はロード バランシングもサポートしています。詳細については、BGP ベストパスの選択を参照してください。
(注) |
Cisco Nexus 3550-T ハードウェアは、ECMP ルートのインストールをサポートしていません。 |
BGP 自律システム
自律システム(AS)とは、単一の管理エンティティにより制御されるネットワークです。自律システムは 1 つまたは複数の IGP および整合性のある一連のルーティング ポリシーを使用して、ルーティング ドメインを形成します。BGP は 16 ビットおよび 32 ビットの自律システム番号をサポートします。
個々の BGP 自律システムは外部 BGP(eBGP)ピアリング セッションを通じて、ルーティング情報をダイナミックに交換します。同じ自律システム内の BGP スピーカは、内部 BGP(iBGP)を通じて、ルーティング情報を交換できます。
4 バイトの AS 番号のサポート
BGP は、プレーン テキスト表記法または AS ドット付き表記法の 2 バイトの自律システム(AS)番号、もしくはプレーン テキスト表記法の 4 バイトの AS 番号をサポートします。
アドミニストレーティブ ディスタンス
アドミニストレーティブ ディスタンスは、ルーティング情報源の信頼性を示す評価基準です。デフォルトで、BGP は表に示されたアドミニストレーティブ ディスタンスを使用します。
ディスタンス |
デフォルト値 |
機能 |
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外部 |
20 |
eBGP から学習したルートに適用されます。 |
内部 |
200 |
iBGP から学習したルートに適用されます。 |
ローカル |
220 |
ルータを起点とするルートに適用されます。 |
(注) |
アドミニストレーティブ ディスタンスが BGP パス選択アルゴリズムに影響を与えることはありませんが、BGP で学習されたルートが IP ルーティング テーブルに組み込まれるかどうかを左右します。 |
BGP ピア
BGP スピーカーは他の BGP スピーカーを自動的に検出しません。ユーザ側で BGP スピーカ間の関係を設定する必要があります。BGP ピアは、別の BGP スピーカへのアクティブな TCP 接続を持つ BGP スピーカです。
BGP セッション
BGP は TCP ポート 179 を使用して、ピアとの TCP セッションを作成します。ピア間で TCP 接続が確立されると、各 BGP ピアは最初に相手と、それぞれのすべてのルートを交換し、BGP ルーティング テーブルを完成させます。初期交換以後、BGP ピアはネットワーク トポロジが変化したとき、またはルーティング ポリシーが変更されたときに、差分アップデートだけを送信します。更新と更新の間の非アクティブ期間には、ピアは「キープアライブ」と呼ばれる特別なメッセージを交換します。ホールド タイムは、は、次の BGP アップデートまたはキープアライブ メッセージを受信するまでに経過することが許容される、最大時間限度です。
Cisco NX-OS は、次のピア設定オプションをサポートします。
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個別の IPv4 アドレス:BGP は、リモート アドレスと AS 番号が一致する BGP スピーカとのセッションを確立します。
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単一 AS 番号の IPv4 プレフィックス ピア:BGP は、プレフィックスおよび AS 番号が一致する BGP スピーカとのセッションを確立します。
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ダイナミック AS 番号プレフィックス ピア:BGP は、プレフィックスと、設定済み AS 番号のリストに載っている AS 番号と一致する BGP スピーカとのセッションを確立します。
プレフィックス ピアおよびインターフェイス ピアのダイナミック AS 番号
Cisco NX-OS では、BGP セッションを確立する AS 番号の範囲またはリストを受け入れます。たとえば IPv4 プレフィックス 192.0.2.0/8 および AS 番号 33、66、99 を使用するように BGP を設定する場合、BGP は 192.0.2.1 および AS 番号 66 を使用してセッションを確立しますが、192.0.2.2 および AS 番号 50 からのセッションは拒否します。
Cisco NX-OS では、セッションが確立されるまで内部 BGP(iBGP)または外部 BGP(eBGP)セッションとして、プレフィックス ピアをダイナミック AS 番号と関連付けません。iBGP および eBGP の詳細については、「高度な BGP の設定」の章を参照してください。
(注) |
ダイナミック AS 番号プレフィックス ピア設定は、BGP テンプレートから継承した個々の AS 番号の設定よりも優先します。詳細については、「高度な BGP の設定」の章を参照してください。 |
BGP ルータ ID
ピア間で BGP セッションを確立するには、BGP セッションの確立時に、OPEN メッセージで BGP ピアに送信されるルータ ID を BGP に設定する必要があります。BGP ルータ ID は 32 ビット値であり、IPv4 アドレスで表すことがよくあります。ルータ ID はユーザ側で設定できます。ルータ ID はデフォルトで、Cisco NX-OS によってルータのループバック インターフェイスの IPv4 アドレスに設定されます。ルータ上でループバック インターフェイスが設定されていない場合は、ルータ上の物理インターフェイスに設定されている最大の IPv4 アドレスが BGP ルータ ID を表すものとして、ソフトウェアによって選択されます。BGP ルータ ID は、ネットワーク内の BGP ピアごとに一意である必要があります。
BGP にルータ ID が設定されていない場合、BGP ピアとのピアリング セッションを確立できません。
BGP およびユニキャスト RIB
BGP はユニキャスト RIB(ルーティング情報ベース)と通信して、ユニキャスト ルーティング テーブルに IPv4 ルートを格納します。ベスト パスの選択後、ベスト パスの変更をルーティング テーブルに反映させる必要があると BGP が判別した場合、BGP はユニキャスト RIB にルート アップデートを送信します。
BGP はユニキャスト RIB における BGP ルートの変更に関して、ルート通知を受け取ります。さらに、再配布をサポートする他のプロトコル ルートに関するルート通知を受け取ります。
BGP はネクストホップの変更に関する通知も、ユニキャスト RIB から受け取ります。BGP はこれらの通知を使用して、ネクストホップ アドレスへの到達可能性および IGP メトリックを追跡します。
ユニキャスト RIB でネクストホップ到達可能性または IGP メトリックが変更されるたびに、BGP は影響を受けるルートについて、ベスト パス再計算を開始させます。