EIGRP の設定

この章では、Cisco NX-OS デバイスで Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)を設定する方法について説明します。

EIGRP について

EIGRP は、リンクステート プロトコルの機能にディスタンス ベクトル プロトコルの利点を組み合わせたプロトコルです。EIGRP は、定期的に Hello メッセージを送信してネイバーを探索します。EIGRP は、新規ネイバーを検出すると、すべてのローカル EIGRP ルートおよびルート メトリックに対する 1 回限りの更新を送信します。受信側の EIGRP ルータは、受信したメトリックと、その新規ネイバーにローカルで割り当てられたリンクのコストに基づいて、ルート ディスタンスを計算します。この最初の全面的なルート テーブルの更新後は、ルート変更の影響を受けるネイバーにのみ、差分更新が EIGRP により送信されます。この処理により、コンバージェンスにかかる時間が短縮され、EIGRP が使用する帯域幅が最小限になります。

EIGRP コンポーネント

EIGRP には、次の基本コンポーネントがあります。

信頼性の高いトランスポート プロトコル

信頼性の高いトランスポート プロトコルは、すべてのネイバーに EIGRP パケットの順序付けされた配信を保証します。(「ネイバー探索およびネイバー回復」の項を参照してください。) 信頼性の高いトランスポート プロトコルは、マルチキャスト パケットとユニキャスト パケットの混合伝送をサポートしています。この転送は信頼性が高く、未確認パケットが保留されているときにも、マルチキャスト パケットの迅速な送信が可能です。この方式により、さまざまな速度のリンクでも短いコンバージェンス時間が維持されるようになります。マルチキャスト パケットとユニキャスト パケットの送信を制御するデフォルト タイマーの変更の詳細については、高度な EIGRP の設定 を参照してください。

Reliable Transport Protocol には、次のメッセージ タイプが含まれます。

  • Hello:ネイバー探索およびネイバー回復に使用されます。EIGRP はデフォルトでは、定期的なマルチキャスト Hello メッセージをローカル ネットワーク上に、設定された hello 間隔で送信します。デフォルトの hello 間隔は 5 秒です。

  • 確認:更新、照会、返信を確実に受信したことを確認します。

  • 更新:ルーティング情報が変更されると、その影響を受けるネイバーに送信されます。更新には、ルートの宛先、アドレス マスク、および遅延や帯域幅などのルート メトリックが含まれます。更新情報は EIGRP トポロジ テーブルに格納されます。

  • 照会および返信:EIGRP が使用する拡散更新アルゴリズムの一部として送信されます。

ネイバー探索およびネイバー回復

EIGRP は、Reliable Transport Protocol からの Hello メッセージを使用して、直接接続されたネットワーク上のネイバー EIGRP ルータを探索します。EIGRP により、ネイバー テーブルにネイバーが追加されます。ネイバー テーブルの情報には、ネイバー アドレス、検出されたインターフェイス、およびネイバー到達不能を宣言する前に EIGRP が待機する時間を示すホールド タイムが含まれています。デフォルトのホールド タイムは、hello 間隔の 3 倍または 15 秒です。

EIGRP は、ローカル EIGRP ルーティング情報を共有するために、一連の更新メッセージを新規ネイバーに送信します。このルート情報は EIGRP トポロジ テーブルに格納されます。このように EIGRP ルート情報全体を最初に送信した後は、ルーティングが変更されたときにのみ、EIGRP により更新メッセージが送信されます。これらの更新メッセージは新情報または更新情報のみを含んでおり、変更の影響を受けるネイバーにのみ送信されます。「EIGRP ルート アップデート」の項を参照してください。

EIGRP はネイバーへのキープアライブとして、Hello メッセージも使用します。Hello メッセージを受信している限り、Cisco NX-OS は、ネイバーがダウンせずに機能していると判定します。

拡散更新アルゴリズム

拡散更新アルゴリズム(DUAL)により、トポロジ テーブルの宛先ネットワークに基づいてルーティング情報が計算されます。トポロジ テーブルには、次の情報が含まれます。

  • IPv4 または IPv6 アドレス/マスク:この宛先のマスクのネットワーク アドレスおよびネットワーク マスク。

  • サクセサ:現在のフィジブル ディスタンスよりも宛先まで短いディスタンスをアドバタイズする、すべてのフィジブル サクセサまたはネイバーの IP アドレスおよびローカル インターフェイス接続。

  • フィージビリティ ディスタンス(FD):計算された、宛先までの最短ディスタンス。

DUAL は、ディスタンス メトリックを使用して、ループが発生しない効率的なパスを選択します。DUAL はルートを選択し、フィジブル サクセサに基づいてユニキャスト ルーティング情報ベース(RIB)に挿入します。トポロジが変更されると、DUAL は、トポロジ テーブルでフィジブル サクセサを探します。フィジブル サクセサが見つかった場合、DUAL は、最短のフィジブル ディスタンスを持つフィジブル サクセサを選択して、それをユニキャスト RIB に挿入します。これにより、再計算が不要となります。

フィジブル サクセサが存在しないが、宛先をアドバタイズするネイバーが存在する場合は、DUAL がパッシブ状態からアクティブ状態へと移行し、新しいサクセサまたは宛先へのネクスト ホップ ルータを決定する再計算をトリガーします。ルートの再計算に必要な時間は、コンバージェンス時間に影響します。EIGRP は照会メッセージをすべてのネイバーに送信し、フィジブル サクセサを探します。フィジブル サクセサを持つネイバーは、その情報を含む返信メッセージを送信します。フィジブル サクセサを持たないネイバーは、DUAL の再計算をトリガーします。

EIGRP ルート更新

トポロジが変更されると、EIGRP は、変更されたルーティング情報のみを含む更新メッセージを影響を受けるネイバーに送信します。更新メッセージには、新規の、または更新されたネットワーク宛先へのディスタンス情報が含まれます。

EIGRP でのディスタンス情報は、帯域幅、遅延、負荷使用状況、リンクの信頼性などの使用可能なルート メトリックの組み合わせとして表現されます。各メトリックには重みが関連付けられており、これにより、メトリックがディスタンスの計算に含まれるかどうかが決定します。このメトリックの重みは設定することができます。特性を微調整して最適なパスを完成することもできますが、設定可能なメトリックの大部分でデフォルト設定を使用することを推奨します。

内部ルート メトリック

内部ルートとは、同じ EIGRP 自律システム内のネイバー間のルートです。これらのルートには、次のメトリックがあります。

  • ネクスト ホップ:ネクスト ホップ ルータの IP アドレス。

  • 遅延:宛先ネットワークへのルートを形成するインターフェイス上で設定された遅延の合計。遅延は 10 マイクロ秒単位で設定されます。

  • 帯域幅:宛先へのルートの一部であるインターフェイスで設定された最小帯域幅から計算されます。


    (注)  


    Cisco ではデフォルト帯域幅の値の使用を推奨します。この帯域幅パラメータは EIGRP でも使用されます。


  • MTU:宛先へのルート上の最大伝送単位の最小値。

  • ホップ カウント:宛先までにルートが通過するホップまたはルータの数。このメトリックは、DUAL 計算で直接には使用されません。

  • 信頼性:宛先までのリンクの信頼性を示します。

  • 負荷:宛先までのリンク上のトラフィック量を示します。

デフォルトで EIGRP は、帯域幅と遅延のメトリックを使用して、宛先までのディスタンスを計算します。計算に他のメトリックが含まれるように、メトリックの重みを変更できます。

ワイド メトリックス

EIGRP は、より高速なインターフェイスまたはバンドルされたインターフェイス上でのルート選択を改善するためのワイド(64 ビット)メトリックをサポートします。ワイド メトリックをサポートしているルータは、次のように、ワイド メトリックをサポートしていないルータと相互運用できます。

  • ワイド メトリックをサポートするルータ:ローカル ワイド メトリック値を受信した値に追加し、情報を送信します。

  • ワイド メトリックをサポートしないルータ:値を変更せずに受信したメトリックを送信します。

EIGRP は、ワイド メトリックのパス コストを計算するために、次の式を使用します。

メトリック = [k1 × 帯域幅 +(k2 × 帯域幅)/(256 –負荷)+ k3 × 遅延 + k6 × 拡張属性] x [k5/(信頼性 + k4)]

ユニキャスト RIB が 64 ビットのメトリック値をサポートできないため、EIGRP ワイド メトリックは RIB スケール係数で次の式を使用して、64 ビット メトリック値を 32 ビット値に変換します。

RIB メトリック =(ワイド メトリック/RIB スケール値)

RIB スケール値は設定可能なパラメータです。

EIGRP ワイド メトリックは、EIGRP メトリックの設定の k6 として、次の 2 種類の新しいメトリック値を導入します。

  • ジッタ:(マイクロ秒単位で測定)ルート パス上のすべてのリンクにわたって累積します。

  • エネルギー:(キロ ビット単位のワットで測定)ルート パス上のすべてのリンクにわたって累積します。

EIGRP は、ジッターやエネルギー メトリック値を持たないパス、またはより低いジッターやエネルギー メトリック値を持つパスを、より高い値のパスを持つパスよりも優先します。


(注)  


EIGRP ワイド メトリックは、TLV バージョン 2 で送信されます。詳細については、「ワイドメトリックの有効化」の項を参照してください。


外部ルート メトリック

外部ルートとは、異なる EIGRP 自律システムにあるネイバー間のルートです。これらのルートには、次のメトリックがあります。

  • ネクスト ホップ:ネクスト ホップ ルータの IP アドレス。

  • ルータ ID:このルートを EIGRP に再配布したルータのルータ ID。

  • 自律システム番号:宛先の自律システム番号。

  • プロトコル ID:宛先へのルートを学習したルーティング プロトコルを表すコード。

  • タグ:ルート マップで使用可能な任意のタグ。

  • メトリック:外部ルーティング プロトコルの、このルートのルート メトリック。

EIGRP とユニキャスト RIB

EIGRP は、すべての学習したルートを EIGRP トポロジ テーブルとユニキャスト RIB に追加します。トポロジが変更されると、EIGRP は、これらのルートを使用してフィジブル サクセサを探します。EIGRP は、他のルーティング プロトコルから EIGRP に再配布されたあらゆるルートの変更についてのユニキャスト RIB からの通知も待ち受けます。

高度な EIGRP

EIGRP の高度な機能を使用して、EIGRP の設定を最適化できます。

アドレス ファミリ

EIGRP では、IPv4 と IPv6 の両方のアドレス ファミリをサポートしています。下位互換性を保つために、ルート コンフィギュレーション モードまたは IPv4 アドレス ファミリ モードで EIGRPv4 を設定できます。アドレス ファミリ モードで IPv6 の EIGRP を設定する必要があります。

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードには、次の EIGRP 機能が含まれます。

  • 認証

  • AS 番号

  • デフォルト ルート

  • メトリック

  • ディスタンス

  • グレースフル リスタート

  • ロギング

  • ロード バランシング

  • 再分配

  • ルータ ID

  • スタブ ルータ

  • タイマー

複数のコンフィギュレーション モードで同じ機能を設定できません。たとえばルータ コンフィギュレーション モードでデフォルト メトリックを設定すると、アドレス ファミリ モードでデフォルト メトリックを設定できません。

認証

EIGRP メッセージに認証を設定することで、ネットワークでの不正なルーティング更新や無効なルーティング更新を防止できます。EIGRP 認証は MD5 認証ダイジェストをサポートしています。

認証キーのキーチェーン管理を使用して、仮想ルーティング/転送(VRF)インスタンスごと、またはインターフェイスごとに EIGRP 認証を設定できます。キーチェーン管理を使用すると、MD5 認証ダイジェストが使用する認証キーへの変更を管理できます。キー チェーンの作成の詳細については、『Cisco Nexus 9000 Series NX-OS Security Configuration Guide』を参照してください。

MD5 認証を行うには、ローカル ルータとすべてのリモート EIGRP ネイバーで同一のパスワードを設定します。EIGRP メッセージが作成されると、Cisco NX-OS は、そのメッセージ自体と暗号化されたパスワードに基づいて MD5 一方向メッセージ ダイジェストを作成し、このダイジェストを EIGRP メッセージとともに送信します。受信する EIGRP ネイバーは、同じ暗号化パスワードを使用して、このダイジェストを確認します。メッセージが変更されていない場合は計算が同一であるため、EIGRP メッセージは有効と見なされます。

MD5 認証には各 EIGRP メッセージのシーケンス番号も含まれており、これにより、ネットワークでのメッセージの再送が防止されます。

スタブ ルータ

EIGRP スタブ ルーティング機能を使用すると、ネットワークの安定性の向上、リソース使用量の削減、スタブ ルータ設定の簡易化を実現できます。スタブ ルータは、リモート ルータ経由で EIGRP ネットワークに接続します。「スタブ ルーティング」の項を参照してください。

EIGRP スタブ ルーティングを使用すると、EIGRP を使用するように配布とリモート ルータを設定し、リモート ルータのみをスタブとして設定する必要があります。EIGRP スタブ ルーティングで、分散ルータでの集約が自動的にイネーブルになるわけではありません。ほとんどの場合、分散ルータでの集約の設定が必要です。

EIGRP スタブ ルーティングを使用しない場合は、分散ルータからリモート ルータに送信されたルートがフィルタリングまたは集約された後でも、問題が発生することがあります。たとえば、ルートが企業ネットワーク内のどこかで失われた場合に、EIGRP が分散ルータに照会を送信することがあります。分散ルータは、ルートが集約されている場合でも、リモート ルータに照会を送信することがあります。分散ルータとリモート ルータの間の WAN リンク上の通信で問題が発生した場合は EIGRP がアクティブ状態のままとなり、ネットワークの他の場所が不安定となる場合があります。EIGRP スタブ ルーティングを使用すると、リモート ルータに照会が送信されなくなります。

ルート集約

指定したインターフェイスにサマリー集約アドレスを設定できます。ルート集約を使用すると、固有性の強い一連のアドレスをすべての固有アドレスを代表する 1 つのアドレスに置き換えることによって、ルート テーブルを簡素化できます。たとえば、10.1.1.0/24、10.1.2.0/24、および 10.1.3.0/24 というアドレスを 1 つの集約アドレス 10.1.0.0/16 に置き換えることができます。

より具体的なアドレスがルーティング テーブルにある場合、EIGRP は、より具体的なルートの最小メトリックに等しいメトリックを持つインターフェイスからの集約アドレスをアドバタイズします。

プロセスの再起動またはシステムスイッチオーバーの場合、サマリーアドレスによってトラフィックが失われる可能性があります。トラフィックは、サマリーアドレスを使用してトラフィックがルーティングされる PEER で確認されます。


(注)  


EIGRP は、自動ルート集約をサポートしていません。


ルートの再配布

EIGRP を使用すると、スタティック ルート、他の EIGRP AS が学習したルート、またはほかのプロトコルからのルートを再配布できます。再配布を指定したルート マップを設定して、どのルートが EIGRP に渡されるかを制御する必要があります。ルート マップを使用すると、宛先、送信元プロトコル、ルート タイプ、ルート タグなどの属性に基づいて、ルートをフィルタリングできます。Route Policy Manager の設定を参照してください。

インポートされた EIGRP へのすべてのルートに使用されるデフォルト メトリックも設定できます。

ルーティング アップデートからルートをフィルタリングするには、配布リストを使用します。これらのフィルタ処理されたルートは、ip distribute-list eigrp コマンドで各インターフェイスに適用されます。

ロード バランシング

ロード バランシングを使用すると、ルータは、宛先アドレスから等距離内にあるすべてのルータのネットワーク ポートにトラフィックを分散できます。ロード バランシングにより、ネットワーク セグメントの使用率が向上し、それによってネットワーク帯域幅の効率も向上します。

Cisco NX-OS は、EIGRP ルート テーブルおよびユニキャスト RIB 中の 16 までの等コスト パスを使用する等コスト マルチパス(ECMP)機能をサポートしています。これらのパスの一部または全部に対してトラフィックのロード バランスを行うよう、EIGRP を設定できます。


(注)  


Cisco NX-OS の EIGRP は、等コストでないロード バランシングをサポートしていません。


Split Horizon

スプリット ホライズンを使用すると、ルートを学習したインターフェイスから EIGRP がルートをアドバタイズしないようにできます。

スプリット ホライズンは、EIGRP 更新パケットおよび EIGRP 照会パケットの送信を制御する方式です。インターフェイスでスプリット ホライズンをイネーブルにすると、Cisco NX-OS は、このインターフェイスから学習された宛先への更新パケットも照会パケットも送信しません。この方法でアップデート パケットとクエリー パケットを制御すると、ルーティング ループが発生する可能性が低くなります。

EIGRP はポイズン リバースによるスプリット ホライズンにより、EIGRP がルートを学習したインターフェイス経由で、そのルートを到達不能としてアドバタイズするよう設定されます。

EIGRP は、次のシナリオでスプリット ホライズン、またはポイズン リバースによるスプリット ホライズンを使用します。

  • スタートアップ モードで、2 台のルータ間で初めてトポロジ テーブルを交換する。

  • トポロジ テーブルの変更をアドバタイズする。

  • 照会メッセージを送信する。

デフォルトでは、スプリット ホライズン機能がすべてのインターフェイスでイネーブルになっています。

BFD

この機能では、IPv4 および IPv6 用の双方向フォワーディング検出(BFD)をサポートします。BFD は、転送パスの障害を高速で検出することを目的にした検出プロトコルです。BFD は 2 台の隣接デバイス間のサブセカンド障害を検出し、BFD の負荷の一部を、サポートされるモジュール上のデータ プレーンに分散できるため、プロトコル hello メッセージよりも CPU を使いません。詳細については、『Cisco Nexus 9000 Series NX-OS Interfaces Configuration Guide』を参照してください。

仮想化のサポート

EIGRP は、仮想ルーティングおよび転送(VRF)インスタンスをサポートしています。

グレースフル リスタートおよびハイ アベイラビリティ

Cisco NX-OS は、EIGRP の無停止フォワーディングおよびグレースフル リスタートをサポートします。

EIGRP の NSF を使用すると、フェールオーバー後に EIGRP ルーティング プロトコル情報が復元される間に、データ パケットを FIB 内の既存のルートで転送できます。ノンストップ フォワーディング(NSF)を使用すると、ピア ネットワーキング デバイスでルーティング フラップが発生することがありません。フェールオーバー時に、データ トラフィックはインテリジェント モジュール経由で転送され、スタンバイ スーパーバイザがアクティブになります。

Cisco NX-OS システムでコールド リブートが発生した場合、デバイスはシステムへのトラフィック転送を中止し、ネットワーク トポロジからシステムを削除します。このシナリオでは、EIGRP でステートレス再起動が発生し、すべてのネイバーが削除されます。Cisco NX-OS はスタートアップ構成を適用し、EIGRP がネイバーを再検出して、完全な EIGRP ルーティング情報を再度共有します。

Cisco NX-OS を実行するデュアル スーパーバイザ プラットフォームで、ステートフル スーパーバイザ スイッチオーバーが発生します。このスイッチオーバーが発生する前に、EIGRP はグレースフル リスタートを使用して、EIGRP がしばらく使用不可であることを宣言します。スイッチオーバーの間、EIGRP は無停止フォワーディングを使用して FIB の情報に基づいてトラフィックを転送し続け、システムがネットワーク トポロジから取り除かれることはありません。

グレースフル リスタート対応ルータは、Hello メッセージを使用して、グレースフル リスタート動作が開始されたことをネイバーに通知します。グレースフル リスタート認識ルータが、グレースフル リスタート対応ネイバーからグレースフル リスタート動作が進行中であるという通知を受信すると、両方のルータは各トポロジ テーブルをただちに交換します。グレースフル リスタート認識ルータは、ルータの再起動を支援するための次のアクションを実行します。

  • ルータは、EIGRP Hello 保持時間を失効し、Hello メッセージにセットされる間隔を短くします。このプロセスにより、グレースフル リスタート認識ルータは再起動中のルータにより早く応答し、再起動中のルータがネイバーを再検出し、トポロジ テーブルを再構築するために必要な時間を短縮します。

  • ルータは、ルート保留タイマーを開始します。このタイマーで、グレースフル リスタート認識ルータが、再起動中のネイバー ルータのために既知のルートを保留する時間の長さが設定されます。デフォルトの期間は 240 秒です。

  • ルータは、ネイバーが再起動していることをピア リストに記載する、隣接関係を維持する、グレースフル リスタート認識ルータのトポロジ テーブルを送信する準備ができたことを知らせるシグナルをネイバーが送信するか、ルートホールド タイマーが期限切れになるまで再起動中のネイバーを保持する、ということを行います。グレースフル リスタート認識ルータ上でルート保留タイマーの期限が切れた場合、グレースフル リスタート認識ルータは保留ルートを破棄し、再起動中のルータをネットワークに参加する新しいルータとして扱い、隣接関係を再確立します。

スイッチオーバー後に、Cisco NX-OS は実行コンフィギュレーションを適用し、EIGRP は、自身が再び稼働していることをネイバーに通知します。

複数の EIGRP インスタンス

Cisco NX-OSは、同一システム上で動作する複数の EIGRP プロトコル インスタンスをサポートします。すべてのインスタンスで同じシステム ルータ ID を使用します。インスタンスごとに一意のルータ ID を設定することもできます。サポートされる EIGRP インスタンスの数については、『Cisco Nexus 9000 Series NX-OS Verified Scalability Guide』を参照してください。

EIGRP の注意事項と制約事項

EIGRP 設定時の注意事項および制約事項は次のとおりです。

  • テーブル マップ、ルートのアドミニストレーティブ ディスタンス、およびメトリックを設定すると、コンフィギュレーション コマンドによって EIGRP ネイバーがフラップします。これは予期された動作です。

  • プレフィックス リスト内の名前は、大文字と小文字が区別されません。一意の名前を使用することを推奨します。大文字と小文字を変更して同じ名前を使用しないでください。たとえば、CTCPrimaryNetworks と CtcPrimaryNetworks は 2 つの異なるエントリではありません。

  • 他のプロトコル、接続されたルータ、またはスタティック ルートからの再配布には、メトリック設定(デフォルト メトリック設定オプションまたはルート マップによる)が必要です。Route Policy Manager の設定を参照してください。

  • グレースフル スタートについては、NSF 認識ルータが動作中であり、ネットワークで完全に収束している場合にのみ、このルータが NSF 対応ルータのグレースフル リスタート動作を支援できます。

  • グレースフル スタートについては、NSF 認識ルータが動作中であり、ネットワークで完全に収束している場合にのみ、このルータが NSF 対応ルータのグレースフル リスタート動作を支援できます。

  • グレースフル リスタートについては、グレースフル リスタートに関係する隣接デバイスが NSF 認識、または NSF 対応である必要があります。

  • Cisco NX-OS EIGRP は Cisco IOS ソフトウェアの EIGRP と互換性があります。

  • EIGRP はトンネル インターフェイスではサポートされていません。

  • 妥当な理由がない限り、メトリックの重みを変更しないでください。メトリックの重みを変更した場合は、同じ自律システム内のすべての EIGRP ルータに、それを適用する必要があります。

  • 1 ギガビット以上のインターフェイス速度の EIGRP ネットワークでの標準メトリックとワイド メトリックの組み合わせは、最適なルーティングになる可能性があります。

  • 大規模ネットワークの場合は、スタブの使用を検討してください。

  • EIGRP ベクトル メトリックは維持されないため、異なる EIGRP 自律システム間での再配布は避けてください。

  • no {ip | ipv6 } next-hop-self コマンドは、ネクスト ホップの到達可能性を保証しません。

  • {ip | ipv6 } passive-interface eigrp コマンドを使用すると、ネイバーが形成されなくなります。

  • Cisco NX-OS は IGRP も、IGRP および EIGRP クラウドの接続もサポートしていません。

  • 自動集約はデフォルトで無効になっており、有効にすることはできません。

  • Cisco NX-OS は IP のみをサポートしています。

  • ハイ アベイラビリティは、EIGRP 集約タイマーでサポートされません。

  • デフォルト以外のアグレッシブ hello タイマーを構成するには、EIGRP のデフォルト タイマーで BFD を使用することを推奨します。

  • Cisco NX-OS リリース 9.3(4) 以降では、ルートを EIGRP に再配布し、ルート マップまたはプレフィックス リストを使用してプレフィックスをフィルタリングするときに、触れてない場合でもフィルタによって許可されているすべてのプレフィックスは、EIGRP トポロジ テーブル内で更新されます。この更新は、このプレフィックス セットのクエリ ドメイン内のすべての EIGRP ルータに通知されます。

  • Cisco NX-OS リリース 10.3(1)F 以降、EIGRP は Cisco Nexus 9808 プラットフォーム スイッチでサポートされます。

  • ASCII リロードにより、VRF 構成は EIGRP の下のすべての VRF に対して自動的に追加されます


(注)  


Cisco IOS の CLI に慣れている場合、この機能の Cisco NX-OS コマンドは従来の Cisco IOS コマンドと異なる点があるため注意が必要です。


デフォルト設定

テーブルは、各 EIGRP パラメータに対するデフォルト設定を示します。

表 1. EIGRP パラメータのデフォルト設定

パラメータ

デフォルト

アドミニストレーティブ ディスタンス

  • 内部ルート:90

  • 外部ルート:170

帯域幅の割合

50%

再配布されたルートのデフォルトのメトリック

  • 帯域幅:100000 Kb/s

  • 遅延:100(10 マイクロ秒単位)

  • 信頼性:255

  • ロード:1

  • MTU:1500

EIGRP 機能

ディセーブル

hello 間隔

5 秒

Hold time

15 秒

等コスト パス

8

メトリック重み

1 0 1 0 0 0

アドバタイズされたネクスト ホップ アドレス

ローカル インターフェイスの IP アドレス

NSF コンバージェンス時間

120

NSF ルート保留時間

240

NSF 信号送信時間

20

再分配

ディセーブル

スプリット ホライズン

有効(Enabled)

基本的な EIGRP の設定

基本的な EIGRP の設定。

EIGRP 機能の有効化

EIGRP を設定するには、その前に EIGRP を有効にする必要があります。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. [no] feature eigrp
  3. (任意) show feature
  4. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

[no] feature eigrp

例:

switch(config)# feature eigrp

EIGRP 機能を有効にします。

no オプションを使用すると、EIGRP 機能が無効になり、関連する設定がすべて削除されます。

ステップ 3

(任意) show feature

例:

switch(config)# show feature 
(任意)

有効にされた機能に関する情報を表示し。

ステップ 4

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config)# copy running-config
startup-config
(任意)

この設定変更を保存します。

EIGRP インスタンスの作成

EIGRP インスタンスを作成して、そのインスタンスにインターフェイスを関連付けることができます。この EIGRP プロセスに一意の自律システム番号を割り当てます(「自律システム」の項を参照)。ルート再配布をイネーブルにしていない限り、他の自律システムからルートがアドバタイズされることも、受信されることもありません。

始める前に

EIGRP 機能がイネーブルにする必要があります(「EIGRP 機能のいネーブル化(Enabling the EIGRP Feature)」を参照)。

EIGRP がルータ ID(設定済みのループバック アドレスなど)を入手可能であるか、またはルータ ID オプションを設定する必要があります。

自律システム番号であると認められていないインスタンス タグを設定する場合は、自律システム番号を明示的に設定する必要があります。そうしないと、この EIGRP インスタンスはシャットダウン状態のままになります。IPv6 の場合、この番号は、アドレス ファミリの下で設定する必要があります。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. [no] router eigrp instance-tag
  3. (任意) autonomous-system as-number
  4. (任意) log-adjacency-changes
  5. (任意) log-neighbor-warnings [seconds]
  6. interface interface-type slot/port
  7. {ip | ipv6} router eigrp instance-tag
  8. (任意) show {ip | ipv6} eigrp interfaces
  9. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

[no] router eigrp instance-tag

例:

switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)#

インスタンス タグを設定して、新しい EIGRP プロセスを作成します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

AS 番号であると認められていない instance-tag を設定する場合は、autonomous-system コマンドを使用して AS 番号を明示的に設定する必要があります。そうしないと、この EIGRP インスタンスはシャットダウン状態のままになります。

no オプションを使用すると、EIGRP プロセスとそれに関連する設定がすべて削除されます。

(注)  

 

EIGRP プロセスを削除する場合は、インターフェイス モードで設定された EIGRP コマンドも削除する必要があります。

ステップ 3

(任意) autonomous-system as-number

例:

switch(config-router)# autonomous-system
33
(任意)

この EIGRP インスタンスに一意の AS 番号を設定します。有効な範囲は 1 ~ 65535 です。

ステップ 4

(任意) log-adjacency-changes

例:

switch(config-router)#
log-adjacency-changes
(任意)

隣接関係の状態が変化するたびに、システム メッセージを生成します。このコマンドは、デフォルトでイネーブルになっています。

ステップ 5

(任意) log-neighbor-warnings [seconds]

例:

switch(config-router)#
log-neighbor-warnings
(任意)

ネイバーの警告が発生するたびに、システム メッセージを生成します。警告メッセージの時間間隔を、1 ~ 65535 の秒数で設定できます。デフォルトは 10 秒です。このコマンドは、デフォルトでイネーブルになっています。

ステップ 6

interface interface-type slot/port

例:

switch(config-router)# interface
ethernet 1/2
switch(config-if)#

インターフェイス設定モードを開始します。? を使用すると、スロットおよびポートの範囲を確認できます。

ステップ 7

{ip | ipv6} router eigrp instance-tag

例:

switch(config-if)# ip router eigrp Test1
R2(config-if)# vrf member eigrp-vrf
Warning: Retain-L3-config is on, deleted and re-added L3 config on interface Ethernet1/8
VRF eigrp-vrf does not exist. Create vrf to make interface Ethernet1/8 operational
R2(config-if)#
R2(config-if)# sh ru eigrp

!Command: show running-config eigrp
!Running configuration last done at: Thu Aug 25 06:59:31 2022
!Time: Thu Aug 25 06:59:36 2022

version 10.3(1) Bios:version 05.47
feature eigrp

router eigrp 10
  vrf eigrp-vrf

interface Ethernet1/8
  ip router eigrp 10

このインターフェイスを、設定された EIGRP プロセスに関連付けます。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

(注)  

 

EIGRP プロセスが実行され、vrf retain が構成されているインターフェイスでは、この場合、インターフェイスで vrf member が変更されると、新しく作成された vrf-name も EIGRP プロセスのコンテキストで反映されます。

ステップ 8

(任意) show {ip | ipv6} eigrp interfaces

例:

switch(config-if)# show ip eigrp
interfaces
(任意)

EIGRP インターフェイスに関する情報を表示します。

ステップ 9

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-if)# copy running-config
startup-config
(任意)

この設定変更を保存します。


(注)  


EIGRP プロセスを削除する場合は、インターフェイス モードで設定された EIGRP コマンドも削除する必要があります。


次に、EIGRP プロセスを作成し、EIGRP のインターフェイスを設定する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)# interface ethernet 1/2
switch(config-if)# ip router eigrp Test1
switch(config-if)# no shutdown
switch(config-if)# copy running-config startup-config

その他の EIGRP パラメータの詳細については、高度な EIGRP の設定 の項を参照してください。

EIGRP インスタンスの再起動

EIGRP インスタンスを再起動できます。この処理では、インスタンスのすべてのネイバーが消去されます。

EIGRP インスタンスを再起動し、関連付けられたすべてのネイバーを削除するには、グローバル設定モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. (任意) flush-routes
  2. restart eigrp instance-tag

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

(任意) flush-routes

例:

switch(config)# flush-routes
(任意)

この EIGRP インスタンスを再起動するときに、ユニキャスト RIB のすべての EIGRP ルートをフラッシュします。

ステップ 2

restart eigrp instance-tag

例:

switch(config)# restart eigrp Test1

EIGRP インスタンスを再起動して、すべてのネイバーを削除します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

EIGRP インスタンスのシャットダウン

EIGRP インスタンスを正常にシャットダウンできます。これにより、すべてのルートと隣接関係は削除されますが、EIGRP 設定は保持されます。

EIGRP インスタンスをディセーブルにするには、ルータ コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. shutdown

手順の詳細

コマンドまたはアクション 目的

shutdown

例:

switch(config-router)# shutdown

この EIGRP インスタンスをディセーブルにします。EIGRP ルータ設定は残ります。

EIGRP のパッシブ インターフェイスの設定

EIGRP のパッシブ インターフェイスを設定できます。パッシブ インターフェイスは EIGRP 隣接関係に参加しませんが、このインターフェイスのネットワーク アドレスは EIGRP トポロジ テーブルに残ります。

EIGRP のパッシブ インターフェイスを設定するには、インターフェイス コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. {ip | ipv6} passive-interface eigrp instance-tag

手順の詳細

コマンドまたはアクション 目的

{ip | ipv6} passive-interface eigrp instance-tag

例:

switch(config-if)# ip passive-interface eigrp tag10

EIGRP hello を抑制します。これにより、EIGRP インターフェイス上でネイバーがルーティング アップデートを形成および送信することを防ぎます。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

インターフェイスでの EIGRP のシャットダウン

インターフェイスで EIGRP を正常にシャットダウンできます。これにより、すべての隣接関係が削除され、このインターフェイスで EIGRP トラフィックが停止しますが、EIGRP 設定は保持されます。

インターフェイスで EIGRP を無効にするには、インターフェイス設定モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. {ip | ipv6} eigrp instance-tag shutdown

手順の詳細

コマンドまたはアクション 目的

{ip | ipv6} eigrp instance-tag shutdown

例:

switch(config-if)# ip eigrp Test1
shutdown

このインターフェイスで EIGRP を無効にします。EIGRP インターフェイス設定は残ります。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

高度な EIGRP の設定

EIGRP での認証の設定

EIGRP のネイバー間に認証を設定できます。「認証(Authentication)」セクションを参照してください。

EIGRP プロセスまたは個々のインターフェイスに対応する EIGRP 認証を設定できます。インターフェイスの EIGRP 認証設定は、EIGRP プロセスレベルの認証設定より優先されます。

始める前に

EIGRP 機能がイネーブルにする必要があります(「EIGRP 機能のいネーブル化(Enabling the EIGRP Feature)」を参照)。

EIGRP プロセスのすべてのネイバーが、共有認証キーを含め、同じ認証設定を共有することを確認します。

この認証設定のためのキー チェーンを作成します。詳細については、『Cisco Nexus 9000 Series NX-OS Security Configuration Guide』を参照してください。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. router eigrp instance-tag
  3. address-family {ipv4 | ipv6} unicast
  4. authentication key-chain key-chain
  5. authentication mode md5
  6. interface interface-type slot/port
  7. {ip | ipv6} router eigrp instance-tag
  8. {ip | ipv6} authentication key-chain eigrp instance-tag keychain
  9. {ip | ipv6} authentication mode eigrp instance-tag md5
  10. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

router eigrp instance-tag

例:

switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)#

インスタンス タグを設定して、新しい EIGRP プロセスを作成します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

AS 番号であると認められていない instance-tag を設定する場合は、autonomous-system コマンドを使用して AS 番号を明示的に設定する必要があります。そうしないと、この EIGRP インスタンスはシャットダウン状態のままになります。

ステップ 3

address-family {ipv4 | ipv6} unicast

例:

switch(config-router)# address-family
ipv4 unicast
switch(config-router-af)#

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードを開始します。IPv4 の場合、このコマンドはオプションです。

ステップ 4

authentication key-chain key-chain

例:

switch(config-router-af)# authentication
key-chain routeKeys

この VRF の EIGRP プロセスにキーチェーンを関連付けます。キー チェーン名は、大文字と小文字が区別される 63 文字以下の任意の英数字文字列にできます。

ステップ 5

authentication mode md5

例:

switch(config-router-af)# authentication
mode md5

この VRF の MD5 メッセージ ダイジェスト認証モードを設定します。

ステップ 6

interface interface-type slot/port

例:

switch(config-router-af) interface
ethernet 1/2
switch(config-if)#

インターフェイス設定モードを開始します。? を使用すると、サポートされているインターフェイスを調べることができます。

ステップ 7

{ip | ipv6} router eigrp instance-tag

例:

switch(config-if)# ip router eigrp Test1

このインターフェイスを、設定された EIGRP プロセスに関連付けます。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

ステップ 8

{ip | ipv6} authentication key-chain eigrp instance-tag keychain

例:

switch(config-if)# ip authentication
key-chain eigrp Test1 routeKeys

このインターフェイスの EIGRP プロセスにキーチェーンを関連付けます。この設定は、ルータの VRF モードで設定された認証設定よりも優先します。

インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

ステップ 9

{ip | ipv6} authentication mode eigrp instance-tag md5

例:

switch(config-if)# ip authentication
mode eigrp Test1 md5

このインターフェイスの MD5 メッセージ ダイジェスト認証モードを設定します。この設定は、ルータの VRF モードで設定された認証設定よりも優先します。

インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

ステップ 10

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-if)# copy running-config
startup-config
(任意)

この設定変更を保存します。

次に、EIGRP の MD5 メッセージ ダイジェスト認証をイーサネット インターフェイス 1/2 上で設定する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)# exit
switch(config)# interface ethernet 1/2
switch(config-if)# ip router eigrp Test1
switch(config-if)# ip authentication key-chain eigrp Test1 routeKeys
switch(config-if)# ip authentication mode eigrp Test1 md5
switch(config-if)# copy running-config startup-config

EIGRP スタブ ルーティングの設定

EIGRP スタブ ルーティング用のルータを設定できます。

ルータで EIGRP スタブ ルーティングを設定するには、アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. stub [direct | receive-only | redistributed [direct] leak-map map-name]
  2. (任意) show ip eigrp neighbor detail

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

stub [direct | receive-only | redistributed [direct] leak-map map-name]

例:

switch(config-router-af)# eigrp stub
redistributed

リモート ルータを EIGRP スタブ ルータとして設定します。マップ名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

ステップ 2

(任意) show ip eigrp neighbor detail

例:

switch(config-router-af)# show ip eigrp
neighbor detail
(任意)

ルータがスタブ ルータとして設定されていることを確認します。

次に、直接接続され、再配布されるルートをアドバタイズするスタブ ルータを設定する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)# address-family ipv6 unicast
switch(config-router-af)# stub direct redistributed
switch(config-router-af)# copy running-config startup-config

ルータがスタブ ルータとして設定されていることを確認するには、show ip eigrp neighbor detail コマンドを使用します。出力の最後の行は、リモート ルータまたはスポーク ルータのスタブ ステータスを示します。

次に、show ip eigrp neighbor detail コマンドの出力例を示します。

Router# show ip eigrp neighbor detail
IP-EIGRP neighbors for process 201
H  Address            Interface          Hold Uptime   SRTT   RTO  Q  Seq Type
                                         (sec)         (ms)       Cnt Num
0  10.1.1.2           Se3/1                11 00:00:59    1  4500  0  7
  Version 12.1/1.2,   Retrans: 2,  Retries: 0
 Stub Peer Advertising ( CONNECTED SUMMARY ) Routes

EIGRP のサマリー アドレスの設定

指定したインターフェイスにサマリー集約アドレスを設定できます。より具体的なルートがルーティング テーブルにある場合、EIGRP は、より具体的なすべてのルートの最小に等しいメトリックを持つインターフェイスからのサマリー アドレスをアドバタイズします。「ルート集約」の項を参照してください。

サマリー集約アドレスを設定するには、インターフェイス コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. {ip | ipv6} summary-address eigrp instance-tag ip-prefix/length [distance | leak-map map-name]

手順の詳細

コマンドまたはアクション 目的

{ip | ipv6} summary-address eigrp instance-tag ip-prefix/length [distance | leak-map map-name]

例:

switch(config-if)# ip summary-address
eigrp Test1 192.0.2.0/8

サマリー集約アドレスを、IP プレフィックス/長さとして設定します。インスタンス タグおよびマップ名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

また、この集約アドレスのアドミニストレーティブ ディスタンスを設定することもできます。集約アドレスのデフォルト アドミニストレーティブ ディスタンスは 5 です。

(注)  

 
EIGRP がすでに実行されている場合を除き、プレフィックス/長さ形式をアドレス マスクの代わりに使用して IP アドレスを設定することを推奨します。EIGRPインスタンスが起動する前にアドレス マスク形式を使用すると、後でサマリー アドレスを削除または変更できなくなります。

この例は、EIGRP がネットワーク 192.0.2.0 をイーサネット 1/2 だけに集約するようにする方法を示しています。

switch# configure terminal
switch(config)# interface ethernet 1/2
switch(config-if) ip summary-address eigrp Test1 192.0.2.0/24

EIGRP へのルートの再配布

他のルーティング プロトコルから EIGRP にルートを再配布できます。

始める前に

EIGRP 機能がイネーブルにする必要があります(「EIGRP 機能のいネーブル化(Enabling the EIGRP Feature)」を参照)。

他のプロトコルから再配布されるルートには、メトリック(デフォルト メトリック設定オプションまたはルート マップによる)を設定する必要があります。

ルート マップを作成して、EIGRP に再配布されるルートのタイプを管理する必要があります。Route Policy Manager の設定を参照してください。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. router eigrp instance-tag
  3. address-family {ipv4 | ipv6} unicast
  4. redistribute {bgp as | {eigrp | isis | ospf | ospfv3 | rip} instance-tag | direct | static} route-map map-name
  5. default-metric bandwidth delay reliability loading mtu
  6. (任意) show {ip | ipv6} eigrp route-map statistics redistribute
  7. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

router eigrp instance-tag

例:

switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)#

インスタンス タグを設定して、新しい EIGRP プロセスを作成します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

AS 番号であると認められていない instance-tag を設定する場合は、autonomous-system コマンドを使用して AS 番号を明示的に設定する必要があります。そうしないと、この EIGRP インスタンスはシャットダウン状態のままになります。

ステップ 3

address-family {ipv4 | ipv6} unicast

例:

switch(config-router)# address-family ipv4
unicast
switch(config-router-af)#

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードを開始します。IPv4 の場合、このコマンドはオプションです。

ステップ 4

redistribute {bgp as | {eigrp | isis | ospf | ospfv3 | rip} instance-tag | direct | static} route-map map-name

例:

switch(config-router-af)# redistribute bgp 100
route-map BGPFilter

1 つのルーティング ドメインから EIGRP にルートを注入します。インスタンス タグおよびマップ名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

ステップ 5

default-metric bandwidth delay reliability loading mtu

例:

switch(config-router-af)# default-metric
500000 30 200 1 1500

ルート再配布で学習したルートに割り当てられるメトリックを設定します。デフォルト値は次のとおりです。

  • bandwidth:100000 Kbps

  • delay:100(10 マイクロ秒単位)

  • reliability:255

  • loading:1

  • MTU:1492

ステップ 6

(任意) show {ip | ipv6} eigrp route-map statistics redistribute

例:

switch(config-router-af)# show ip eigrp
route-map statistics redistribute bgp
(任意)

EIGRP ルート マップ統計に関する情報を表示します。

ステップ 7

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-router-af)# copy
running-config startup-config
(任意)

この設定変更を保存します。

次に、BGP を IPv4 向けの EIGRP に再配布する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)# redistribute bgp 100 route-map BGPFilter
switch(config-router)# default-metric 500000 30 200 1 1500
switch(config-router)# copy running-config startup-config

再配布されるルート数の制限

ルートの再配布では、多くのルートを EIGRP ルート テーブルに追加できます。外部プロトコルから受け取るルートの数の上限を設定できます。EIGRP では、再配布されるルートの上限を設定するために次のオプションが用意されています。

  • 固定制限:EIGRP は、構成された最大値まで再配布されたルートを受け入れます。デフォルトでは、EIGRP はデフォルトのしきい値である 75% を超えた場合。必要に応じて、最大再配布ルートのしきい値パーセンテージを構成できます。

  • 警告のみ:設定された最大値のしきい値パーセンテージを超えた場合に、警告メッセージをログに記録します。ただし、EIGRP は再配布されたルートを受け入れ続けます。

  • 取り消し:EIGRP が最大値に達したときにタイムアウト期間を開始します。タイムアウト期間の経過後、再配布されたルートの現在数が最大数よりも少ない場合、EIGRP はすべての再配布されたルートを要求します。再配布されたルートの現在数が最大数に達した場合、EIGRP はすべての再配布されたルートを取り消します。EIGRP が再配布されたルートをさらに受け入れられるように、この条件をクリアする必要があります。任意で、タイムアウト期間を設定できます。

  • 最大プレフィックス値を、予想される再配布ルートの 2 倍に設定することを推奨します。

  • ルート再配布は、8 個を超える redistribute コマンドをサポートしません。8 つのコマンドを構成した後、新しいルートはルーティング テーブルまたは動的ルーティング データベースに追加されません。


(注)  


このタスクを設定できるのは、IPv4 VRF アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードだけです。


始める前に

EIGRP 機能がイネーブルにする必要があります(「EIGRP 機能のいネーブル化(Enabling the EIGRP Feature)」を参照)。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. router eigrp instance-tag
  3. redistribute {bgp id | direct | eigrp id | isis id | ospf id | rip id | static} route-map map-name
  4. redistribute maximum-prefix max [threshold] [warning-only | withdraw [num-retries timeout]]
  5. (任意) show running-config eigrp
  6. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

router eigrp instance-tag

例:

switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)#

インスタンス タグを設定して、新しい EIGRP インスタンスを作成します。

ステップ 3

redistribute {bgp id | direct | eigrp id | isis id | ospf id | rip id | static} route-map map-name

例:

switch(config-router)# redistribute bgp route-map FilterExternalBGP

設定したルート マップ経由で、選択したプロトコルを EIGRP に再配布します。

ステップ 4

redistribute maximum-prefix max [threshold] [warning-only | withdraw [num-retries timeout]]

例:

switch(config-router)# redistribute maximum-prefix 1000 75 warning-only

EIGRP が配布するプレフィックスの最大数を指定します。有効な範囲は 1 ~ 65535 です。任意で次のオプションを指定します。

  • threshold :警告メッセージをトリガーする最大プレフィックス数のパーセンテージ。

  • warning-only :プレフィックスの最大数を超えた場合に警告メッセージを記録します。

  • withdraw :再配布されたすべてのルートを取り消します。任意で再配布されたルートを取得しようと試みます。num-retries の範囲は 1 ~ 12。timeout は 60 ~ 600 秒です。デフォルトは 300 秒です。 clear ip eigrp redistribution コマンドを使用し、 すると、すべてのルートを取り消すことができます。

(注)  

 

EIGRP トポロジでは、最大プレフィックス値を予想される再配布ルートの 2 倍に設定することをお勧めします。

ステップ 5

(任意) show running-config eigrp

例:

switch(config-router)# show running-config eigrp
(任意)

EIGRP の設定を表示します。

ステップ 6

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-router)# copy running-config startup-config
(任意)

この設定変更を保存します。

次に、EIGRP に再配布されるルートの数を制限する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)# redistribute bgp route-map FilterExternalBGP
switch(config-router)# redistribute maximum-prefix 1000 75

EIGRP でのロードバランスの設定

EIGRP でのロードバランスを設定できます。maximum-paths オプションを使用して、等コスト マルチパス(ECMP)のルート数を設定できます。「EIGRP でのロードバランスの設定」の項を参照してください。

始める前に

EIGRP 機能が有効にする必要があります(「EIGRP 機能のいネーブル化(Enabling the EIGRP Feature)」を参照)。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. router eigrp instance-tag
  3. address-family {ipv4 | ipv6} unicast
  4. maximum-paths num-paths
  5. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

router eigrp instance-tag

例:

switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)#

インスタンス タグを設定して、新しい EIGRP プロセスを作成します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

AS 番号であると認められていない instance-tag を設定する場合は、autonomous-system コマンドを使用して AS 番号を明示的に設定する必要があります。そうしないと、この EIGRP インスタンスはシャットダウン状態のままになります。

ステップ 3

address-family {ipv4 | ipv6} unicast

例:

switch(config-router)# address-family ipv4
unicast
switch(config-router-af)#

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードを開始します。IPv4 の場合、このコマンドはオプションです。

ステップ 4

maximum-paths num-paths

例:

switch(config-router-af)# maximum-paths 5

EIGRP がルート テーブルに受け入れる等コスト パスの数を設定します。指定できる範囲は 1 ~ 32 です。デフォルト値は 8 です。

ステップ 5

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-router-af)# copy running-config
startup-config
(任意)

この設定変更を保存します。

次に、6 つまでの等コストパスによる、EIGRP の等コスト ロードバランスを IPv4 上で設定する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)# maximum-paths 6
switch(config-router)# copy running-config startup-config

EIGRP のグレースフル リスタートの設定

EIGRP に対してグレースフル リスタートまたはノンストップ フォワーディングを設定できます。「グレースフル リスタートおよびハイ アベイラビリティ」を参照してください。


(注)  


デフォルトでは、グレースフル リスタートはイネーブルです。


始める前に

EIGRP 機能がイネーブルにする必要があります(「EIGRP 機能のいネーブル化(Enabling the EIGRP Feature)」を参照)。

NSF 認識ルータが動作中であり、ネットワークで完全に収束している場合にのみ、このルータが NSF 対応ルータのグレースフル リスタート動作を支援できます。

グレースフルリスタートに参加するネイバーデバイスは、NSF認識またはNSF対応である必要があります。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. router eigrp instance-tag
  3. address-family {ipv4 | ipv6} unicast
  4. graceful-restart
  5. timers nsf converge seconds
  6. timers nsf route-hold seconds
  7. timers nsf signal seconds
  8. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

router eigrp instance-tag

例:

switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)#

インスタンス タグを設定して、新しい EIGRP プロセスを作成します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

AS 番号であると認められていない instance-tag を設定する場合は、autonomous-system コマンドを使用して AS 番号を明示的に設定する必要があります。そうしないと、この EIGRP インスタンスはシャットダウン状態のままになります。

ステップ 3

address-family {ipv4 | ipv6} unicast

例:

switch(config-router)# address-family ipv4
unicast
switch(config-router-af)#

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードを開始します。IPv4 の場合、このコマンドはオプションです。

ステップ 4

graceful-restart

例:

switch(config-router-af)# graceful-restart

グレースフル リスタートをイネーブルにします。この機能は、デフォルトでイネーブルにされています。

ステップ 5

timers nsf converge seconds

例:

switch(config-router-af)# timers nsf converge
100

スイッチオーバー後にコンバージェンスするまでの制限時間を設定します。範囲は 60 ~ 180 秒です。デフォルトは 120 です。

ステップ 6

timers nsf route-hold seconds

例:

switch(config-router-af)# timers nsf
route-hold 200

グレースフル リスタート認識ピアから学習したルートのホールド タイムを設定します。範囲は 20 ~ 300 秒です。デフォルトは 240 です。

ステップ 7

timers nsf signal seconds

例:

switch(config-router-af)# timers nsf signal 15

グレースフル リスタートの信号を送信する時間制限を設定します。範囲は 10 ~ 30 秒です。デフォルトは 20 です。

ステップ 8

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-router-af)# copy running-config
startup-config
(任意)

この設定変更を保存します。

次に、デフォルト タイマー値を使用して IPv6 上で EIGRP のグレースフル リスタートを設定する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# router eigrp Test1
switch(config-router)# address-family ipv6 unicast
switch(config-router-af)# graceful-restart
switch(config-router-af)# copy running-config startup-config

hello パケット間のインターバルとホールド タイムの調整

Hello メッセージの間隔とホールド タイムを調整できます。

デフォルトでは、5 秒ごとに Hello メッセージが送信されます。ホールド タイムは Hello メッセージでアドバタイズされ、送信者が有効であると見なすまでの時間をネイバーに示します。デフォルトの保留時間は、hello 間隔の 3 倍(15 秒)です。

非常に輻輳した大規模なネットワークでは、デフォルトの保留時間では、全ルータがネイバーから hello パケットを受信するまでに十分な時間がない場合もあります。この場合は、ホールド タイムを増やすことを推奨します。ホールド タイムを変更するには、インターフェイス コンフィギュレーション モードでステップ 2 のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. {ip | ipv6} hello-interval eigrp instance-tag seconds
  2. {ip | ipv6} hold-time eigrp instance-tag seconds

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

{ip | ipv6} hello-interval eigrp instance-tag seconds

例:

switch(config-if)# ip hello-interval
eigrp Test1 30

EIGRP ルーティング処理の hello 間隔を設定します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。範囲は 1 ~ 65535 秒です。デフォルトは 5 分です。

ステップ 2

{ip | ipv6} hold-time eigrp instance-tag seconds

例:

switch(config-if)# ipv6 hold-time eigrp
Test1 30

EIGRP ルーティング処理のホールド タイムを設定します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。範囲は 1 ~ 65535 秒です。

タイマー設定を確認するには、show ip eigrp interface detail コマンドを使用します。

スプリット ホライズンの無効化

スプリット ホライズンを使用すると、ルータによって情報元インターフェイスからルート情報がアドバタイズされないようにできます。通常はスプリット ホライズンにより、特にリンクに障害がある場合に、複数のルーティング デバイス間での通信が最適化されます。

デフォルトでは、スプリット ホライズンはすべてのインターフェイスで有効になっています。

スプリット ホライズンを無効にするには、インターフェイス コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. no {ip | ipv6} split-horizon eigrp instance-tag

手順の詳細

コマンドまたはアクション 目的

no {ip | ipv6} split-horizon eigrp instance-tag

例:

switch(config-if)# no ip split horizon eigrp Test1

スプリット ホライズンを無効にします。

ワイド メトリックスの有効化

ワイド メトリックを有効化し、オプションとして RIB のスケール係数を設定するには、ルータ設定モードまたはアドレス ファミリ設定モードで次のコマンドを使用します。

手順の概要

  1. metrics version 64bit
  2. (任意) metrics rib-scale value

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

metrics version 64bit

例:

switch(config-router)# metrics version 64bit

64 ビット メトリック値を有効にします。

ステップ 2

(任意) metrics rib-scale value

例:

switch(config-router)#
(任意)

RIB で 64 ビットのメトリック値を 32 ビットに変換するために使用されるスケール係数を設定します。範囲は 1 ~ 255 です。デフォルト値は 128 です。

EIGRP の調整

オプション パラメータを設定し、ネットワークに合わせて EIGRP を調整できます。

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードでは、次のオプション パラメータを設定できます。

手順の概要

  1. default-information originate [always | route-map map-name]
  2. distance internal external
  3. metric max-hops hop-count
  4. metric weights tos k1 k2 k3 k4 k5 k6
  5. nsf await-redist-proto-convergence
  6. timers active-time {time-limit | disabled}
  7. (任意) {ip | ipv6} bandwidth eigrp instance-tag bandwidth
  8. {ip | ipv6} bandwidth-percent eigrp instance-tag percent
  9. [no] {ip | ipv6} delay eigrp instance-tag delay
  10. {ip | ipv6} distribute-list eigrp instance-tag {prefix-list name | route-map map-name} {in | out}
  11. [no] {ip | ipv6} next-hop-self eigrp instance-tag
  12. {ip | ipv6} offset-list eigrp instance-tag {prefix-list name | route-map map-name} {in | out} offset
  13. {ip | ipv6} passive-interface eigrp instance-tag

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

default-information originate [always | route-map map-name]

例:

switch(config-router-af)#
default-information originate always

プレフィックス 0.0.0.0/0 を持つデフォルト ルートを発信するか、受け入れます。ルート マップが提供されると、ルート マップが true 状態となっている場合にのみデフォルト ルートが発信されます。ルート マップ名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

ステップ 2

distance internal external

例:

switch(config-router-af)# distance
25 100

この EIGRP プロセスのアドミニストレーティブ ディスタンスを設定します。範囲は 1 ~ 255 です。内部 の値で、同じ自律システム内で学習したルートのディスタンスが設定されます(デフォルト値は 90 です)。外部 の値で、外部自律システムから学習したルートのディスタンスが設定されます(デフォルト値は 170 です)。

ステップ 3

metric max-hops hop-count

例:

switch(config-router-af)# metric max-hops
70

アドバタイズされるルートに許容される最大ホップ数を設定します。ホップ数がこの最大値を超えるルートは、到達不能としてアドバタイズされます。範囲は 1 ~ 255 です。デフォルトは 100 です。

ステップ 4

metric weights tos k1 k2 k3 k4 k5 k6

例:

switch(config-router-af)# metric weights
0 1 3 2 1 0

EIGRP メトリックまたは K 値を調整します。EIGRP は次の式を使用して、ネットワークへの合計メトリックを決定します。

メトリック = [k1 × 帯域幅 +(k2 × 帯域幅)/(256 –負荷)+ k3 × 遅延 + k6 × 拡張属性] x [k5/(信頼性 + k4)]

デフォルト値と指定できる範囲は、次のとおりです。

  • TOS:0。指定できる範囲は 0 ~ 8 です。

  • k1:1。有効な範囲は 0 ~ 255 です。

  • k2:0。有効な範囲は 0 ~ 255 です。

  • k3:1。有効な範囲は 0 ~ 255 です。

  • k4:0。有効な範囲は 0 ~ 255 です。

  • k5:0。有効な範囲は 0 ~ 255 です。

  • k6:0。有効な範囲は 0 ~ 255 です。

ステップ 5

nsf await-redist-proto-convergence

例:

switch(config-router-af)# nsf
await-redist-proto-convergence

ノンストップフォワーディング(NSF)中に、EIGRPがルーティング情報ベース(RIB)に独自のルートをインストールする前に、再配布されたプロトコルのコンバージェンスを待機します。

このコマンドは、NSFが進行中で、BGPが収束してルートをインストールするまでEIGRPが待機するスイッチオーバーシナリオで役立ちます。これにより、BGPが収束し、EIGRPが宛先への代替パスを見つける前に、EIGRPが一時的なルートをインストールして転送情報ベース(FIB)エントリを変更することを防止できます。

(注)  

 

EIGRPとBGPの間で相互再配布が設定されている場合(PE-CE環境など)にこのコマンドを使用すると、プロバイダーエッジ(PE)ルータがBGPまでRIBにEIGRPルートをインストールしないため、トラフィック損失が発生する可能性があります。ルートを使用できます。この動作により、カスタマーエッジ(CE)ルータがEIGRPから学習し、ピアPEルータにアドバタイズするルートが遅延します。

ステップ 6

timers active-time {time-limit | disabled}

例:

switch(config-router-af)# timers
active-time 200

(照会の送信後に)ルートがアクティブ(SIA)状態のままとなっていることを宣言するまでに、ルータが待機する時間を分単位で設定します。有効な範囲は 1 ~ 65535 です。デフォルトは 3 です。

ステップ 7

(任意) {ip | ipv6} bandwidth eigrp instance-tag bandwidth

例:

switch(config-if)# ip bandwidth eigrp
Test1 30000
(任意)

インターフェイス上の EIGRP の帯域幅メトリックを設定します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。帯域幅の範囲は、1 ~ 2,560,000,000 kbps です。

ステップ 8

{ip | ipv6} bandwidth-percent eigrp instance-tag percent

例:

switch(config-if)# ip bandwidth-percent
eigrp Test1 30

EIGRP がインターフェイス上で使用する可能性のある帯域幅の割合を設定します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。割合の範囲は 0 ~ 100 です。デフォルトは 50 です。

ステップ 9

[no] {ip | ipv6} delay eigrp instance-tag delay

例:

switch(config-if)# ip delay eigrp
Test1 100

インターフェイス上の EIGRP の遅延メトリックを設定します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。遅延の範囲は、1 ~ 16777215(10 マイクロ秒単位)です。

ステップ 10

{ip | ipv6} distribute-list eigrp instance-tag {prefix-list name | route-map map-name} {in | out}

例:

switch(config-if)# ip distribute-list
eigrp Test1 route-map EigrpTest in

このインターフェイス上の EIGRP のルータ フィルタリング ポリシーを設定します。インスタンス タグ、プレフィックス リスト名、およびルート -マップ名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

ステップ 11

[no] {ip | ipv6} next-hop-self eigrp instance-tag

例:

switch(config-if)# ipv6 next-hop-self
eigrp Test1

このインターフェイスのアドレスではなく、受信したネクストホップ アドレスを使用するよう、EIGRP を設定します。デフォルトでは、このインターフェイスの IP アドレスをネクストホップ アドレスに使用します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

ステップ 12

{ip | ipv6} offset-list eigrp instance-tag {prefix-list name | route-map map-name} {in | out} offset

例:

switch(config-if)# ip offset-list eigrp
Test1 prefix-list EigrpList in

EIGRP が学習したルートに、着信および発信メトリックへのオフセットを追加します。インスタンス タグ、プレフィックス リスト名、およびルート -マップ名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

ステップ 13

{ip | ipv6} passive-interface eigrp instance-tag

例:

switch(config-if)# ip passive-interface
eigrp Test1

EIGRP hello を抑制します。これにより、EIGRP インターフェイス上でネイバーがルーティング アップデートを形成および送信することを防ぎます。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

EIGRP の仮想化の設定

複数の VRF を作成して、各 VRF で同じまたは複数の EIGRP プロセスを使用することもできます。VRF にはインターフェイスを割り当てます。


(注)  


インターフェイスの VRF を設定した後に、インターフェイスの他のすべてのパラメータを設定します。インターフェイスの VRF を設定すると、そのインターフェイスの他の設定がすべて削除されます。


始める前に

EIGRP 機能が有効にする必要があります(「EIGRP 機能のいネーブル化(Enabling the EIGRP Feature)」を参照)。

VRF を作成します。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. vrf context vrf-name
  3. router eigrp instance-tag
  4. interface ethernet slot//port
  5. vrf member vrf-name
  6. {ip | ipv6} router eigrp instance-tag
  7. copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

ステップ 2

vrf context vrf-name

例:

switch(config)# vrf context
RemoteOfficeVRF
switch(config-vrf)#

新しい VRF を作成し、VRF 設定モードを開始します。VRF 名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

ステップ 3

router eigrp instance-tag

例:

switch(config-vrf)# router eigrp Test1
switch(config-router)#

インスタンス タグを設定して、新しい EIGRP プロセスを作成します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

AS 番号であると認められていない instance-tag を設定する場合は、autonomous-system コマンドを使用して AS 番号を明示的に設定する必要があります。そうしないと、この EIGRP インスタンスはシャットダウン状態のままになります。

ステップ 4

interface ethernet slot//port

例:

switch(config)# interface ethernet 1/2
switch(config-if)#

インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。? を使用すると、スロットおよびポートの範囲を検索できます。

ステップ 5

vrf member vrf-name

例:

switch(config-if)# vrf member
RemoteOfficeVRF

このインターフェイスを VRF に追加します。VRF 名には最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字は区別されます。

ステップ 6

{ip | ipv6} router eigrp instance-tag

例:

switch(config-if)# ip router eigrp Test1

このインターフェイスを EIGRP プロセスに追加します。インスタンス タグには最大 20 文字の英数字を使用できます。大文字と小文字を区別します。

ステップ 7

copy running-config startup-config

例:

switch(config-if)# copy running-config
startup-config

この設定変更を保存します。

次に、VRF を作成して、その VRF にインターフェイスを追加する例を示します。

switch# configure terminal
switch(config)# vrf context NewVRF
switch(config-vrf)# router eigrp Test1
switch(config-router)# interface ethernet 1/2
switch(config-if)# ip router eigrp Test1
switch(config-if)# vrf member NewVRF
switch(config-if)# copy running-config startup-config

EIGRP の設定の確認

EIGRP の設定情報を表示するには、次のいずれかの作業を行います。

コマンド 目的
show {ip | ipv6} eigrp [instance-tag] 設定した EIGRP プロセスの要約を表示します。
show {ip | ipv6} eigrp [instance-tag] interfaces [type number] [brief] [detail] 設定されているすべての EIGRP インターフェイスに関する情報を表示します。
show {ip | ipv6} eigrp instance-tag neighbors [type number] [detail] すべての EIGRP ネイバーに関する情報を表示します。EIGRP ネイバーの設定を確認するには、このコマンドを使用します。
show {ip | ipv6} eigrp [instance-tag] route [ip-prefix/length] [active] [all-links] [detail-links] [pending] [summary] [zero-successors] [vrf vrf-name] すべての EIGRP ルートに関する情報を表示します。
show {ip | ipv6} eigrp [instance-tag] topology [ip-prefix/length] [active] [all-links] [detail-links] [pending] [summary] [zero-successors] [vrf vrf-name] EIGRP トポロジ テーブルに関する情報を表示します。
show running-configuration eigrp 現在実行中の EIGRP コンフィギュレーションを表示します。

EIGRP のモニタリング

EIGRP 統計情報を表示するには、次のコマンドを使用します。

コマンド 目的
show {ip | ipv6} eigrp [instance-tag] accounting [vrf vrf-name]

EIGRP の課金統計情報を表示します。

show {ip | ipv6} eigrp [instance-tag] route-map statistics redistribute

EIGRP の再配布統計情報を表示します。

show {ip | ipv6} eigrp [instance-tag] traffic [vrf vrf-name]

EIGRP のトラフィック統計情報を表示します。

EIGRP の設定例

次に、EIGRP を設定する例を示します。

feature eigrp
interface ethernet 1/2
 ip address 192.0.2.55/24
 ip router eigrp Test1
  no shutdown
router eigrp Test1
  router-id 192.0.2.1

次に、distribute-list でルート マップを使用する例を示します。 EIGRP ピアから動的に受信(またはアドバタイズ)されたルートをフィルタリングするコマンド。例では、EIGRP の外部プロトコル メトリック ルートを、有効な偏差の 100、BGP のソース プロトコル、および自律システム 45000 と照合するための、ルート マップの設定をします。2 つの match 句が true の場合、対象のルーティング プロトコルのタグ値が 5 に設定されます。ルート マップを使用して、着信パケットを EIGRP プロセスへ配布します。

switch(config)# route-map metric-range
switch(config-route-map)# match metric external 500 +- 100
switch(config-route-map)# match source-protocol bgp 45000
switch(config-route-map)# set tag 5
switch(config-route-map)# exit
switch(config)# router eigrp 1
switch(config-router)# exit
switch(config)# interface ethernet 1/2
switch(config-if)# ip address 172.16.0.0
switch(config-if)# ip router eigrp 1
switch(config-if)# ip distribute-list eigrp 1 route-map metric-range in

次の例は、EIGRP トポロジ テーブルに許可される前に、ルート マップでフィルタリングされるルーティング テーブルから再配布されるルートが受け入れられるよう、redistribute コマンドでルート マップを使用する方法を示します。この例は、EIGRP ルートを、110、200、または 700 ~ 800 の範囲のメトリックと照合するために、ルート マップを設定する方法を示しています。この match 句が true の場合、対象のルーティング プロトコルのタグ値が 10 に設定されます。ルート マップを使用して、EIGRP パケットを再配布します。

switch(config)# route-map metric-eigrp
switch(config-route-map)# match metric 110 200 750 +- 50
switch(config-route-map)# set tag 10
switch(config-route-map)# exit
switch(config)# router eigrp 1
switch(config-router)# redistribute eigrp route-map metric-eigrp
switch(config-router)# exit
switch(config)# interface ethernet 1/2
switch(config-if)# ip address 172.16.0.0
switch(config-if)# ip router eigrp 1

その他の参考資料

EIGRP の実装に関する詳細情報については、次のページを参照してください。