ARP の設定
アドレス解決はネットワーク アドレスをメディア アクセス コントロール(MAC)アドレスにマッピングするプロセスです。通常は、ARP プロトコルを使用してシステムにより動的に実行されますが、スタティック ARP エントリの設定によって実行することもできます。このプロセスを実現するのに使用されるのが、アドレス解決プロトコル(ARP)です。
ARP は、IP アドレスをメディアや MAC アドレスに関連付けるために使用されます。ARP は IP アドレスを入力とし、関連するメディアのアドレスを決定します。メディアまたは MAC アドレスが決定すると、IP アドレスまたはメディア アドレスの関連付けは、すぐ取得できるように ARP のキャッシュに保管されます。その後、IP データグラムがリンク層フレームにカプセル化され、ネットワークを通じて送信されます。
ARP の詳細については、次を参照してください。 ARP の設定に関する情報
ARP およびプロキシ ARP
Cisco IOS XR ソフトウェアでは、アドレス解決プロトコル(ARP)とプロキシ ARP という 2 つの形式のアドレス解決がサポートされています。これらのプロトコルは、それぞれ RFC 826 と RFC 1027 で定義されています。Cisco IOS XR ソフトウェアでは、ローカル プロキシ ARP という ARP の形式もサポートされています。
プロキシ ARP とローカル プロキシ ARP の詳細については、次を参照してください。 プロキシ ARP とローカル プロキシ ARP
制約事項
ARP の設定には、次の制約事項が適用されます。
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逆アドレス解決プロトコル(RARP)はサポートされません。
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転送情報ベース(FIB)で ARP パケットのレートを制限する ARP スロットリングはサポートされていません。
ARP キャッシュ エントリ
ARP は、ネットワーク アドレス(IP アドレスなど)とイーサネット ハードウェア アドレスの間の通信を確立します。各通信の記録は、キャッシュ内に事前定義された期間だけ保持された後、廃棄されます。
また、明示的に削除されるまで存続するスタティック(永続)エントリを ARP キャッシュに追加することもできます。
スタティック ARP キャッシュ エントリの定義
ARP をはじめとするアドレス解決プロトコルを使用すると、IP アドレスとメディア アドレスとをダイナミックにマッピングできます。大部分のホストはダイナミック アドレス解決をサポートしているため、通常はスタティック ARP エントリを指定する必要はありません。スタティック ARP キャッシュ エントリを定義する必要がある場合は、グローバルに定義できます。このタスクを実行すると、ARP キャッシュにエントリが永続的にインストールされます。Cisco IOS XR ソフトウェアはこのエントリを使用して、32 ビット IP アドレスを 48 ビットのハードウェア アドレスに変換します。
また、ARP キャッシュにエイリアス エントリを作成することにより、特定の IP アドレスによって識別されたかのように、ARP 要求に応答することもできます。
設定例
キャッシュ エントリを作成して、IP アドレス 203.0.1.2 と MAC アドレス 0010.9400.000c の間に接続を確立します。さらに、このキャッシュ エントリをエイリアス エントリとして作成すると、エントリに関連付けられているインターフェイスは、エントリ内のデータ リンク層アドレスを使って、このネットワーク層アドレスに対する ARP 要求パケットに応答します。
Router#config
Router(config)#arp 203.0.1.2 0010.9400.000c arPA
Router(config)#commit
実行コンフィギュレーション
Router#show run arp 203.0.1.2 0010.9400.000c arpA
arp vrf default 203.0.1.2 0010.9400.000c ARPA
確認
[State] が [Static] になっているかをチェックして、適切に機能していることを確認します。
Router#show arp location 0/RP0/CPU0
Address Age Hardware Addr State Type Interface
203.0.1.1 - ea28.5f0b.8024 Interface ARPA HundredGigE0/9/0/0
203.0.1.2 - 0010.9400.000c Static ARPA HundredGigE0/9/0/0
プロキシ ARP とローカル プロキシ ARP
プロキシ ARP がディセーブルされると、ネットワーキングデバイスは、次のいずれかの条件が満たされる場合に限り、インターフェイスに受信された ARP 要求に応答します。
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ARP 要求のターゲット IP アドレスは、要求が受信されたインターフェイス IP アドレスと同じです。
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ARP 要求のターゲット IP アドレスには、静的に設定された ARP エイリアスがあります。
プロキシ ARP がイネーブルになると、ネットワーキング デバイスは、次の条件すべてを満たす ARP 要求にも応答します。
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ターゲット IP アドレスが、要求を受信した同一の物理ネットワーク(LAN)上にない。
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ネットワーキング デバイスに、ターゲット IP アドレスまでのルートが 1 つ以上存在する。
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ターゲット IP アドレスまでのルートすべてが、要求を受信したインターフェイスとは別のインターフェイスを通過する。
プロキシ ARP がイネーブルになっている場合、ネットワーキング デバイスは、次の条件をすべて満たす ARP 要求に応答します。
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ARP 要求のターゲット IP アドレス、ARP ソースの IP アドレス、および ARP 要求を受信するインターフェイスの IP アドレスが、同じレイヤ 3 ネットワーク上にある。
-
ターゲット IP アドレスのネクストホップが、要求を受信するインターフェイスと同じインターフェイスを使用する。
通常、ローカル プロキシ ARP は、同じレイヤ 3 ネットワークで MAC アドレスを IP アドレスに解決するために使用されます。ローカル プロキシ ARP は、ARP でサポートされるあらゆるタイプのインターフェイスに加えて、アンナンバード インターフェイスに対応しています。
プロキシ ARP のイネーブル化
Cisco IOS XR ソフトウェア は(RFC 1027 で定義されている)プロキシ ARP を使用して、ルーティングに必要な情報を持たないホストでも他のネットワークやサブネット上のホストのメディア アドレスを判別できるようにします。たとえば、ARP 要求の送信元と異なるインターフェイス上のホストに宛てた ARP 要求をルータが受信した場合、そのルータに他のインターフェイスを経由してそのホストに至るすべてのルートが格納されていれば、ルータは自身のローカル データ リンク アドレスを示すプロキシ ARP 応答パケットを生成します。ARP 要求を送信したホストはルータにパケットを送信し、ルータはパケットを目的のホストに転送します。プロキシ ARP はデフォルトではディセーブルになっています。このタスクでは、ディセーブルになっているプロキシ ARP をイネーブルにする方法について説明します。
設定例
プロキシ ARP を HundredGigE インターフェイス 0/9/0/0 でイネーブルにします。
Router#configure
Router(config)#interface HundredGigE0/9/0/0
Router(config-if)#proxy-arp
Router(config-if)#commit
実行コンフィギュレーション
Router# show running-config interface HundredGigE0/9/0/0
interface HundredGigE0/9/0/0
mtu 4000
ipv4 address 1.0.0.1 255.255.255.0
proxy-arp
!
!
確認
プロキシ ARP が設定され、イネーブルになっていることを確認します。
Router#show arp idb interface HundredGigE0/9/0/0 location 0/RP0/CPU0
interface HundredGigE0/9/0/0 (0x08000038):
IPv4 address 1.0.0.1, Vrf ID 0x60000000
VRF Name default
Dynamic learning: Enable
Dynamic entry timeout: 14400 secs
Purge delay: off
IPv4 caps added (state up)
MPLS caps not added
Interface not virtual, not client fwd ref,
Proxy arp is configured, is enabled
Local Proxy arp not configured
Packet IO layer is NetIO
Srg Role : DEFAULT
Idb Flag : 262332
IDB is Complete
ローカル プロキシ ARP のイネーブル化
ローカル プロキシ ARP は、レイヤ 2 で分離されたプライベート VLAN など、同じレイヤ 3 ネットワークで MAC アドレスを IP アドレスに解決するために使用されます。ローカル プロキシ ARP は、ARP でサポートされるあらゆるタイプのインターフェイスに加えて、アンナンバード インターフェイスに対応しています。
設定例
ローカル プロキシ ARP を HundredGigE インターフェイス 0/9/0/0 でイネーブルにします。
Router#configure
Router(config)#interface HundredGigE0/9/0/0
Router(config-if)#local-proxy-arp
Router(config-if)#commit
実行コンフィギュレーション
Router#show running-config interface HundredGigE0/9/0/1
interface HundredGigE0/9/0/0
ipv4 address 1.0.0.1 255.255.255.0
local-proxy-arp
!
確認
ローカル プロキシ ARP が設定されていることを確認します。
Router#show arp idb interface HundredGigE0/9/0/0 location 0/RP0/CPU0
HundredGigE0/9/0/1 (0x08000038):
IPv4 address 1.0.0.1, Vrf ID 0x60000000
VRF Name default
Dynamic learning: Enable
Dynamic entry timeout: 14400 secs
Purge delay: off
IPv4 caps added (state up)
MPLS caps not added
Interface not virtual, not client fwd ref,
Proxy arp not configured, not enabled
Local Proxy arp is configured
Packet IO layer is NetIO
Srg Role : DEFAULT
Idb Flag : 264332
IDB is Complete
関連コマンド
-
show arp idb
ローカル ARP エントリの学習の設定
インターフェイスまたはサブインターフェイスを設定して、ローカル サブネットから ARP エントリのみを学習することができます。
インターフェイス上にローカル ARP 学習を設定するには、次の手順を実行します。
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インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。
Router(config)# interface TenGigE 0/11/0/0
-
インターフェイスの IPv4/IPv6 アドレスを設定します。
Router(config-if)# ipv4 address 12.1.3.4 255.255.255.0
-
インターフェイス上にローカル ARP インターフェイスの学習を設定します。
Router(config-if)# arp learning local
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インターフェイスを有効にし、設定をコミットします。
Router(config-if)# no shut Router(config-if)# commit RP/0/0/CPU0:Dec 12 13:41:16.580 : ifmgr[397]: %PKT_INFRA-LINK-3-UPDOWN : interface TenGigE 0/11/0/0, changed state to Down RP/0/0/CPU0:Dec 12 13:41:16.683 : ifmgr[397]: %PKT_INFRA-LINK-3-UPDOWN : interface TenGigE 0/11/0/0 changed state to Up
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設定を確認します。
Router(config-if)# show running-configuration .. Building configuration... !! IOS XR Configuration 0.0.0 !! Last configuration change at Mon Dec 12 13:41:16 2016 !interface TenGigE 0/11/0/0 ipv4 address 12.1.3.4 255.255.255.0 arp learning local !
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ローカル ARP 学習がインターフェイスに設定したとおりに動作していることを確認します。
Router(config-if)# do show arp idb TenGigE 0/11/0/0 location 0/RP0/CPU0 Thu Dec 15 10:00:11.733 IST TenGigE 0/11/0/0 (0x00000040): IPv4 address 12.1.3.4, Vrf ID 0x60000000 VRF Name default Dynamic learning: Local Dynamic entry timeout: 14400 secs Purge delay: off IPv4 caps added (state up) MPLS caps not added Interface not virtual, not client fwd ref, Proxy arp not configured, not enabled Local Proxy arp not configured Packet IO layer is NetIO Srg Role : DEFAULT Idb Flag : 2146444 IDB is Complete
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(任意)インターフェイス上で ARP トラフィックをモニタできます。
Router(config-if)# do show arp idb TenGigE 0/11/0/0 location 0/RP0/CPU0 Thu Dec 15 10:13:28.964 IST ARP statistics: Recv: 0 requests, 0 replies Sent: 0 requests, 1 replies (0 proxy, 0 local proxy, 1 gratuitous) Subscriber Interface: 0 requests recv, 0 replies sent, 0 gratuitous replies sent Resolve requests rcvd: 0 Resolve requests dropped: 0 Errors: 0 out of memory, 0 no buffers, 0 out of sunbet ARP cache: Total ARP entries in cache: 1 Dynamic: 0, Interface: 1, Standby: 0 Alias: 0, Static: 0, DHCP: 0 IP Packet drop count for GigabitEthernet0_0_0_1: 0