IPv6 の概要
IPv6 を使用する主な目的は、ユーザ数および一意なグローバル IP アドレスを必要とするアプリケーションの急激な増加に対応できるように、インターネット グローバル アドレス スペースを拡張することです。IPv4 は 32 ビット アドレスを使用して、約 40 億の使用可能アドレスを提供します。これらのアドレスの大部分は政府機関や大規模な組織に割り当てられていて、使用可能な IP アドレス数が急速に減少しています。IPv6 は 128 ビットの送信元および宛先アドレスを使用しているため、グローバルに一意な IP アドレスを IPv4 よりもはるかに多く提供できます。
IPv6 のアーキテクチャを使用すると、既存の IPv4 ユーザは IPv6 に簡単に移行することができ、エンドツーエンドのセキュリティ、QoS(Quality Of Service)、グローバルに一意なアドレスなどのサービスを利用できます。IPv6 アドレス スペースは柔軟であるため、プライベート アドレスの必要性が減少し、ネットワーク エッジ上の境界ルータで Network Address Translation(NAT; ネットワーク アドレス変換)処理を使用する必要がなくなります。IPv6 では、より新しいユニキャスト方式が採用されています。IP アドレスに 16 進値が導入され、デリミタとしてピリオド(.)でなくコロン(:)が使用されます。
IPv6 には、IPv4 と比べて次の利点もあります。
• アドレスの管理および委任が容易
• ステートレス自動設定 (Dynamic Host Configuration Protocol [DHCP]と似ているが、指定された DHCP アプリケーションまたはサーバが不要)によるアドレス自動設定が容易
• IPSec(暗号化セキュリティ)内蔵
• モバイル デバイス向けに最適化されたルーティング
• Duplicate Address Detection(DAD)機能
シスコシステムズの IPv6 の実装方法については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com//warp/public/732/Tech/ipv6/
ここでは、スイッチへの IPv6 の実装について説明します。内容は次のとおりです。
• 「IPv6 アドレス」
• 「サポート対象の IPv6 ユニキャスト ルーティング機能」
• 「SDM テンプレート」
IPv6 アドレス
IPv6 はユニキャスト(1 対 1)、マルチキャスト(1 対多)、およびエニキャスト(1 対最近接)の 3 つのアドレス タイプをサポートします。マルチキャスト アドレスは、ブロードキャスト アドレスの代わりに使用されます。スイッチがサポートするのは、IPv6 ユニキャスト アドレスのみです。このリリースでは、スイッチはサイトローカルなユニキャスト アドレス、エニキャスト アドレス、またはマルチキャスト アドレスをサポートしません。
IPv6 の 128 ビット アドレスは、コロンで区切られた一連の 8 つの 16 進フィールド(x:x:x:x:x:x:x:x の形式)で表されます。次に、IPv6 アドレスの例を示します。
2031:0000:130F:0000:0000:09C0:080F:130B
実装を容易にするために、各フィールドの先行ゼロは省略可能です。上記アドレスは、先行ゼロを省略した次のアドレスと同じです。
2031:0:130F:0:0:9C0:80F:130B
2 つのコロン(::)を使用して、ゼロが連続する 16 進フィールドを表すことができます。ただし、この短縮形を使用できるのは、各アドレス内で 1 回のみです。
2031:0:130F::09C0:080F:130B
IPv6 アドレス フォーマット、アドレス タイプ、および IPv6 パケット ヘッダーの詳細については、次の URL にある『Cisco IOS IPv6 Configuration Library』の「Implementing Addressing and Basic Connectivity」を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/sw/iosswrel/ps1839/products_feature_guide09186a00807fcf4b.html
「Implementing Addressing and Basic Connectivity」の章では、次のセクションの内容は Catalyst 2960 スイッチに適用されます。
• 「IPv6 Address Formats」
• 「IPv6 Address Output Display」
• 「Simplified IPv6 Packet Header」
128 ビット幅のユニキャスト アドレス
スイッチは集約可能なグローバル ユニキャスト アドレスおよびリンクに対してローカルなユニキャスト アドレスをサポートします(RFC 2373)。サイトに対してローカルなユニキャスト アドレスはサポートされていません。
• 集約可能なグローバル ユニキャスト アドレスは、集約可能グローバル ユニキャスト プレフィクスの付いた IPv6 アドレスです。このアドレス構造を使用すると、ルーティング プレフィクスを厳格に集約することができ、グローバル ルーティング テーブル内のルーティング テーブル エントリ数が制限されます。これらのアドレスは、組織を経由して最終的にインターネット サービス プロバイダーに至る集約リンク上で使用されます。
これらのアドレスはグローバル ルーティング プレフィクス、サブネット ID、およびインターフェイス ID によって定義されます。現在のグローバル ユニキャスト アドレス割り当てには、バイナリ値 001(2000::/3)で開始するアドレス範囲が使用されます。プレフィクスが 2000::/3(001)~ E000::/3(111)のアドレスには、Extended Universal Identifier(EUI)64 フォーマットの 64 ビット インターフェイス ID を設定する必要があります。
• リンクに対してローカルなユニキャスト アドレスをすべてのインターフェイスに自動的に設定するには、修飾 EUI フォーマット内で、リンクに対してローカルなプレフィクス FE80::/10(1111 1110 10)およびインターフェイスID を使用します。近接ディスカバリ プロトコルおよびステートレス自動設定プロセスでは、リンクに対してローカルなアドレスが使用されます。ローカル リンク上のノードは、リンクに対してローカルなアドレスを使用します。通信する場合に、グローバルに一意なアドレスは不要です。IPv6 ルータは、リンクに対してローカルな送信元または宛先アドレスを持つパケットをその他のリンクに転送しません。
次の URL にある『 Cisco IOS IPv6 Configuration Library 』の「Implementing Addressing and Basic Connectivity for IPv6」の章の、「IPv6 Unicast Addresses」を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/sw/iosswrel/ps1839/products_feature_guide09186a00807fcf4b.html
各 IPv6 ホスト インターフェイスは、ハードウェア内で最大 3 つのアドレスをサポートできます(集約可能なグローバル ユニキャスト アドレスを 1 つ、リンクに対してローカルなユニキャスト アドレスを 1 つ、およびプライバシ アドレスをゼロ個以上)。
IPv6 用 DNS
IPv6 には、Domain Name System(DNS; ドメイン ネーム システム)の名前/アドレスおよびアドレス/名前の検索プロセスをサポートする新しい DNS レコード タイプが導入されています。新しい DNS AAAA リソース レコード タイプは IPv6 アドレスをサポートし、IPv4 の A アドレス レコードと同等です。スイッチは IPv4 および IPv6 の DNS 解決をサポートします。
ICMPv6
IPv6 の Internet Control Message Protocol(ICMP; インターネット制御メッセージ プロトコル)(RFC 2463)機能は、IPv4 と同じです。ICMP は ICMP 宛先到達不能メッセージなどのエラー メッセージを生成して、処理中に発生したエラーや、その他の診断機能を報告します。IPv6 では、近接ディスカバリ プロトコルおよびパス MTU ディスカバリに ICMP パケットも使用されます。基本的な IPv6 パケット ヘッダーの Next Header フィールド値が 58 の場合は、IPv6 ICMP パケットであることを意味します。
近接ディスカバリ
スイッチは、IPv6 対応の Neighbor Discovery Protocol(NDP)(RFC 2461、ICMPv6 の最上部で稼動するプロトコル)、および NDP をサポートしない IPv6 ステーション対応の Static Neighbor Discovery もサポートします。IPv6 NDP は ICMP メッセージおよび送信請求ノード マルチキャスト アドレスを使用して、同じネットワーク(ローカル リンク)上のネイバのリンクレイヤ アドレスを判別し、ネイバに到達できるかどうかを確認し、近接ルータを追跡します。
ICMP パケット ヘッダーの Type フィールド値が 135 の場合は、ネイバ送信請求メッセージであることを意味します。ノードが同じローカル リンク上の別のノードのリンクレイヤ アドレスを判別する必要がある場合は、ローカル リンク上でこれらのメッセージが送信されます。ネイバ送信請求メッセージを受信した宛先ノードは、ICMP パケット ヘッダーの Type フィールド値が 136 のネイバ アドバタイズメント メッセージを送信して、応答します。
ICMP パケット ヘッダーの Type フィールド値が 137 の場合は、IPv6 ネイバ リダイレクト メッセージであることを意味します。スイッチは、マスク長が 64 未満のルートに対して ICMPv6 リダイレクト(RFC 2463)をサポートしています。マスク長が 64 を超えるホスト ルートまたは集約ルートでは、ICMP リダイレクトがサポートされません。宛先へのパス上にさらに適した先頭ホップ ノードが存在することをホストに通知する場合、ルータはネイバ リダイレクト メッセージを送信します。ルータがネイバ リダイレクト メッセージを受信しても、ルーティング テーブルは更新されず、ホストはネイバ リダイレクト メッセージを送信しません。
近接ディスカバリ スロットリングにより、IPv6 パケットをルーティングするためにネクスト ホップ転送情報を取得するプロセス中に、スイッチ CPU に不必要な負荷がかかりません。IPv6 パケットのネクストホップが CPU によってアクティブに解決されている同じネイバである場合、そのようなパケットが追加されると、スイッチはハードウェアで廃棄を実行します。この廃棄を実行することで、CPU に余分な負荷がかからないようになり、IPv6 ルーテッド環境においてスイッチ CPU を効率よく利用できるようになります。
IPv6 のステートレス自動設定および重複アドレス検出
IPv6 は 2 つのタイプの自動設定をサポートします。
• ステートレス自動設定(RFC 2462):ホストはリンクに対してローカルな独自アドレスを自動的に設定します。起動元ノードはルータに送信請求を送信して、インターフェイス設定をアドバタイズするようルータに要求します。
• ステートフル自動設定:DHCP バージョン 6 を使用します。
スイッチではステートレス自動設定がサポートされているため、ホストやモバイル IP アドレスの管理など、リンク、サブネット、およびサイト アドレス指定の変更を管理することができます。
IPv6 ノードのすべてのインターフェイスには、インターフェイス ID(ルータの MAC アドレス)およびリンクに対してローカルなプレフィクス FE80::/10に基づいて自動設定された、リンクに対してローカルなアドレスが必要です。リンクに対してローカルなアドレスを使用すると、ノードとリンク上のその他のノードとの通信が可能になり、ノードをさらに設定することができます。手動設定を行ったり、DHCP サーバなどのサーバを利用したりしなくても、ノードをネットワークに接続して、グローバルな IPv6 アドレスを自動的に生成することができます。IPv6 の場合、リンク上のルータはルータ アドバタイズメント メッセージを使用して、グローバル プレフィクス、およびリンクのデフォルト ルータとして動作するための機能をアドバタイズします。リンク上のノードがグローバル IPv6 アドレスの自動設定できるようにするには、ルータ アドバタイズメント メッセージ内のプレフィクス(64 ビット)にインターフェイス ID(64 ビット)を付加します。
ノードによって設定された 128 ビット IPv6 アドレスには、リンク上で一意であることを確認するための重複アドレス検出(RFC 2462)が実行されます。アドバタイズされたプレフィクスがグローバルに一意である場合、ノードによって設定された IPv6 アドレスはグローバルに一意であることが保証されます。システムが起動すると、ホストから、ICMP パケット ヘッダーの Type フィールド値が 133 であるルータ送信請求メッセージが送信されます。これにより、スケジューリングされた次のルータ アドバタイズメント メッセージを待機しなくても、ホストを即座に自動設定することができます。IPv6 重複アドレス検出は、ユニキャスト アドレスがインターフェイスに割り当てられる前に実行されます。自動生成された、サイトに対してローカルな IPv6 アドレスは、スイッチではサポートされません。
IPv6 アプリケーション
スイッチは、次のアプリケーションについて IPv6 をサポートします。
• ping、traceroute、Telnet、Trivial File Transfer Protocol(TFTP)、および FTP(ファイル転送プロトコル)
• IPv6 トランスポートによる Secure Shell(SSH; セキュア シェル)
• IPv6 トランスポートによる HTTP サーバ アクセス
• IPv4 トランスポートによる AAAA の DNS レゾルバ
• IPv6 アドレスの Cisco Discovery Protocol(CDP)サポート
Cisco IOS を使用したこれらのアプリケーションの管理の詳細については、次の URL にある『 Cisco IOS IPv6 Configuration Library 』の「Managing Cisco IOS Applications over IPv6」を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/sw/iosswrel/ps1839/products_feature_guide09186a00807fcf4b.html
デュアル IPv4/IPv6 プロトコル スタック
IPv6 に移行する方法の 1 つは、デュアル IPv4/IPv6 プロトコル スタックを使用することです。デュアル スタックを使用すると、ノードで稼動中のアプリケーションに緩やかな段階的アップグレードを行うことができます。IPv6 にアップグレードされたアプリケーションは、IPv6 プロトコル スタックを使用します。アップグレードされていない、IPv4 のみをサポートするアプリケーションと、アップグレード済みアプリケーションを、同じノード上で共存させることができます。新規のアップグレード済みアプリケーションは、IPv4 と IPv6 の両方のプロトコル スタックを使用できます。
Cisco IOS ソフトウェアは、デュアル IPv4/IPv6 プロトコル スタック方式をサポートしています。IPv4 および IPv6 ルーティングがイネーブル化されていて、インターフェイスに IPv4 および IPv6 アドレスが設定されている場合、インターフェイスは IPv4 と IPv6 の両方のトラフィックを転送します。
図 32-1 に、IP パケットおよび宛先アドレスに基づいて、同じインターフェイスを介して IPv4 および IPv6 トラフィックを転送するルータを示します。
図 32-1 インターフェイス上での IPv4/IPv6 のデュアル サポート
スイッチは Ternary CAM(TCAM)を使用して、ユニキャスト ルート、MAC(メディア アクセス制御)アドレス、Access Control List(ACL; アクセス コントロール リスト)、およびその他の機能を格納します。また、スイッチの使用方法に応じてメモリ リソースを割り当てるための Switching Database Manager(SDM; スイッチング データベース マネージャ)テンプレートを備えています。IPv4 および IPv6 プロトコルの両方で TCAM の使用を割り当てるには、デュアル IPv4/IPv6 テンプレートを使用する必要があります。「SDM テンプレート」を参照してください。
SDM テンプレート
ほとんどの Catalyst 2960 スイッチには、ユニキャスト ルート、MAC アドレス、ACL、および他の機能を格納するための TCAM が 1 つあります。TCAM リソースをさまざまな用途に割り当てるために、スイッチ SDM テンプレートはシステム リソースにプライオリティを設定して、特定の機能のサポートを最適化します。スイッチ環境に最適なテンプレートを選択するには、 sdm prefer グローバル コンフィギュレーション コマンドを入力します。SDM テンプレートの詳細については、 第 7 章「SDM テンプレートの設定」 を参照してください。
IPv4/IPv6 テンプレートを使用することにより、(IPv4 と IPv6 の両方をサポートする)デュアル スタック環境でスイッチを使用できるようになります。
(注) デュアル IPv4/IPv6 テンプレートを最初に選択しないで IPv6 を設定しようとすると、警告メッセージが生成されます。
• IPv4 専用環境で、スイッチは Ipv4 QoS および ACL をハードウェアで適用します。IPv6 パケットはサポートされません。
• デュアル IPv4 および Ipv6 環境で、スイッチは Ipv4 QoS および ACL をハードウェアで適用します。
(注) デュアル スタック テンプレートを使用すると各リソースの TCAM 容量が少なくなるので、IPv6 を使用しない場合はデュアル スタック テンプレートを使用しないでください。
デュアル IPv4/IPv6 SDM テンプレート
次に示す SDM テンプレートは、IPv4 および IPv6 環境をサポートしています。
(注) このリリースでは、IPv6 のマルチキャスト ルーティングまたは QoS はサポートされていません。このリリースは、IPv6 Multicast Listener Discovery(MLD)スヌーピングをサポートしています。
• デュアル IPv4 および IPv6 デフォルト SDM テンプレート:スイッチのレイヤ 2、QoS と IPv4 の ACL、および レイヤ 2 と IPv6 の ACL をサポート。
(注) IPv4 ルートに必要なのは、1 つの TCAM エントリのみです。IPv6 ではハードウェア圧縮方式が使用されるため、IPv6 ルートは複数の TCAM エントリを使用することができ、ハードウェアで転送されるエントリ数が削減されます。
表 32-1 では、各新規テンプレートによって割り当てられた機能リソースの概数を示します。
表 32-1 各テンプレートが許容する機能リソースの概数
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ユニキャスト MAC アドレス |
8 K |
8 K |
8 K |
IPv4 IGMP グループ + マルチキャスト ルート |
.25 K |
.25 K |
.25 K |
IPv4 ユニキャスト ルート |
0 |
0 |
0 |
IPv6 マルチキャスト グループ |
0 |
0 |
.25 K |
直接接続された IPv6 アドレス |
0 |
0 |
0 |
間接的な IPv6 ユニキャスト ルート |
0 |
0 |
0 |
IPv4 ポリシーベース ルーティング ACE |
0 |
0 |
0 |
IPv4 MAC QoS ACE |
128 |
384 |
.25 K |
IPv4 MAC セキュリティ ACE |
384 |
128 |
.25 K |
IPv6 ポリシーベース ルーティング |
0 |
0 |
0 |
IPv4 MAC QoS ACE |
0 |
0 |
0 |
IPv4 MAC セキュリティ ACE |
0 |
0 |
0 |
IPv6 の設定
ここでは、次の IPv6 転送の設定情報について説明します。
• 「IPv6 のデフォルト設定」
• 「IPv6 ICMP レート制限の設定」
• 「IPv6 のスタティック ルートの設定」
IPv6 のデフォルト設定
表 32-2 に IPv6 のデフォルト設定を示します。
表 32-2 IPv6 のデフォルト設定
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SDM テンプレート |
デフォルト |
IPv6 アドレス |
未設定 |
IPv6 ICMP レート制限の設定
IPv6 ICMP レート制限ではトークン バケット アルゴリズムを使用して、IPv6 ICMP エラー メッセージをネットワークに送信する場合のレートを制限します。エラー メッセージの間隔は、タイム インターバルおよびバケット サイズで指定します。traceroute など一部のアプリケーションでは、一連の要求に対する応答を迅速かつ連続的に送信しなければならない場合があるため、エラー メッセージ間隔のみを指定した場合は、アプリケーションに障害が発生することがあります。トークン バケットを使用すると、エラー メッセージの送信能力をそれぞれ表す複数のトークンを仮想バケットに格納できます。メッセージを送信するたびに、バケットからトークンが 1 つ削除されます。一連のエラー メッセージが生成された場合は、バケットが空になるまでエラー メッセージを送信できます。バケットが空の場合は、新規トークンがバケットに格納されるまで、IPv6 ICMP エラー メッセージは送信されません。この方法ではレート制限間隔の平均値が大きくならずに、間隔が固定されている場合よりも柔軟性が高まります。
ICMP レート制限はデフォルトでイネーブルです。エラー メッセージのデフォルト間隔は 100 ミリ秒、デフォルト バケット サイズ(バケットに格納される最大トークン数)は 10 です。
ICMP レート制限パラメータを変更するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ipv6 icmp error-interval interval [ bucketsize ] |
IPv6 ICMP エラー メッセージの間隔およびバケット サイズを設定します。 • interval: バケットに追加されるトークンの間隔(ミリ秒)。指定できる範囲は 0 ~ 2147483647 ミリ秒です。 • bucketsize:(任意)バケットに格納される最大トークン数。指定できる範囲は 1 ~ 200 です。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 4 |
show ipv6 interface [ interface-id ] |
設定を確認します。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
デフォルト設定に戻すには、 no ipv6 icmp error-interval グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、IPv6 ICMP エラー メッセージ間隔を 50 ミリ秒に、バケット サイズを 20 トークンに設定する例を示します。
Switch(config)#ipv6 icmp error-interval 50 20
IPv6 のスタティック ルートの設定
スタティック ルートは手動で設定され、2 つのネットワーキング デバイス間のルートを明示的に定義します。スタティック ルートの利点は、セキュリティが高まり、リソースが効率化されることです。スタティック ルートではルートの計算や通信が不要であるため、ダイナミック ルーティング プロトコルよりも使用帯域幅が減少します。スタティック ルートの主な欠点は、ダイナミック ルーティングと異なり、自動的に更新されず、ネットワーク トポロジが変更された場合に手動再設定が必要なことです。スタティック ルートが有効なのは、外部ネットワークへのパスが 1 つしかない小規模ネットワークの場合、または大規模ネットワークで特定のトラフィック タイプにセキュリティを設定する場合です。
スタティック ルートのタイプは、次のとおりです。
• 直接接続されたスタティック ルート:宛先は現在のインターフェイスに直接接続されていると想定されるため、出力インターフェイスのみを指定します。パケットの宛先は、ネクスト ホップ アドレスとして使用されます。直接接続されたスタティック ルートが有効なのは、指定したインターフェイスが IPv6 に対応していて、起動している場合のみです。
• 再帰スタティック ルート:ネクスト ホップのみを指定し、出力インターフェイスはネクスト ホップから取得します。再帰スタティック ルートが有効なのは、指定したネクスト ホップが有効な IPv6 出力インターフェイスであり、ルートが自己再帰型でなく、再帰深度が IPv6 転送の最大再帰深度を超えていない場合のみです。
• 完全指定のスタティック ルート:出力インターフェイスとネクスト ホップを両方とも指定します。ネクスト ホップは、指定した出力インターフェイスに直接接続されていると想定されます。完全指定のスタティック ルートが有効なのは、指定した IPv6 インターフェイスが IPv6 に対応していて、起動している場合のみです。
• フローティング スタティック ルート:上記の 3 つのスタティック ルート タイプはいずれも、フローティング スタティック ルートに設定できます。このルートは、設定済みのルーティング プロトコルを介して取得されたダイナミック ルートのバックアップに使用されます。フローティング スタティック ルートに設定された管理ディスタンスは、バックアップしているルーティング プロトコルよりも非効率的です。したがって、トラフィックのルーティングには常に、フローティング スタティック ルートでなくダイナミック ルートが使用されます。ダイナミック ルートが失われた場合は、フローティング スタティック ルートが代わりに使用されます。
IPv6 スタティック ルートを設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ipv6 route ipv6-prefix/prefix length { ipv6-address | interface-id [ ipv6-address ]} [ administrative distance ] |
スタティック IPv6 ルートを設定します。 • ipv6-prefix: スタティック ルートの宛先となる IPv6 ネットワーク。スタティック ホスト ルートを設定する場合は、ホスト名も設定できます。 • /prefix length: IPv6 プレフィクスの長さ。プレフィクス(アドレスのネットワーク部分)を構成するアドレスの上位連続ビット数を示す 10 進値です。10 進値の前にスラッシュを付加する必要があります。 • ipv6-address : 指定したネットワークに到達するために使用可能なネクスト ホップの IPv6 アドレス。ネクスト ホップの IPv6 アドレスを直接接続する必要はありません。再帰処理が実行されて、直接接続されたネクスト ホップの IPv6 アドレスが検出されます。このアドレスは RFC 2373 に記載された形式(16 ビット値を使用したコロン区切りの 16 進形式で指定)で設定する必要があります。 • interface-id :Point-To-Point(ポイントツーポイント)インターフェイスおよびブロードキャスト インターフェイスからのダイレクト スタティック ルートを指定します。ポイントツーポイント インターフェイスの場合、ネクスト ホップの IPv6 アドレスを指定する必要はありません。ブロードキャスト インターフェイスの場合は、常にネクスト ホップの IPv6 アドレスを指定するか、または指定したプレフィクスをリンクに割り当てて、リンクに対してローカルなアドレスをネクスト ホップとして指定する必要があります。パケットの送信先となるネクスト ホップの IPv6 アドレスを指定することもできます。 を指定する必要があります(リンクに対してローカルなネクスト ホップを隣接ルータに設定する必要もあります)。 • administrative distance: (任意)管理ディスタンス。指定できる範囲は 1 ~ 254 です。デフォルト値は 1 で、この場合、接続されたルートを除くその他のどのルート タイプよりも、スタティック ルートが優先します。フローティング スタティック ルートを設定する場合は、ダイナミック ルーティング プロトコルよりも大きな管理ディスタンスを使用します。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 4 |
show ipv6 static [ ipv6-address | ipv6-prefix/prefix length ] [ interface interface-id ] [ recursive ] [ detail ] または show ipv6 route static [ updated ] |
IPv6 ルーティング テーブルの内容を表示して、設定を確認します。 • interface interface-id :(任意)出力インターフェイスとして指定されたインターフェイスを含むスタティック ルートのみを表示します。 • recursive:(任意)再帰スタティック ルートのみを表示します。 recursive キーワードは interface キーワードと相互に排他的です。ただし、コマンド構文に IPv6 プレフィクスが指定されているかどうかに関係なく、使用することができます。 • detail:(任意)次に示す追加情報を表示します。 – 有効な再帰ルートの場合、出力パス セットおよび最大分解深度 – 無効なルートの場合、ルートが無効な理由 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
設定されたスタティック ルートを削除するには、 no ipv6 route ipv6-prefix/prefix length { ipv6-address | interface-id [ ipv6-address ]} [ administrative distance ] グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、管理ディスタンスが 130 のフローティング スタティック ルートをインターフェイスに設定する例を示します。
Switch(config)# ipv6 route 2001:0DB8::/32 gigabitethernet0/1 130
スタティック IPv6 ルーティングの設定の詳細については、次の URL にある『 Cisco IOS IPv6 Configuration Library 』の「Implementing Static Routes for IPv6」の章を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/sw/iosswrel/ps1839/products_feature_guide09186a00807fcf4b.html