HSRP および VRRP の設定
この章では、Catalyst 3750-X または 3560-X スイッチで Hot Standby Router Protocol(HSRP)を使用する方法について説明します。HSRP は、IP トラフィック ルーティングに冗長性を提供し、1 台のルータのアベイラビリティに依存しないルーティングを実現します。ここでは特に明記しないかぎり、 スイッチ という用語は、Catalyst 3750-X または 3560-X のスタンドアロン スイッチおよび Catalyst 3750-X スイッチ スタックを意味します。
レイヤ 2 モードの HSRP のバージョンを使用すると、クラスタ コマンド スイッチが故障した場合、クラスタ管理を引き継ぐ冗長コマンド スイッチを設定することもできます。クラスタリングの詳細については、「スイッチのクラスタ化」、および Cisco.com で利用できる『 Getting Started with Cisco Network Assistant 』を参照してください。スイッチで LAN ベース フィーチャ セットが稼動している場合、レイヤ 2 モードだけがサポートされます。
Cisco IOS Release 12.2(58)SE では、IP ベース イメージを実行するスイッチ上で、IPv4 用および IPv6 用の仮想ルータ冗長プロトコル(VRRP)がサポートされます。
この章で使用するコマンドの構文および使用方法の詳細については、次のマニュアルを参照してください。
• このリリースのスイッチ コマンド リファレンス
• 『 Cisco IOS IP Command Reference, Volume 1 of 3: Addressing and Services, Release 12.4 』
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/12_2/ipaddr/command/reference/fipras_r.html
• 『 Hot Standby Router Protocol Version 2 』のフィーチャ モジュール
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/12_3t/12_3t4/feature/guide/gthsrpv2.html
この章で説明する内容は、次のとおりです。
• 「HSRP の概要」
• 「HSRP の設定」
• 「HSRP 設定の表示」
• 「VRRP の設定」
HSRP の概要
HSRP は、デフォルト ゲートウェイ IP アドレスが設定された IEEE 802 LAN 上の IP ホストにファースト ホップ冗長性を確保することでネットワークのアベイラビリティを高めるシスコの標準方式です。HSRP を使用すると、特定のルータのアベイラビリティに依存せず IP トラフィックをルーティングできます。また、一連のルータ インターフェイスを組み合わせることで、1 台の仮想ルータ、または LAN 上のホストへのデフォルト ゲートウェイのように機能させることができます。ネットワークまたはセグメント上に HSRP を設定すると、仮想 MAC(メディア アクセス コントロール)アドレス、および設定されたルータ グループ間で共有される IP アドレスを使用できるようになり HSRP が設定された複数のルータは、仮想ルータの MAC アドレスおよび IP ネットワーク アドレスを使用できるようになります。仮想ルータは、実際には存在しません。仮想ルータは、相互にバックアップ機能を提供するように設定されている複数のルータの共通のターゲットを表します。1 台のルータがアクティブなルータとして、もう 1 台のルータがスタンバイ ルータとして選択されます。スタンバイ ルータは、指定されたアクティブ ルータが故障した場合に、グループの MAC アドレスおよび IP アドレスを制御するルータです。
(注) HSRP グループ内のルータには、Catalyst 3750-X または 3560-X のルーテッド ポートや Switch Virtual Interface(SVI; スイッチ仮想インターフェイス)など、HSRP をサポートする任意のルータ インターフェイスを指定できます。LAN ベース フィーチャ セットが稼動しているスイッチは、SVI のスタティック ルーティングだけをサポートします。
HSRP は、ネットワーク上のホストからの IP トラフィックに冗長性を提供することで、ネットワークのアベイラビリティを高めます。アクティブ ルータは、ルータ インターフェイスのグループ内でパケットのルーティングを実行するために選択されたルータです。スタンバイ ルータは、アクティブ ルータが故障した場合、または事前に設定した条件が満たされた場合に、ルーティング作業を引き継ぐルータです。
HSRP は、ホストがルータ ディスカバリ プロトコルをサポートしておらず、選択されたルータのリロードや電源故障時に新しいルータに切り替えることができない場合に有効です。HSRP をネットワーク セグメントに設定すると、HSRP は仮想 MAC アドレスと IP アドレスを 1 つずつ提供します。このアドレスは、HSRP が動作するルータ インターフェイス グループ内のルータ インターフェイス間で共有できます。プロトコルによってアクティブ ルータとして選択されたルータは、グループの MAC アドレス宛てのパケットを受信し、ルーティングします。 n 台のルータで HSRP が稼動している場合、 n +1 個の IP アドレスおよび MAC アドレスが割り当てられます。
指定されたアクティブ ルータの故障を HSRP が検出すると、選択されているスタンバイ ルータがホットスタンバイ グループの MAC アドレスおよび IP アドレスの制御を引き継ぎます。この時点で新しいスタンバイ ルータも選択されます。HSRP が稼動しているデバイスは、マルチキャスト UDP ベースの hello パケットを送受信することにより、ルータ障害の検出、アクティブ ルータおよびスタンバイ ルータの指定を行います。インターフェイスに HSRP が設定されている場合、そのインターフェイスでは Internet Control Message Protocol(ICMP; インターネット制御メッセージ プロトコル)のリダイレクト メッセージが自動的にイネーブルになっています。
レイヤ 3 で動作するスイッチおよびスイッチ スタック間で複数のホット スタンバイ グループを設定すると、冗長ルータをさらに活用できます。そのためには、インターフェイスに設定するホットスタンバイ コマンド グループごとにグループ番号を指定します。たとえば、スイッチ 1 のインターフェイスをアクティブ ルータ、スイッチ 2 のインターフェイスをスタンバイ ルータとして設定できます。また、スイッチ 2 の別のインターフェイスをアクティブ ルータ、スイッチ 1 の別のインターフェイスをスタンバイ ルータとして設定することもできます。
図 44-1に、HSRP 用に設定されたネットワークのセグメントを示します。各ルータには、仮想ルータの MAC アドレスおよび IP ネットワーク アドレスが設定されています。ルータ A の IP アドレスをネットワーク上のホストに設定する代わりに、デフォルト ルータとして仮想ルータの IP アドレスを設定します。ホスト C からホスト B にパケットが送信される場合、ホスト C は仮想ルータの MAC アドレスにパケットを送信します。何らかの理由により、ルータ A がパケットの転送を停止すると、ルータ B が仮想 IP アドレスおよび仮想 MAC アドレスに応答してアクティブ ルータとなり、アクティブ ルータの作業を行います。ホスト C は引き続き仮想ルータの IP アドレスを使用し、ホスト B 宛てのパケットをアドレス指定します。ルータ B はそのパケットを受信し、ホスト B に送信します。ルータ B は HSRP の機能を使用し、ルータ A が動作を再開するまで、ホスト B のセグメント上のユーザと通信する必要があるホスト C のセグメント上のユーザに連続的にサービスを提供します。また、ホスト A セグメントとホスト B の間で、引き続き通常のパケット処理機能を実行します。
図 44-1 HSRP の一般的な構成
HSRP のバージョン
スイッチでは、次の HSRP バージョンがサポートされます。
• HSRPv1:HSRP のバージョン 1 で、デフォルトのバージョンです。次の機能があります。
– HSRP グループ番号は 0 ~ 255 まで使用できます。
– HSRPv1 は 224.0.0.2 のマルチキャスト アドレスを使用して hello パケットを送信しますが、これは Cisco Group Management Protocol(CGMP)の脱退処理と競合します。HSRPv1 と CGMP は相互に排他的なため、同時には使用できません。
• HSRPv2:HSRP のバージョン 2 です。このバージョンには次のような特長があります。
– HSRP グループ番号とサブインターフェイスの VLAN ID を照合させるために、HSRPv2 では 0 ~ 4095 のグループ番号と 0000.0C9F.F000 ~ 0000.0C9F.FFFF の MAC アドレスを使用できます。
– HSRPv2 は 224.0.0.102 のマルチキャスト アドレスを使用して hello パケットを送信します。HSRPv2 と CGMP 脱退処理は相互に排他的ではありません。同時に使用できます。
– HSRPv2 のパケット形式は、HSRPv1 とは異なります。
HSRPv1 を実行しているスイッチは、ルータの送信元 MAC アドレスが仮想 MAC アドレスのため、hello パケットを送信した物理的なルータを特定できません。
HSRPv2 のパケット形式は、HSRPv1 とは異なります。HSRPv2 パケットは、パケットを送信した物理ルータの MAC アドレスを格納できる 6 バイトの識別子フィールドを持った、Type Length Value(TLV)形式を使用します。
HSRPv1 を実行しているインターフェイスが HSRPv2 パケットを取得した場合、このタイプ フィールドは無視されます。
MHSRP
スイッチは、Multiple HSRP(MHSRP)をサポートします。MHSRP は HSRP の拡張版で、複数の HSRP グループ間でのロード シェアリングが可能です。ホスト ネットワークからサーバ ネットワークまで、ロード バランシングを実現して複数のスタンバイ グループ(およびパス)を使用するために、MHSRP を設定できます。
図 44-2 では、半分のクライアントがルータ A に設定されており、もう半分はルータ B に設定されています。ルータ A およびルータ B の設定により、合計 2 つの HSRP グループが確立しています。グループ 1 では、ルータ A に最高のプライオリティが割り当てられているので、ルータ A がデフォルトのアクティブ ルータになり、ルータ B がスタンバイ ルータとなります。グループ 2 では、ルータ B に最高のプライオリティが割り当てられているので、ルータ B がデフォルトのアクティブ ルータになり、ルータ A がスタンバイ ルータとなります。通常の運用では、2 つのルータが IP トラフィック負荷を分散します。いずれかのルータが使用できなくなると、もう一方のルータがアクティブになり、使用できないルータのパケット転送機能を引き継ぎます。
設定手順の例については、「MHSRP の設定」を参照してください。
(注) MHSRP では、ルータに障害が発生して正常に戻った場合、プリエンプトがロード シェアリングを復元するために、standby preempt インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを HSRP インターフェイスで入力する必要があります。
図 44-2 MHSRP ロード シェアリング
HSRP およびスイッチ スタック
HSRP の hello メッセージは、スタック マスターで生成されます。HSRP がアクティブであるスタック マスターに障害が発生すると、HSRP アクティブ ステートのフラッピングが生じることがあります。これは、新規スタック マスターが選択および初期化されている間に HSRP hello メッセージが生成されず、スタック マスターが故障したあとでないとスタンバイ ルータがアクティブにならない可能性があるためです。
HSRP の設定
• 「HSRP のデフォルト設定」
• 「HSRP 設定時の注意事項」
• 「HSRP のイネーブル化」
• 「HSRP のプライオリティの設定」
• 「MHSRP の設定」
• 「HSRP 認証およびタイマーの設定」
• 「ICMP リダイレクト メッセージの HSRP サポートのイネーブル化」
• 「HSRP グループおよびクラスタリングの設定」
• 「Catalyst 3750-X、3750-E、および 3750 スイッチが混在したスタックの HSRP のトラブルシューティング」
HSRP のデフォルト設定
表 44-1 HSRP のデフォルト設定
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HSRP バージョン |
バージョン 1 |
HSRP グループ |
未設定 |
スタンバイ グループ番号 |
0 |
スタンバイ MAC アドレス |
0000.0c07.acXX に指定されたシステム。 XX は、HSRP グループ番号 |
スタンバイ プライオリティ |
100 |
スタンバイ遅延 |
0(遅延なし) |
スタンバイでのインターフェイス プライオリティの追跡 |
10 |
スタンバイ hello 時間 |
3 秒 |
スタンバイ ホールドタイム |
10 秒 |
HSRP 設定時の注意事項
• HSRPv2 および HSRPv1 は相互に排他的です。HSRPv2 は、同じインターフェイス上で HSRPv1 と一緒には動作しません(その逆も同様)。
• 以下の手順では、次に示すレイヤ 3 インターフェイスの 1 つを指定する必要があります。
– ルーテッド ポート: no switchport インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力して、レイヤ 3 ポートとして設定された物理ポートです。
– SVI: interface vlan vlan_id グローバル コンフィギュレーション コマンドによって作成された VLAN インターフェイス。デフォルトではレイヤ 3 インターフェイスです。
– レイヤ 3 モードの EtherChannel ポート チャネル: interface port-channel port- channel-number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用し、イーサネット インターフェイスをチャネル グループにバインドして作成されたポートチャネル論理インターフェイス。詳細については、「レイヤ 3 EtherChannel の設定」を参照してください。
• すべてのレイヤ 3 インターフェイスに IP アドレスを割り当てる必要があります。「レイヤ 3 インターフェイスの設定」を参照してください。
• HSRP グループのバージョンは、グループ番号が 256 より少ない場合にだけ HSRPv2 から HSRPv1 へ変更できます。
• インターフェイスの HSRP バージョンを変更する場合、HSRP グループは新しい MAC アドレスを持つことになるため、リセットされます。
• Catalyst 3750-X または Catalyst 3750-E および 3750 スイッチの混合スタック構成では、次のように動作します。
– IPv4 の HSRP および IPv6 の HSRP は相互に排他的です。両方を同時にイネーブルにはできません。
– HSRP グループは、最大 32 インスタンスで構成できます。
– First Hop Redundancy Protocol(FHRP)に設定するインスタンスは 1 つだけにしてください。スイッチは HSRPv1、HSRPv2、HSRP の IPv6 をサポートします。
– HSRPv2 および HSRP のグループ番号を設定する場合、256 の倍数の範囲のグループ番号を使用する必要があります。有効な範囲は 0 ~ 255、256 ~ 511、512 ~ 767、3840 ~ 4095 などです。
有効なグループ番号、無効なグループ番号の例:
2、150、225 の番号でグループを設定する場合、3850 の番号を持つ他のグループは設定できません。これは、0 ~ 255 の範囲内ではありません。
520、600、700 の番号でグループを設定する場合、900 の番号を持つ他のグループは設定できません。これは、512 ~ 767 の範囲内ではありません。
HSRP のイネーブル化
standby ip インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、設定されたインターフェイスで HSRP がアクティブになります。IP アドレスを指定した場合は、IP アドレスがホットスタンバイ グループの指定アドレスとして使用されます。IP アドレスを指定しなかった場合は、スタンバイ機能によってアドレスが学習されます。指定アドレスを使用し、LAN 上に少なくとも 1 つのレイヤ 3 ポートを設定する必要があります。IP アドレスを設定すると、常に、現在使用されている別の指定アドレスが、設定した IP アドレスに変更されます。
standby ip コマンドがインターフェイス上でイネーブルに設定され、プロキシアドレス解決プロトコル(ARP)がイネーブルの場合、インターフェイスのホットスタンバイ ステートがアクティブになると、プロキシ ARP 要求に対する応答は、ホットスタンバイ グループの MAC アドレスを使用して実行されます。インターフェイスが別のステートの場合、プロキシ ARP の応答は抑制されます。
レイヤ 3 インターフェイス上で HSRP を作成する場合、またはイネーブルにする場合は、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、HSRP をイネーブルにするレイヤ 3 インターフェイスを入力します。 |
ステップ 3 |
standby version { 1 | 2 } |
(任意)インターフェイスに HSRP バージョンを設定します。 • 1:HSRPv1 を選択します。 • 2:HSRPv2 を選択します。 このコマンドを入力しない場合、またはキーワードを指定しない場合、インターフェイスはデフォルトの HSRP バージョンである HSRPv1 を実行します。 |
ステップ 4 |
standby [ group-number ] ip [ ip-address [ secondary ]] |
HSRP グループの番号および仮想 IP アドレスを使用して、HSRP グループを作成(またはイネーブルに)します。 • (任意) group-number :HSRP をイネーブルにするインターフェイスのグループ番号を指定します。指定できる範囲は 0 ~ 255 です。デフォルトは 0 です。HSRP グループが 1 つしかない場合は、グループ番号を入力する必要はありません。 • (1 つのインターフェイスで必須、それ以外は任意) ip-address :ホットスタンバイ ルータ インターフェイスの仮想 IP アドレスを指定します。少なくとも 1 つのインターフェイスに対して仮想 IP アドレスを入力する必要があります。他のインターフェイスは、その仮想 IP アドレスを学習します。 • (任意) secondary :IP アドレスはセカンダリ ホットスタンバイ ルータ インターフェイスです。ルータがセカンダリ ルータとスタンバイ ルータのいずれにも指定されず、かつプライオリティも設定されていない場合は、プライマリ IP アドレスが比較され、IP アドレスが大きいルータがアクティブ ルータ、IP アドレスが 2 番めに大きいルータがスタンバイ ルータになります。 |
ステップ 5 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
show standby [ interface-id [ group ]] |
設定を確認します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
HSRP をディセーブルにするには、 no standby [ group-number ] ip [ ip-address ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、インターフェイスのグループ 1 で HSRP をアクティブにする例を示します。ホットスタンバイ グループで使用される IP アドレスは、HSRP を使用して学習されます。
(注) これは、HSRP をイネーブルにするために必要な最小限の手順です。その他の設定は任意です。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby 1 ip
HSRP のプライオリティの設定
standby priority 、 standby preempt 、および standby track インターフェイス コンフィギュレーション コマンドはいずれも、アクティブ ルータとスタンバイ ルータを検索するための特性、および新しいアクティブ ルータが処理を引き継いだ場合の動作を設定するために使用できます。
HSRP プライオリティを設定する場合の注意事項は、次のとおりです。
• プライオリティを割り当てておくと、アクティブ ルータおよびスタンバイ ルータを選択できます。プリエンプトがイネーブルの場合は、プライオリティが最高のルータがアクティブ ルータになります。プライオリティが等しい場合は、現在アクティブなルータに変更はありません。
• 最大の値(1 ~ 255)が、最高のプライオリティ(アクティブ ルータになる確率が最も高い)を表します。
• プライオリティ、プリエンプト、またはその両方を設定するときは、少なくとも 1 つのキーワード( priority 、 preempt 、または両方)を指定する必要があります。
• インターフェイスが standby track コマンドによって設定されている場合、ルータ上の別のインターフェイスがダウンすると、デバイスのプライオリティが動的に変更されることもあります。
• standby track インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、ルータのホットスタンバイ プライオリティとインターフェイスのアベイラビリティが関連付けられます。この機能は、HSRP 用に設定されていないインターフェイスを追跡する場合に有効です。追跡対象のインターフェイスが故障すると、トラッキングが設定されているデバイスのホットスタンバイ プライオリティが 10 減少します。追跡対象でないインターフェイスの場合は、そのステートが変わっても、設定済みデバイスのホットスタンバイ プライオリティは変わりません。ホットスタンバイ用に設定されたインターフェイスごとに、追跡するインターフェイスのリストを個別に設定できます。
• standby track interface-priority インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、追跡対象のインターフェイスがダウンした場合のホットスタンバイ プライオリティの減少幅を指定できます。インターフェイスが稼動状態に戻ると、プライオリティは同じ分だけ増加します。
• interface-priority 値が設定されている場合に、複数の追跡対象インターフェイスがダウンすると、設定済みプライオリティの減少幅が累積されます。プライオリティ値が設定されていない追跡対象インターフェイスが故障した場合、デフォルトの減少幅は 10 です。この値は累積されません。
• インターフェイスに対してルーティングを最初にイネーブルにした時点で、完全なルーティング テーブルは存在しません。このインターフェイスがプリエンプトに設定されている場合はアクティブ ルータになりますが、十分なルーティング処理はできません。この問題を解決するには、ルータがルーティング テーブルを更新できるように遅延時間を設定します。
インターフェイスに HSRP プライオリティ特性を設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、プライオリティを設定する HSRP インターフェイスを入力します。 |
ステップ 3 |
standby [group-number] priority priority |
アクティブ ルータを選択するときに使用される priority 値を設定します。指定できる範囲は 1 ~ 255 です。デフォルト プライオリティは 100 です。最大の値が、最高のプライオリティを表します。 • (任意) group-number :コマンドが適用されるグループ番号です。 デフォルト値に戻すには、このコマンドの no 形式を使用します。 |
ステップ 4 |
standby [ group-number ] preempt [ delay [ minimum seconds ] [ reload seconds ] [ sync seconds ]] |
ルータを preempt に設定し、ローカル ルータのプライオリティがアクティブ ルータよりも高い場合は、アクティブ ルータとなります。 • (任意) group-number :コマンドが適用されるグループ番号です。 • (任意) delay minimum :ローカル ルータがアクティブ ルータの役割を引き継ぐまでの時間を、指定された秒数だけ延期します。指定できる範囲は 0 ~ 36000 秒(1 時間)で、デフォルトは 0 です(引き継ぐ前の遅延はありません)。 • (任意) delay reload :ローカル ルータがリロードの後アクティブ ルータの役割を引き継ぐまでの時間を、指定された秒数だけ延期します。指定できる範囲は 0 ~ 36000(1 時間)で、デフォルトは 0 です(リロードの後、引き継ぐ前の遅延はありません)。 • (任意) delay sync :IP 冗長性クライアントが応答できるように( ok または wait 応答)、ローカル ルータがアクティブ ルータの役割を引き継ぐまでの時間を、指定された秒数だけ延期します。指定できる範囲は 0 ~ 36000 秒(1 時間)で、デフォルトは 0 です(引き継ぐ前の遅延はありません)。 デフォルト値に戻すには、このコマンドの no 形式を使用します。 |
ステップ 5 |
standby [ group-number ] track type number [ interface-priority ] |
他のインターフェイスを追跡するようにインターフェイスを設定します。この設定により、他のインターフェイスの 1 つがダウンした場合は、そのデバイスのホットスタンバイ プライオリティが減少します。 • (任意) group-number :コマンドが適用されるグループ番号です。 • type :追跡対象のインターフェイス タイプを(インターフェイス番号とともに)入力します。 • number :追跡対象のインターフェイス番号を(インターフェイス タイプとともに)入力します。 • (任意) interface-priority :インターフェイスがダウンした場合、または稼動状態に戻った場合に、ルータのホットスタンバイ プライオリティを減少または増加させる幅を入力します。デフォルト値は 10 です。 |
ステップ 6 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
show running-config |
スタンバイ グループの設定を確認します。 |
ステップ 8 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
デフォルトのプライオリティ、プリエンプト、遅延値に戻すには、 no standby [ group-number ] priority priority [ preempt [ delay delay ]] および no standby [ group-number ] [ priority priority ] preempt [ delay delay ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
追跡を解除するには、 no standby [ group-number ] track type number [ interface-priority ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、ポートをアクティブにして、IP アドレスおよびプライオリティ 120(デフォルト値よりも高いプライオリティ)を設定して、アクティブ ルータになるまで 300 秒(5 分間)待機する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby ip 172.20.128.3
Switch(config-if)# standby priority 120 preempt delay 300
MHSRP の設定
MHSRP およびロード バランシングをイネーブルにするには、グループのアクティブ ルータとして 2 つのルータを設定し、仮想ルータをスタンバイ ルータとして設定します。次に、図 44-2に示した MHSRP 設定をイネーブルにする例を示します。ルータに障害が発生して正常に戻った場合、プリエンプトを発生させてロード バランシングを復元するために、 standby preempt インターフェイス コンフィギュレーション コマンドをそれぞれの HSRP インターフェイスで入力する必要があります。
ルータ A はグループ 1 のアクティブ ルータとして、ルータ B はグループ 2 のアクティブ ルータとして設定されています。ルータ A の HSRP インターフェイスの IP アドレスは 10.0.0.1、グループ 1 のスタンバイ プライオリティは 110(デフォルトは 100)です。ルータ B の HSRP インターフェイスの IP アドレスは 10.0.0.2、グループ 2 のスタンバイ プライオリティは 110 です。
グループ 1 は仮想 IP アドレス 10.0.0.3 を使用し、グループ 2 は仮想 IP アドレス 10.0.0.4 を使用します。
ルータ A の設定
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 10.0.0.1 255.255.255.0
Switch(config-if)# standby 1 ip 10.0.0.3
Switch(config-if)# standby 1 priority 110
Switch(config-if)# standby 1 preempt
Switch(config-if)# standby 2 ip 10.0.0.4
Switch(config-if)# standby 2 preempt
ルータ B の設定
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 10.0.0.2 255.255.255.0
Switch(config-if)# standby 1 ip 10.0.0.3
Switch(config-if)# standby 1 preempt
Switch(config-if)# standby 2 ip 10.0.0.4
Switch(config-if)# standby 2 priority 110
Switch(config-if)# standby 2 preempt
HSRP 認証およびタイマーの設定
HSRP 認証ストリングを設定したり、hello タイム インターバルやホールドタイムを変更することもできます。
これらの属性を設定する場合の注意事項は次のとおりです。
• 認証ストリングはすべての HSRP メッセージで暗号化されずに送信されます。相互運用できるように、接続されたすべてのルータおよびアクセス サーバに同じ認証ストリングを設定する必要があります。認証ストリングが一致しないと、HSRP によって設定された他のルータから、指定されたホットスタンバイ IP アドレスおよびタイマー値を学習できません。
• スタンバイ タイマー値が設定されていないルータまたはアクセス サーバは、アクティブ ルータまたはスタンバイ ルータからタイマー値を学習できます。アクティブ ルータに設定されたタイマーは、常に他のタイマー設定よりも優先されます。
• ホットスタンバイ グループのすべてのルータで、同じタイマー値を使用する必要があります。通常の場合 、 holdtime は hellotime の 3 倍以上です。
インターフェイスに HSRP の認証とタイマーを設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、認証を設定する HSRP インターフェイスを入力します。 |
ステップ 3 |
standby [ group-number ] authentication string |
(任意) authentication string :すべての HSRP メッセージで伝達されるストリングを入力します。認証ストリングには 8 文字までを指定できます。デフォルトのストリングは cisco です。 (任意) group-number :コマンドが適用されるグループ番号です。 |
ステップ 4 |
standby [ group-number ] timers hellotime holdtime |
(任意)hello パケット間隔、およびアクティブ ルータのダウンを他のルータが宣言するまでの時間を設定します。 • group-number :コマンドが適用されるグループ番号です。 • hellotime :hello インターバル(秒)です。指定できる範囲は 1 ~ 255 秒で、デフォルトは 3 秒です。 • holdtime :アクティブまたはスタンバイ ルータのダウンが宣言されるまでの時間(秒)です。指定できる範囲は 1 ~ 255 秒で、デフォルトは 10 秒です。 |
ステップ 5 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
show running-config |
スタンバイ グループの設定を確認します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
認証ストリングを削除するには、 no standby [ group-number ] authentication string インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。タイマーをデフォルト値に戻すには、 no sta ndby [ group-number ] timers hellotime holdtime インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、グループ 1 のホットスタンバイ ルータを相互運用させるために必要な認証ストリングとして、 word を設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby 1 authentication word
次に、hello パケット間隔が 5 秒、ルータがダウンしたと見なされるまでの時間が 15 秒となるように、スタンバイ グループ 1 のタイマーを設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby 1 ip
Switch(config-if)# standby 1 timers 5 15
ICMP リダイレクト メッセージの HSRP サポートのイネーブル化
HSRP が設定されたインターフェイスでは、ICMP リダイレクト メッセージが自動的にイネーブルになります。ICMP は、エラーをレポートするためのメッセージ パケットや IP 処理に関連する他の情報を提供する、ネットワーク層インターネット プロトコルです。ICMP には、ホストへのエラー パケットの方向付けや送信などの診断機能があります。この機能は、HSRP を介した発信 ICMP リダイレクト メッセージをフィルタリングします。HSRP では、ネクストホップ IP アドレスが HSRP 仮想 IP アドレスに変更される可能性があります。詳細については、『 Cisco IOS IP Configuration Guide, Release 12.4 』を参照してください。
HSRP グループおよびクラスタリングの設定
デバイスが HSRP スタンバイ ルーティングに参加し、クラスタリングがイネーブルの場合は、同じスタンバイ グループを使用して、コマンド スイッチの冗長性および HSRP の冗長性を確保できます。同じ HSRP スタンバイ グループをイネーブルにし、コマンド スイッチおよびルーティングの冗長性を確保するには、 cluster standby-group HSRP-group-name [ routing-redundancy ] グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。 routing-redundancy キーワードを指定せずに同じ HSRP スタンバイ グループ名でクラスタを作成すると、そのグループに対する HSRP スタンバイ ルーティングはディセーブルになります。
次に、スタンバイ グループ my_hsrp をクラスタにバインドし、同じ HSRP グループをイネーブルにしてコマンド スイッチおよびルータの冗長性に使用する例を示します。このコマンドを実行できるのは、コマンド スイッチに対してだけです。スタンバイ グループの名前または番号が存在しない場合、またはスイッチがクラスタ メンバ スイッチである場合は、エラー メッセージが表示されます。
Switch# configure terminal
Switch(config)# cluster standby-group my_hsrp routing-redundancy
Catalyst 3750-X、3750-E、および 3750 スイッチが混在したスタックの HSRP のトラブルシューティング
表 44-2 で説明されている状況のいずれかが発生した場合、以下のメッセージが表示されます。
%FHRP group not consistent with already configured groups on the switch stack - virtual MAC reservation failed
表 44-2 HSRP のトラブルシューティング
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32 個を超える HSRP グループ インスタンスを設定する。 |
最大 32 個のグループ インスタンスに設定されるように HSRP グループを削除します。 |
IPv4 の HSRP および IPv6 の HSRP を同時に設定する。 |
スイッチ上に IPv4 の HSRP または IPv6 の HSRP のいずれかを設定します。 |
256 までの有効な範囲にないグループ番号を設定する。 |
有効な範囲にあるグループ番号を設定します。 |