SIP と Cisco Unified Communications Manager
どのプロトコルを使用する場合も、コールを受信および発信するためには、シグナリング インターフェイス(トランク)またはゲートウェイのいずれかを作成する必要があります。SIP に関しては、SIP トランクを設定する必要があります。詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「トランクの設定」を参照してください。
SIP トランクは、Cisco Unified Communications Manager ネットワークを SIP プロキシ サーバが提供する SIP ネットワークに接続します。他のプロトコルと同様に、SIP コンポーネントは Cisco Unified Communications Manager アーキテクチャのデバイス層に適合します。H.323 プロトコルの場合、複数の論理 SIP トランクを Cisco Unified Communications Manager データベースに設定し、ルート グループ、ルート リスト、およびルート パターンに関連付けることができます。1 つの論理 SIP インターフェイスに障害が発生した場合に冗長性を提供できるように、他の論理 SIP インターフェイスは同一のルート グループ リストにサービスを提供します。複数の Cisco Unified Communications Manager ノードを SIP トランク デバイス プールに割り当てると、冗長性も実現できます。
SIP トランクは、複数ポート ベースのルーティングをサポートしています。Cisco Unified Communications Manager の複数の SIP トランクがポート 5060(デフォルト)を使用でき、このデフォルトは、[SIP トランク セキュリティ プロファイルの設定(SIP Trunk Security Profile Configuration)]ウィンドウから設定できます。TCP/UDP では、SIP トランクはリモート ホストおよびローカル リスニング ポートを使用してルーティングを行います(リモート ホストは、IP、FQDN、SRV のいずれでもかまいません)。TLS では、SIP トランクは、X.509 の件名を使用してルーティングを行います。SIP トランクの場合、Cisco Unified Communications Manager は、設定された SIP トランクの宛先アドレスと IP アドレスが一致する SIP デバイスからのコールのみを受け入れます。また、SIP メッセージが着信するポートは、SIP トランク上で設定されたポートと一致している必要があります。
図42-1 SIP と Cisco Unified Communications Manager の相互対話
メディア ターミネーション ポイント(MTP)デバイス
Cisco Unified Communications Manager SIP デバイス(回線およびトランク)が常に MTP を使用するように設定できます。MTP を使用しないように設定パラメータが設定されている場合(デフォルトの場合)、Cisco Unified Communications Manager は、コールの DTMF 方式に互換性がなければ、動的に MTP を割り当てようとします。たとえば、SCCP 電話機はアウトオブバンドの DTMF だけをサポートし、SIP を使用する Cisco Unified IP Phone(7905、7912、7940、7960)は RFC2833 だけをサポートしています。DTMF 方式が同一でないため、Cisco Unified Communications Manager は MTP を動的に割り当てます。しかし、RFC2833 とアウトオブバンドをサポートする SCCP 電話機(Cisco Unified IP Phone 7971 など)が SIP を使用する Cisco Unified IP Phone 7940 にコールした場合、Cisco Unified Communications Manager は、両方の電話機が RFC2833 をサポートしているので、MTP を割り当てません。それぞれの電話機で同じタイプの DTMF 方式がサポートされているので、MTP は不要です。
(注) Cisco Unified Communications Manager には SIP IP Phone 用に[メディアターミネーションポイントが必須(Media Termination Point Required)]チェックボックスが用意されていますが、SIP を実行する Cisco Unified IP Phone に対してこのチェックボックスをオンにしないでください(このチェックボックスは、サードパーティの汎用 SIP IP Phone だけに使用してください)。このチェックボックスをオンにすると、シェアドラインなど、Cisco Unified Communications Manager の機能に問題が発生することがあります。このチェックボックスがオフである場合でも、Cisco Unified Communications Manager は必要に応じて動的に MTP を挿入します。したがって、Cisco Unified IP Phone に対して[メディアターミネーションポイントが必須(Media Termination Point Required)]チェックボックスをオンにする利点はほとんどあるいはまったくありません。
メディア ターミネーション ポイントが必須(Media Termination Point Required)オプションが有効である SIP デバイスのリージョン(リージョンの関係)の設定
リージョンの関係を設定する場合は、コールに使用されるすべてのデバイスにとって十分な帯域幅のオーディオ コーデックを選択する必要があります。これには、同じリージョンのデバイスおよび別のリージョンのデバイスに対するコーデックの設定が含まれます。SIP プロトコルを使用するようにトランクまたはサードパーティの電話機を設定し、[メディアターミネーションポイントが必須(Media Termination Point Required)]が有効である場合、Cisco Unified Communications Manager の管理ページの[MTP優先発信コーデック(MTP Preferred Originating Codec)]フィールドでは G.711 コーデックしか選択できません。[メディアターミネーションポイントが必須(Media Termination Point Required)]オプションが有効な SIP トランクまたはサードパーティの SIP 電話機をそのリージョンのデバイス プールに割り当てる場合は、SIP デバイスと MTP デバイスの間のリージョンの関係が、G.711 と同じまたはより広い帯域幅のコーデック(G.711 コーデックまたはワイドバンド/AAC コーデック)を使用するように設定されていることを確認する必要があります。
SIP サービス パラメータ
SIP タイマーとカウンタは、異なるサーバの機能に応じて個別に設定できます。サービス パラメータの設定方法の詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「サービス パラメータの設定」を参照してください。
SIP タイマーとカウンタ
SIP タイマーとカウンタは、設定可能なサービス パラメータとして機能します。次の表では、各種の SIP タイマーとカウンタについて説明し、それぞれのデフォルト値と範囲値を示します。
表42-1 Cisco Unified Communications Manager がサポートする SIP タイマー
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Trying |
500 ミリ秒 |
100 ~ 1000 |
Cisco Unified Communications Manager が INVITE を再転送するまで、100 応答を待機する時間 |
Connect |
500 ミリ秒 |
100 ~ 1000 |
Cisco Unified Communications Manager が 2xx 応答を INVITE に再転送するまで、ACK 応答を待機する時間 |
Disconnect |
500 ミリ秒 |
100 ~ 1000 |
Cisco Unified Communications Manager が BYE 要求を再転送するまで、2xx 応答を待機する時間 |
Expires |
180000 ミリ秒 |
60000 ~ 300000 |
INVITE 要求に与えられた有効時間 |
rel1xx |
500 ミリ秒 |
100 ~ 1000 |
Cisco Unified Communications Manager が reliable1xx 応答を再転送するまで待機する時間 |
PRACK |
500 ミリ秒 |
100 ~ 1000 |
Cisco Unified Communications Manager が PRACK 要求を再転送するまで待機する時間 |
PUBLISH |
500 ミリ秒 |
100 ~ 1000 |
このパラメータには、Cisco Unified Communications Manager が PUBLISH 要求を再送信するまでの最長待機時間をミリ秒単位で指定します。応答を受信しないまま、このタイマーで指定した期間が経過した場合、Cisco Unified Communications Manager はこのタイマーが時間切れになった時点で要求を再送信します。 |
(注) SIP デバイスが TCP 転送を使用しているときにタイマーがタイムアウトすると、SIP デバイスは再転送を行いません。デバイスの再試行は、TCP に依存します。
表42-2 Cisco Unified Communications Manager がサポートする SIP 再試行カウンタ
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INVITE |
6 |
1 ~ 10 |
INVITE の再試行回数 |
Response |
6 |
1 ~ 10 |
RESPONSE の再試行回数 |
BYE |
10 |
1 ~ 10 |
BYE の再試行回数 |
Cancel |
10 |
1 ~ 10 |
Cancel の再試行回数 |
PRACK |
6 |
1 ~ 10 |
PRACK の再試行回数 |
Rel1xx |
10 |
1 ~ 10 |
Reliable 1xx 応答の再試行回数 |
PUBLISH |
6 |
1 ~ 10 |
このパラメータには、Cisco Unified Communications Manager が PUBLISH メッセージを再送信する回数を指定します。 |
サポートされるオーディオ メディア タイプ
次の表は、サポートされている各種オーディオ メディア タイプの説明です。
表42-3 サポートされるオーディオ メディア タイプ
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G.711 u-law |
PCMU |
0 |
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GSM Full-rate |
GSM |
3 |
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G.723.1 |
G723 |
4 |
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G.711 A-law |
PCMA |
8 |
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G.722 |
G722 |
9 |
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G.728 |
G728 |
15 |
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G.729 |
G729 |
18 |
annex A と B のすべての組み合せをサポート |
RFC2833 DTMF |
テレフォニー イベント |
動的に割り当て |
利用可能な範囲は 96 ~ 127 |
AAC |
mpeg4-generic |
動的に割り当て |
利用可能な範囲は 96 ~ 127 |
ILBC |
iLBC |
動的に割り当て |
利用可能な範囲は 96 ~ 127 |
サポートされるビデオ メディア タイプ
次の表は、サポートされている各種ビデオ メディア タイプの説明です。
表42-4 サポートされるビデオ メディア タイプ
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H.261 |
H261 |
31 |
H.263 |
H263 |
34 |
H.263+ |
H263-1998 |
利用可能な範囲は 96 ~ 127 |
H.263++ |
H263-2000 |
利用可能な範囲は 96 ~ 127 |
H.264 |
H264 |
利用可能な範囲は 96 ~ 127 |
サポートされるアプリケーション メディア タイプ
次の表は、サポートされているアプリケーション メディア タイプの説明です。
表42-5 サポートされるアプリケーション メディア タイプ
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H.224 FECC |
H224 |
利用可能な範囲は 96 ~ 127 |
サポートされる T38fax ペイロード タイプ
次の表は、サポートされているペイロード タイプの説明です。
表42-6 サポートされる T38fax ペイロード タイプ
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T38fax |
該当なし |
適用外 |
トランクの SIP プロファイル
SIP トランクと SIP エンドポイントは、SIP プロファイルを使用します。SIP トランクは、SIP プロファイルを使用して[デフォルトMTPテレフォニーイベントペイロードタイプ(Default MTP Telephony Event Payload Type)]と[180で早期メディアを無効化(Disable Early Media on 180)]を定義します。SIP プロファイルの詳細については、「エンドポイントの SIP プロファイル」、および『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「SIP プロファイルの設定」を参照してください。
SIP トランク セキュリティ プロファイル
Cisco Unified Communications Manager の管理ページでは、SIP トランクのセキュリティ関連設定をグループ化し、単一のセキュリティ プロファイルとして複数の SIP トランクに割り当てることができます。セキュリティに関連する設定には、デバイス セキュリティ モード、ダイジェスト認証、および着信/発信転送タイプの設定があります。設定した値を SIP トランクに適用するには、[トランクの設定(Trunk Configuration)]ウィンドウでセキュリティ プロファイルを選択します。詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager セキュリティ ガイド 』を参照してください。
Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x システムと 6.0 システム間の SIP トランク
Cisco Unified Communications Manager リリース 6.0 以降および Cisco Unified Communications Manager リリース 4.0 以降は、SIP トランクで使用される場合、転送タイプとして TCP および UDP をサポートしています。ただし、リリース 4.x は SIP コールごとに TCP 接続を 1 つ使用します。6.0 では、複数の SIP コールに同一の TCP 接続で対応できます(これは TCP 接続の再利用と呼ばれます)。
次のシスコ製品は TCP をサポートしていますが、すべてが TCP の再利用をサポートしているわけではありません(詳細については、 表42-7 を参照してください)。
• Cisco Unified Communications Manager リリース 4.1:TCP 接続の再利用は不可
• Cisco Unified Communications Manager リリース 4.2:TCP 接続の再利用は不可
• Cisco Unified Communications Manager リリース 5.0(2):TCP 接続の再利用が可能
• Cisco Unified Communications Manager リリース 5.0(4):TCP 接続の再利用が可能
• Cisco Unified Communications Manager リリース 5.1(1):TCP 接続の再利用が可能
• Cisco Unified Communications Manager リリース 6.0(1):TCP 接続の再利用が可能
• Cisco IOS 12.3(8)T 以降:TCP の再利用が可能
• Cisco IOS 12.3(8)T より前:TCP の再利用は不可
表42-7 に、Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x、5.x、6.x、および IOS ゲートウェイでサポートされる SIP トランク接続を示します。
表42-7 SIP トランクの互換性マトリクス
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Cisco Unified Communications Manager
リリース 4.x
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Cisco Unified Communications Manager
リリース 5.x
および 6.x
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Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x |
UDP/TCP |
UDP のみ |
UDP のみ |
UDP/TCP |
Cisco Unified Communications Manager リリース 5.x および 6.x |
UDP のみ |
UDP/TCP |
UDP/TCP |
UDP のみ |
IOS 12.3(8)T |
UDP のみ |
UDP/TCP |
UDP/TCP |
UDP のみ |
|
UDP/TCP |
UDP のみ |
UDP のみ |
UDP/TCP |
リリース 6.x システムが複数のコールを TCP ベースの SIP トランク経由で 4.x システムに発信した場合、4.x システムはコールを 1 つだけ接続します。残りのコールは接続されません。4.x システムと 6.x システムの間で SIP トランクを使用する場合は、[発信トランスポートタイプ(Outgoing Transport Type)]として UDP を使用するように両方のシステムを設定して、リリース 4.x システムと 6.x システム間のコールが適切に接続されるようにする必要があります( 表42-7 を参照してください)。
UDP を設定するには、Cisco Unified Communications Manager の管理ページを使用します。
• Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x システムに接続するリリース 6.0 以降のシステムでは、[SIPトランクセキュリティプロファイルの設定(SIP Trunk Security Profile Configuration)]ウィンドウで、[発信トランスポートタイプ(Outgoing Transport Type)]として UDP を選択します。
• Cisco Unified Communications Manager リリース 6.x システムに接続するリリース 4.0 以降のシステムでは、[トランクの設定(Trunk Configuration)]ウィンドウで、[発信トランスポートタイプ(Outgoing Transport Type)]として UDP を選択します。
SIP トランクと転送タイプの詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager セキュリティ ガイド 』および『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』を参照してください。
SIP トランクでの SIP フォーク
SIP トランク上で Cisco Unified Communications Manager によって送信されるコール設定(INVITE)要求は、SIP プロキシで複製し、複数の宛先に転送することができます(この処理はフォークと呼ばれます)。Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x、5.x、および 6.0 はフォークをサポートしていますが、次の制限事項があります。
• Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x は、6 つ以上の宛先からの暫定応答(180 Ringing など)を受け付けません。応答のあった最初の 5 つ以外の宛先から、成功応答(200 Ok)が返されても受け付けません。
• Cisco Unified Communications Manager リリース 5.x および 6.x は、21 以上の宛先からの暫定応答(180 Ringing など)を受け付けません。応答のあった最初の 20 個以外の宛先から、成功応答(200 Ok)が返されても受け付けません。
• セッション(メディア)記述を含む暫定応答(183 Session Progress)を受け付けた Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x、5.x、または 6.x は、同じ宛先からの成功(200 Ok)応答のみ受け付けます。セッション記述が暫定応答から成功応答に変更されても受け付けません。
• Cisco Unified Communications Manager リリース 4.x、5.x、または 6.x が暫定応答に対して(SIP の PRACK メソッドを使用して)受信応答するように設定されている場合、Cisco Unified Communications Manager は最初に応答のあった宛先以外からの暫定応答および成功応答を受け付けません。
他の設定オプションは、Cisco Unified Communications Manager でのダウンストリーム SIP フォークのサポートには影響しません。
Cisco Unified Communications Manager がサポートする SIP 機能
Cisco Unified Communications Manager は、SIP コールに関して次の機能をサポートします。
• 「SIP エンドポイントと Cisco Unified Communications Manager 間の基本コール」
• 「SIP エンドポイントと Cisco Unified Communications Manager 間の DTMF リレー コール」
• 「MTP が割り当てられた場合に開始される補助サービス」
• 「ブラインド転送時の呼び出し音」
• 「SIP エンドポイントが開始する補助サービス」
• 「拡張されたコール識別サービス」
• 「RDNIS」
• 「リダイレクション」
SIP エンドポイントと Cisco Unified Communications Manager 間の基本コール
この項では、3 つの基本コールのシナリオについて説明します。2 つのシナリオでは着信および発信コールについて説明し、もう 1 つのシナリオでは初期メディアの使用(コールの接続または応答の前のメディア接続)について説明します。この項では、次のコールのシナリオについて説明します。
• 「基本の発信コール」
• 「基本の着信コール」
• 「初期メディアの使用」
基本の発信コール
任意の Cisco Unified Communications Manager デバイスから SIP デバイスに発信コールを開始できます。Cisco Unified Communications Manager デバイスには、Foreign Exchange Station(FXS)ゲートウェイに接続された SCCP または SIP IP Phone またはファックス デバイスが含まれます。たとえば、SCCP IP Phone は、SIP エンドポイントにコールできます。コールに応答する SIP デバイスが、メディアの確立をトリガーします。
基本の着信コール
FXS ゲートウェイに接続された SIP IP Phone またはファックス デバイスを含む SIP ネットワーク上の任意のデバイスが、着信コールを開始できます。たとえば、SIP エンドポイントは、SCCP IP Phone へのコールを開始できます。コールに応答する SCCP IP Phone が、メディアの確立をトリガーします。
初期メディアの使用
PSTN は、初期メディアにインバンドの進行情報(呼び出しトーンまたはビジー シグナルなど)のシグナリングを提供しますが、これは SIP では行われません。発信側は、コーデック使用状況、IP アドレス、ポート番号などのセッション記述プロトコル(SDP)情報を、発信 INVITE メッセージに含めます。この応答として、終端側は自身のコーデック、IP アドレスおよびポート番号を 183 Session Progress メッセージで送信し、初期メディアの候補であることを示します。
183 Session Progress 応答は、メッセージ本体にメディア セッションに関する情報が含まれることを示します。180 Alerting および 183 Session Progress メッセージの両方に、コールへの応答が行われる前に初期メディア セッションの確立を許可する SDP を含めることができます。
初期メディアが、接続の前に SIP エンドポイントに配信される必要がある場合、Cisco Unified Communications Manager は常に SDP を含む 183 Session Progress メッセージを送信します。Cisco Unified Communications Manager は SDP を含む 180 Alerting メッセージを生成しませんが、SDP を含む 180 Alerting メッセージの受信はサポートしています。
[SIP プロファイルの設定(SIP Profile Configuration)]ウィンドウには、[180 で早期メディアを無効化(Disable Early Media on 180)]チェックボックスがあります。ローカル呼び出し音を着信側電話機で再生し、200OK 応答の受信と同時にメディアを接続するには、このチェックボックスをオンにします。『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「SIP プロファイルの設定値」を参照してください。
SIP エンドポイントと Cisco Unified Communications Manager 間の DTMF リレー コール
各エンドポイントで使用されている DTMF 方式に基づいて、MTP が必要に応じて動的に割り当てられるようになりました。
Dissimilar DTMF 方式の、SIP デバイスからゲートウェイまたは IVR システムへの DTMF ディジットの転送
次の例(図42-2)は、1 次群速度インターフェイス(PRI)ゲートウェイと通信を行うために、MTP ソフトウェア デバイスが SIP 電話機からのインバンド DTMF ディジットを処理する例を示しています。RTP ストリームは、ダイナミック ペイロード タイプが示すように、RFC 2833 DTMF を伝送します。
図42-2 DTMF ディジットの転送
図42-2 では、メディア ストリーミングから開始し、MTP デバイスは DTMF がダイナミック ペイロード タイプであることを通知されています。
1. SIP 電話機は、ユーザがキーパッドで番号を入力すると、ペイロード タイプの応答を開始します。SIP 電話機は、DTMF インバンド ディジット(RFC 2833 による)を MTP デバイスに転送します。
2. MTP デバイスは、インバンド DTMF ディジットを抽出し、アウトバンドのディジットを Cisco Unified Communications Manager に渡します。
3. Cisco Unified Communications Manager は、次にアウトバンドの DTMF ディジットをゲートウェイまたは対話型音声応答(IVR)システムにリレーします。
Dissimilar DTMF 方式の DTMF ディジットの生成
「SIP エンドポイントと Cisco Unified Communications Manager 間の DTMF リレー コール」の説明のように、SIP は、DTMF インバンド ディジットを送信し、Cisco Unified Communications Manager はアウトバンド ディジットだけをサポートします。ソフトウェア MTP デバイスは、アウトバンドの DTMF トーンを受信し、インバンドの DTMF トーンを SIP クライアントに生成します。
図42-3 DTMF ディジットの生成
図42-3 では、メディア ストリーミングから開始し、MTP デバイスには DTMF ダイナミック ペイロード タイプであることが通知されています。
1. SCCP IP Phone のユーザは、キーパッドでボタンを押します。Cisco Unified Communications Manager は、SCCP IP Phone からアウトバンド ディジットを収集します。
2. Cisco Unified Communications Manager は、アウトバンド ディジットを MTP デバイスに渡します。
3. MTP デバイスは、ディジットを RFC 2833 RTP 準拠のインバンド ディジットに変換し、それを SIP クライアントに転送します。
MTP が割り当てられた場合に開始される補助サービス
システムは、SCCP エンドポイントが SIP コールで開始するすべての補助サービスをサポートしています。SCCP エンドポイントは、接続された SIP デバイスに影響を与えることなく Cisco Unified Communications Manager 内部で管理されます。当初の接続情報に加えられる変更は、Remote-Party-ID ヘッダーを使用する re-INVITE または UPDATE メッセージで更新されます。Remote-Party-ID ヘッダーの詳細については、『 SIP Extensions for Caller Identity and Privacy 』を参照してください。
「ブラインド転送時の呼び出し音」では、ブラインド転送について説明します。ブラインド転送は、Cisco Unified Communications Manager がメディア アナウンスを提供する必要があるため、補助サービスと同様に固有の動作になります。
ブラインド転送時の呼び出し音
SCCP が開始するブラインド転送では、コールが接続されてから Cisco Unified Communications Manager がトーンまたは呼び出し音を生成する必要があります。つまり、Cisco Unified Communications Manager は、ブラインド転送のメディア アナウンスを提供します。
ブラインド転送は、転送のターゲットがコールに応答する前に、転送側の電話機が発信者を宛先の回線に接続する際に行われます。ブラインド転送は、転送側の 1 つが呼び出し音の鳴っている電話機(呼び出し音が受信されている)に発信者を接続するか、または発信者を第三者に接続する前に第三者と話をする、打診転送(在席転送)とは異なります。
SCCP IP Phone が開始するブラインド転送は、最初に接続された SIP デバイス ユーザへの呼び出し音を許可します。Cisco Unified Communications Manager は、呼び出し音を実行するために、MTP デバイスとともに配置されることがあるアナンシエータ ソフトウェア デバイスを使用します。
アナンシエータを使用すると、Cisco Unified Communications Manager は、SCCP IP Phone、ゲートウェイ、およびその他の IP テレフォニー デバイスに対して事前定義されたトーンおよびアナウンスを再生できます。これらの事前定義されたトーンおよびアナウンスは、ユーザにコール ステータスに関する詳細情報を提供します。
SIP が開始するコール転送
Cisco Unified Communications Manager は、SIP が開始するコール転送をサポートし、REFER 要求または Replaces ヘッダーを含む INVITE メッセージを受信します。
コール保留
Cisco Unified Communications Manager は、SIP デバイスまたは Cisco Unified Communications Manager デバイスが開始するコール保留と取得をサポートします。たとえば、SCCP IP Phone のユーザが別のユーザが保留にしているコールを取得する場合、Cisco Unified Communications Manager は re-INVITE メッセージを SIP プロキシに送信します。re-INVITE メッセージには、現在の接続先を反映させるために、更新された Remote-Party-ID 情報が含まれています。Cisco Unified Communications Manager が最初にコールを開始した場合、Remote-Party-ID ヘッダーの Party フィールドには発信側が設定されます。そうでない場合は着信側が設定されます。Party フィールド パラメータの詳細については、「拡張されたコール識別サービス」を参照してください。
自動転送
Cisco Unified Communications Manager は、SIP デバイスまたは Cisco Unified Communications Manager デバイスが開始するコール転送をサポートします。SIP デバイスがコール転送のリダイレクションを要求すると、Cisco Unified Communications Manager が要求を処理します。Cisco Unified Communications Manager が開始するコール転送には、SIP のリダイレクション メッセージは使用されません。Cisco Unified Communications Manager は、内部でリダイレクションを処理し、Remote-Party-ID ヘッダーを介して発信側の SIP エンドポイントに接続側の情報を伝送します。
拡張されたコール識別サービス
この項では、Cisco Unified Communications Manager の次の SIP 識別サービスおよび Cisco Unified Communications Manager が SIP にこれらの識別サービスを伝送する方法について説明します。
• 回線識別サービス
–Calling Line Identification Presentation(CLIP)および Calling Line Identification Restriction(CLIR)
–Connected Line Identification Presentation(COLP)および Connected Line Identification Restriction(COLR)
• 名前識別サービス
–Calling Name Identification Presentation(CNIP)および Calling Name Identification Restriction(CNIR)
–Connected Name Identification Presentation(CONP)および Connected Name Identification Restriction(CONR)
Cisco Unified Communications Manager では、これらの識別サービスを提供するための柔軟な設定オプションにより、コールごとの設定や、SIP シグナリング インターフェイスごとの静的な事前設定を行うことができます。
CLIP および CNIP
Cisco Unified Communications Manager は、Cisco Unified Communications Manager からの初期 INVITE メッセージの From ヘッダーおよび Remote-Party-ID ヘッダーに発信側回線(または番号)および発信者名の表示情報を含めます。From ヘッダーのフィールドは、要求の発信側を示します。Cisco Unified Communications Manager は、18x、200、および re-INVITE メッセージの Remote-Party-ID ヘッダーを使用して、接続先の名前および識別情報を伝送します。Remote-Party-ID ヘッダーには、発信者 ID およびプライバシーの詳細も含まれます。発信者 ID サービスの場合、Cisco Unified Communications Manager は、Remote-Party-ID ヘッダーの Party フィールドに発信側を設定します。
(注) Remote-Party-ID ヘッダーの詳細については、『Cisco IOS SIP Configuration Guide』を参照してください。
例:
Bob Jones(外部電話番号=8005550100)が SIP シグナリング インターフェイスにダイヤルアウトします。From and Remote-Party-ID ヘッダーには、次の内容が含まれます。
From: “Bob Jones” <sip:8005550100@localhost>
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<8005550100@localhost; user=phone>; party=calling;screen=no;privacy=off
CLIR および CNIR
発信側回線(または番号)および発信者名の制限設定は、SIP シグナリング インターフェイス レベルまたはコール単位で行われます。SIP トランク レベルの設定は、コール単位の設定より優先されます。コール単位で設定する方法については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「ルート グループの設定」を参照してください。
また、発信側回線および発信者の制限は、それぞれ個別に設定できます。たとえば、番号だけを制限し、名前の表示を許可するように選択できます。
例 1
発信者名を制限した場合、Cisco Unified Communications Manager は、From ヘッダー内の発信者名を設定可能な文字列に設定します。Cisco Unified Communications Manager によって、Remote-Party-ID ヘッダーの表示フィールドには実際の名前が含まれるように設定されますが、Privacy フィールドは name に設定されます。
From: “Anonymous” <sip:8005550100@localhost>
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<sip:9728135001@localhost; ;user=phone>; party=calling;screen=no;privacy=name
例 2
発信番号を制限した場合、Cisco Unified Communications Manager は、From ヘッダーの発信側回線を省略します。ただし、Cisco Unified Communications Manager は、Remote-Party-ID ヘッダーには発信側回線を含め、Privacy フィールドを privacy=uri に設定します。
From: “Bob Jones” <sip:@localhost>
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<sip:8005550100@localhost; ;user=phone>; party=calling;screen=no;privacy=uri
例 3
発信者の名前および番号を制限した場合、Cisco Unified Communications Manager は、Remote-Party-ID ヘッダー の Privacy フィールドを privacy=full に設定します。
From: “Anonymous” <sip:localhost>
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<sip:8005550100@localhost;user=phone>; party=calling;screen=no;privacy=full
COLP および CONP
Cisco Unified Communications Manager は、接続先回線および名前の識別を補助サービスとして使用し、発信側に接続側の番号と名前を提供します。From ヘッダーのフィールドは、要求の発信側を示します。Cisco Unified Communications Manager は、18x、200、および re-INVITE メッセージの Remote-Party-ID ヘッダーを使用して、接続先の情報を伝送します。Cisco Unified Communications Manager は、Remote-Party-ID ヘッダーの Party フィールドに着信側を設定します。
例 1
Cisco Unified Communications Manager は、宛先アドレスが 800555 の INVITE メッセージを受信します。Cisco Unified Communications Manager は、次のように接続側の名前を 18x および 200 メッセージに含めます。
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<98005550100@localhost; user=phone>; party=called;screen=no;privacy=off
COLR および CONR
SIP トランク レベルまたはコール単位で接続先回線(または番号)および名前の制限を設定できます。SIP トランク レベルの設定は、コール単位の設定より優先されます。コール単位で設定する方法については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「ルート グループの設定」を参照してください。
発信者 ID サービスと同様に、ユーザは接続側の番号と名前をそれぞれ個別に制限できます。
例 1
Cisco Unified Communications Manager は、Remote-Party-ID ヘッダーの表示フィールドには実際の名前が含まれるように設定しますが、Privacy フィールドを privacy=name に設定します。
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<8005550100@localhost; user=phone>; party=called;screen=no;privacy=name
例 2
接続側の番号を制限した場合、Cisco Unified Communications Manager は、Remote-Party-ID ヘッダーには接続側の番号を組み込みますが、Privacy フィールドを privacy=uri に設定します。
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<8005550100@localhost; user=phone>; party=called;screen=no;privacy=uri
例 3
接続側の名前と番号を制限した場合、Cisco Unified Communications Manager は、Remote-Party-ID ヘッダーの Privacy フィールドを privacy=full に設定します。
Remote-Party-ID: “Bob Jones”<8005550100@localhost; user=phone>; party=called;screen=no;privacy=full
RDNIS
Cisco Unified Communications Manager は、初期 INVITE メッセージの SIP Diversion ヘッダーを使用して、利用可能な RDNIS 情報を伝送します。
リダイレクション
次のシナリオは、[SIP プロファイルの設定(SIP Profile Configuration)]ウィンドウの[アプリケーションによるリダイレクト(Redirect by Application)]チェックボックスをオフにした場合の動作です。以前は、SIP ネットワークからのリダイレクションは SIP スタック レベルで処理され、システムはリダイレクション応答内の連絡先へのリダイレクション要求をすべて受け取り、リダイレクション応答を受信した同じトランクへ転送していました。コールのリダイレクト方法を処理または制限するための追加ロジックが、参照されたり適用されたりすることはありませんでした。たとえば、発信 INVITE への 3xx 応答内のリダイレクション接続先が Cisco Unified Communications Manager に登録済みの電話機で、スタックがリダイレクションを処理している場合、コールは Cisco Unified Communications Manager 電話機へ直接ルーティングされずに、同じトランクへリダイレクトして戻されていました。制限された電話番号(国際電話番号など)へリダイレクトされると、スタック レベルでのリダイレクション処理により、コールがブロックされずにルーティングされます。
[SIP プロファイルの設定(SIP Profile Configuration)]ウィンドウにある[アプリケーションによるリダイレクト(Redirect by Application)]チェックボックスをオンにし、このオプションを SIP トランクに設定すると、Cisco Unified Communications Manager 管理者は次のことができます。
• 特定のコーリング サーチ スペースを、3xx 応答内で受信したリダイレクト接続先に適用する。
• コールが正しくルーティングされるよう、リダイレクト接続先に番号分析を適用する。
• サービス パラメータで設定できるリダイレクション(再帰リダイレクション)の番号を制限することで、DOS 攻撃を防止する。
• リダイレクションの実行中に、別の機能を起動できるようにする。
詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「SIP プロファイルの設定値」および「トランクの設定」を参照してください。
SIP PUBLISH
SIP PUBLISH は、IP Phone のプレゼンス情報を Cisco Unified Communications Manager リリース 6.0 から Cisco Unified Presence(CUP)リリース 6.0 に SIP トランク経由で送信するための最適なメカニズムを提供します。このメカニズムによって、パフォーマンスが向上します。また、サイレントやモビリティなどの回線ごとのプレゼンス情報も提供します。サポートされるのは発信 PUBLISH だけです(Cisco Unified Communications Manager リリース 5.0 および 6.0 は、プレゼンスに関して CUP Release 1.0 と通信するときに SUBSCRIBE/NOTIFY を使用します)。
PUBLISH は、イベント状態を発行するための SIP メソッドです。イベント状態をユーザ エージェントから発行するためのフレームワークは、RFC 3903 で規定されています。発行先となるのは、このイベント状態を集約し、関係するパーティに SIP Events フレームワークを通じて配信するエンティティです。RFC 3903 に記述されているメカニズムを拡張すると、適切なイベント パッケージで処理される任意のイベント状態を発行することができます。
また、RFC 3903 は、プレゼンス ユーザ エージェントによってプレゼンス集約側にプレゼンス状態を発行するための、このフレームワークの厳格な使用方法も定義しています。
SIP トランクは、Cisco Unified Communications Manager に登録されている電話機のプレゼンス情報を CUP と連携して提供します。リリース 5.0 では、CUP はプレゼンス情報を Cisco Unified Communications Manager から SIP 登録メカニズムを通じて取得していました。
Cisco Unified Communications Manager から CUP へのプレゼンスの相互対話は、SIP 登録メカニズムが使用されている場合は正常に機能しますが、このメカニズムはパフォーマンスの低下の原因になります。Cisco Unified Communications Manager と CUP の両方が、監視対象となる電話機ごとに、それぞれ個別の登録ダイアログを維持する必要があります。さらに、1 台の電話機を 2 人のユーザが監視し、各ユーザの監視規則が異なっている場合、CUP は同じ番号に関する 2 つの SUBSCRIBE 要求を Cisco Unified Communications Manager SIP トランクに発行します。
Cisco Unified Communications Manager リリース 6.0 では、SIP トランクは PUBLISH を CUP とのプレゼンス相互対話のメカニズムとして使用できます。Cisco Unified Communications Manager は Event Publication Agent(EPA; イベント発行エージェント)として動作し、管理対象の電話機のプレゼンス情報を発行します。CUP は Event State Compositor(ESC; イベント状態集約システム)として動作し、発行されたプレゼンス情報を受信および集約して、監視者の電話機の表示を更新します。
Cisco Unified Communications Manager および Cisco Unified Presence(CUP)の高レベル アーキテクチャの概要
図42-4 に、Cisco Unified Communications Manager、CUP、および Cisco Unified IP Phone がどのように連係して動作するかを示します。
• Cisco Unified Communications Manager がすべての IP Phone を管理し、Cisco Unified Communications Manager が SIP または SCCP インターフェイスを使用して電話機を制御します。
• IP Phone と CUP の間には HTTP インターフェイスも存在します。このインターフェイスは、電話機の画面を更新するために CUP で使用されます。また、ユーザのログイン/ログアウト アクティビティの検出にも使用されます。
• SIP トランク インターフェイスは、プレゼンス データを Cisco Unified Communications Manager と CUP の間で交換するために使用されます。
図42-4 SIP PUBLISH の高レベル アーキテクチャ
Cisco Unified Communications Manager の管理ページにおける PUBLISH の設定のヒント
Cisco Unified Communications Manager の管理ページで SIP トランクを PUBLISH 用に設定するときは、次の設定のヒントを参考にしてください。
• SIP の[トランクの設定(Trunk Configuration)]ウィンドウで、Cisco Unified Presence(宛先アドレス)にアクセスするように SIP トランクを設定します。
ヒント マルチノード クラスタでの分散処理のパフォーマンスを最大限まで高めるには、デフォルトのデバイス プールを使用するように SIP トランクを設定することをお勧めします。
• Cisco CallManager サービスの[サービスパラメータ設定(Service Parameters Configuration)]ウィンドウにある[CUP PUBLISH Trunk]フィールドで、設定済みの SIP トランクを選択します。
• Cisco Unified Presence エンド ユーザを設定し( [ユーザ管理]>[エンドユーザの設定(End User Configuration)] )、ライセンス単位をユーザに割り当てます( [システム]>[ライセンス] >[機能割り当て] )。
• エンド ユーザをライン アピアランスに関連付けます( [デバイス]>[電話の設定(Phone Configuration)] )。[電話の設定(Phone Configuration)]ウィンドウで、ユーザが Cisco Unified Presence へのアクセスに使用する DN をクリックします。[エンドユーザの関連付け]ボタンをクリックします。[ユーザの検索と一覧表示(Find and List Users)]ウィンドウで、Cisco Unified Presence にアクセスするエンド ユーザを選択します。
(注) 1 つのライン アピアランスを 5 人までのエンド ユーザに関連付けることができます。
• SIP Trunk PUBLISH での DND サポート:DND は、リリース 6.0 ではデバイス単位で適用されます。このため、デバイスが DND 状態に移行した場合、このデバイスに関連付けられている CUP 対応のすべてのライン アピアランスが発行される可能性があります。デバイスが DND 状態に移行した場合は、DND に加えてビジー/アイドル ステータスも一緒に発行されるため、CUP で柔軟にデータを処理することができます。
• シェアドライン:電話機 A と電話機 B が DN 1000 を共有している場合、ユーザが電話機 A の受話器を取って回線 1000 上でコールを発信すると、Cisco Unified Communications Manager は回線 1000 がビジーであることを CUP に通知します。この情報によって、監視者は DN 1000 のすべての回線がビジーになっていると誤解します。電話機 B の回線 1000 はアイドルのままであるため、これは正確な情報を表していません。Cisco Unified Communications Manager は、電話機 A の回線 1000 がビジーであることを CUP に通知します。リリース 6.0 では、Cisco Unified Communications Manager はライン アピアランス別に発行を行います。システムは、ライン アピアランスを(DN とデバイスの)ペアとみなします。
• 複数パーティション:Cisco Unified Communications Manager は DN のプレゼンス ステータスを発行し、DN が関連付けられているパーティションも示します。
• ユーザ名の関連付け:シェアドラインと複数パーティションがサポートされている場合、CUP は、電話機ごとに 1 つの DN という前提で動作できません。また、Cisco Unified Communications Manager システム全体にわたって 1 つのパーティションという前提で動作することもできません。リリース 6.0 では、ライン アピアランスをエンド ユーザに関連付けることができます。SIP トランクは、ライン アピアランスに関連付けられているエンド ユーザに代わって、そのライン アピアランスのステータスを発行します。つまり、このステータスを使用して CUP 対応の回線を識別できます。ライン アピアランスは、エンド ユーザに関連付けられている場合、CUP 対応であるとみなされます。したがって、そのライン アピアランスのプレゼンス情報が発行されます。
PUBLISH のサービス パラメータ
PUBLISH の設定には、次の Cisco CallManager サービス パラメータが使用されます。
• CUPS PUBLISH Trunk
• Default PUBLISH Expiration Timer
• Minimum PUBLISH Expiration Timer
• Retry Count for SIP Publish
• SIP Publish Timer
Serviceability のパフォーマンス カウンタ
Cisco Unified Serviceability は、PUBLISH に関連する次のパフォーマンス カウンタを収集し、表示します。
• SIP_StatsPublishIns
• SIP_StatsPublishOuts
• SIP_StatsRetryPublishOuts
• SIP_StatsRetryRequestsOut
Cisco Unified Communications Manager リリース 5.0 には次のパフォーマンス カウンタがありますが、これらの値は PUBLISH 機能の影響を受けます。
• SIP_SummTotalOutReq
• SIP_SummTotalInRes
• SIP_StatsRetryRequestsOut
セキュリティ上の推奨事項
RFC 3903 では、アクセス制御、DoS 攻撃(サービス拒絶攻撃)、リプレイ アタック、および中間者攻撃などの問題に対処するため、TLS とダイジェスト認証の使用が推奨されています。Cisco Unified Communications Manager および Cisco Unified Presence は TLS とダイジェスト認証をサポートしているため、リリース 6.0 での変更点はありません。管理者は、Cisco Unified Communications Manager および Cisco Unified Presence で TLS とダイジェスト認証を設定し、有効にすることができます。また、IPSec を TLS の代替手段として使用することもできます。
BAT のサポート
CUP ユーザを Cisco Unified Communications Manager リリース 6.0 に移行する場合は、次の BAT ツールが役立ちます。
• BAT では、Cisco Unified Communications Manager を 5.x から 6.0 にアップグレードした後に、すべての CUP ライセンス取得済みユーザ、それらのユーザのプライマリ内線番号、およびそれらのユーザに関連付けられるデバイス ライン アピアランスを検証するためのツールが提供されます。このツールが必要になるのは、(すべてのバックエンド登録が削除され、CUP ユーザの新しいライン アピアランス ベースのプレゼンスを使用できるようにする必要があるため)CUP のアップグレードまたは移行中に Cisco Unified Communications Manager リリース 6.0 に接続するときです。移行を実行するため、BAT はエクスポート機能と更新機能を使用します。エクスポート csv の形式は、User ID、Device、Directory Number、および Partition です。最後の 3 つのカラムがライン アピアランスを形成します。
• エクスポート ウィンドウおよび更新ウィンドウにアクセスするには、 [一括管理]>[ユーザ]>[ラインアピアランス]>[ラインアピアランスのエクスポート] および [一括管理]>[ユーザ]>[ラインアピアランス]>[ラインアピアランスの更新] を選択します。
• エクスポート ウィンドウおよび更新ウィンドウには、[CUPユーザのラインア ピアランスのみエクスポート(Export line appearances for CUP users only)]チェックボックス(および[CUPユーザのラインアピアランスのみ更新(Update line appearance for CUP users only)]チェックボックス)があります。このチェックボックスをオンにすると、CUP ユーザのエクスポート操作または更新操作が実行されます。CUP ユーザ以外のユーザは、エクスポートおよび更新されません。
SIP トランク設定チェックリスト
表42-8 に、Cisco Unified Communications Manager に SIP トランクを設定するために必要な手順の概要を、関連した手順と項目の参照先と一緒に示します。
設定上の考慮事項
Cisco Unified Communications Manager は設定に関する検証を行わないため、SIP トランクを設定する場合は、次の制約事項を考慮してください。
• Cisco Unified Communications Manager は、ルート リストまたはルート グループに割り当てられている SIP トランク上の発信 MWI 通知をサポートしません。Cisco Unified Communications Manager が SIP トランク上で発信 MWI 通知を送信する場合は、SIP トランクをルート パターンに直接割り当てる必要があります。
• SIP ルーティングを機能させるためには、各 SIP トランクが一意の SIP ルーティング設定を持つ必要があります。Cisco Unified Communications Manager は、着信 SIP メッセージからの情報の組み合せを使用して、SIP メッセージを正しい SIP トランクにルーティングします。次の条件があてはまる場合、SIP トランクのルーティング設定は一意であることに注意してください。
–[着信転送タイプ(Incoming Transport Type)]フィールド、[着信ポート(Incoming Port)]フィールド、および[着信先アドレス(Destination Address)]フィールドに同じ値が設定されている他のトランクがない。
–[着信転送タイプ(Incoming Transport Type)]で Transport Layer Security(TLS)が選択されており、かつ[着信ポート(Incoming Port)]フィールドおよび[X.509の件名(X.509 Subject Name)]フィールドに同じ値が設定されている他のトランクがない。[X.509の件名(X.509 Subject Name)]フィールドは、名前のリストで構成できます。
[着信転送タイプ(Incoming Transport Type)]、[着信ポート(Incoming Port)]、および[X.509の件名(X.509 Subject Name)]の各フィールドは、Cisco Unified Communications Manager の管理ページの[SIPトランクセキュリティプロファイルの設定(SIP Trunk Security Profile Configuration)]で設定します。 [システム] >[セキュリティプロファイル] >[SIPトランクセキュリティプロファイル(SIP Trunk Security Profile)] の順に選択します。このメニュー オプションにより、[SIPトランクセキュリティプロファイルの検索と一覧表示(Find and List SIP Trunk Security Profiles)]ウィンドウが表示されます。このウィンドウを使用して、既存の SIP トランク セキュリティ プロファイルを検索するか、 [新規追加] をクリックして新しいプロファイルを追加します。
[着信先アドレス (Destination Address)]および選択した SIP トランク セキュリティ プロファイルは、Cisco Unified Communications Manager の[トランクの設定(Trunk Configuration)]ウィンドウで設定します。 [デバイス] >[トランク] を選択します。このメニュー オプションにより、[トランクの検索と一覧表示(Find and List Trunks)]ウィンドウが表示されます。このウィンドウを使用して、既存のトランクを検索するか、 [新規追加] をクリックして新しいトランクを追加し、トランク タイプとして SIP トランクを選択します。
次に、有効な設定例を示します。
Trunk#1: Incoming Transport Protocol=TCP/UDP, Incoming Port=5060, Destination Address=10.10.10.1
Trunk#2: Incoming Transport Protocol=TCP/UDP, Incoming Port=5060, Destination Address=10.10.10.2
Trunk#3: Incoming Transport Protocol=TCP/UDP, Incoming Port=5080, Destination Address=10.10.10.1
Trunk#4: Incoming Transport Protocol=TLS, Incoming Port=5061, X.509 Subject Name=my_ccm1, my_ccm2
Trunk#5: Incoming Transport Protocol=TLS, Incoming Port=5061, X.509 Subject Name=my_ccm3
Trunk#6: Incoming Transport Protocol=TLS, Incoming Port=5081, X.509 Subject Name=my_ccm_1
次に、無効な設定例を示します。
Trunk#1: Incoming Transport Protocol=TCP/UDP, Incoming Port=5060, Destination Address=10.10.10.1
Trunk#2: Incoming Transport Protocol=TCP/UDP, Incoming Port=5060, Destination Address=10.10.10.1
Trunk#3: Incoming Transport Protocol=TLS, Incoming Port=5061, X.509 Subject Name=my_ccm1, my_ccm2
Trunk#4: Incoming Transport Protocol=TLS, Incoming Port=5081, X.509 Subject Name=my_ccm2
Trunk#5: Incoming Transport Protocol=TLS, Incoming Port=5061, X.509 Subject Name=my_ccm2
Trunk#6: Incoming Transport Protocol=TLS, Incoming Port=5081, X.509 Subject Name=my_ccm2
Trunk#7: Incoming Transport Protocol=TCP/UDP, Incoming Port=5060, Destination Address=myhost.domain.com
Trunk #2 と Trunk #1 が競合しています。プロトコル、着信ポート、および宛先アドレスが同じであるためです。
Trunk #5 と Trunk #3 が競合しています。プロトコルと着信ポートが同じであり、両方のトランクの X.509 の件名のリストに my_ccm2 が含まれているためです。
Trunk #6 と Trunk #4 が競合しています。プロトコル、着信ポート、および X.509 の件名が同じであるためです。
Trunk #7 と Trunk #1 が競合しています。myhost.domain.com が 10.10.10.1 に解決される場合、プロトコル、着信ポート、および宛先アドレスが同じであるためです。
表42-8 トランク設定チェックリスト
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ステップ 1 |
SIP プロファイルを作成します(オプション)。 SIP トランク セキュリティ プロファイルを作成します(オプション)。 SIP トランクを作成します。 宛先アドレスを設定します。 宛先ポートを設定します。 |
『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「SIP プロファイルの設定」 『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「トランクの設定」 『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「トランクの設定値」 |
ステップ 2 |
SIP トランクをルート パターンまたはルート グループに関連付けます。 |
『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「SIP ルート パターンの設定」 『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「ルート グループの設定」 『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「ルート リストの設定」 |
ステップ 3 |
SIP トランクをリセットします。 |
『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「トランクの設定」 |
ステップ 4 |
必要に応じて、SIP タイマー、カウンタ、およびサービス パラメータを設定します。 PUBLISH を使用して Cisco Unified Presence と通信する場合は、[サービスパラメータ設定(Service Parameters Configuration)]ウィンドウの[CUP PUBLISH Trunk]フィールドで設定済みトランクを選択します。 |
『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「サービス パラメータの設定」 特定の設定可能な値については、「SIP タイマーとカウンタ」を参照してください。 |
SIP の規格
Cisco Unified Communications Manager では、次の SIP 規格がサポートされています。
• 「RFC3261、RFC3262(PRACK)、RFC3264(offer/answer)、RFC3311(UPDATE)、3PCC」
• 「RFC3515(REFER) Replaces および Referred-by ヘッダー」
• 「Remote Party Id(RPID)ヘッダー」
• 「Diversion ヘッダー」
• 「Replaces ヘッダー」
• 「Join ヘッダー」
• 「RFC3265 + ダイアログ パッケージ」
• 「RFC3265 + プレゼンス パッケージ」
• 「RFC3265 + KPML パッケージ」
• 「RFC3265 + RFC3842 MWI パッケージ(要求なしの通知)」
• 「Remotecc」
• 「RFC4028 セッション タイマー」
RFC3261、RFC3262(PRACK)、RFC3264(offer/answer)、RFC3311(UPDATE)、3PCC
この SIP 規格では、Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• 基本コール
• 保留と再開
• 保留音
• 鳴り分け
• 短縮ダイヤル(ボタン)
• 短縮ダイヤル(ソフトキー)
• コール転送(486 および 302 サポート)
• ミートミー
• ピックアップ、グループ ピックアップ、他グループ ピックアップ
• 3 方向コール(ローカル SIP 電話機の混在)
• コールパーク取得
• シェアドライン:基本コール
RFC3515(REFER) Replaces および Referred-by ヘッダー
これらの SIP 規格では、次の Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• 打診転送
• 初期在席転送
• ブラインド転送
Remote Party Id(RPID)ヘッダー
この SIP 規格では、Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• Calling Line ID(CLID)
• Calling Party Name ID(CNID)
• Dialed Number ID Service(DNIS)
• Call by call Calling Line ID Restriction (call by call CLIR)
RPID は、識別サービスに使用される SIP ヘッダーです。RPID は、発信側、着信側、および接続先リモート側の情報を相手に示します。その目的は、識別とコールバック、合法的な代行受信、緊急サービスに対するユーザ ID とユーザ ロケーションの指示、およびアカウンティング サービスと課金サービス用のユーザの識別です。
Diversion ヘッダー
この SIP 規格では、Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• Redirected Number ID Service(RDNIS)
• Call Forward All Activation、Call Forward Busy、Call Forward No Answer
Replaces ヘッダー
この SIP 規格では、次の Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• シェアドライン:リモート再開
Join ヘッダー
この SIP 規格では、次の Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• シェアドライン:割り込み
RFC3265 + ダイアログ パッケージ
この SIP 規格では、次の Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• シェアドライン:リモート状態通知
RFC3265 + プレゼンス パッケージ
これらの SIP 規格では、次の Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• 短縮ダイヤルでの BLF
• Missed、Placed、Received Calls リストでの BLF
RFC3265 + KPML パッケージ
これらの SIP 規格では、次の Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• 番号収集
• OOB DTMF
RFC3265 + RFC3842 MWI パッケージ(要求なしの通知)
これらの SIP 規格では、次の Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• メッセージ受信のインジケータ
Remotecc
この SIP 規格では、Cisco Unified Communications Manager 機能がサポートされます。
• Ad Hoc 会議
• 最後の参加者の削除
• Conflist
• 即時転送
• コール パーク
• コール選択
• シェアドライン:プライバシー
RFC4028 セッション タイマー
この SIP 規格は、re-INVITE による SIP セッションの定期的なリフレッシュを許可し、リモートへのシグナリング接続がまだ有効であるかどうかを Cisco Unified Communications Manager が判別できるようにします。
SIP 電話機でサポートされる Cisco Unified Communications Manager の機能
次の Cisco Unified Communications Manager 機能が Cisco Unified IP Phone でサポートされます。
• 「ダイヤル プラン」
• 「サイレント」
• 「PLAR」
• 「ソフトキー処理」
• 「DSCP 設定」
• 「エンドポイントの SIP プロファイル」
• 「Network Time Protocol(NTP)」
• 「CTI サポート」
ダイヤル プラン
SCCP 電話機とは異なり、SIP 電話機は番号をローカルで収集してから、その番号を Cisco Unified Communications Manager へ送信します。SIP 電話機はローカル ダイヤル プランを使用して、十分な番号がいつ入力されたかを認識し、収集された番号を使用して INVITE をトリガーします。SRST モードの SIP 電話機は、Cisco Unified Communications Manager から受信した設定済みダイヤル プランを使用し続けます。詳細については、「SIP ダイヤル規則」を参照してください。
サイレント
Cisco Unified Communications Manager は、SIP デバイスまたは Cisco Unified Communications Manager デバイスが開始するサイレント(DND; Do Not Disturb)をサポートします。DND ステータスの変化は、SIP デバイスから、SIP PUBLISH メソッドを使用して Cisco Unified Communications Manager にシグナリングされます。DND ステータスの変化は、Cisco Unified Communications Manager から、dndupdate Remote-cc REFER 要求を使用して SIP デバイスにシグナリングされます。また、Cisco Unified Communications Manager はデバイスの DND ステータスとともにデバイスのビジー/アイドル ステータスを発行することもできます。
PLAR
Private Line Automatic Ringdown(PLAR)とは、従来のテレフォニー システムで使用される用語で、ユーザが電話機をオフフックすると、常に電話機が事前に設定された番号をすぐにダイヤルするような電話機の設定のことです。ユーザは、その電話機(または回線)から別の番号をダイヤルできません。これは、Cisco Unified Communications Manager でパーティション、コーリング サーチ スペース(CSS)、およびトランスレーション パターンを使用して SCCP IP Phone に実装されます。電話機に PLAR がセットアップされていることは、デバイス設定にも回線設定にも表示されません。
管理者は SIP ダイヤル規則を使用して、SIP 電話機に PLAR を設定します。PLAR に設定された電話機は、適切なターゲット パターンを指定する、1 回線ダイヤル プランが設定されます。ユーザがオフフックすると、電話機は INVITE にターゲット文字列を含めて、すぐに要求を Cisco Unified Communications Manager へ送信します。ユーザは、番号を入力しません。詳細については、『Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド』の「 SIP のダイヤル規則の設定」を参照してください。
ソフトキー処理
管理者は、Cisco Unified Communications Manager の管理ページを使用すると、電話機に表示されるソフトキー セットを変更できます。キーの追加と削除、およびキー位置の変更ができます。このデータはデータベースに書き込まれ、電話機の登録/初期化プロセスの一部として、Station メッセージで SCCP 電話機へ送信されます。しかし、SIP をサポートする Cisco Unified IP Phone では Station メッセージでキーが送信されず、Cisco Unified Communications Manager TFTP サーバがソフトキー セットの含まれたファイルを作成します。SIP 電話機はそのファイルを TFTP サーバから取得し、電話機に内蔵されたソフトキー セットが、新しいソフトキー セットで上書きされます。このようにして、Cisco Unified Communications Manager はデフォルトのソフトキーを変更できます。また、Cisco Unified Communications Manager はソフトキー イベントを操作することで、一部の電話機レベルの機能を直接制御できます。
[ソフトキーテンプレートの設定(Softkey Template Configuration)]ウィンドウを使用して設定した機能が SIP 電話機でサポートされていない場合、そのソフトキーは表示されますが、そのキーが有効でないというメッセージが電話機に表示されます。この動作は、SCCP 電話機の動作と一貫性があります。
[ダイヤル]ソフトキーは、SIP 電話機が SRST モードで動作しているときに、デフォルトのソフトキー セットの一部として表示されます。
(注) SIP を実行している Cisco Unified IP Phone 7905、7912、7940、および 7960 は、ソフトキーをダウンロードしません。これらの電話機では、ソフトキーが電話機のファームウェアに内蔵されています。
DSCP 設定
SIP を実行している Cisco Unified IP Phone は、デバイスにダウンロードされたコンフィギュレーション ファイルから DSCP 情報を取得します。DSCP 設定はデバイスに適用されますが、SCCP 電話機はコール用に DSCP 設定を取得できます。DSCP 値は、[エンタープライズ パラメータ設定(Enterprise Parameters Configuration)]ウィンドウと Cisco Unified Communications Manager の[サービス パラメータ設定(Service Parameter Configuration)]ウィンドウで設定されます。
エンドポイントの SIP プロファイル
SIP 属性はほとんど変更されないため、Cisco Unified Communications Manager は SIP プロファイルを使用して、SIP トランクおよび Cisco Unified IP Phone に関連した SIP 属性を定義します。これらの属性を、すべての SIP トランクと SIP 電話機に個別に追加することなく、プロファイルの中に入れておくと、管理者は SIP デバイスの設定に費やす時間を減らすことができ、デバイス グループの値を変更できるようになります。SIP プロファイルは、SIP のトランクと電話機を設定するときの必須フィールドなので、Cisco Unified Communications Manager にはデフォルトの SIP が用意されていますが、管理者はカスタマイズした SIP プロファイルを作成できます。SIP プロファイルを SIP デバイスに割り当てるには、Cisco Unified Communications Manager の管理ページを使用します。
SIP 電話機のソフトウェアは、各電話機へ TFTP で送信された SIP 値の大部分を使用します。
SIP プロファイルの設定方法については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「SIP プロファイルの設定」を参照してください。
Network Time Protocol(NTP)
Cisco Unified Communications Manager の管理ページで電話用 Network Time Protocol(NTP)参照先を設定し、SIP を実行している Cisco Unified IP Phone が日付と時刻を、必ず NTP サーバから取得するようにできます。すべての NTP サーバから応答がない場合、SIP 電話機は、日付と時刻の REGISTER メッセージに対する 200 OK 応答内の日付ヘッダーを使用します。
電話用 NTP 参照先を Cisco Unified Communications Manager の管理ページに追加した後、それを日付/時刻グループに追加する必要があります。日付/時刻グループ内では、電話機が連絡する最初のサーバから順に、電話用 NTP 参照先に優先順位を付けます。
日付/時刻グループの設定はデバイス プール内で指定され、デバイス プールは電話機ページで指定されます。
NTP 参照先の設定方法については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の「電話機 NTP リファレンスの設定」の章を参照してください。
CTI サポート
回線側 SIP には CTI 機能が含まれます。この機能を使用すると、Cisco Unified Communications Manager Assistant などの CTI アプリケーションで、SIP を実行している Cisco Unified IP Phone(Cisco Unified IP Phone 7961 など)をサポートできます。SIP 電話機の CTI 機能は、SCCP 電話機のものと同等ですが、いくつかの例外があります。SIP 電話機でサポートされる CTI 機能には、テキストの表示、ランプの設定、トーンの再生、コール パーク、およびプライバシーのサポートが含まれます。CTI および Cisco Unified Communications Manager の詳細については、「 コンピュータ テレフォニー統合 」を参照してください。