Cisco Unified CME について
Cisco Unified Communications Manager Express(Cisco Unified CME)システムの設計および設定を行うには、次の概念を理解しておく必要があります。
• 「Cisco Unified CME の概要」
• 「ライセンス」
• 「PBX と キースイッチ モデル」
• 「コール詳細レコード」
• 「Cisco 3200 シリーズ上の Cisco Unified CME」
Cisco Unified CME の概要
Cisco Unified CME は、Cisco IOS ソフトウェアに直接統合された、機能豊富な、エントリ レベルの IP テレフォニー ソリューションです。Cisco Unified CME を使用すると、中小企業のお客様や、小規模の独立企業の事業所において、小規模オフィス向けの単一プラットフォーム上で音声、データ、IP テレフォニーを展開できます。これにより、業務を効率化しネットワーク コストを削減できます。
Cisco Unified CME は、同一オフィス内のデータ接続機能とテレフォニー ソリューションを必要とするお客様に最適です。サービス プロバイダーの管理サービスとして提供される場合も、企業から直接購入する場合も、Cisco Unified CME は小規模オフィス内の重要なテレフォニー機能のほとんどを提供すると同時に、従来のテレフォニー ソリューションにはない高度な機能も提供します。単一のコンバージド ソリューションを通じて IP テレフォニーおよびデータ ルーティングを提供することにより、お客様は運用費用およびメンテナンス費用を最適化し、オフィスの要件を満たす費用効率のよいソリューションを得ることができます。
Cisco Unified CME システムはモジュラ型であるため、非常に柔軟性があります。Cisco Unified CME システムは、ゲートウェイとして動作するルータと、IP Phone と電話端末をルータに接続する 1 つ以上の VLAN から構成されます。
図 1 に、Cisco Unified CME と、それに接続する複数の電話機およびデバイスによる一般的な導入を示します。Cisco Unified CME ルータは、公衆電話交換網(PSTN)に接続されます。ルータは、同じネットワークのゲートキーパーおよび RADIUS 課金サーバにも接続できます。
図 1 中小規模オフィス用の Cisco Unified CME
図 2 に、Cisco Unified CME を使用して、複数の Cisco Unified IP Phone を Cisco IAD2430 シリーズ ルータに接続している支社を示します。Cisco IAD2430 ルータは、WAN および PSTN への接続を提供するサービス プロバイダーのオフィスにあるマルチサービス ルータに接続されています。
図 2 サービス プロバイダー用の Cisco Unified CME
Cisco Unified CME システムは、次の基本構築ブロックを使用します。
• ephone または音声レジスタ プール:通常、物理的な電話機を表すソフトウェア概念ですが、ボイスメール システムに接続し、Cisco IOS ソフトウェアを使用して物理的な電話機の設定機能を提供するポートを表すときにも使用されます。各電話機には複数の内線番号を関連付けることができ、単一の内線番号を複数の電話機に割り当てることができます。1 台の Cisco Unified CME システムでサポートされる ephone および音声レジスタ プールの最大数は、システムに接続できる物理的な電話機の最大数と同じです。
• ディレクトリ番号:音声チャネルを電話機に接続する回線を表すソフトウェア概念。ディレクトリ番号は、Cisco Unified CME システムの仮想音声ポートを表します。そのため、Cisco Unified CME でサポートされるディレクトリ番号の最大数は、同時に発生できるコール接続の最大数になります。この概念は、従来のテレフォニー システムでの物理的な回線の最大数とは異なります。
ライセンス
Cisco Unified CME を使用するには、Cisco Unified CME の基本機能のライセンスと、電話機ユーザのライセンスを購入する必要があります。
cme-srst 機能ライセンスをアクティブにするには、『Activating CME-SRST Feature License』を参照してください。
(注) Cisco Unified Communications Manager など、H.450 規格をサポートしていないネットワーク デバイスへの H.323 コール転送および自動転送をサポートするには、ネットワークにタンデム ゲートウェイが必要です。タンデム ゲートウェイは、Cisco IOS release 12.3(7)T 以降のリリースを実行している必要があり、H.323 ゲートキーパー、IP-to-IP ゲートウェイ、および H.450 タンデム機能を含む Integrated Voice and Video Services 機能ライセンス(FL-GK-NEW-xxx)が必要です。
PBX と キースイッチ モデル
Cisco Unified CME システムを設定するときに、PBX と似たコール処理を行うか、キースイッチと似たコール処理を行うか、これらのハイブリッドにするかを決定する必要があります。Cisco Unified CME は、この点で高い柔軟性を備えていますが、選択するモデルについて明確に理解しておく必要があります。
PBX モデル
最も単純なモデルが PBX モデルです。システムのほとんどの IP Phone が、固有の内線番号を 1 つ持ちます。着信 PSTN コールは、アテンダント コンソールの受付係、または自動受付にルーティングされます。電話機ユーザは、別のオフィスまたは地理的に離れた場所にいることがあり、そのため、電話機を使用して、互いに連絡をとります。
このモデルでは、IP Phone に表示される各ボタンで 2 つの同時発生コールを処理できるように、ディレクトリ番号をデュアルラインとして設定することを推奨します。電話機ユーザは、電話機の青いナビゲーション ボタンを使用してコールを切り替えます。デュアルラインのディレクトリ番号を使用して、コール待機、コンサルト コール転送、および 3 者間会議をサポートするように設定できます(G.711 のみ)。
図 3 に、Cisco Unified CME ルータで受信され、指定された受付係または自動受付に送信されて(1)、要求された内線番号にルーティングされる(2)PSTN コールを示します。
図 3 PBX モデルを使用する着信コール
設定については、を参照してください。
キースイッチ モデル
キースイッチ システムでは、各電話機がどの回線の着信 PSTN コールにも応答できるように、ほとんどの電話機をほぼ同じ設定にできます。通常、電話機ユーザは近い場所にいて、電話機を使用して互いに連絡をとる必要がほとんどありません。
たとえば、3x3 キースイッチ システムには、3 台の電話機で共有する 3 本の PSTN 回線があり、3 本すべての PSTN 回線が 3 台すべての電話機に表示されます。これによって、受付係、自動受付サービス、または(高価な)DID 回線を使用せずに、すべての電話機からすべての PSTN 回線の着信コールに直接応答できます。また、回線は共有回線のように機能します。ある電話機でコールを保留し、コール転送を呼び出さずに別の電話機でそのコールを再開できます。
キースイッチ モデルでは、すべての IP Phone に同じディレクトリ番号が割り当てられます。着信コールが到達すると、使用可能なすべての IP Phone が呼び出されます。システム内で同時に複数のコールが存在する場合、個々のコール(呼び出し中または保留中)が表示され、対応する IP Phone の回線ボタンを押すことで直接選択できます。このモデルでは、ある電話機でコールを保留し、別の電話機で回線ボタンを使用してコールを選択するだけで、電話機間でコールを移動できます。キースイッチ モデルでは、ディレクトリ番号に対応する PSTN 回線自体がデュアルライン構成をサポートしないため、デュアルライン オプションはあまり適しません。また、デュアルライン オプションを使用すると、コール カバレッジ(ハント)の構成がより複雑になります。
キースイッチ モデルは、PSTN 回線と 1 対 1 に対応するディレクトリ番号のセットを作成することによって設定します。次に、これらの ephone-dn に着信コールをルーティングするように PSTN ポートを設定します。このモデルで割り当てることができる PSTN 回線の最大数は、IP Phone で使用できるボタンの数によって制限されることがあります。その場合は、電話機からアクセスできる回線数を拡張するオーバーレイ オプションが役立ちます。
図 4 に、3 台すべての電話機の内線 1001 にルーティングされる(2)PSTN からの着信コール(1)を示します。
図 4 キースイッチ モデルを使用する着信 PSTN コール
設定については、を参照してください。
ハイブリッド モデル
PBX 設定とキースイッチ設定は、同じ IP Phone に混在させることができます。PBX スタイルの発信に使用される電話機ごとの固有の内線番号と、キースイッチ スタイルのコール操作で使用される共有回線の両方を含めることができます。単一回線とデュアルラインのディレクトリ番号を、同じ電話機で組み合わせることができます。
最も単純なキースイッチの展開では、個々の電話機にプライベート内線番号がありません。キー システムの電話機に個別の回線がない場合、回線は内線ではなく、インターコムと呼ばれることがあります。「インターコム」という用語は、「内部(インターナル)コミュニケーション」から派生しました。このコンテキストで、自動ダイヤルまたは自動応答の共通の「インターコム press-to-talk」動作は、オプションは存在していても想定されていません。
キー システムに個別のインターコム(内線)回線がある場合は、通常、インターコム(内線)回線を使用して、あるキー システムの電話機から別の電話機に PSTN コールを転送できます。接続されている PSTN 回線のコンテキストでコール転送が呼び出されると、発信コンサルト コールは通常、電話機のいずれかのインターコム(内線)回線ボタンを使用して、転送する側の電話機から転送先の電話機に発信されます。転送されたコールが転送先の電話機に接続され、転送がコミットされると(転送元が電話を切ると)、通常、両方の電話機のインターコム回線が解放され、転送先のコールは元の PSTN 回線ボタンのコンテキストで継続されます(すべての PSTN 回線が、すべての電話機で直接使用可能です)。転送されたコールは(PSTN 回線ボタンで)保留でき、後で PSTN 回線を共有する別の電話機で再開できます。
たとえば、図 4 に示すような 3x3 キースイッチ システムを設計してから、別の固有の内線を各電話機に追加できます(図 5 を参照)。この設定によって、各電話機が、別の電話機の呼び出しまたはコールの発信に使用できる「プライベート」回線を持つことができます。
図 5 ハイブリッド PBX キースイッチ モデルを使用する着信 PSTN コール
コール詳細レコード
アカウンティング処理では、Cisco 音声ゲートウェイで作成された各コール レッグのアカウンティング データが収集されます。この情報は、課金記録の生成やネットワーク分析などの後処理作業に使用できます。音声ゲートウェイは、Cisco で定義された属性を含むコール詳細レコード(CDR)の形式でアカウンティング データをキャプチャします。ゲートウェイは、RADIUS サーバ、syslog サーバ、またはフラッシュまたは FTP サーバに格納できる .csv 形式のファイルに CDR を送信できます。CDR の生成については、『 CDR Accounting for Cisco IOS Voice Gateways 』を参照してください。
Cisco 3200 シリーズ上の Cisco Unified CME
Cisco Unified CME 4.3 以降のバージョンは、Cisco 3200 シリーズ モバイル アクセス ルータをサポートします。
Cisco 3200 シリーズ モバイル アクセス ルータは、セキュアなデータ、音声、およびビデオ コミュニケーションを提供し、場所や移動の影響を受けずにワイヤレス ネットワーク間でシームレスに移動できるようにします。このアクセス ルータの設計は高性能、小型、堅牢で、軍用車両、公衆安全、国土防衛、および運輸市場での使用に最適化されています。
Cisco 3200 シリーズ上の Cisco Unified CME は、通常は PSTN 接続がない、オンデマンドなネットワーク接続と音声およびデータ通信を必要とするサイトに展開できます。利点は次のとおりです。
• WAN リンクに障害が発生した場合でも、ローカルな音声通信が保証される
• リモート サイトでの音声通信の自律性が高まる
• H.323 および SIP トランクをサポート
• 持ち運びが簡単
Cisco 3200 シリーズ モバイル アクセス ルータのインストールと設定については、 Cisco 3200 シリーズ モバイル アクセス ルータ のマニュアルを参照してください。
Cisco 3200 シリーズの制約事項
Cisco 3200 シリーズ モバイル アクセス ルータには、次の制約事項があります。
• フラッシュ メモリが固定されている
• PSTN インターフェイスがない(FXS、E&M)
• 拡張統合モジュール(AIM)がない
• デジタル シグナル プロセッサ(DSP)がない
• アナログ インターフェイスがない
• T1/E1/BRI デジタル インターフェイスがない
• MGCP がサポートされない
次の Cisco Unified CME 機能は、Cisco 3200 シリーズではサポートされません。
• SIP 電話機
• 基本自動着信呼分配(B-ACD)および IVR アプリケーション
• Cisco Unified CME GUI
• Cisco Unified Contact Center Express(Unified CCX)統合
• ハードウェア会議およびトランスコーディング
• ボイスメール
Cisco 3200 シリーズ モバイル アクセス ルータのフラッシュ メモリの制限を緩和するには、Cisco Unified CME の電話機ファームウェアおよびその他のファイルを外部の TFTP サーバに保存します。 cnf-file location tftp コマンドを、の説明に従って使用してください。