Cisco Unified CME を使用した SRST フォールバック モード
この機能を使用すると、ルータはリモートのプライマリ、セカンダリ、またはターシャリ Cisco Unified Communications Manager インストレーションとの接続を失った場合、または WAN 接続がダウンした場合に、Cisco Unified IP Phone にコール処理サポートを提供できます。Cisco Unified SRST 機能が Cisco Unified CME によって提供されると、電話機のプロビジョニングは自動的に行われ、ハント グループやコール パーク、SCCP プロトコルを使用した Cisco Unity ボイス メッセージング サービスへのアクセスを含む、ほとんどの Cisco Unified CME 機能をフォールバックの間に電話機から使用できます。利点は、Cisco Unified Communications Manager ユーザが追加のライセンス コストなしに、フォールバック時により多くの機能にアクセスできることです。
この機能でフォールバック モード時に提供されるテレフォニー機能セットは限られています。次の機能は Cisco Unified CME を使用した SRST フォールバック サポートでサポートされないため、これらの機能が必要なお客様は、Cisco Unified SRST を使用する必要があります。
• フォールバック サービス時に 240 台を超える電話機
• Cisco VG 248 Analog Phone Gateway のサポート
• SRST フォールバック サービス時のセキュアな音声フォールバック
• SRST フォールバック サービスの、単純な 1 回限りの設定
Cisco Unified Communications Manager は、WAN により Cisco Integrated Services Router に接続されたリモート サイトにある Cisco Unified IP Phone をサポートします。この新しい機能では、Cisco Unified CME で使用可能な数多くの機能と、Cisco Unified SRST で使用可能な IP Phone 設定の自動検出機能との組み合わせにより、Cisco Unified Communications Manager との通信が中断したときにシームレスなコール処理が提供されます。
システムで障害が自動的に検出されると、Cisco Unified SRST は Simple Network Auto Provisioning(SNAP)テクノロジーを使用して、ルータに登録されている Cisco Unified IP Phone のコール処理を提供するように支社のルータを自動設定します。プライマリ Cisco Unified Communications Manager との WAN リンクまたは接続が復元すると、コール処理はプライマリ Cisco Unified Communications Manager に戻ります。
コール処理が SRST フォールバック モードの Cisco Unified CME にフォールバックするときに、限られた数の電話機機能が自動的に検出されます。Cisco Unified CME を使用した SRST フォールバック サポートの利点は、自分の内線の一部または全部に対して、多数の内線(ephone-dn)とそれらが持つ追加機能とを含む、Cisco Unified CME 設定を事前に作成できることです。この設定には ephone-dn の設定が含まれますが、どの電話機(MAC アドレス)がどの ephone-dn(内線番号)に関連付けられるかは識別されません。
事前作成した設定を数箇所の Cisco Unified CME ルータにコピー アンド ペーストすることにより、同じようにレイアウトされるサイトに対して同じ総合的な設定を使用できます。たとえば、小売店が多数あり、それぞれに 5 ~ 10 台のレジがある場合、各店舗に同じ総合的な設定を使用できます。内線の範囲 1101 ~ 1110 を使用するとします。レジの数が 10 台未満の店舗では、設定に含めた ephone-dn エントリのいくつかを単に使用しないだけです。事前作成したよりも多い数の内線を持つ店舗では、自動プロビジョニング機能を使用して追加の電話機を設定します。店舗ごとに異なる唯一の設定は、個々の電話機の固有 MAC アドレスです。これらはフォールバック時に設定に追加されます。
電話機が SRST サービスのために Cisco Unified CME ルータに登録する場合、その電話機が特定の内線番号で設定されていることをルータが検出すると、ルータはその内線番号を持つ、既存の事前作成された ephone-dn を検索し、その ephone-dn 番号を電話機に割り当てます。その内線番号を持つ、事前作成された ephone-dn がなければ、Cisco Unified CME システムによって自動的に作成されます。このように、事前作成された設定がない内線には、WAN リンクでの障害発生後に電話機がルータに登録する場合に、SRST モードの Cisco Unified CME ルータによって番号および機能が「学習」されたときに、自動的にその内線番号と機能が読み込まれます。
Cisco Unified CME 機能を使用した SRST フォールバック サポートでは電話機に問い合わせて、その MAC アドレスと、各電話機に関連付けられた内線と ephone の間の関係を学習できます。この情報は、各電話機に Cisco Unified CME button コマンドを動的に作成して実行し、各電話機に内線と機能を自動的にプロビジョニングするために使用されます。
次のシーケンスは、Cisco Unified Communications Manager の電話機が Cisco Unified Communications Manager との接続を失って SRST モードの Cisco Unified CME ルータにフォールバックするときに、それらの電話機に Cisco Unified CME が SRST サービスを提供する様子を説明したものです。
フォールバック前
1. 電話機は Cisco Unified Communications Manager で通常どおりに設定されます。
2. Cisco Unified CME ルータの IP アドレスを Cisco Unified Communications Manager デバイス プールの SRST リファレンスとして登録します。
3. Cisco Unified CME ルータで SRST モードをイネーブルにします。
4. (任意)ephone-dn および機能を Cisco Unified CME ルータで事前作成します。
フォールバック中
5. フォールバック用にイネーブルにされている電話機が、デフォルトの Cisco Unified CME ルータに登録します。ディスプレイ付き IP Phone ごとに、telephony-service コンフィギュレーション モードで system message コマンドを使用して定義されたメッセージが表示されます。デフォルトでは、このメッセージは「Cisco Unified CME」です。
6. フォールバック電話機の登録中に、SRST モードのルータが電話機への問い合わせを開始して、電話機と内線の設定を学習します。次の情報がルータによって取得または「学習」されます。
– MAC アドレス
– 回線またはボタンの数
– ephone-dn とボタンの関係
– スピード ダイヤル番号
7. srst mode auto-provision コマンドで定義されるオプションによって、学習された電話機と内線の情報を Cisco Unified CME がその実行コンフィギュレーションに追加するかどうかが決まります。情報が追加された場合、それは show running-config コマンドを使用したときの出力に表示され、 write コマンドを使用したときに NVRAM に保存されます。
– Cisco Unified CME ルータが SRST フォールバック サービスを Cisco Unified Communications Manager に提供できるようにするには、 srst mode auto-provision none コマンドを使用します。
– srst mode auto-provision dn コマンドまたは srst mode auto-provision all コマンドを使用した場合、Cisco Unified CME ルータは、それが Cisco Unified Communications Manager から学習した電話機設定をその実行コンフィギュレーションに含めます。その後設定を保存すると、フォールバック電話機は、Cisco Unified CME-SRST 上でローカルに設定された電話機として処理されます。これは、それらの電話機のフォールバック動作に悪影響を与える可能性があります。
8. フォールバック モード中、Cisco Unified IP Pone は定期的に(デフォルトでは)120 秒ごとに Cisco Unified Communications Manager との接続を再確立しようと試みます。手動で Cisco Unified Communications Manager との接続を再確立するには、Cisco Unified IP Phone をリブートします。
9. Cisco Unified Communications Manager との接続が再確立すると、Cisco Unified IP Phone は SRST モードの Cisco Unified CME ルータへの登録を自動的に取り消します。ただし、WAN リンクが不安定な場合、Cisco Unified IP Phone が Cisco Unified Communications Manager と SRST モードの Cisco Unified CME ルータとに交互に接続することがあります。
WAN 経由で Cisco Unified CME-SRST ルータに接続された IP Phone は、WAN 経由で Cisco Unified Communications Manager との接続を確立できるようになるとすぐに、自分自身を Cisco Unified Communications Manager に再接続します。ただし、WAN リンクが不安定な場合、IP Phone は Cisco Unified CME-SRST と Cisco Unified Communications Manager とに交互に接続し、その結果、一時的に電話サービスが失われます(ダイヤル トーンが聞こえなくなります)。こうした再接続試行は、WAN リンクのフラッピング問題と呼ばれ、IP Phone が正常に Cisco Unified Communications Manager に再接続するまで続きます。
WAN リンクの中断は 2 タイプに分類でき、1 つは発生頻度の低いランダムな停止でそれ以外は安定した WAN で発生し、もう 1 つは発生頻度の高い散発的な中断で数分間続きます。
Cisco Unified Communications Manager と SRST の間の WAN リンクのフラッピング問題を解決するために、Cisco Unified Communications Manager には、エンタープライズ パラメータと [デバイス プール設定(Device Pool Configuration)] ウィンドウの設定に [接続モニタ間隔(Connection Monitor Duration)] と呼ばれるものが用意されています。(システム要件に応じて、管理者がいずれのパラメータを使用するかを決定します)。パラメータの値は XML コンフィギュレーション ファイルで IP Phone に配信されます。
• Cisco Unified Communications Manager クラスタのすべての IP Phone について接続期間モニタ値を変更するには、エンタープライズ パラメータを使用します。エンタープライズ パラメータのデフォルトは 120 秒です。
• 特定のデバイス プールのすべての IP Phone について接続期間モニタ値を変更するには、[デバイス プール設定(Device Pool Configuration)] ウィンドウを使用します。
Cisco Unified IP Phone は、アクティブ コールに関与する場合にセントラル オフィスにあるプライマリ Cisco Unified Communications Manager との接続を再確立しません。
最初のフォールバック後
ephone ハント グループなどの追加機能をセットアップでき、これには学習された内線と事前作成された内線を含めることができます。学習されたものか、設定されたものかに関係なく、IP Phone および内線は Cisco Unified CME 電話機の中核機能すべてを使用できます。
図 72 に、SRST フォールバック モードの Cisco Unified CME ルータに接続された複数の Cisco Unified IP Phone のある支社を示します。このルータは、WAN リンクと PSTN の両方への接続を提供します。Cisco Unified IP Phone は、WAN リンク経由でセントラル オフィスにあるプライマリ Cisco Unified Communications Manager に接続します。Cisco Unified CME は、WAN リンク経由の接続が中断したときに SRST サービスを電話機に提供します。
図 72 Cisco Unified CME を使用した SRST フォールバック サポート