日本の経営者はマネジメントには長けているが、方向性を指し示すリーダーシップの欠如している人が多いという。また、マネジメントとリーダーシップの違いを理解していない人が多いことも事態を悪くしているようだ。ではマネジメントとリーダーシップの違いはどこにあるのか? 竹村氏は、ジャングルで道を切り開く場合とハシゴを登る喩え話で、その違いを説明する。
マネジメントとリーダーシップの違いは、ジャングルに迷って助かる道を造る二人の役割を考えてみるとわかりやすい。一人は高い木に登り、どの方向に道を造ったらいいか指し示す。もう一人は地上で鎌をもってからまる枝を切り開いて道を造る。正しい方向に向かわなければ、どんなに精力的・効率的に道を切り開いても助かることはできない。つまり、正しい方向を示すことがリーダーシップ、実際に道を効率よく造ることがマネジメントというわけだ。
また、リーダーシップとマネジメントの違いは、はしごのかけ方と登り方に喩えることもできる。いくら一生懸命ハシゴを登っても、かけた場所が間違っていたら意味がない。ハシゴのてっぺんにいって初めて目的地が違っていたと気づくだけだ。マネジメントはハシゴを効率よく登ることであり、リーダーシップはハシゴが掛け違っていないかを判断することでもある。
普遍化すると、マネジメントは「物事を正しく行うこと」、リーダーシップは「正しいことを行うこと」になる。つまり、マネジメントはどうすれば目標を達成できるかという質問に答える「手段」であり、リーダーシップは何を達成したいのかという質問に答える「望む結果」に相当する。
当然、プロジェクトは QCD (品質・コスト・納期) のはっきりした目標があるはずであり、当初はその実現に向けて正しくハシゴをかけたはずだ。ところが成功率が3割を切るということはなぜか? 実際にプロジェクトが進行していくうちに、さまざまなレベルで当初予想していない事態に遭遇することは避けられない。マネジメントを強化して場当たり的な対症療法を行っても、正しく軌道修正を図ることは不可能なのだ。最終目標は変わらないものの、障害物を迂回するために正しくハシゴを掛け替えるリーダーシップが求められる。これは全体を統括するプロジェクトマネージャだけでなく、最初に障害に遭遇する最前線のチームメンバー全員にも必要となる。つまり、一人ひとりにリーダーシップが必要となるという認識の欠如が成功率の低さにつながっている。