Cisco Exclusive Interview「命は使うためにある! ~電脳の荒野で戦う男カツヤのデジタル武装術」勝谷誠彦

INDEX

  1. 40の手習い~ボクはなぜデジタル化を目指したのか
  2. 顔の見えない無法地帯~ IT ワールドにもの申す!
  3. ネット世界の歩き方~戦場と同じ、覚悟と準備を常に怠るな
  4. 脳のカギ穴を開こうよ
  5. 本職はアジテーター?

ネット世界の歩き方~戦場と同じ、覚悟と準備を常に怠るな

― 日本のネット環境は非常に危なっかしいものであるとのことですが、勝谷さん自身、メールアドレスをいろいろな場所で公開されていますし、普段のご発言もかなりアグレッシブなものが多いこともあって、自ら「危険な状況」をつくって罠を張っているような印象も受けるのですが……。

いやいや、そんなことはないですよ(笑)。ただ、IT ワールドはまさしく地雷三昧。誰もが気楽に参加できるように見せかけているけれど、実際には細心の注意を払って参加すべき「戦場」なんです。危ないと思ったら近づかない、覚悟と準備を常に怠らない。この荒野を歩くには武装が不可欠だと肝に銘じるべきですね。ボクの場合、確かに公開している情報は多いですが、それはそのためにつくった囮のようなものですから、ここを攻撃されても痛くも痒くもありません。本当の個人情報はどこにも出していませんし、攻撃されるだろうと想定される場所にはそれなりの措置が講じてあるわけです。

一方で、人間というのは、自分の顔だけでなく相手の顔がはっきり見えていると、そこまで卑劣にはなれないところがある。だから、攻撃は最大の防御になり得ますし、常に守備を整えつつ攻撃には攻撃で対応するべきでしょう。さらに、相手を脅し続ける根気も必要です。

と、まあ、ここまで備えているので、ボクのほうは来るなら来いという感覚ですね。念のために言っておきますが、ボクは何も戦闘マニアってわけじゃなく、あくまで必要に駆られて武装してるだけなんですよ(笑)。

― 当事者である個人の主体的な自覚が必要なわけですが、一般のユーザーは具体的にはどのように武装すべきなのでしょうか。

昔は生きることが大変だったから、そのこと自体が人生の主目的でしたが、今やあまりにもカンタンに生きていける世の中になってしまって、「時間つぶし」が産業のテーマになっていたりするでしょう。若い人たちはゲームをクリアすることに躍起になっていたりするけれど、ボクに言わせたら、そんなことに使う時間なんてないだろう、と。

こういう知的難民の時代だからこそ、自分の身を守るために必要になるのが「教養」なんです。単なる飾りや一面的な知識ではなく、倫理-良識-礼儀という三位一体の横断的教養のことですけれどね。これを身につけるために一番いいのは本を読むこと。だいたいネットは文字の世界なのに、漢字もろくに読めない、書けない人が多すぎますよ。

今は勉強したい人にとっては非常に学びやすい時代だと思うし、ボクなんかここ 10年くらいが、自分の人生の中で最も勉強した時期だと言っていいくらい勉強しています。たとえば、検索って最高に面白いじゃないですか。自分なりに関連付けたキーワードをいくつか打ち込むと、一瞬にしてそれらの要素がリンクされた情報が提示される。ネットワークがつながっているというのは本当にすごいことですよ。

ただし、ネット上で入手できる情報と書物から得られる教養は全く異質のものですね。ネットの伝播性は噂を伝えるには適しているけれど、本質を伝えるものではない。知識や情報というのは、そこにあるだけでは意味がありません。ネットで情報を検索し、それを書物の中に再発見し、実際に足を使って検証する。ネット-古典-事実、この 3つをつなげて意味のある情報にしていくのは、ボクら人間の役目です。

また、この世界は互いの顔が見えないからこそ、倫理-良識-礼儀が問われる場所だということ。今の若い人たちにはそういう認識が著しく欠けていますから、ネット教育としてそういうシツケをしていくことも大事だと思います。IT ネットワークは確かにとても便利なツールだけど、あくまでも主体はこちらにあるわけで、使う側のレベルが非常に問われる世界でもあると思います。

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