Cisco Exclusive Interview「命は使うためにある! ~電脳の荒野で戦う男カツヤのデジタル武装術」勝谷誠彦

INDEX

  1. 40の手習い~ボクはなぜデジタル化を目指したのか
  2. 顔の見えない無法地帯~ IT ワールドにもの申す!
  3. ネット世界の歩き方~戦場と同じ、覚悟と準備を常に怠るな
  4. 脳のカギ穴を開こうよ
  5. 本職はアジテーター?

脳のカギ穴を開こうよ

― 自己実現へのアドバイス、あるいは勝谷さんなりの「自己鍛錬法」のようなものがあったら、教えてください。

まず、“ムダなことはやめろ”ということですね。今の日本は過剰な自由のある国で、その自由にがんじがらめになってる印象がありますが、空気のような楽観主義に偏りすぎです。誰もが平等なんて大嘘だし、一攫千金の大儲けができるのは一握りのエリートだけ。この社会が非常に厳しい競争社会であるという現実、そして自分自身の資質というか限界もきちんと認識しないといけません。

ボクは頻繁にネットを使いますが、遊びや時間つぶしで使うことはないんですよ。H なサイトももちろん見ますが、それで原稿を書いてお金を稼ぐんだから「勉強」です(笑)。いろいろな方面に手を広げているけれど、ボクの中では自分がやっている仕事には何の区別もありません。ただ、その各ポジションのトップにいたいと思う。そのためには最新情報を仕入れる必要があるし、戦場に誰も行かないなら行くし、ほとんど個人の物理的限界量の原稿を書いています。

なんでこんなに頑張るのかといったら、「命は使うためにある」と思っているから。これはたぶん坂本竜馬の言葉だったと思います。あるいは、ソクラテスの「ただ生きるな、よく生きろ」でもいいけれど、暇つぶしに躍起になってだらだら生き延びているだけならアメーバと同じ。死ぬときに何も残りませんよ。まあ、結局はその人の中の優先順位の問題になってくるわけですけれどね。

― どうやって自分の優先順位を決定していくか、そこのところの見極めに悩む人は多いかもしれませんね。

「自分探し」という言葉は嫌いですけれど、結局はそういう話になりますよね。ボクのケースでいうと、子供の頃にけっこういいものを食わせてもらっていたんですが、そんなことはすっかり忘れていた 37~8歳の頃、ある雑誌でいきなり食べ物の連載をもつことになったんです。男が食べ物のことをぐちぐち書くなんてと思っていたんですが、その仕事をやっているうちに眠っていた味覚の記憶が刺激されたのか、ポンとカギ穴のようなものが開いたらしく、「オレの舌って天才か?」と思うくらい、微妙な味覚の比較対照がいともカンタンにできるようになってしまった。一度そうなると、次から次へと有機的な連鎖反応が続いていくんです。脳をハードディスクに例えると、まず知識がインプット、蓄積されていきますよね。そこに何らかの OS が入ると、経験則を網羅的、縦横無尽にそのデータベースを生かせるようになる。これを手中にすると話が早いと思いますね。

ボクの場合、知識量はごく普通だと思いますが、たぶん右脳と左脳の連携が非常にスムーズなんでしょうね。普通の人がなかなか連想しないような要素を秒速的に結びつけて処理する能力に長けているみたい。だからテレビのように瞬間瞬間が勝負の舞台には向いているタイプ。つまり、そこにボクの独自性があって、そこを買ってもらえればお仕事がいただけるわけですよ。こういうふうに、人間の脳というのは網羅的にあらゆる事象を結び付けることができるすごい潜在能力を持っているし、それは非常に個人的なその人固有の OS 能力なんです。だから、自分の資質に気づくことはとても大切だし、それを形にできたらさらに有利になる。具体的にいえば、「文章にする」「絵に描く」……もっといいのは商品化することですね。欲を持ち込むと、人間の潜在能力が飛躍的に開発されるのは、H なサイトが見たくて必死にインターネットを覚える男どもを見れば深くナットクできる話でしょ(笑)。

― 勝谷さんと同世代のサラリーマンに対して何か言いたいことはありますか?

ボクは 1960年生まれで、全共闘世代のあとで新人類の前という、ちょうどエアポケットの世代です。同世代の人たちにとにかく言いたいことはですね、「あなたたちの潜在能力は相当高い、それをもっとバクハツさせなさい!」ということです。

ボクらって、実は小学生のときに最もたくさん勉強をさせられていた世代らしいんですよ。派手にやってくれた全共闘世代を批判的に眺めてきたからシラケてるように見えるけれど、実は基礎学力があって冷静にいろんなことを分析してきている。現在、この世代の連中が、全国各地に全く新しい方法論で、一人ひとりポリティカルに立ち上がりつつあることをボクはひしひしと実感しているところです。長野県知事の田中康夫さんもほぼ同じ世代ですから、そういえば、何となく伝わるものがあるんじゃないでしょうか(笑)。何も会社や仕事のことじゃなくてもいいんです。あなたの切実な思い、その高い潜在能力をもう表に出してもいい頃でしょう。ボクはそう声を大にして言いたいですね。

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