概要
BAC は CPE と通信する場合、CPE Wan Management Protocol(CWMP)を使用し、TR-069 やその他の関連するデータ モデル仕様で規定されているパラメータに従います。CWMP には、CPE を安全に管理するための、次のような機能があります。
• 自動構成および動的サービス プロビジョニング
• ファームウェア管理
• デバイス診断
• パフォーマンスおよびステータスのモニタリング
BAC は、TR-069、TR-098、TR-104、および TR-106 標準に基づいて、デバイスをサポートします。サポートされるデバイスには、イーサネットおよび ADSL ゲートウェイ デバイス、無線ゲートウェイ、VoIP ATA などの CWMP 準拠のデバイスがあります。また、このリリースには、近く公開されるデータ モデル標準やベンダー固有のデータ モデルすべてをサポートする、実行時に拡張可能なデータ モデルが搭載されています。
BAC デバイス オブジェクト モデル
BAC デバイス オブジェクト モデルは、DPE 用のデバイス管理命令として生成される、構成およびファームウェア ルールを制御する上で重要です。このプロセスは RDU で発生し、名前付き属性および関連付けを通じて制御されます。
デバイス オブジェクト モデルには、次の主要オブジェクトがあります。
• IP デバイス:プロビジョニングを必要とするネットワーク エンティティを表します。
• オーナー ID:加入者の外部識別子を表します。
• デバイス タイプ:デバイスのタイプを表します。
• プロビジョニング グループ:特定の複数の DPE からサービスを受けるデバイスの論理グループを表します。
• サービス クラス:デバイスに割り当てる構成プロファイルを表します。
• ファイル:プロビジョニングで使用される、テンプレートやファームウェア イメージを含むファイルのコンテナとして機能します。
• グループ:デバイスをグループ化するための顧客固有のメカニズム。
BAC デバイス データ モデルの各種オブジェクトには、次の共通要素があります。
• 名前。たとえば、Gold サービス クラス。
• 属性。たとえば、Device ID や Fully Qualified Domain Name(FQDN)。
• 関連付け。たとえば、デバイスとサービス クラスの関連付け。
• プロパティ。たとえば、デバイスを特定のプロビジョニング グループに追加することを指定するプロパティ。
デバイス データ モデルの各種オブジェクト間のインタラクションについては、図4-1 を参照してください。
図4-1 デバイス オブジェクト モデル
BAC デバイス オブジェクト モデルでは、IP デバイスは、サービス クラス、プロビジョニング グループ、およびデバイス タイプに関連付けられます。次に、サービス クラスは、設定テンプレートおよびファームウェア ルール テンプレートに関連付けられます。ファイルは他のファイルと相互に関連付けることができます。たとえば、ファームウェア ルール テンプレートをファームウェア イメージに関連付けることができます。
表4-1 は、データ モデルの各オブジェクトに固有の属性および関連付けを示しています。
表4-1 デバイス オブジェクトの関連付け
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IP デバイス • 事前登録または登録解除が可能です(「BAC におけるデバイス配備」を参照)。 • 属性には、Device ID (OUI-Serial) や FQDN があります。 |
• オーナー ID • プロビジョニング グループ • サービス クラス • デバイス タイプ |
オーナー ID • デバイスに関連付けられます。そのため、デバイスに関連付けられた場合に限り存在します。 • グループ化をイネーブルにします。たとえば、 Joe に属しているデバイスすべてをグループ化できます。 |
IP デバイス |
デバイス タイプ • 技術(特に CWMP)を持つデバイスすべてに共通したデフォルトが格納されます。 • グループ化をイネーブルにします。たとえば、すべての CWMP デバイスをグループ化できます。 |
IP デバイス |
ファイル • プロビジョニングで使用されるファイルが格納されます(たとえば、設定テンプレートやファームウェア ルール テンプレート)。 |
サービス クラス |
サービス クラス • 属性には、Type、Name、および Properties があります(詳細については、「サービス クラス」を参照してください)。 |
• IP デバイス • ファイル • 設定テンプレート(オプション) • ファームウェア ルール テンプレート(オプション) |
サービス クラス
サービス クラスは RDU 抽象の 1 つで、テンプレートの形式でデバイスに渡される構成を表します。サービス クラスを使用すると、デバイスをグループ化して構成セットにすることができます。構成セットは、各種のサービス レベルまたはパッケージで CPE に提供されます。
サービス クラスには次の種類があります。
• 登録されているもの:デバイスの登録時にユーザによって指定されます。このサービス クラスは、明示的に、アプリケーション プログラミング インターフェイス(API)を介してデバイス レコードに追加されます。
• 選択されているもの:RDU 拡張によって選択され、返されます。
• 関連付けられているもの:登録、選択、またはその両方の操作によってデバイスに関連付けられます。このサービス クラスは、RDU 拡張によって選択されます。
デバイス用の選択されているサービス クラスが変更された場合は、デバイス構成用の命令が再生成されます。デバイス用の登録されているサービス クラスが変更された場合、それが選択されているサービス クラスでなくても、生成されたデバイス構成用の命令が再生成されます。その理由は、サービス クラスが適用するポリシーによって、選択されているサービス クラスが変更される可能性があるためです。
デバイス データ モデルに関連する概念には、次のものもあります。
• 「プロパティ階層」
• 「カスタム プロパティ」
プロパティ階層
BAC のプロパティを使用すると、BAC で API を介してデータにアクセスすることや、データを格納することができます。事前プロビジョニングされたデータ、検出されたデータ、およびステータス データは、API を介して、対応するオブジェクトのプロパティから取得できます。また、プロパティを使用すると、BAC を適切な粒度で(システム レベルからデバイス グループおよび個々のデバイスのレベルまで)設定できます。
デバイス関連のプロパティは、BAC プロパティ階層内の任意の許容ポイントで定義できます。プロパティを任意のレベルで割り当てられるかどうかの詳細については、API Javadoc を参照してください。
BAC プロパティ階層には柔軟性があり、システム全体またはサービス クラスのデフォルトを定義してから、個々のデバイスの設定で上書きすることができます。このプロパティ階層で使用できるプロパティは次のとおりです。
• デバイス
• プロビジョニング グループ
• サービス クラス
• デバイス タイプ
• システム デフォルト
カスタム プロパティ
カスタム プロパティを使用すると、新しいプロパティを定義できます。定義されたプロパティは、API を介して任意のオブジェクト上に格納することができます。
カスタム プロパティは、RDU で定義された変数名であるため、スペースを含めることはできません。テンプレート パーサーは、階層の下から上にプロパティを検索し、テンプレート オプション構文に変換します。詳細については、「カスタム プロパティ」を参照してください。
CPE パラメータの検出
BAC では、CWMP で定義されたとおり、Remote Procedure Call(RPC; リモート プロシージャ コール)を使用して CPE パラメータを読み込むことができます。この操作では、必ず、Data Synchronization Instruction が使用されます。この命令は、CPE デバイス データが変更された場合に、CPE デバイスからのデータを検出し、そのデータを RDU に報告して、RDU を最新の状態に保ちます。この命令を使用すると、ソフトウェア バージョンやモデル名などの重要なパラメータについて、RDU を最新の状態に保つことができます。また、これらのパラメータを使用して、特定のデバイス タイプに固有の構成命令など、別の命令を生成することもできます。
表4-2 は、BAC によって検出されるデフォルト パラメータを示しています。
表4-2 検出されるデフォルト パラメータ
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Inform.DeviceId.Manufacturer |
CPE の製造元を示します。 |
Inform.DeviceId.ManufacturerOUI |
CPE 製造元の一意の識別子を示します。 |
Inform.DeviceId.ProductClass |
製造元の SerialNumber パラメータが一意となる対象の製品または製品クラスを示します。 |
InternetGatewayDevice.DeviceInfo. HardwareVersion |
CPE のハードウェア バージョンを示します。 |
InternetGatewayDevice.DeviceInfo. SoftwareVersion |
CPE に現在インストールされているソフトウェア バージョンを示します。 |
InternetGatewayDevice.DeviceInfo. ModelName |
CPE のモデル名を示します。 |
InternetGatewayDevice. ManagementServer.ParameterKey |
サーバから前回実行された SetParameterValues、AddObject、または DeleteObject コールの ParameterKey の値を示します。 |
これらのプロパティを更新するには、API(/server/acs/discover/parameters プロパティを使用)または管理者のユーザ インターフェイスを使用します(「デバイスからのデータの検出」を参照)。
(注) デバイスのルート オブジェクトが InternetGatewayDevice 以外(Device など)になっていても、パラメータは検出されます。
命令の生成と処理
命令の生成とは、CWMP デバイスに固有の命令セットを生成するプロセスです。デバイス テクノロジーを BAC に組み込むための技術拡張を使用することで、デバイスの詳細とプロビジョニング ルールが結合され、CPE に固有の命令セットが作成されます。作成された命令セットは、デバイスのプロビジョニング グループ内の DPE に転送され、そこでキャッシュされます。
BAC 配備内でデバイスを有効にすると、そのデバイスは BAC サーバとの交信を開始します。交信が確立すると、デバイスの事前設定されたポリシーが、DPE による管理操作を、デバイスに関連付けられている設定テンプレートまたはファームウェア ルール テンプレートに基づいて特定します。この事前設定されたポリシーは、デバイスのサービス レベル(サービス クラスとも呼ばれる)を特定します。デバイス構成には、認証情報、定期的な通知のレート、およびサービス クラスなど、顧客に必要なプロビジョニング情報を含めることができます。この信頼できるデバイスのプロビジョニング情報は、デバイス構成命令として、RDU から DPE に転送されます。
命令は、DPE 自動構成サーバ(ACS)が特定のデバイスに対して実行する論理的な操作となっています。命令では、GetParameterValues などの CWMP リモート プロシージャ コール(RPC)に直接マッピングすることや、ファームウェア ルールなどの追加ロジックを複数の CWMP RPC と組み合せることができます。
RDU は、「InstructionRecords」を DPE に渡して命令の処理を要求します。次に、DPE サーバが、この「InstructionRecords」を「Instructions」に変換し、その結果を「InstructionResponseRecords」として RDU に返します。
BAC は命令を生成するときに、次の機能を使用します。
• Instruction Generation Extension:1 つのデバイス用に「InstructionRecords」を生成します。
• Instruction Generation Service:複数のデバイス用に「InstructionRecords」を生成します。
Instruction Generation Service の統計情報にアクセスするには、管理者のユーザ インターフェイスで Servers > RDU > View Regional Distribution Unit Details の順に選択します。
RDU が生成する各種の命令には、次のものがあります。
• Data Synchronization Instruction(DataSyncRecord):ソフトウェア バージョンやモデル名などのさまざまな CPE パラメータについて、RDU を最新の状態に保ちます。また、これらのパラメータを使用して、特定のデバイス タイプに固有の構成命令など、別の命令を生成することもできます。パラメータの中には、接続時に毎回確認されるものもあれば、ファームウェア バージョンが変更されたときだけ確認されるものもあります。詳細については、「デバイスからのデータの検出」を参照してください。
• Routable IP Address Instruction(RoutableIPAddressRecord):特定のデバイスが到達可能かどうかを検出します。その際、接続要求を送信するために、DPE がデバイスとの TCP 接続を作成できるようにします。この命令は、デバイスの WAN IP アドレス(PPP または DHCP)を取得し、発信元 IP アドレスと比較します。IP アドレスが異なる場合、命令は RDU を更新します。
• Redirect Instruction:新しい BAC サーバを指定します。そのために、既存のサーバの URL を変更し、デバイスのプロビジョニング グループを変更します。リダイレクション命令は、この変更を効率的な方法で実行し、リダイレクションが実行されたことを RDU に示します。詳細については、「デバイスのプロビジョニング グループのリダイレクト」を参照してください。
• Firmware Rules Instruction(FirmwareRulesRecord):デバイスにダウンロードするファームウェア イメージを特定します。ファームウェア イメージ ファイルは、ファームウェア ルール テンプレートによってデバイス グループに関連付けられます。BAC は、関連付けられたテンプレート内のルールを使用して、CPE にダウンロードするファームウェアを評価します。この命令が有効になるのは、デバイスがファームウェア ルール テンプレートに関連付けられている場合のみです。
• Configuration Synchronization Instruction(ConfigSyncRecord):DPE キャッシュに格納されている CPE 構成の同期をトリガーします。この命令が有効になるのは、デバイスが設定テンプレートに関連付けられている場合のみです。構成同期のプロセスについては、次の項で説明します。
デバイス構成同期
CPE 構成同期のプロセスでは、デバイスの構成が、デバイスのサービス クラス オブジェクトに関連付けられている設定テンプレートに基づいて、自動的に同期されます。このデバイス用の DPE に格納されている ConfigSync 命令に従って CPE 構成を同期するプロセスは、Configuration Synchronization と呼ばれます。
このプロセス中に、DPE は、サービス クラスを介してデバイスに関連付けられている設定テンプレート内で検出されたパラメータ値および属性をすべて設定します。その結果、次の処理が行われます。
• 通知に、設定テンプレート内の設定値が反映されます。通知の詳細については、「通知」を参照してください。
• すべてのパラメータのアクセス コントロールに、設定テンプレート内の設定値が反映されます。アクセス コントロールの詳細については、「アクセス コントロール」を参照してください。
CPE 構成は、TR-069 仕様で定義されたとおり、一意の構成キーに関連付けられます。この構成キーは DPE データベースに保存され、RPC の ParameterKey パラメータとして CPE に転送されます。
CPE が DPE との接続を確立するたびに、デバイスは Inform メッセージを DPE に転送して、 ParameterKey の値を(構成のリビジョン番号の形式で)報告します。DPE では、この値を、特定のデバイスに対応するキャッシュ内の値と比較します。値が一致しない場合は、DPE とデバイスとの同期プロセスがトリガーされます。
構成同期プロセスは次の手順で行われます。
1. DPE がデバイスから ParameterKey を受信します。この ParameterKey の値が、DPE に格納されている値と一致した場合、同期は開始されません。 ParameterKey の値が異なる場合は、同期プロセスが続行されます。
2. 構成の中でアクセス コントロールが設定されている場合、DPE は AccessList パラメータを ACS-only に設定します。アクセス コントロール機能は、デフォルトでイネーブルになっています。アクセス コントロールの詳細については、「アクセス コントロール」を参照してください。
3. 通知機能がイネーブルの場合、DPE は通知属性を、デバイス構成で指定されたとおりに設定します。通知は、デフォルトでイネーブルになっています。通知の詳細については、「通知」を参照してください。
4. DPE は、テンプレートに従ってデバイスのパラメータ値を設定すると、 ParameterKey 引数に新しい構成のリビジョン番号を設定します。このリビジョン番号は、デバイスおよび DPE が接続を次に確立したときに、デバイス構成を同期するかどうかを判別するために使用されます。
(注) 同期プロセス中にデバイスと DPE との接続がタイムアウトした場合、CPE は DPE への再接続を試みます。この場合、Inform メッセージ内の ParameterKey の値は変更されません。これは、ParameterKey の値が変更されるのは、同期プロセスが成功した場合に限られるためです。CPE が DPE に再接続した場合、DPE は ParameterKey の最初の値を使用して、同期を最初から開始します。
5. DPE が ParameterKey 属性の新しい値を最後の更新として CPE に転送すると、同期プロセスが終了します。
(注) 場合によっては、DPE とデバイスの ParameterKey が一致しても、デバイスの更新が必要になることがあります。
強制的に構成を同期するには、次の手順に従います。
1. Devices ページで、構成を同期するデバイスを検索します。
2. デバイスに対応する Operations アイコン( )をクリックします。
3. Device Operations ページが表示されます。Perform Device Operation の下のドロップダウン リストから、Force Configuration Synchronization を選択します。
4. Submit をクリックします。
デバイス構成が DPE と同期されます。
BAC におけるデバイス配備
BAC 配備はプロビジョニング グループに分割され、各プロビジョニング グループはデバイスのサブセットだけに関連付けられます。耐障害性を確保するため、プロビジョニング グループによって提供されるサービスはすべて実装されます(「プロビジョニング グループのスケーラビリティとフェールオーバー」を参照)。
(注) デバイス管理では、主原則として、RDU がデバイスと直接通信することはありません。デバイス インタラクションはすべて、デバイスが属するプロビジョニング グループ内の DPE に委任されます。
BAC では、次の 2 つのデバイス配備オプションを使用できます。各オプションは、組み合せて使用することもできます。
• Preregistered:デバイスが DPE(ACS とも呼ばれる)と最初に交信する前に、デバイス レコードが RDU に追加されます。
• Unregistered:デバイスが DPE と最初に交信した後で、デバイス レコードが RDU に追加されます。
事前登録されたデバイス
このシナリオでは、デバイス データが BAC に事前プロビジョニングされ、デバイスが特定のサービス クラスに関連付けられます。そのサービス クラスは、加入者の登録先のサービスまたはデフォルト構成に対応させることができます。
事前登録されたデバイスには、サービス プロバイダーに固有の特定のパラメータが事前設定されています。これらのパラメータは、通常、工場出荷時のデフォルトとして「焼き付けられ」ます。
(注) デバイスを工場出荷時のデフォルトにリセットすると、デバイス上の設定が、事前に焼き付けられた設定に戻るため、デバイスが再構成プロセスを実行する場合があります。
デバイス データは BAC で事前登録されます。この操作は、通常、API から行われます。ただし、管理者のユーザ インターフェイスから行うことも可能です。
事前設定を行うには、次の 3 つの条件があります。
• デバイスがネットワーク接続を確立できる。DSL デバイスの場合は、通常、ATM PVC の自動検出を使用し、認証用に PPP を使用する必要があります。IP アドレスは PPP または DHCP を介して取得されます。その他のデバイスでは、通常、既存のインターネット接続を使用し、アドレス割り当て用にローカル DHCP を使用します。
• CPE が適切なサービス プロバイダーの構成サーバと交信できる(つまり、CPE が ACS URL を認識している)。ACS URL は、デバイスに事前に焼き付ける(割り当てる)ことや、WAN 側から DHCP を使用して検出することができます。
• サービス プロバイダーが CPE を特定の加入者に関連付けることができる。このプロセスは、通常、加入者登録用の Operations Support Systems(OSS; オペレーション サポート システム)アプリケーションによって実行されます。BAC は、デバイス構成をプロビジョニングするための適切なデータで更新されます。
登録解除されたデバイス
このシナリオでは、デバイス データは BAC に事前に読み込まれていません。デバイス データが BAC に追加されるのは、デバイスが BAC サーバと最初に交信したときだけです。
BAC では、登録解除された(事前設定されたパラメータがない)デバイスをネットワーク上に表示し、デフォルトのアクセス権を付与することができます。ただし、デバイス データを BAC に事前登録することがサポートされていないため、登録解除されたデバイスの認証オプションは、共有秘密情報ではなく、証明書に基づくメカニズムの使用に限られます。また、事前登録されたデータがないため、BAC では、デバイスを動的に分類し、デバイスのデフォルト構成を特定する必要があります。
(注) 事前登録されたデバイス データを使用できない場合、不明なデバイスは認証されないため、DoS 攻撃を受ける確率が高くなります。
初期のプロビジョニング フロー
この項では、デバイスの設定ワークフローについて説明します。このワークフローは、事前登録されたデバイスであるか、登録解除されたデバイスであるかによって異なります。
図4-2 は、共通的な初期の設定フローを示しています。
図4-2 CPE の初期設定ワークフロー
事前登録されたデバイスの場合
a. BAC API から RDU に、さまざまなデバイス タイプ用に特別に定義された構成およびルールが読み込まれます。デバイスが事前設定され、サービス クラスに関連付けられます。
b. 事前設定されたデバイスが、事前設定された URL にある BAC サーバと交信して自分のプロビジョニング グループを特定し、プロビジョニング グループ サーバ(DPE)に対して自動プロビジョニングを開始します。
c. RDU が、デバイスに固有の命令を生成します。生成されるデバイス命令では、TR-069 Inform や HTTP ファイル要求など、さまざまな CPE プロトコル イベントに対する DPE 応答が指定されます。
d. デバイス命令セットが DPE に転送され、そこでキャッシュされます。この段階で、DPE は、このデバイスに対する以後の CPE プロトコル インタラクションを、RDU から独立して処理するようにプログラムされています。デバイスがネットワークに追加され、そのデバイスの構成が生成された場合、デバイスがブートすると、DPE は、事前登録されたデバイスとのインタラクションを開始できます。
e. デバイスとのインタラクションにおいて、追加情報を検出して RDU に転送することができます。この場合、RDU では、新しい命令を生成してすべての DPE に転送することがあります。
登録解除されたデバイスの場合
a. BAC API から RDU に、さまざまなデバイス タイプ用に特別に定義された構成およびルールが読み込まれます。
b. ブートアップ中、DPE はデバイス要求を受信すると、特定の CPE 用にキャッシュされている命令のローカル検索を実行します。CPE が以前にその DPE と交信したことがなく、デバイス データが BAC に事前登録されていないため、命令は検出されません。次に、DPE は、関係する CPE 情報すべてを「命令セット」生成要求に組み込み、その要求を RDU に転送します。同時に、デバイス要求が拒否され、後でデバイスがリトライするようになります。
c. RDU が CPE に固有の命令を生成し、デバイスのプロビジョニング グループ内にあるすべての DPE に配送します。生成される CPE 命令では、TR-069 Inform や HTTP ファイル要求など、さまざまな CPE プロトコル イベントに対する DPE 応答が指定されます。
d. デバイス命令セットが DPE に配送され、そこでキャッシュされます。この段階で、DPE は、このデバイスに対する以後の CPE プロトコル インタラクションすべてを、RDU から独立して処理するようにプログラムされています。
不明なデバイスに関する次のパラメータが BAC によって検出されます。
• デバイス IP アドレスが、ルーティング可能か、または NAT されているか
• Inform.DeviceId.Manufacturer
• Inform.DeviceId.ManufacturerOUI
• Inform.DeviceId.ProductClass
• InternetGatewayDevice.DeviceInfo.HardwareVersion
• InternetGatewayDevice.DeviceInfo.SoftwareVersion
• InternetGatewayDevice.DeviceInfo.ModelName
• InternetGatewayDevice.ManagementServer.ParameterKey
(注) 検出されるパラメータのデフォルト リストは変更できます。「デバイスからのデータの検出」を参照してください。
e. デバイスが再接続し、デバイス用に生成された構成命令を RDU から受信し、DPE でキャッシュします。
プロビジョニング グループへのデバイスの割り当て
デバイスをプロビジョニング グループに割り当てる方法には、明示的、自動的、またはその両方を複合的に使用する方法の 3 つがあります。
明示的な割り当て
デバイスを明示的にプロビジョニング グループに割り当てることができます。デバイスがデフォルトのプロビジョニング グループに表示された場合、プロビジョニング システムでは、そのデバイスを API 経由で新しいプロビジョニング グループに割り当てることができます。BAC はそのデバイスと次に交信したときに、デバイスをリダイレクトします。
割り当てられたプロビジョニング グループと交信するようにデバイスを設定するには、BAC サーバの URL をプロビジョニング グループの URL に変更します。BAC サーバの URL が格納されます。それ以後、デバイスは新しいアドレスにある BAC と交信するようになります。
デバイスをプロビジョニング グループ間で移動するには、API または管理者のユーザ インターフェイスから、デバイスのホーム プロビジョニング グループを変更します。各プロビジョニング グループには URL が関連付けられています。次の交信時に、デバイスの ACS URL が新しいプロビジョニング グループの URL に変更されるため、簡単に移動できます。
ヒント すべてのデバイスが最初にデフォルトのプロビジョニング グループと交信するように事前設定します。次に、リダイレクション機能を使用して、デバイスを適切なプロビジョニング グループに割り当てます。デバイスを別のプロビジョニング グループにリダイレクトするには、「デバイスのプロビジョニング グループのリダイレクト」を参照してください。
自動メンバシップ
デバイスを明示的にプロビジョニング グループに割り当てない限り、そのデバイスは、最初に割り当てられたプロビジョニング グループからは移動されません。そのため、プロビジョニング グループへの CPE の割り当てを、ネットワークから指定できるようになります。デバイスを移動する場合は、自動メンバシップ機能を使用できます。この機能を使用すると、デバイスが移動しても、ローカル プロビジョニング グループからそのデバイスにサービスを提供できます。
デバイスが新しいプロビジョニング グループに表示された場合、デバイスはその新しいプロビジョニング グループに自動的に割り当てられ、デバイス データが古いプロビジョニング グループから削除されます。このプロセスでは、RDU との通信が行われます。その後、RDU は古いプロビジョニング グループと新しいプロビジョニング グループの両方で DPE を更新します。このプロセスは高負荷のため、多数のデバイスを移行しないように注意してください。
(注) プロビジョニング グループに対するデバイスの自動割り当てが動作するのは、どのプロビジョニング グループにも表示されない不明な(登録解除された)デバイスの自動割り当てを許可するように、DPE が設定されている場合だけです。デバイスが別のプロビジョニング グループに表示された場合、そのプロビジョニング グループが不明なデバイスによるアクセスを許可するように設定されているときは、BAC がデバイスをそのプロビジョニング グループに自動的に割り当てます。
不明なデバイスのアクセス権を設定する方法の詳細については、『Cisco Broadband Access Center DPE CLI Reference, Release 3.0』を参照してください。
複合的なアプローチ
デバイスの明示的な割り当てと、プロビジョニング グループへのデバイスの自動メンバシップを併用することができます。たとえば、登録解除された一般的なデバイスがネットワーク上でプロビジョニング グループ内に表示された場合、そのデバイスは自動的に割り当てられます。その後、OSS が API を使用して、そのデバイスを別のプロビジョニング グループに明示的に割り当てます。
デバイス診断
CWMP がサポートするデバイスのトラブルシューティングおよび診断機能を使用すると、1 つのデバイスに焦点を当てて診断情報を収集し、詳細に分析することができます。この機能では、デバイスに対して、次のデータを含む任意のデータをクエリーできます。
• 構成
• 稼働中の統計情報
• 障害表示
• ログ ファイル
• 診断結果
デバイス診断では、必ず、BAC がデバイスに対して一連の操作を実行します。これらの操作には次のものがあります。
• Reboot:デバイスをリブートします。このリブートは、主として診断用に使用されます。
• Request Connection:BAC に対する接続要求を開始します。
• Factory Reset:事前登録されたデバイス設定を、最初の工場出荷時の設定(加入者固有の設定が焼き付けられる前の設定)にリセットします。
• Display Live Data:デバイス パラメータをデバイスから直接表示します。表示するパラメータは指定可能です。
• Ping Diagnostic:CPE の IP アドレスに対して IP PING 診断テストを実行します。
• Force Firmware Upgrade:強制的に CPE のファームウェアを更新します。
• Force Configuration Synchronization:強制的に個々の CPE の構成を同期することができます。
これらのデバイス操作の実行に関する詳細については、「デバイス操作の実行」を参照してください。
また、BAC には、トラブルシューティングを支援する次の機能もあります。
• デバイス履歴:デバイス プロビジョニングのライフサイクルで発生する重要なイベントの詳細な履歴を表示できます。「デバイス履歴」を参照してください。
• デバイス障害:障害が繰り返し発生するデバイスを検出します。このような障害は、ボトルネックとなってネットワーク パフォーマンスに影響を及ぼす場合があります。「デバイス障害」を参照してください。
• デバイスのトラブルシューティング:トラブルシューティング対象に指定された一連のデバイスに関する、デバイスと BAC サーバとのインタラクションの詳細なレコードを表示できます。「デバイスのトラブルシューティング」を参照してください。
• パフォーマンス統計情報:主要なコンポーネント全体のシステム パフォーマンスに関連する詳細なパフォーマンス統計情報を表示できます。また、統計情報データを分析して、トラブルシューティングに役立てることもできます。「パフォーマンス統計情報の監視」を参照してください。