HSRP の概要
HSRP は、デフォルト ゲートウェイ IP アドレスが設定された IEEE 802 LAN 上の IP ホスト ファーストホップに冗長性を確保しネットワークのアベイラビリティを高めるシスコの標準方式です。HSRP を使用すると、特定のルータのアベイラビリティに依存せず IP トラフィックをルーティングできます。また、一連のルータ インターフェイスを組み合わせることで、1 台の仮想ルータ、または LAN 上のホストへのデフォルト ゲートウェイのように機能させることができます。ネットワークまたはセグメント上に HSRP を設定すると、仮想 MAC(メディア アクセス制御)アドレス、および設定されたルータ グループ間で共有される IP アドレスを使用できるようになりHSRP が設定された複数のルータは、仮想ルータの MAC アドレスおよび IP ネットワーク アドレスを使用できるようになります。仮想ルータは、実際には存在しません。仮想ルータは、相互にバックアップ機能を提供するように設定されている複数のルータの共通のターゲットを表すルータです。1 台のルータがアクティブなルータとして、もう 1 台のルータがスタンバイ ルータとして選択されます。スタンバイ ルータは、指定されたアクティブ ルータが故障した場合に、グループの MAC アドレスおよび IP アドレスを制御するルータです。
(注) HSRP グループ内のルータには、Catalyst 3750ルーテッド ポート、Switch Virtual Interface(SVI)など、HSRP をサポートする任意のルータ インターフェイスを指定できます。
HSRP は、ネットワーク上のホストからの IP トラフィックに冗長性を提供することで、ネットワークのアベイラビリティを高めます。アクティブ ルータは、ルータ インターフェイスのグループ内でパケットのルーティングを実行するために選択されたルータです。スタンバイ ルータは、アクティブ ルータが故障した場合、または設定条件が満たされた場合に、ルーティング作業を引き継ぐルータです。
HSRP は、ホストがルータ ディスカバリ プロトコルをサポートしておらず、選択されたルータのリロードや電源故障時に新しいルータに切り替えることができない場合に有効です。HSRP をネットワーク セグメントに設定すると、HSRP は仮想 MAC アドレスと IP アドレスを 1 つずつ提供します。このアドレスは、HSRP が動作するルータ インターフェイス グループ内のルータ インターフェイス間で共有できます。プロトコルによってアクティブ ルータとして選択されたルータは、グループの MAC アドレス宛のパケットを受信し、ルーティングします。 n 台のルータで HSRP が稼働している場合、 n +1 個の IP アドレスおよび MAC アドレスが割り当てられます。
指定されたアクティブ ルータの故障を HSRP が検出すると、選択されているスタンバイ ルータがホット スタンバイ グループの MAC アドレスおよび IP アドレスの制御を引き継ぎます。この時点で新しいスタンバイ ルータも選択されます。HSRP が稼働しているデバイスは、マルチキャスト UDP ベースの hello パケットを送受信することにより、ルータ障害の検出、アクティブ ルータおよびスタンバイ ルータの指定を行います。インターフェイスに HSRP が設定されている場合、そのインターフェイスでは Internet Control Message Protocol(ICMP)のリダイレクト メッセージがデフォルトでディセーブルとなっています。
レイヤ 3 で動作する Catalyst 3750スイッチおよびスイッチ スタック間で複数のホット スタンバイ グループを設定すると、冗長ルータをさらに活用できます。そのためには、インターフェイスに設定するホット スタンバイ コマンド グループごとにグループ番号を指定します。たとえば、スイッチ 1 のインターフェイスをアクティブ ルータ、スイッチ 2 のインターフェイスをスタンバイ ルータとして設定できます。また、スイッチ 2 の別のインターフェイスをアクティブ ルータ、スイッチ 1 の別のインターフェイスをスタンバイ ルータとして設定できます。
図39-1に、HSRP 用に設定されたネットワークのセグメントを示します。各ルータには、仮想ルータの MAC アドレスおよび IP ネットワーク アドレスが設定されています。ルータ A の IP アドレスをネットワーク上のホストに設定する代わりに、デフォルト ルータである仮想ルータの IP アドレスを設定します。ホスト C からホスト B にパケットが送信される場合、ホスト C は仮想ルータの MAC アドレスにパケットを送信します。何らかの理由により、ルータ A がパケットの伝送を停止すると、ルータ B が仮想 IP アドレスおよび仮想 MAC アドレスに応答してアクティブ ルータとなり、アクティブ ルータの作業を行います。ホスト C は引き続き仮想ルータの IP アドレスを使用し、ホスト B 宛のパケットをアドレッシングします。ルータ B はそのパケットを受信し、ホスト B に送信します。ルータ B は HSRP の機能を使用し、ルータ A が動作を再開するまで、ホスト B のセグメント上のユーザと通信する必要があるホスト C のセグメント上のユーザに連続的にサービスを提供します。また、ホスト A セグメントとホスト B の間で、引き続き通常のパケット処理機能を実行します。
図39-1 HSRP の一般的な構成
Multiple HSRP
Cisco IOS Release 12.2(18)SE 以降では、Multiple HSRP(MHSRP)をサポートしています。これは、HSRP の拡張版で、複数の HSRP 間の負荷分散を可能にします。MHSRP を設定することにより、ロードバランシングを実現し、ホスト ネットワークからサーバ ネットワークまでの間で複数のスタンバイ グループ(またはパス)を使用できます。図39-2では、クライアントの半分がルータ A 用に設定されていて、残りの半分がルータ B 用に設定されています。これらをまとめて、ルータ A および B の設定によって 2 つの HSRP グループを確立します。グループ 1 では、最高のプライオリティが割り当てられているのでルータ A はデフォルト アクティブ ルータとなり、ルータ B がスタンバイ ルータとなります。グループ 2 では、最高のプライオリティが割り当てられているのでルータ B はデフォルト アクティブ ルータとなり、ルータ A がスタンバイ ルータとなります。通常の稼働時は、2 つのルータが IP トラフィック負荷を共有しています。いずれかのルータが使用できなくなった場合、他のルータがアクティブになり、使用できなくなったルータのパケット転送機能を引き継ぎます。
設定手順の例については、「MHSRP の設定」を参照してください。
(注) MHSRP では、ルータが故障後に復帰した場合、プリエンプトを発生させ負荷分散を回復させるには、HSRP インターフェイス上でstandby preemptインターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力する必要があります。
図39-2 MHSRP 負荷分散
HSRP およびスイッチ スタック
HSRP の hello メッセージは、スタック マスターで生成されます。HSRP がアクティブであるスタック マスターに障害が発生すると、HSRP アクティブ ステートのフラッピングが生じることがあります。これは、新規スタック マスターが選択および初期化されている間に HSRP hello メッセージが生成されず、スタック マスターが故障したあとでないとスタンバイ ルータがアクティブにならない可能性があるためです。
HSRP の設定
ここでは、次の設定について説明します。
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「HSRP のデフォルト設定」
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「HSRP 設定時の注意事項」
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「HSRP のイネーブル化」
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「HSRP のプライオリティの設定」
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「MHSRP の設定」
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「HSRP 認証およびタイマーの設定」
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「ICMP リダイレクト メッセージの HSRP サポートのイネーブル化」
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「HSRP グループおよびクラスタリングの設定」
HSRP のデフォルト設定
表39-1 に、HSRP のデフォルト設定を示します。
表39-1 HSRP のデフォルト設定
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HSRP グループ |
設定なし |
スタンバイ グループ番号 |
0 |
スタンバイ MAC アドレス |
システムへの割り当て:0000.0c07.acXX( XX は HSRP グループ番号) |
スタンバイ プライオリティ |
100 |
スタンバイ遅延 |
0(遅延なし) |
スタンバイでのインターフェイス プライオリティの追跡 |
10 |
スタンバイ hello 時間 |
3 秒 |
スタンバイ ホールド タイム |
10 秒 |
HSRP 設定時の注意事項
HSRP を設定する場合は、次の注意事項に従ってください。
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HSRP は最大 32 個の VLAN(仮想 LAN)またはルーティング インターフェイスに設定できます。
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設定手順では、次に示すレイヤ 3 インターフェイスの 1 つを指定する必要があります。
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ルーテッド ポート: no switchport インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力して、レイヤ 3 ポートとして設定された物理ポートです。
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SVI: interface vlan vlan_id グローバル コンフィギュレーション コマンドによって作成された VLAN インターフェイスです。デフォルトではレイヤ 3 インターフェイスです。
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レイヤ 3 モードの EtherChannel ポート チャネル: interface port-channel port- channel-numberグローバル コンフィギュレーション コマンドを使用し、イーサネット インターフェイスをチャネル グループにバインドして作成されたポート チャネル論理インターフェイスです。詳細については、「レイヤ 3 EtherChannel の設定」を参照してください。
•
すべてのレイヤ 3 インターフェイスに IP アドレスを割り当てる必要があります。「レイヤ 3 インターフェイスの設定」を参照してください。
HSRP のイネーブル化
standby ip インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、設定されたインターフェイスで HSRP がアクティブになります。IP アドレスを指定した場合は、IP アドレスがホット スタンバイ グループの指定アドレスとして使用されます。IP アドレスを指定しなかった場合は、スタンバイ機能によって学習されます。指定アドレスを使用し、ケーブル上に少なくとも 1 つのルーティング ポートを設定する必要があります。IP アドレスを設定すると、常に、現在使用されている別の指定アドレスが、設定した IP アドレスに変更されます。
standby ip コマンドがインターフェイス上でイネーブルに設定され、プロキシ Address Resolution Protocol(ARP)がイネーブルの場合、インターフェイスのホット スタンバイ ステートがアクティブになると、プロキシ ARP 要求に対する応答は、ホット スタンバイ グループの MAC アドレスを使用して実行されます。インターフェイスが別のステートの場合、プロキシ ARP の応答は抑制されます。
レイヤ 3 インターフェイス上で HSRP を作成する場合、またはイネーブルにする場合は、イネーブル EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、HSRP をイネーブルにするレイヤ 3 インターフェイスを入力します。 |
ステップ 3 |
standby [ group-number ] ip [ ip-address [ secondary ]] |
HSRP グループの番号および仮想 IP アドレスを使用して、HSRP グループを作成(またはイネーブルに)します。 • (任意) group-number ― HSRP をイネーブルにするインターフェイスのグループ番号を指定します。指定できる範囲は 0 ~ 255 で、デフォルトは 0 です。HSRP グループが 1 つしかない場合は、グループ番号を入力する必要はありません。 • (1 つのインターフェイスで必須、それ以外は任意) ip-address ― ホット スタンバイ ルータ インターフェイスの仮想 IP アドレスを指定します。少なくとも 1 つのインターフェイスに対して仮想 IP アドレスを入力する必要があります。他のインターフェイスは、その仮想 IP アドレスを学習します。 • (任意) secondary ― IP アドレスはセカンダリ ホット スタンバイ ルータ インターフェイスです。ルータがセカンダリ ルータとスタンバイ ルータのいずれにも指定されず、かつプライオリティも設定されていない場合は、プライマリ IP アドレスが比較され、IP アドレスが大きいルータがアクティブ ルータ、IP アドレスが 2 番めに大きいルータがスタンバイ ルータになります。 |
ステップ 4 |
end |
イネーブル EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
show standby [ interface-id [ group ]] |
設定を確認します。 |
ステップ 6 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
HSRP をディセーブルにするには、 no standby [ group-number ] ip [ ip-address ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、ポートでグループ 1 の HSRP をイネーブルにする例を示します。ホット スタンバイ グループで使用される IP アドレスは HSRP を使用して学習されます。
(注) これは、HSRP をイネーブルにするために必要な最小限の手順です。他の設定は任意です。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby 1 ip
HSRP のプライオリティの設定
standby priority 、 standby preempt 、および standby track インターフェイス コンフィギュレーション コマンドはいずれも、アクティブ ルータとスタンバイ ルータの検索に関する特性、および新しいアクティブ ルータが処理を引き継いだ場合の動作を設定するために使用できます。
HSRP プライオリティを設定する場合の注意事項は、次のとおりです。
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プライオリティを割り当てておくと、アクティブおよびスタンバイ ルータを選択するときに役立ちます。プリエンプトがイネーブルの場合は、プライオリティが最高のルータが指定アクティブ ルータになります。プライオリティが等しい場合は、プライマリ IP アドレスが比較されます。IP アドレスが大きいルータが優先されます。
•
最大の値(1 ~ 255)が、最高のプライオリティ(アクティブ ルータになる確率が最も高い)を表します。
•
プライオリティ、プリエンプト、またはその両方を設定するときは、少なくとも 1 つのキーワード( priority 、 preempt 、または両方)を指定する必要があります。
•
インターフェイスが standby track コマンドによって設定されている場合、ルータ上の別のインターフェイスがダウンすると、デバイスのプライオリティが動的に変更されることもあります。
•
standby track インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、ルータのホット スタンバイ プライオリティとインターフェイスのアベイラビリティが関連付けられます。この機能は、HSRP 用に設定されていないインターフェイスを追跡する場合に有効です。追跡対象のインターフェイスが故障すると、追跡が設定されていたデバイスのホット スタンバイ プライオリティが 10 減少します。追跡対象でないインターフェイスの場合は、そのステートが変わっても、設定済みデバイスのホット スタンバイ プライオリティは変わりません。ホット スタンバイ用に設定されたインターフェイスごとに、追跡するインターフェイスのリストを個別に設定できます。
•
standby track interface-priority インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを実行すると、追跡対象のインターフェイスがダウンした場合のホット スタンバイ プライオリティの減少幅を指定できます。インターフェイスが稼働状態に戻ると、プライオリティは同じ分だけ増加します。
•
interface-priority 値が設定されている場合に、複数の追跡対象インターフェイスがダウンすると、設定済みプライオリティの減少幅が累積されます。プライオリティ値が設定されていない追跡対象インターフェイスが故障した場合、デフォルトの減少幅は 10 です。この値は累積されません。
•
インターフェイスに対してルーティングを最初にイネーブルにした時点で、完全なルーティング テーブルは存在しません。このインターフェイスがプリエンプトに設定されている場合はアクティブ ルータになりますが、十分なルーティング処理はできません。この問題を解決するには、ルータがルーティング テーブルを更新できるように遅延時間を設定します。
インターフェイスに HSRP プライオリティ特性を設定するには、イネーブル EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、プライオリティを設定する HSRP インターフェイスを入力します。 |
ステップ 3 |
standby [ group-number ] priority priority [ preempt [ delay delay ]] |
アクティブ ルータを選択するときに使用される priority 値を設定します。指定できる範囲は 1 ~ 255 で、デフォルトのプライオリティは 100 です。最大の値が、最も高いプライオリティを表します。 • (任意) group-number ― コマンドが適用されるグループ番号です。 • (任意) preempt ― ローカル ルータのプライオリティがアクティブ ルータよりも高い場合、アクティブ ルータとして制御を行います。 • (任意) delay ― ローカル ルータがアクティブ ルータの役割を引き継ぐまでの時間を、指定された秒数だけ延期します。指定できる範囲は 0 ~ 3600(1 時間)で、デフォルトは 0 です(引き継ぐ前の遅延はありません)。 デフォルト値に戻すには、このコマンドの no 形式を使用します。 |
ステップ 4 |
standby [ group-number ] [ priority priority ] preempt [ delay delay ] |
ルータを preempt に設定し、ローカル ルータのプライオリティがアクティブ ルータよりも高い場合は、アクティブ ルータとして制御を行います。 • (任意) group-number ― コマンドが適用されるグループ番号です。 • (任意) priority ― グループ プライオリティを設定または変更します。指定できる範囲は 1 ~ 255 で、デフォルトは 100 です。 • (任意) delay ― ローカル ルータがアクティブ ルータの役割を引き継ぐまでの時間を、指定された秒数だけ延期します。指定できる範囲は 0 ~ 3600(1 時間)で、デフォルトは 0 です(引き継ぐ前の遅延はありません)。 デフォルト値に戻すには、このコマンドの no 形式を使用します。 |
ステップ 5 |
standby [ group-number ] track type number [ interface-priority ] |
他のインターフェイスを追跡するようにインターフェイスを設定します。この設定により、他のインターフェイスの 1 つがダウンした場合は、そのデバイスのホット スタンバイ プライオリティが減少します。 • (任意) group-number ― コマンドが適用されるグループ番号です。 • type ― 追跡対象のインターフェイス タイプを(インターフェイス番号とともに)入力します。 • number ― 追跡対象のインターフェイス番号を(インターフェイス タイプとともに)入力します。 • (任意) interface-priority ― インターフェイスがダウンした場合、または稼働状態に戻った場合に、ルータのホット スタンバイ プライオリティを減少または増加させる幅を入力します。デフォルト値は 10 です。 |
ステップ 6 |
end |
イネーブル EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
show running-config |
スタンバイ グループの設定を確認します。 |
ステップ 8 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
デフォルトのプライオリティ、プリエンプト、および遅延値に戻すには、 no standby [ group-number ] priority priority [ preempt [ delay delay ]] および no standby [ group-number ] [ priority priority ] preempt [ delay delay ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
追跡を解除するには、 no standby [ group-number ] track type number [ interface-priority ] インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次の例では、ポートがアクティブになり、IP アドレスおよびプライオリティ 120(デフォルト値よりも高いプライオリティ)が設定されます。アクティブ ルータになるまでの待機時間は 300 秒(5 分間)です。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby ip 172.20.128.3
Switch(config-if)# standby priority 120 preempt delay 300
MHSRP の設定
MHSRP およびロード バランシングをイネーブルにするには、2 台のルータをグループのアクティブ ルータとして、仮想ルータをスタンバイ ルータとして設定します。次に、MHSRP 設定をイネーブルにする例を示します(図39-2を参照)。MHSRP では、ルータが故障後に復帰した場合、プリエンプトを発生させロード バランシングを回復させるには、各 HSRP インターフェイス上で standby preempt インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力する必要があります。
ルータ A はグループ 1 のアクティブ ルータとして設定され、ルータ B はグループ 2 のアクティブ ルータとして設定されています。ルータ A の HSRP インターフェイスでは IP アドレスが 10.0.0.1 で、グループ 1 のスタンバイ プライオリティは 110 です(デフォルトは 100)。ルータ B の HSRP インターフェイスでは IP アドレスが 10.0.0.2 で、グループ 2 のスタンバイ プライオリティは 110 です。
グループ 1 は仮想 IP アドレス 10.0.0.3 を、グループ 2 は仮想 IP アドレス 10.0.0.4 をそれぞれ使用します。
ルータ A の設定
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 10.0.0.1 255.255.255.0
Switch(config-if)# standby 1 ip 10.0.0.3
Switch(config-if)# standby 1 priority 110
Switch(config-if)# standby 1 preempt
Switch(config-if)# standby 2 ip 10.0.0.4
Switch(config-if)# standby 2 preempt
ルータ B の設定
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 10.0.0.2 255.255.255.0
Switch(config-if)# standby 1 ip 10.0.0.3
Switch(config-if)# standby 1 preempt
Switch(config-if)# standby 2 ip 10.0.0.4
Switch(config-if)# standby 2 priority 110
Switch(config-if)# standby 2 preempt
HSRP 認証およびタイマーの設定
HSRP 認証ストリングを設定したり、hello 時間インターバルやホールド タイムを変更することもできます。
これらの属性を設定する場合の注意事項は次のとおりです。
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認証ストリングはすべての HSRP メッセージに暗号化されずに送信されます。相互運用できるように、接続されたすべてのルータおよびアクセス サーバに同じ認証ストリングを設定する必要があります。認証ストリングが一致しないと、HSRP によって設定された他のルータから、指定されたホット スタンバイ IP アドレスおよびタイマー値を取得することができません。
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スタンバイ タイマー値が設定されていないルータまたはアクセス サーバは、アクティブ ルータまたはスタンバイ ルータからタイマー値を取得できます。アクティブ ルータに設定されたタイマーは、常に他のタイマー設定よりも優先されます。
•
ホット スタンバイ グループのすべてのルータで、同じタイマー値を使用する必要があります。通常の場合、 holdtime は hellotime の 3 倍以上です。
インターフェイスに HSRP の認証とタイマーを設定するには、イネーブル EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、認証を設定する HSRP インターフェイスを入力します。 |
ステップ 3 |
standby [ group-number ] authentication string |
(任意) authentication string ― すべての HSRP メッセージで伝達されるストリングを入力します。認証ストリングには 8 文字まで指定できます。デフォルト ストリングは cisco です。 (任意) group-number ― コマンドが適用されるグループ番号です。 |
ステップ 4 |
standby [ group-number ] timers hellotime holdtime |
(任意)hello パケット間隔、およびアクティブ ルータのダウンを他のルータが宣言するまでの時間を設定します。 • group-number ― コマンドが適用されるグループ番号です。 • hellotime ― hello インターバル(秒)です。指定できる範囲は 1 ~ 255 秒で、デフォルトは 3 秒です。 • holdtime ― アクティブまたはスタンバイ ルータのダウンが宣言されるまでの時間(秒)です。指定できる範囲は 1 ~ 255 秒で、デフォルトは 10 秒です。 |
ステップ 5 |
end |
イネーブル EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
show running-config |
スタンバイ グループの設定を確認します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
認証ストリングを削除するには、 no standby [ group-number ] authentication string インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。タイマーをデフォルト値に戻すには、 no sta ndby [ group-number ] timers hellotime holdtime インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、グループ 1 のホット スタンバイ ルータを相互動作させるために必要な認証ストリングとして、 word を設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby 1 authentication word
次に、hello パケット間隔が 5 秒、ルータがダウンしたとみなされるまでの時間が 15 秒となるように、スタンバイ グループ 1 のタイマーを設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# standby 1 ip
Switch(config-if)# standby 1 timers 5 15
ICMP リダイレクト メッセージの HSRP サポートのイネーブル化
Cisco IOS Release 12.2(18)SE より前のリリースでは、ICMP リダイレクト メッセージは自動的に HSRP が設定されているインターフェイスでディセーブルになります。ICMP は、ネットワーク レイヤのインターネット プロトコルで、エラーをレポートするメッセージ パケットおよび IP 処理に関連する他の情報を提供します。ICMP には、ホストヘのエラー パケットの方向付けや送信などの診断機能があります。
スイッチが HSRP を動作している場合、ホストが HSRP グループのルータのインターフェイス(または実際の)MAC アドレスを検出しないことを確認してください。ホストが ICMP によってルータの実際の MAC アドレスへリダイレクトされてそのあとに失敗した場合、ホストからのパケットが消失します。
Cisco IOS Release 12.2(18)SE 以降のリリースでは、ICMP リダイレクト メッセージは自動的に HSRP が設定されているインターフェイスでイネーブルになります。この機能は、HSRP を介した出力 ICMP リダイレクト メッセージをフィルタリングします。HSRP では、ネクスト ホップ IP アドレスが HSRP 仮想 IP アドレスに変更される可能性があります。詳細については、
『 Cisco IOS IP Configuration Guide 』 Release 12.2 を参照してください。
HSRP グループおよびクラスタリングの設定
デバイスが HSRP スタンバイ ルーティングに参加し、クラスタリングがイネーブルの場合は、同じスタンバイ グループを使用して、コマンド スイッチの冗長性および HSRP の冗長性を確保できます。同じ HSRP スタンバイ グループをイネーブルにし、コマンド スイッチおよびルーティングの冗長性を確保するには、 cluster standby-group HSRP-group-name [ routing-redundancy ] グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。 routing-redundancy キーワードを指定せずに同じ HSRP スタンバイ グループ名でクラスタを作成すると、そのグループに対する HSRP スタンバイ ルーティングはディセーブルになります。
次に、スタンバイ グループ my_hsrp をクラスタにバインドし、同じ HSRP グループをイネーブルにしてコマンド スイッチおよびルータの冗長性を確保する例を示します。このコマンドを実行できるのは、コマンド スイッチに対してのみです。スタンバイ グループの名前または番号が存在しない場合、またはスイッチがクラスタ メンバーである場合は、エラー メッセージが表示されます。
Switch# configure terminal
Switch(config)# cluster standby-group my_hsrp routing-redundancy