Cisco Unified Communications Manager Express 用 Cisco Unified Contact Center Express ソリューション アーキテクチャ
Cisco Unified CCX for Cisco Unified Communications Manager Express(Cisco Unified CME)は、多数のコンポーネントで構成されるソリューションです。コンポーネントには、Cisco Unified CCX ソフトウェア、Cisco Unified CME、シスコ ルータ、Cisco データ スイッチ、Cisco 音声ゲートウェイ、Cisco Unified IP Phone が含まれます。Cisco Unified CCX ソフトウェアは、Cisco Unified CME とともに動作する、Cisco Unified CCX ソフトウェア プラットフォームの一部です。Cisco Unified CCX は、Cisco Unified CCX と Cisco Unified IP IVR の両方に対し、ソフトウェア機能を提供します。Cisco Unified CME を使用すると、Cisco Unified CCX は、Cisco Unified CCX パッケージまたは Cisco Unified IP IVR パッケージのいずれかを実行できます。
Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME および Cisco Unified CCX for Cisco Unified Communications Manager(Cisco Unified CM)のソリューション アーキテクチャは、次のものについて同じです。
• Cisco Unified CCX システム管理
• Cisco Unified Wireless IP Phone 7920 のサポート
• CAD のための Citrix および Microsoft Terminal Services のサポート
• ブロードバンド経由のリモート エージェント
• Cisco Unified CCX ASR および TTS
• Cisco Unified CCX Agent E-Mail
Cisco Unified CM アーキテクチャの詳細については、 第 2 章「Cisco Unified Communications Manager 用 Cisco Unified Contact Center Express ソリューション アーキテクチャ」 を参照してください。
Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME は、次のソリューション アーキテクチャをサポートしていません。
• Session Initiation Protocol(SIP)電話のエージェント電話としての使用
• Cisco Unified CCX の Cisco Unified ICM ソフトウェアとの統合
• Cisco Unified CCX Outbound Preview Dialer
• Cisco TelePresence Virtual Agent ソリューション
• Cisco Interaction Manager
• Cisco Agent Desktop の Cisco Unified Presence との統合
• トール バイパス制限のある国でのエージェント電話の使用
• Cisco Unified Workforce Optimization
この章の内容は、次のとおりです。
• 「アーキテクチャの概要」
• 「Cisco Unified CCX のコール処理」
• 「Cisco Unified CCX Engine および Database コンポーネント」
• 「Cisco Unified CCX の耐障害性」
アーキテクチャの概要
Cisco Unified CCX は、オープン スタンダードな Session Initiation Protocol(SIP)を使用して、Cisco Unified CME とコール処理のための通信を行います。Cisco Unified CCX Engine が起動すると、CME Telephony サブシステムが SIP REGISTER 要求を送信し、Cisco Unified CME との通信を開始します。それ以降、Cisco Unified CCX は、SIP REGISTER 要求を設定された間隔で Cisco Unified CME に送信し、通信リンクをアクティブに保ちます。
Cisco Unified CCX が Cisco Unified CME に登録されるとき、Cisco Unified CME 内でセッション サーバが作成されます。Cisco Unified CCX が自身のデバイス セットだけを監視できるように、この Cisco Unified CCX に対して作成される各デバイスは、セッション サーバに関連付けられます。
Cisco Unified CME は、回線監視機能とコール モニタリング機能を備えています。Cisco Unified CCX は、回線監視機能を使用して、エージェント デバイス上の ACD 回線を監視し、コール モニタリング機能を使用して、着信コールを検出し、回線上のコールを追跡します。Cisco Unified CME は、回線監視のために SIP Presence パッケージを使用し、コール モニタリングのために SIP Dialog パッケージを使用します。Cisco Unified CME で、ephone は Cisco Unified IP Phone であり、ephone-dn は Cisco Unified IP Phone 上の回線です。Cisco Unified IP Phone をエージェント デバイスとして設定するには、ephone の ephone-dn 上の回線監視属性をイネーブルにする必要があります。回線監視機能とコール モニタリング機能を使用し、エージェント デバイスがオンになるか、オフ フックするか、エージェント デバイスにコールが転送されるか、エージェント デバイスからコールが転送された場合、Cisco Unified CME は、Cisco Unified CCX に対して変更を通知し、Cisco Unified CCX がそれに応じてエージェントの状態を変更します。
Cisco Unified CME には、CTI ポートの概念がありません。エンジンのアクティブ化のフェーズでは、チャネル数がライセンスされているポート数に等しいデフォルトの呼制御グループが、システムによって自動的に作成されます。すべての CME トリガは、このデフォルトの呼制御グループを使用します。
エージェントは、Cisco Unified CCX でエージェント機能を持つユーザとして作成され、Cisco Unified CCX データベースに格納されます。エージェントが正常にログインするまで、エージェントには内線が関連付けられません。エージェントに内線が割り当てられている場合でも、エージェントは、ログオフし異なる内線でログインできます。そのため、Extension Mobility を使用しなくても、エージェントは複数のエージェント デバイスでログインできます。
(注) Cisco Unified CCX は、SRST モードで動作する Cisco Unified SRST または Cisco Unified CME をサポートしていません。
Cisco Unified CCX のコール処理
図 3-1 とその後の説明は、Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME における典型的なインバウンド コールの流れを示しています。
図 3-1 Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME のインバウンド コールの流れ
1. コールが音声ゲートウェイに到着します。音声ゲートウェイは、Cisco Unified CME も兼ねています。
2. 音声ゲートウェイは、Cisco Unified CME に対し、SIP を通じて、コールのルーティング方法を尋ねます。Cisco Unified CME には、Cisco Unified CCX がモニタリングのためにサブスクライブしている Dialed Number(DN; 着信番号)があります。Cisco Unified CME は、Cisco Unified CCX に対し、DN 上のコールの到着を知らせます。
3. Cisco Unified CCX は、DN に基づき、デフォルトの呼制御グループからコールを処理するための空きチャネルを見つけ、DN を適切な Cisco Unified CCX スクリプトにマッピングします。スクリプトはコールに応答し、メディアの交換のために、Cisco Unified CCX と Cisco Unified CME の間で RTP ストリームを確立します。発信者は、何らかの情報を入力するよう求められ、次の受け付け可能なエージェントを待ちます。スキルを持つエージェントが受け付け可能でない場合、スクリプトは、エージェントが受け付け可能になるまでキュー ループ ロジックを実行します。
4. エージェントは、ログインして受信可状態になるか、カスタマー コールを完了することで受け付け可能になります。
5. Cisco Unified CCX サーバによってエージェントが選択および予約され、コールがエージェントの電話に転送されます。その結果、エージェントの電話が鳴ります。同時に、発信者が入力した情報が含まれる画面が、エージェントのデスクトップにポップアップします。
6. エージェントはコールに応答し、メディアを交換するための RTP ストリームがエージェントの電話と Cisco Unified CME の間で確立されます。
Cisco Unified CCX Engine および Database コンポーネント
Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME には、次のコア ソフトウェア コンポーネントが含まれています。
• Cisco Unified CCX Engine
• Database
• Monitoring
• Recording
どの Cisco Unified CCX 配置にも、Cisco Unified CCX Engine コンポーネントと Database コンポーネントが必要です。Monitoring コンポーネントと Recording コンポーネントはオプションであり、「Monitoring および Recording コンポーネント」で説明します。Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME では、これらの各コンポーネントのインスタンスを 1 つだけインストールでき、すべてのコンポーネントは物理的に同じサーバ上に存在する必要があります。
Cisco Unified CCX Engine(とその密接に関連するサブシステム)は、次のような機能を提供するコンポーネントです。
• Cisco Unified CME とのテレフォニー インターフェイス
• スクリプトの実行
• .wav ファイルのエンコーディングとストリーミング(G.711 コーデック限定)
• エージェント状態制御と画面ポップアップのための CAD との通信
• エージェントのモニタリングと選択
• Cisco Unified CCX Administration Web インターフェイス
Cisco Unified CCX Engine コンポーネントは、コア ACD、IVR、CTI サービスを提供するものと考えることができます。その他のコンポーネント(Database、Monitoring、および Recording)は、付加的なソフトウェア コンポーネントです。
Database コンポーネントは、すべての Cisco Unified CCX の配置で必須のコンポーネントです。Database コンポーネントは、データベースへのアクセスを管理します。Cisco Unified CCX データベースには次のデータ ストアが含まれています。
• Configuration Datastore(CDS; コンフィギュレーション データ ストア)
• Repository Datastore(RDS; リポジトリ データ ストア)
• Agent Datastore(ADS; エージェント データ ストア)
• Historical Datastore(HDS; 履歴データ ストア)
コンフィギュレーション データ ストアには、リソース(エージェント)、スキル、リソース グループ、チーム、CSQ、アプリケーション、トリガ、呼制御グループ、ダイアログ グループなどの Cisco Unified CCX のコンフィギュレーション情報が格納されています。リポジトリ データ ストアには、ユーザ プロンプト、言語、ドキュメントが格納されています。エージェント データ ストアには、エージェント ログ、統計情報、録音ファイルへのポインタが格納されています。履歴データ ストアには、Contact Call Detail Record(CCDR)と、履歴レポートのためのその他のデータが格納されています。
Monitoring および Recording コンポーネント
Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME の、SPAN ポート モニタリング、デスクトップ モニタリング、録音のためのソリューション アーキテクチャは、Cisco Unified CCX for Cisco Unified CM と同じです。しかし、Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME は、次のものをサポートしていません。
• G.729 の音声コーデックとしての使用
• IP 電話または PSTN 電話を使用したリモート スーパーバイザリ モニタ
関連するアーキテクチャ情報については、「Monitoring および Recording コンポーネント」を参照してください。
Cisco Unified CCX の耐障害性
Cisco Unified CCX for Cisco Unified CME は単一サーバ配置だけをサポートしていますが、以降のセクションで説明するように、他の方法を通じて耐障害性機能が提供されています。
• 「コールド スタンバイ サーバ」
• 「基本 ACD(B-ACD)」
コールド スタンバイ サーバ
コールド スタンバイ サーバ配置とコンフィギュレーション ガイドラインは、Cisco Unified CCX for Cisco Unified CM と同じです。詳細については、「Cisco Unified CCX の耐障害性」を参照してください。
基本 ACD(B-ACD)
Basic ACD(B-ACD; 基本 ACD)は、Cisco Unified CME で動作するアプリケーションです。対話型のメニューとローカル ハント グループの使用を通じて、コールに対する自動応答サービスとコール分配サービスを提供します。これは TCL スクリプトと音声プロンプトがパッケージになったものであり、特定のバージョンの Cisco Unified CME 用にシスコの Web サイトからダウンロードできます。B-ACD のメニュー オプションと音声プロンプトは、要件に合わせてカスタマイズできます。
通常のシナリオでは、Cisco Unified CME のダイヤルピアに着信コールがあると、Cisco Unified CCX が通知を受け取り、設定されているアプリケーションを実行してトリガを起動します。しかし、Cisco Unified CCX サーバが何らかの理由でダウンしている場合、ダイヤルピアへのインバウンド コールにはビジー トーンが流れます。この場合、B-ACD を使用して着信コールを一時的に処理し、コールをハント グループにルーティングできます。Cisco Unified CCX エージェントの電話が B-ACD ハント グループに属している場合、CAD が動作していなくても、B-ACD は着信コールを Cisco Unified CCX エージェントにルーティングできます。
Cisco Unified CCX サーバがダウンしているときに着信コールを処理するように B-ACD を設定するには、Cisco Unified CME で次の設定を行います。
1. 優先度が低い音声ダイヤルピアを設定し、Cisco Unified CCX アプリケーション用に設定された CME Telephony Trigger を使用して、[destination-pattern] フィールドと [incoming called-number] フィールドを設定します。たとえば、Cisco Unified CCX アプリケーションに CME トリガ 8003 が設定されており、Cisco Unified CME で関連付けられている音声ダイヤルピアの優先度がゼロの場合、B-ACD の音声ダイヤルピアは次のようになります。
dial-peer voice 50001 voip
session target ipv4:10.4.45.3
incoming called-number 8003
dtmf-relay h245-alphanumeric
2. Cisco Unified CCX エージェントの電話を B-ACD ハント グループに追加します。
3. ステップ 1 で定義した音声ダイヤルピア内の destination-pattern を、B-ACD のパイロット番号として使用します。
この設定を終えると、Cisco Unified CME と Cisco Unified CCX の両方が動作している場合、destination-pattern が同じで優先度が異なる 2 つの音声ダイヤルピアが Cisco Unified CME 内に存在することになります。図 3-2 とその後の表に示すように、8003 への着信コールがあると、Cisco Unified CCX が通知を受け取ります。
図 3-2 通常動作時の 2 つの音声ダイヤル ピア
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1 |
Cisco Unified CCX が起動し、トリガ 8003 を見つけ、そのトリガに対するコール関連のすべてのイベントを受信するよう、Cisco Unified CME にサブスクリプションを送信します。Cisco Unified CME は、destination-pattern が 8003、優先度が 0 の音声ダイヤルピアを内部的に作成します。 |
2 |
Cisco Unified CME の 8003 への着信コールは、destination-pattern が 8003、優先度が 0 の音声ダイヤルピアに一致します。これは、このダイヤルピアの優先度が高いためです。 |
3 |
Cisco Unified CME は、Cisco Unified CCX にコールの到着を知らせます。 |
Cisco Unified CCX サーバがダウンしている場合、優先度が 0 の音声ダイヤルピアがなくなり、優先度が 5 の音声ダイヤルピアが Cisco Unified CME に残ります。8003 への着信コールがあると、図 3-3 およびその後の表に示すように、B-ACD がトリガされます。
図 3-3 Cisco Unified CCX がダウンしている場合の 1 個の音声ダイヤルピア
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1 |
ダイヤルピア 8003 への着信コールは、Cisco Unified CME 内の destination-pattern が 8003 のダイヤルピアに一致します。このダイヤルピアは B-ACD のパイロット番号です。 |
2 |
B-ACD が動作し、ハント グループからエージェントを選択して、電話を鳴らします。 |
B-ACD を Cisco Unified CCX のバックアップとして使用しコールを処理する場合、次の点に注意してください。
• 着信コールに対しては、CCDR も、いかなる種類のレコードも Cisco Unified CCX データベースに書き込まれません。
• B-ACD が動作するとき(Cisco Unified CCX が動作しているかどうかにかかわらず)、CallMonitor Module(CMM)がシャットダウンされます。CLI を使用し、CMM を再度手動でイネーブルにする必要があります。そうしないと、Cisco Unified CCX は、着信コールがあっても通知を受け取りません。CLI を使用して CMM をイネーブルにする方法については、『 Cisco Unified Communications Manager Express System Administrator Guide 』を参照してください。
B-ACD の詳細については、『 Cisco Unified CME B-ACD and Tcl Call-Handling Applications 』を参照してください。このマニュアルは、次の URL で入手できます。
http://www.cisco.com/en/US/products/sw/voicesw/ps4625/products_configuration_guide_
book09186a00805f22ca.html