帯域幅の使用量の推定
帯域幅は、配置において次のような大きい役割を果たします。
• 集中型コール処理モデル(中央サイトでの Cisco Unified CCX)
• コール アドミッション制御またはゲートキーパーを使用する任意のコール配置モデル
リモート エージェントのトラフィック プロファイル
Cisco Unified CCX のシグナリングは、ネットワークの制御トラフィックにおけるごく小さい一部分(Cisco Unified CCX サーバとエージェント/スーパーバイザ デスクトップ間でのやりとり)だけを表します。Cisco Unified CCX トラフィックおよび CTI トラフィックにおける TCP ポートと Differentiated Service Code Point(DSCP; DiffServ コード ポイント)マーキングの詳細については、「サービスアビリティとセキュリティ」 および「QoS およびコール アドミッション制御」 を参照してください。
計算に音声が含まれていると帯域幅の推定が難しくなります。通常、WAN リンクは IP テレフォニー ネットワークで最低速の回線であるため、音声トラフィックがこれらのリンク間で送信されるときのパケット損失、遅延、およびジッタにも特に注意する必要があります。ネットワークに起因するその他の遅延に加え、G.729 方式による音声サンプリングの遅延は最小(わずか 30 ミリ秒)であるため、G.729 方式は WAN での使用に好まれるコーデックです。
帯域幅に音声が含まれている場所でのシステム構成では、次の要因についても考慮する必要があります。
• 遅延合計の見積もり(WAN の遅延、経由するローカルエリア ネットワークのシリアライゼーション遅延、およびネットワーク デバイスのフォワーディング遅延を考慮します)。ネットワーク内アプリケーションの一方向の遅延合計についてあらかじめ設定されている一般的な制限は、150 ミリ秒です。
• アプリケーション自体に固有の遅延の影響。平均的な Cisco Unified CCX エージェントのログイン時間は WAN の遅延なしで 8 秒です。この時間には、エージェント アプリケーションとさまざまなサーバ間でのおよそ 1,000 のメッセージ交換が含まれます。エージェントの全体的なログイン時間は、30 ミリ秒の WAN の遅延が発生するたびにほぼ 30 秒ずつ増えます。
• ルーティング プロトコルの影響。たとえば、Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)の場合、収束時間はわずかで、帯域幅は控えめに使用されます。また、EIGRP の収束は、コール処理と Cisco Unified CCX エージェントのログインにほとんど影響を与えません。
• エージェント コールのサイレント モニタリングと録音の方式。使用する方式によって、特定のネットワーク リンクでの帯域幅負荷が異なります。
サイレント モニタリングによる帯域幅の使用状況
CAD デスクトップ ソフトウェアのサイレント モニタリング機能では、エージェント コールのリッスンと録音の両方が実行でき、この機能の帯域幅の要件は CAD 製品で最大です。WAN 接続を介してメイン サイトに接続するリモート エージェントにとっては、この機能を適切に設定することが特に重要です。
エージェント コールは、CAD ソフトウェアでリッスンまたは録音ができます。これを実行するには、VoIP プロバイダーに要求を送信します。VoIP プロバイダーは、コールを表す音声ストリーム(コールごとに 2 つの音声ストリーム)を読み取り、それを要求者に送信します。このセクションでは、要求者とプロバイダーの間のネットワーク リンクの帯域幅の要件について詳細に説明します。
サイレント モニタリングの要求者
CAD ソフトウェアには次の 2 種類の要求者があります。
• CSD
• 録音サービス
CSD では、スーパーバイザがエージェントのコールをリアルタイムでリッスンする場合に要求が送信されます。VoIP プロバイダーは音声ストリームを取り込んで、これらをデスクトップのスピーカを通じてリッスンできるスーパーバイザのデスクトップに送信します。
録音サービスでは、スーパーバイザとエージェントのいずれかがコールを録音する場合に要求を送信します。VoIP プロバイダーは音声ストリームを送信し、録音サービスがこのストリームをディスクに保存するため、後でリッスンできます。
Cisco Unified CCX 7.0 では、録音サービスは Cisco Unified CCX サーバにインストールされています。
サイレント モニタリング プロバイダー
CAD ソフトウェアには次の 2 種類の VoIP プロバイダーもあります。
• Cisco Agent Desktop
• VoIP モニタ サービス
Cisco Agent Desktop アプリケーションには、エージェントのデスクトップで実行されるデスクトップ モニタ サービスというサービスが含まれています。このサービスは、デスクトップ上の CAD アプリケーションにログインしているエージェントのサイレント モニタリング要求だけを処理します。このサービスは、ログインしているエージェントに関連付けられている IP 電話またはソフトフォンに送信された音声パケットを取り込みます。このサービスが機能するためには、IP 電話をネットワークのエージェント デスクトップと直列に接続する必要があります。
デフォルトでは、このサービスは、アプリケーションの起動時にすべてのエージェント デスクトップでアクティブになります。CAD サーバを初めてインストールした後、すべてのエージェントがすでに、サイレント モニタリング機能でデスクトップ モニタ サービスを使用するように設定されています。
VoIP モニタ サービスは、サイレント モニタリングの複数の要求を同時に処理できます。このサービスは、スイッチの Switched Port Analyzer(SPAN; スイッチド ポート アナライザ)設定を介してスイッチから直接パケットを取り込みます。ハイ アベイラビリティのない展開では、Cisco Unified CCX 7.0 は VoIP モニタ サービスを 1 種類サポートします。このサービスは Cisco Unified CCX サーバにインストールされています。ハイ アベイラビリティのある展開の場合は、2 種類の VoIP モニタ サービスが Cisco Unified CCX サーバごとに 1 つずつインストールされます。
(注) デスクトップを持たない IP Phone エージェントの場合は、サイレント モニタリング機能で VoIP モニタ サービスを使用するように設定する必要があります。
図 6-1 に、WAN 経由でリモート オフィスをサポートする Cisco Unified CCX の典型的なインストール方法を示します。メイン オフィスとリモート オフィスの両方で、VoIP と録音サービスをオンサイトで使用しています。
図 7-1 典型的なコンタクト センター
要求者とプロバイダーの配置が確認できる場合、サイレント モニタリング機能用の帯域幅が必要となる場所を判断するのは簡単です。
要求者と VoIP プロバイダーがどのサービスであるかにかかわらず、この 2 つのポイント間の帯域幅の要件は、モニタおよび録音またはそのいずれかが行われる IP コールの帯域幅です。各モニタリングおよび録音セッションまたはそのいずれかを、帯域幅を計算する新しい電話のコール(2 つの音声ストリーム)と見なすことができます。したがって、サイレント モニタリング機能をサポートする帯域幅を計算するには、コール トラフィックを処理するネットワークをプロビジョニングする場合と同じ計算を使用できます。
IP コールの帯域幅の使用状況
IP 電話コールは、2 種類のデータ ストリームから構成されています。一方のストリームは電話機 A から電話機 B に送信されます。もう一方のストリームは、電話機 B から電話機 A に送信されます。音声データはパケットにカプセル化され、ネットワークに送信されます。音声ストリームを保管するのに必要なデータ量は、データの符号化に使用される CODEC によって異なります。CAD ソフトウェアは、G.711 および G.729 の両 CODEC に対応しています。
音声データ自体は、Real-Time Transport Protocol(RTP)を使用してネットワークに転送されます。RTP プロトコルは、 無音圧縮 という概念をサポートします。無音圧縮を使用する場合、音声パケットが音でない場合は、ネットワークに送信されません。それ以外の場合は、無音のパケットでも送信されます。これにより、コールの平均帯域幅要件は小さくなります。CAD では無音圧縮をサポートしますが、ネットワークのプロビジョニング時は、無音圧縮用に必要とされる低い帯域幅は使用しないでください。これは、ワーストケースのシナリオとしてコールが無音でないことがあり、このために無音圧縮が有効にされなかった場合と同様の最大の帯域幅が要求される場合があるためです。
IP コールの帯域幅を計算する場合は、RTP パケットのサイズに加えて、ネットワークでの RTP データ転送に使用するネットワーキング プロトコルの追加オーバーヘッドを使用する必要があります。
たとえば、20 ミリ秒のスピーチ データを送信する G.711 パケットでは、ストリームごとに 64 kbps(キロバイト/秒)のネットワーク帯域幅が必要です。これらのパケットは、4 層のネットワーキング プロトコル(RTP、UDP、IP、およびイーサネット)でカプセル化されます。これらのプロトコルはそれぞれ、個別のヘッダー情報を G.711 データに追加します。その結果、いったんイーサネット フレームにパッケージされた G.711 データは、ネットワークを伝送するデータ ストリームごとに 87.2 kbps の帯域幅が必要になります。IP 電話コールは 2 つの音声ストリームで構成されているため、この例では、1 コールにつき 174.4 kbps の帯域幅が必要です。
単一パケット内の音声データの量もパケットのサイズや帯域幅に影響を及ぼします。前述の例では 20 ミリ秒のスピーチが含まれるパケットで計算していますが、Cisco Unified CM の設定でサポートする CODEC ごとにこの値が異なる場合があります。パケットに含めるスピーチ情報を多く設定すると、ネットワークで送信されるパケット数と帯域幅が減ります。これは、追加のネットワーキング ヘッダーを含むパケットが減るにもかかわらずパケットのサイズが増えるためです。 表 7-1 は、1 回の電話コールで必要な帯域幅を、各種 CODEC とパケットあたりのスピーチ量の組み合わせ別に表したものです。
表 7-1 コールあたりのパケット サイズ別帯域幅要件
|
|
|
G.711 |
10 |
220.8 |
G.711 |
20 |
174.4 |
G.711 |
30 |
159.0 |
G.729 |
10 |
108.8 |
G.729 |
20 |
62.4 |
G.729 |
30 |
47.0 |
G.729 |
40 |
39.2 |
G.729 |
50 |
34.6 |
G.729 |
60 |
31.4 |
(注) これらの計算は、サンプリング レート 64 kbps でスピーチを符号化する G.711 と、8kbps を使用する G.729 を基準に行っています。これは、1 秒間の音を表現するために G.711 CODEC に符号化される 1 秒間のスピーチに、65,536 ビット(8,192 バイト)が必要であることを意味します。
全二重接続では、帯域幅の速度が受信と着信の両方のトラフィックに適用されます(たとえば、100 Mbps 接続では、アップロード用の帯域幅として 100 Mbps、ダウンロード用の帯域幅として 100 Mbps が存在します)。したがって、1 回の IP 電話コールで単一のデータ ストリームに匹敵する帯域幅が使用されます。このシナリオでは、G.711 の IP 電話コールで、1 パケットに無音圧縮なしで 20 ミリ秒間のスピーチが含まれる場合、87.2 kbps(174.4 / 2)の利用可能な帯域幅が必要です。
表 7-2 および 表 7-3 は、VoIP プロバイダーが処理する同時モニタリング セッションで必要なネットワーク接続に基づいて計算した、利用可能な総帯域幅のパーセンテージを示しています。
次のそれぞれの注は、表 8-8 および表 8-9 で示す帯域幅の要件に適用されます。
• 帯域幅の値は、当該接続の最高速度に基づいて計算される。接続の実際の速度は、多様な要因のため明示された最大速度とは異なる場合があります。
• 帯域幅の要件は、アップロードの速度を基準にする。ダウンロードの速度は、IP 電話コールの着信ストリームに対してだけ影響します。
• 各値は 20 ミリ秒のスピーチを含む音声パケットを基準にする。
• 各パケットのバイト数には、イーサネットによるカプセル化全体が含まれる。
• データは無音圧縮なしの CODEC を表す。無音圧縮ありの場合は、使用される帯域幅の量は少なくなる場合があります。
• 提示するデータは、モニタリングされるコールのスピーチ品質については言及しない。帯域幅の要件が利用可能な合計の帯域幅に近く、他のアプリケーションとネットワーク アクセスを共有する必要がある場合、音声パケットの遅延(パケットの遅れ)がモニタリングされるスピーチの品質に影響を及ぼす場合があります。ただし、遅延は録音されたスピーチの品質には影響しません。
• データが表すのは、モニタリングと録音に必要な帯域幅だけである。このマニュアルの他のセクションで概要を示している他の Cisco Agent Desktop モジュールの帯域幅の要件は含まれません。
表 7-2 G.711 CODEC を使用する同時モニタリング セッションで利用可能なアップロード帯域幅のパーセンテージ
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利用可能な帯域幅要件のパーセンテージ(無音圧縮なし)
|
|
|
|
|
|
|
|
|
コールだけ |
0.1 |
0.9 |
5.6 |
13.6 |
34.1 |
68.1 |
サポートされない(NS) |
1 |
0.3 |
2.6 |
16.8 |
40.9 |
NS |
NS |
NS |
NS |
2 |
0.4 |
4.4 |
28.1 |
68.1 |
NS |
NS |
NS |
NS |
3 |
0.6 |
6.1 |
39.3 |
95.4 |
NS |
NS |
NS |
NS |
4 |
0.8 |
7.8 |
50.5 |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
5 |
1.0 |
9.6 |
61.7 |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
6 |
1.1 |
11.3 |
72.9 |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
7 |
1.3 |
13.1 |
84.2 |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
8 |
1.5 |
14.8 |
95.4 |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
9 |
1.7 |
16.6 |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
10 |
1.8 |
18.3 |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
NS |
表 7-3 G.711 CODEC を使用する同時モニタリング セッションで利用可能なアップロード帯域幅のパーセンテージ
|
利用可能な帯域幅要件のパーセンテージ(無音圧縮なし)
|
|
|
|
|
|
|
|
コールだけ |
0.0 |
0.3 |
2.0 |
4.9 |
12.2 |
24.4 |
48.8 |
1 |
0.1 |
0.9 |
6.0 |
14.6 |
36.6 |
73.1 |
サポートされない(NS) |
2 |
0.2 |
1.6 |
10.0 |
24.4 |
60.9 |
NS |
NS |
3 |
0.2 |
2.2 |
14.1 |
34.1 |
85.3 |
NS |
NS |
4 |
0.3 |
2.8 |
18.1 |
43.9 |
NS |
NS |
NS |
5 |
0.3 |
3.4 |
22.1 |
53.6 |
NS |
NS |
NS |
6 |
0.4 |
4.1 |
26.1 |
63.4 |
NS |
NS |
NS |
7 |
0.5 |
4.7 |
30.1 |
73.1 |
NS |
NS |
NS |
8 |
0.5 |
5.3 |
34.1 |
82.9 |
NS |
NS |
NS |
9 |
0.6 |
5.9 |
38.1 |
92.6 |
NS |
NS |
NS |
10 |
0.7 |
6.6 |
42.2 |
NS |
NS |
NS |
NS |
VoIP モニタ サービスの帯域幅の要件
VoIP モニタ サービスとデスクトップ モニタ サービスとで帯域幅の要件は同じですが、VoIP モニタ サービスのほうがより多数の同時セッションを処理できます(サーバ上で実行されるため)。 表 7-4 および 表 7-6 はそれぞれ、 表 7-2 および 表 7-3 の同時セッション数を増やした場合を示しています。
表 7-4 G.711 CODEC を使用する同時モニタリング セッションで利用可能なアップロード帯域幅のパーセンテージ
|
利用可能な帯域幅要件のパーセンテージ(無音圧縮なし)
|
|
|
|
1 |
0.3 |
2.6 |
16.8 |
5 |
1.0 |
9.6 |
61.7 |
10 |
1.8 |
18.3 |
サポートされない(NS) |
15 |
2.6 |
26.2 |
NS |
20 |
3.5 |
34.9 |
NS |
25 |
4.4 |
43.6 |
NS |
30 |
5.2 |
52.3 |
NS |
35 |
6.1 |
61.0 |
NS |
40 |
7.0 |
69.8 |
NS |
45 |
7.8 |
78.5 |
NS |
50 |
8.7 |
87.2 |
NS |
表 7-5 G.711 CODEC を使用する同時モニタリング セッションで利用可能なアップロード帯域幅のパーセンテージ
|
利用可能な帯域幅要件のパーセンテージ(無音圧縮なし)
|
|
|
|
1 |
0.1 |
0.9 |
6.0 |
5 |
0.3 |
3.4 |
22.1 |
10 |
0.7 |
6.6 |
42.2 |
15 |
0.9 |
9.4 |
60.2 |
20 |
1.2 |
12.5 |
80.3 |
25 |
1.6 |
15.6 |
サポートされない(NS) |
30 |
1.9 |
18.7 |
NS |
35 |
2.2 |
21.8 |
NS |
40 |
2.5 |
25.0 |
NS |
45 |
2.8 |
28.1 |
NS |
50 |
3.1 |
31.2 |
NS |
CAD デスクトップ アプリケーションの帯域幅の使用状況
CAD デスクトップ アプリケーションには次のものが含まれています。
• Cisco Agent Desktop
• Cisco Supervisor Desktop
• Cisco Desktop Administrator
これらのアプリケーションでも一定量の帯域幅が必要ですが、デスクトップ モニタ サービスと比べればごくわずかです。また、ネットワーク上での通信タイプはバースト性です。一般に、エージェントが処理を実行していない場合、帯域幅の使用状況は低くなります。機能や処理が要求されると、処理を実行するために必要な時間(一般に 1 秒未満)だけ帯域幅が増加し、処理が終了すると、安定状態レベルに戻ります。プロビジョニングの観点では、すべての CAD エージェントが特定の処理を同時に実行する可能性を判断する必要があります。コール センターを特徴付け、(ワーストケースで)同時に実行可能な処理の最大数を決定して帯域幅の要件を特定した後、要求された処理の何パーセントに対してどれだけの遅延を許容するかを決定します。
たとえば、同時にログインする 300 個の CAD エージェントに対する未加工の帯域幅の要件は 4.5 キロバイト/秒で、各エージェントのログイン時間は約 9 秒(ネットワーク遅延なし)です。WAN リンクにこれだけの帯域幅がない場合、パケットはキューイングされてから送受信されるため、ログインにより多くの時間がかかります。これによってログイン試行の時間が 2 倍(この場合 18 秒)になる場合、そのような遅延を受け入れられますか。受け入れることができない場合、より多くの帯域幅をプロビジョニングする必要があります。
次の各アプリケーションは、サーバ マシン上で実行されるベース CAD サービスと通信します。また、Agent Desktop アプリケーションは、CTI サーバと通信して呼制御処理と状態変更を行います。 表 7-6 に、各アプリケーションのメッセージ タイプを示します。
表 7-6 CAD デスクトップ アプリケーション別メッセージ タイプ
|
|
Cisco Agent Desktop |
ログイン/ログオフ エージェント状態の変更 呼制御 コール状態情報 デスクトップ モニタリング/録音 チャット メッセージ チーム パフォーマンス メッセージ レポート生成 リアルタイム データ リフレッシュ |
Cisco Supervisor Desktop |
ログイン/ログオフ エージェント状態の変更 コール状態のアップデート レポート生成 サイレント モニタリング 通話録音 コールの再生 チャット メッセージ チーム パフォーマンス メッセージ リアルタイム データ リフレッシュ |
Cisco Desktop Administrator |
設定情報の取得と保存 設定データのリフレッシュ |
Cisco Agent Desktop による帯域幅の使用状況
CAD エージェントは、エージェントのログイン/ログオフ、エージェント状態の変更、コールの処理、およびベース サーバへのレポート情報の送信を行うことができます。これらのアクティビティの帯域幅の要件は非常にわずかですが、多くのエージェントが考慮される場合は増加する可能性があります。
表 7-10 に、さまざまなエージェント数における平均的な帯域幅の要件を示します。この情報は、帯域幅のテストと帯域幅データの推定から導かれています。帯域幅に影響する可能性がある多くの変数があるため、帯域幅の使用状況がより高くなる設定を選択してワーストケース シナリオに近い状況を示しています。この表に示される帯域幅の要件をエージェントの WAN リンクが満たしていると、Cisco Agent Desktop でメッセージの受け渡しを遅延なく実行できます。
帯域幅に影響する設定および設定パラメータを下記の表 8-13 および表 8-14 に示します。
• エージェントごとのスキル数:10
• チームごとのエージェント数:20
• チーム数:50
• エージェントごとのエージェント状態変更数(毎時):10(コール処理に起因する状態変更はカウントから除外)
• エージェントごとのコール数(毎時):60
• チームごとのチーム パフォーマンス メッセージ(毎時):8
• 送信/受信されるチャット メッセージ(毎時):20
• チャット メッセージ サイズの平均(バイト単位):40
• 録音されるコール数(毎時):0
(注) ここに示す帯域幅の要件には、コール、録音、またはモニタリング セッションの RTP ストリームの帯域幅は含まれません。
表 7-7 Cisco Agent Desktop の平均的な帯域幅の要件
|
|
|
1 |
0.03 |
0.05 |
10 |
0.2 |
0.3 |
50 |
1.1 |
1.5 |
100 |
2.2 |
3.0 |
150 |
3.3 |
4.5 |
200 |
4.4 |
6.0 |
250 |
5.5 |
7.0 |
300 |
6.6 |
9.0 |
Cisco Agent Desktop には、Cisco Unified CCX および Cisco Unified CCE の両方で使用できる帯域幅カルキュレータがあります。Cisco Agent Desktop の帯域幅カルキュレータについての詳細情報は、 http://www.cisco.com/univercd/cc/td/doc/product/icm/bandcalc/index.htm で入手できます。
Cisco Supervisor Desktop による帯域幅の使用状況
CSD では、スーパーバイザがログインするチームのすべてのエージェントのイベントが受信されます。この情報には、状態変更、コール処理、ログイン/ログオフなどが含まれます。エージェント、スキル、およびコールが増加すると、それに応じてスーパーバイザに送信されるデータも増加します。また、スーパーバイザがレポートを表示している間、特定のレポートが定期的に自動リフレッシュされて、リアルタイム データが表示されます。レポートをリフレッシュするために追加の帯域幅が必要です。
表 7-8 では、 表 7-7 の帯域幅の値を調べるために使用したものと同じ基本的な設定パラメータを使用しています。ただし、次の点が異なります。
• 計算は、10 エージェントごとに 1 スーパーバイザを基準とする。
• チーム エージェント統計レポートが表示される。
• チーム スキル統計レポートが表示される。
表 7-8 Cisco Supervisor Desktop の帯域幅の要件
|
|
|
1 |
0.05 |
0.05 |
10 |
0.05 |
0.05 |
50 |
0.2 |
0.2 |
100 |
0.5 |
0.5 |
150 |
0.7 |
0.7 |
200 |
1.0 |
1.0 |
250 |
1.2 |
1.2 |
300 |
1.4 |
1.5 |
Cisco Desktop Administrator による帯域幅の使用状況
CDA の帯域幅の要件はごくわずかで、管理者が設定をアクティブに変更する場合にだけ表示されます。一般に、CDA で使用される帯域幅はプロビジョニングの観点からは無視できます。
リモート エージェントのトラフィック プロファイル
Cisco Unified CCX のシグナリングは、ネットワークの制御トラフィックにおけるごく小さい部分(Cisco Unified CM CTI および ICD サブシステム)だけを表します。Cisco Unified CCX ICD トラフィックおよび CTI トラフィックにおける TCP ポートと DiffServ コード ポイント(DSCP)マーキングの詳細については、「サービスアビリティとセキュリティ」 および「QoS およびコール アドミッション制御」 を参照してください。
計算に音声が含まれていると帯域幅の推定が難しくなります。通常、WAN リンクは IP テレフォニー ネットワークで最低速の回線であるため、音声トラフィックがこれらのリンク間で送信されるときのパケット損失、遅延、およびジッタにも特に注意する必要があります。ネットワークに起因するその他の遅延に加え、G.729 方式による音声サンプリングの遅延は最小(わずか 30 ミリ秒)であるため、G.729 方式は WAN での使用に好まれるコーデックです。
帯域幅に音声が含まれている場所でのシステム構成では、次の要因についても考慮する必要があります。
• 遅延合計の見積もり(WAN の遅延、経由するローカルエリア ネットワークのシリアライゼーション遅延、およびネットワーク デバイスのフォワーディング遅延を考慮します)。ネットワーク内アプリケーションの一方向の遅延合計についてあらかじめ設定されている一般的な制限は、150 ミリ秒です。
• アプリケーション自体に固有の遅延の影響。Cisco Unified CCX エージェントの初期ログイン時間は WAN の遅延なしで 25 秒です。エージェントの全体的なログイン時間および基本遅延時間は、30 ミリ秒の WAN 遅延が発生するたびにほぼ 30 秒ずつ増えます。
• ルーティング プロトコルの影響。たとえば、Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)の場合、収束時間はわずかで、帯域幅は控えめに使用されます。また、EIGRP の収束は、コール処理と Cisco Unified CCX エージェントのログインにほとんど影響を与えません。
WAN を介して維持可能な Cisco Unified CCX エージェント数(IP テレフォニーの QoS を有効化する程度に)を表 7-9 を使用して推定します。これらの数は、G.729 RTP ストリームを含め、Cisco Unified CCX エージェントまでのコール セッション全体を WAN を介して送信するテストで導き出されます。帯域幅のおよそ 30% が音声に対してプロビジョニングされます。Cisco Agent Desktop と組み合わせて RTP を実行中に、他のバックグラウンド トラフィックが WAN を経由している場合は、音声のドロップの方がより重大な問題です。このような音声のドロップは、特定のリンク速度の特定数のエージェントで発生する可能性があり、この起こりうるシナリオは表 7-9 では「適用対象外」のエントリとして表示しています。
表 7-9 WAN リンク経由で Cisco Unified CCX でサポートされるリモート エージェント
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|
|
|
|
|
G.729 |
3 |
7 |
15 |
25 |
38 |
G. 711 |
適用対象外 |
適用対象外 |
適用対象外 |
適用対象外 |
14 |
リモート エージェントの展開では、QoS メカニズムを使用して WAN の帯域幅利用率を最適化する必要があります。ディストリビューションとコア エリアでは、高度なキューイングおよびスケジューリング手法を使用する必要もあります。QoS トラフィックの分類の詳細については、「QoS およびコール アドミッション制御」を参照してください。集中型呼処理展開のプロビジョニング ガイドラインについては、次の URL からオンラインで入手できる『 Cisco IP Telephony Solution Reference Network Design 』ドキュメントを参照してください( http://www.cisco.com/go/ucsrnd )。
コール アドミッション制御(CAC)およびリソース予約プロトコル(RSVP)
Cisco Unified CM では、クラスタ内のエンドポイント間で Resource-Reservation Protocol(RSVP; リソース予約プロトコル)がサポートされるようになりました。RSVP は、Call Admission Control(CAC; コール アドミッション制御)で使用されるプロトコルで、コールの帯域幅予約のためにネットワーク内のルータで使用されます。制御される帯域幅は、音声ストリーム専用であり、コール シグナリング トラフィックは CAC の一部ではありません。
RSVP の採用前は、帯域幅の使用状況を計算するために、地点間で送受信されるアクティブ コールの数を各 Cisco Unified CM クラスタが保持していました。2 つ以上の Cisco Unified CM クラスタで同じリンクが共有された場合、各クラスタに専用の帯域幅を確保する必要があるため、この方法では帯域幅の使用が非効率的でした。また、ユーザは RSVP で複雑なネットワーク トポロジを展開できますが、その一方で、ロケーション ベースの CAC がハブアンドスポーク タイプのトポロジに限定されます。
RSVP は、IP Phone と同じ LAN 上にある 2 つの RSVP エージェント間のパスを追跡することで、この問題を解決します。Cisco IOS で実行されるソフトウェアの Media Termination Point(MTP; メディア ターミネーション ポイント)またはソフトウェアの トランスコーダ リソースは、RSVP エージェントにできます。RSVP エージェントは Cisco Unified CM で制御され、コールの発信時に、2 台の IP 電話間のメディア ストリーム内に挿入されます。発信元 IP Phone の RSVP エージェントが宛先の IP Phone の RSVP エージェントへのネットワークを確認し、帯域幅を予約します。ネットワーク ルータが(Cisco Unified CM ではなく)帯域幅の使用状況を追跡するため、コールが複数の Cisco Unified CM で制御される場合でも、RSVP で制御される単一のリンクを複数のコールで共有できます。
詳細については、『 Cisco Unified Communications Solution Reference Network Design (SRND) 』の RSVP の章を参照してください。
Cisco Unified CCX では、RSVP またはロケーションベースの CAC のいずれかを使用することで、コール センターのエージェントをメカニズムから独立させています。これは、Cisco Unified CCX では、帯域幅がないためにエージェントの電話機がコールを受信できない場合でも、コールが利用可能なエージェントにルーティングされることを意味します。このため、サイト間の適切な帯域幅のサイジングが非常に重要になります。
どのようなコール転送でも、2 種類のコールがアクティブになる瞬間というのは存在します。いずれかのアクティブなコールがサイト間を通過すると、CAC が使用されます。元のコールが転送中に保留になった場合でも、このコールは、アクティブなコールとまったく同量の帯域幅を占有します。
図 7-3 および図 7-4 では、リモート サイトに音声ゲートウェイとエージェントが配置され、一方で Cisco Unified CCX サーバがデータ センターのサイトに配置されている様子を示します。PSTN からリモート サイトの音声ゲートウェイに到達したコールは、データ センターの Cisco Unified CCX に接続します。この接続には WAN リンクを経由する 1 コールの帯域幅が使用され、これは発信者側のストリームで表されます。エージェントが利用可能になり、リモート サイトで選択されると、Cisco Unified CCX からこのエージェントにコールが転送されます。
図 7-3 PSTN からのコールが Cisco Unified CCX サーバを経由してエージェントに転送される
転送時には、エージェントがコールをピックアップする前に、Cisco Unified CCX とエージェントの電話機の間でセットアップされる別のコールがあります。これには WAN を経由する別のコールの帯域幅が使用されます。これは、図 7-3 で示すようにエージェント ストリームで表されます。エージェントがこのコールをピックアップすると、音声トラフィックは、いずれもリモート サイトに配置されている音声ゲートウェイとエージェントの電話機の間に流れます。この時点では、WAN を介した帯域幅の予約は実行されません。図 7-4 を参照してください。この例では、コールの帯域幅がコンタクト センターのコールにどのように予約されて最終的にエージェントにルーティングされるかを示します。音声ゲートウェイ、エージェント、および Cisco Unified CCX サーバが配置されている場所に応じて、WAN の帯域幅を適切にプロビジョニングする必要があります。
図 7-4 エージェントによるコールのピックアップ後