Cisco CME システムの設定
この章では、ルータで Cisco CallManager Express(Cisco CME)システムを設定する方法について説明します。
Cisco CME システムの設定について
この章の作業では、Cisco CME システムが VoIP ネットワークと通信できるようにし、Cisco CME システムが IP Phone を登録するための準備をします。
前提条件
Cisco CME システムの設定を始める前に、次の機能を準備しておく必要があります。
• ネットワーク:VoIP ネットワークが稼働している必要があります。
• Cisco IOS ソフトウェア:このバージョンの Cisco CME に対応したバージョンの Cisco IOS ソフトウェアをダウンロードし、インストールしておく必要があります。
• Cisco CME ソフトウェア:Cisco CME ファイルをダウンロードし、Cisco CME ルータのフラッシュ メモリにコピーしておく必要があります。詳細については、「Cisco CallManager Express の概要」の ソフトウェアに関する前提条件の項を参照してください。
• ハードウェア:インストールする Cisco CME システム用に十分なメモリを搭載したルータと、エンド ユーザ用の適切な IP Phone を用意しておく必要があります。
詳細については、「Cisco CallManager Express の概要」の 前提条件の項を参照してください。
Cisco CME のネットワーク パラメータの設定
次の作業を行うと、Cisco CME システムがユーザのネットワークと通信できるようになります。
• Cisco CME の DHCP サービスの設定(Cisco CME セットアップ ツールを使用する場合は不要)
• ネットワーク タイム プロトコルの設定(必須)
Cisco CME の DHCP サービスの設定
(注) Cisco CME セットアップ ツールを使用する計画がある場合、必要となる DHCP IP アドレス プールが 1 つだけのときは、Cisco CME セットアップ ツールを使用すればアドレス プールが作成されます。したがって、この項の手順を実行する必要はありません。「ネットワーク タイム プロトコルの設定」に進んでください。
ITS システムに接続された Cisco IP Phone がある場合、その電話機は Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP; ダイナミック ホスト コンフィギュレーション プロトコル)サーバに自動的に問い合せます。DHCP サーバは応答すると、IP アドレスを Cisco IP Phone に割り当て、DHCP オプション 150 を通じて TFTP サーバの IP アドレスを提供します。次に、電話機が ITS サーバに登録し、TFTP サーバからの設定ファイルおよび電話機ファームウェア ファイルの取得を試みます。
IP Phone の DHCP サービスを設定するには、次のいずれかの作業を選択します。
• 「単一の DHCP IP アドレス プールの定義」 :Cisco CME ルータが DHCP サーバの場合、すべての DHCP クライアントに対して単一の共有アドレス プールを使用できるときは、この方法を使用します。
• 「Cisco IP Phone ごとに異なる DHCP IP アドレスの定義」:Cisco CME ルータが DHCP サーバの場合、IP Phone 以外の電話機の DHCP クライアントに対して別のプールが必要なときは、この方法を使用します。
• 「DHCP リレー サーバの定義」:Cisco CME ルータが DHCP サーバではない場合、IP Phone からの DHCP 要求を別のルータの DHCP サーバにリレーするときは、この方法を使用します。
DHCP の詳細については、『 Cisco IOS DHCP Server 』を参照してください。
単一の DHCP IP アドレス プールの定義
この作業では、IP アドレスの大規模な共有プールを作成します。このプールでは、すべての DHCP クライアントが、オプション 150 の TFTP サーバ IP アドレスを含む同一の情報を受信します。この方法で DHCP を設定すると、設定する DHCP プールが 1 つだけで済むという利点があります。ただし、一部の(IP Phone 以外の電話機の)クライアントが別の TFTP サーバ アドレスを使用する必要がある場合にこの方法を使用すると、問題が発生する可能性があります。
要約手順
1. ip dhcp pool pool-name
2. network ip-address [ mask | / prefix-length ]
3. option 150 ip ip-address
4. default-router ip-address
5. exit
詳細手順
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ステップ 1 |
ip dhcp pool pool-name
Router(config)# ip dhcp pool mypool |
DHCP サーバ アドレス プールの名前を作成して、DHCP プール設定モードを開始します。 |
ステップ 2 |
network ip-address [ mask | / prefix-length ]
Router(config-dhcp)# network 10.0.0.0 255.255.0.0
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DHCP アドレス プールの IP アドレス、およびオプションのマスクまたはアドレス プレフィックスのビット数(前にスラッシュを付ける)を指定します。 |
ステップ 3 |
option 150 ip ip-address
Router(config-dhcp)# option 150 ip 10.0.0.1
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Cisco IP Phone がイメージ設定ファイルをダウンロードする際のダウンロード元となる TFTP サーバ アドレスを指定します。これは、ユーザの Cisco CME ルータ アドレスです。 |
ステップ 4 |
default-router ip-address
Router(config-dhcp)#
default-router 10.0.0.1
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IP Phone を接続するルータを指定します。このルータは、Cisco CME ルータ、または Cisco CME ルータに接続された任意の Cisco ルータです。
(注) Cisco IP Phone は、Cisco CME ルータに接続されている限り、必要なネットワークの詳細情報を取得できます。
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ステップ 5 |
exit
Router(config-dhcp)# exit |
DHCP プール設定モードを終了します。 |
Cisco IP Phone ごとに異なる DHCP IP アドレスの定義
この作業では、DHCP サーバ アドレス プールの名前を作成し、IP アドレスと MAC アドレスを指定します。この方法では、IP Phone ごとにエントリを作成する必要があります。
要約手順
1. ip dhcp pool pool-name
2. host ip-address subnet-mask
3. client-identifier mac-address
4. option 150 ip ip-address
5. default-router ip-address
6. exit
詳細手順
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ステップ 1 |
ip dhcp pool pool-name
Router(config)# ip dhcp pool pool2 |
DHCP サーバ アドレス プールの名前を作成して、DHCP プール設定モードを開始します。 |
ステップ 2 |
host ip-address subnet-mask
Router(config-dhcp)# host 10.0.0.0 255.255.0.0 |
電話機で取得する IP アドレスを指定します。 |
ステップ 3 |
client-identifier mac-address
Router(config-dhcp)# client-identifier 01238.380.3056 |
電話機の MAC アドレスを指定します。MAC アドレスは各 Cisco IP Phone のステッカーに印刷されています。
(注) MAC アドレスの前に 01 というプレフィックス番号を使用する必要があります。
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ステップ 4 |
option 150 ip ip-address
Router(config-dhcp)# option 150 ip 10.0.0.1 |
Cisco IP Phone が XmlDefault.cnf.xml というイメージ設定ファイルをダウンロードする際のダウンロード元となる TFTP サーバ IP アドレスを指定します。これは、ユーザの Cisco CME ルータ IP アドレスです。 |
ステップ 5 |
default-router ip-address
Router(config-dhcp)#
default-router 10.0.0.1
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IP Phone を接続するルータを指定します。このルータは、Cisco CME ルータ、または Cisco ITS ルータに接続された任意の Cisco ルータです。
(注) Cisco IP Phone は、Cisco CME ルータに接続されている限り、必要なネットワーク情報を取得できます。
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ステップ 6 |
exit
Router(config-dhcp)# exit |
DHCP プール設定モードを終了します。 |
DHCP リレー サーバの定義
デフォルトでは、ルータで Cisco IOS DHCP リレー サーバ機能は有効になっています。ユーザの ITS ルータで DHCP サーバが有効になっていない場合は、この作業の手順に従って有効にします。
この作業では、Cisco IP Phone が接続された LAN インターフェイスで DHCP リレーを設定し、DHCP クライアント(電話機)からの要求を DHCP サーバにリレーする Cisco IOS DHCP サーバ機能を有効にします。DHCP 設定の詳細については、『 Cisco IOS DHCP Server 』ドキュメントを参照してください。
要約手順
1. service dhcp
2. interface type number
3. ip helper-address ip-address
4. exit
詳細手順
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ステップ 1 |
service dhcp
Router(config)# service dhcp |
ルータで Cisco IOS DHCP サーバ機能を有効にします。 |
ステップ 2 |
interface type number
Router(config)# interface vlan 10 |
指定されたインターフェイスのインターフェイス設定モードを開始します。 |
ステップ 3 |
ip helper-address ip-address
Router(config-if)# ip helper-address 10.0.0.1 |
TFTP サーバおよび DNS サーバの要求に対する認識されないブロードキャストのヘルパー アドレスを指定します。サーバが別々のホスト上にある場合、サーバごとに ip helper-address コマンドを使用する必要があります。また、複数のサーバに ip helper-address コマンドを使用すると、複数の TFTP サーバ ターゲットを設定できます。 |
ステップ 4 |
exit
Router(config-if)# exit |
インターフェイス設定モードを終了します。 |
要約手順
1. clock timezone zone hours-offset [ minutes-offset ]
2. clock summer-time zone recurring [ week day month hh : mm week day month hh : mm [ offset ]]
3. ntp server ip-address
詳細手順
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ステップ 1 |
clock timezone zone hours-offset [ minutes-offset ]
Router(config)# clock timezone pst -8 |
現地時間帯を設定します。 • zone :時間帯の名前(通常は標準の省略形)。 • hours-offset :指定した時間帯と Coordinated Universal Time(UTC; 世界標準時)との差を示す時間数。UTC は Greenwich Mean Time(GMT; グリニッジ標準時)とも呼ばれます。 • minutes-offset :(オプション)指定した時間帯と UTC との差を示す分数。 |
ステップ 2 |
clock summer-time zone recurring [ week day month hh : mm week day month hh : mm [ offset ]]
Router(config)# clock summer-time pdt recurring |
(オプション)夏時間を指定します。 • zone :時間帯の名前(通常は標準の省略形)。 デフォルトでは、夏時間は無効になっています。 clock summer-time zone recurring コマンドにパラメータを指定しない場合、夏時間の規定はアメリカの規定になります。 offset 引数のデフォルトは 60 です。 詳細については、『 Cisco IOS Configuration Fundamentals Command Reference, Release 12.2 T』の「 Basic System Management Commands」の項を参照してください。 |
ステップ 3 |
ntp server ip-address
Router(config)# ntp server 10.1.2.3 |
このルータのクロックが、指定した NTP サーバと同期するようにします。 • ip-address :クロック同期を実現するタイム サーバの IP アドレス。 |
ITS V2.1 から Cisco CME 3.0 へのアップグレード
Cisco IOS Telephony Services(Cisco ITS) V2.1 を Cisco CME 3.0 にアップグレードする場合、次の手順が必要になる場合があります。
要約手順
1. (オプション)H.450 コール転送および自動転送 Tool Command Language(TCL)スクリプトが Cisco ITS V2.1 用にインストールされている場合は、そのスクリプトをルータから削除する必要があります。
2. (オプション)IP Phone が Cisco CME 3.0 設定に自動的に更新されない場合は、手動で更新を開始する必要があります。
詳細手順
ステップ 1 (オプション)H.450 コール転送および自動転送 TCL スクリプトが Cisco ITS V2.1 用にインストールされている場合は、そのスクリプトをルータから削除する必要があります。このアプリケーションがインストールされているかどうかを確認するには、 show running-config コマンドを使用します。次の例は、telephony-service の下の app_h450_transfer というアプリケーションを示しています。
Router# show running-config
load 7960-7940 P00303020209
ip source-address 10.0.0.1 port 2000 strict-match
application app_h450_transfer
前の例で示すように、telephony-service 設定モードの下で、アプリケーションがすべての ephone-dn に対してグローバルにインストールされている場合は、単一のコマンドで削除できます。次の例は、app_h450_transfer アプリケーションを削除する方法を示しています。
Router(config)# telephony-service
Router(config-telephony-service)# no application app_h450_transfer
個々の ephone-dn の下で H.450 アプリケーションがロードされている場合、 show running-config コマンドを使用すると、次のような出力が表示されます。
Router# show running-config
call-forward noan 4000 timeout 30
アプリケーションをグローバルに有効にしてからグローバルに削除する方法にすれば、やはり単一のグローバル コマンドを使用してアプリケーションを削除できます。次の例は、xfer-app というアプリケーションを有効にした直後に削除する方法を示しています。
Router(config)# telephony-service
Router(config-telephony-service)# application xfer-app
Router(config-telephony-service)# no application xfer-app
ステップ 2 (オプション)IP Phone が Cisco CME 3.0 設定に自動的に更新されない場合は、手動で更新を開始する必要があります。場合によっては、Cisco ITS V2.1 から更新すると、Cisco CME 3.0 設定情報の一部が電話機に受け入れられないことがあります。その場合、Services メニューまたは Directories メニューからエントリが欠落することがあります。IP Phone の Settings > Status オプションをオンにすると、エラー ステータス メッセージを表示できます。また、 show ephone phoneload コマンドを使用すると、電話機タイプごとに現在ロードされている電話機ファームウェアを表示できます。
電話機ファームウェアが、Cisco CME 3.0 用にロードしたバージョンと異なっていると表示された場合、電話機の設定情報を強制的に更新することができます。まず、ネットワーク ロケールを目的以外のロケールに変更して、電話機をリセットします。次に、ネットワーク ロケールを目的のロケールに変更して、再び電話機をリセットします。次の手順はこの方法を示しています。
a. 設定ファイルの新規生成を起動するために、ネットワーク ロケールを新しいコードに設定します。この例では、ネットワーク ロケールをドイツに設定しています。
Router(config)# telephony-service
Router(config-telephony-service)# network-locale DE
b. reset all コマンドを使用して、電話機をリブートします。その結果、電話機は新しい設定ファイルにアクセスします。
Router(config-telephony-service)# reset all
c. ネットワーク ロケールを本来必要なコードに変更します。この場合、目的のロケールはアメリカ(US)です。
Router(config-telephony-service)# network-locale US
d. 再び電話機をリブートします。
Router(config-telephony-service)# reset all
Cisco IOS ソフトウェア イメージの旧バージョンへのダウングレード
Cisco IOS イメージを旧バージョンにダウングレードすることが必要になった場合、電話機を正常にブートするには、次の手順を実行します。
1. はじめに、Cisco CME 電話機ファームウェア ファイルをダウングレードします。
2. 次に、Cisco CME イメージをダウングレードします。
設定の確認
DHCP が設定されていることを確認するには、 show running-config コマンドを使用します。
Router# show running-config
network 10.0.0.0 255.255.0.0
次の作業
DHCP サーバの確立と NTP の設定が完了したら、第 3 章「 Cisco CME システムでの電話機の設定 」の説明に従って電話機を設定します。