コール転送の設定
この章では、Cisco CallManager Express(Cisco CME)システムのコール転送の設定について説明します。
(注) バージョン 3.0 以前の Cisco CallManager Express は、Cisco IOS Telephony Services (Cisco ITS)と呼ばれていました。
コール転送の設定について
Cisco IOS Telephony Services V2.1 以前では、コール転送はシスコ独自の方式を使用して実行されていました。Cisco IOS Telephony Services V2.1 からは、ITU-T H.450.2 標準を使用した IP Phone のコール転送がサポートされました。また、Cisco CME 3.0 では、簡単な方法で H.450.2 コール転送を設定できるようになりました。設定手順については、「IP Phone に対する H450.2 標準のコール転送の設定」を参照してください。
Voice over Frame Relay(VoFR)ネットワークを使用する場合、または Cisco IOS Telephony Services V2.02 およびそれ以前のバージョンとの下位互換性を保つ場合は、引き続きシスコ独自の方式が必要です。設定手順については、「シスコ独自のコール転送の設定」を参照してください。
アナログ電話機が FXS ポートに接続されているシステムで H.450.2 コール転送を使用する場合は、Cisco IOS Telephony Services V2.1 のアプリケーション ガイドに記載されている設定方法を使用する必要があります。操作手順については、『 Cisco IOS Telephony Services V2.1 』の第 7 章「 Configuring Call Transfer 」を参照してください。
また、アナログ電話機は、Cisco ATA-186 または Cisco ATA-188 アナログ電話アダプタを使用するシステムに接続することで、サポートされる場合があります。この方法で接続した電話機は、IP Phone と同じ方法でコール転送できます。
(注) Cisco IOS Release 12.2(15)ZJ3 以降では、H.450 コール転送および自動転送をサポートできないネットワークに対するオプションとして、ローカルヘアピン コール ルーティングがサポートされています。この機能を使用するには、Tool Command Language(TCL)スクリプトの
app_h450_transfer.2.0.0.8.tcl またはそれ以降のバージョンをインストールする必要があります。このスクリプトは、http://www.cisco.com/cgi-bin/tablebuild.pl/ip-iostsp からダウンロード可能です。このスクリプトをすべてのダイヤルピアにグローバルに適用するには、グローバル設定モードで call application global コマンドを使用します。このコマンドの詳細については、Cisco IOS Release 12.2(15)ZJ の『Default Session Application Enhancements』を参照してください。この TCL スクリプトを使用して H.450 コール転送または自動転送を有効にする場合は、BRI および PRI テレフォニー インターフェイスでオーバーラップ シグナリングが一部サポートされなくなることに注意してください。これは、現在の TCL コール転送および自動転送の実装インフラストラクチャでは、オーバーラップ シグナリングを処理できないためです。
IP Phone に対する H450.2 標準のコール転送の設定
Cisco CME 3.0 では、デフォルト セッション アプリケーションを使用することで、ITU-T H.450.2 プロトコルを使用するコール転送を IP Phone から起動できるようになりました。デフォルト セッション アプリケーションによって提供される組み込み H.450.2 サポートは、PSTN インターフェイス タイプに関係なく、IP Phone から起動するコール転送に適用されます。このサポートはアナログ FXS 電話機には適用されません。この電話機にコール転送を実装するには、TCL スクリプトが必要です。
デフォルト セッション アプリケーションの詳細については、『 Default Session Application Enhancements』を参照してください。
H.450.2 を使用するコール転送は、ブラインド転送または打診転送です。ブラインド転送とは、リングバックが始まる前に、転送元電話機が発信者を転送先回線に接続する転送方式です。打診転送とは、転送元が呼び出し中の電話機(リングバックが聞こえる)に発信者を接続する、または転送元が第三者と会話してから発信者を第三者に接続する転送方式です。
ブラインド転送または打診転送は、システム単位で指定できます。その後、システム単位の設定を個々の電話回線の設定で上書きすることができます。たとえば、打診転送が設定されたネットワークに、着信コールを特定の内線番号に自動的に転送する自動アテンダント デバイスがある場合、そのデバイスに接続されている特定の ephone-dn 回線は、常にブラインド転送を使用するように設定できます。打診転送を使用できない自動アテンダント デバイスをサポートするには、この種の設定が必要になる場合があります。
Cisco CME は、SIP Refer 方式のコール転送に関するあらゆる状況をサポートします。SIP Refer を設定する場合は、事前にこの項の手順を実行します。SIP Refer を起動するには、 full-blind または full-consult キーワードを使用して transfer-system コマンドを設定する必要があることに注意してください。
この機能と、H.450.3 標準を使用する自動転送は、それぞれ個別に有効になることに注意してください。
前提条件
VoIP ネットワークにあるすべての音声ゲートウェイ ルータが、H.450 標準をサポートし、次のソフトウェアを実行している必要があります。
• Cisco IOS Release 12.2(15)ZJ 以降
• Cisco CME 3.0 以降のリリース、または app-h450-transfer.tcl スクリプトを使用するように設定された Cisco IOS Telephony Services V2.1
• Cisco IOS Telephony Services V2.1 を使用する場合は TCL IVR 2.0(Cisco CME 3.0 の場合は不要)
制約事項
• 新しいデフォルト セッション アプリケーションによって提供される組み込み H.450.2 サポートは、PSTN インターフェイス タイプに関係なく、IP Phone から起動するコール転送および自動転送にだけ適用されます。このサポートはアナログ FXS 電話機には適用されません。この電話機にコール転送および自動転送を実装するには、TCL スクリプトが必要です。アナログ FXS 電話機のコール転送および自動転送の詳細については、『 Cisco IOS Telephony Services V2.1 』の第 7 章「 Configuring Call Transfer 」を参照してください。
• Cisco ATA-186、Cisco ATA-188、および Cisco IP Conference Station 7935 で打診によるコール転送がサポートされるのは、二重回線動作が設定された ephone-dn エントリを使用してこれらのデバイスをプロビジョニングした場合だけです。単一回線動作でプロビジョニングした場合、これらのデバイスからのコール転送はブラインド転送として実行されます。
• ルータ間での H.450.12 補足サービス機能の交換は、このリリースには実装されていません。
• この機能は、旧バージョンの Cisco IOS Telephony Services を使用する Cisco 2610、Cisco 2620、または Cisco 3620 ルータでは動作しません。この機能を使用するには、最低でも、Cisco 2600XM と Cisco IOS Release 12.2(15)ZJ が必要です。
• VoFR では、打診による転送はサポートされていません。 transfer-system コマンドと
local-consult キーワードを使用します。VoFR 転送を使用するには、 すべての VoFR ルータに Cisco IOS Release 12.2(8)T 以降がインストールされている必要があります。インストールされていない場合、転送コールが廃棄されることがあります。Cisco IOS Release 12.0(5)XK1 を実行する従来の Cisco MC3810 ルータなど、古い VoFR プラットフォームの多くは、メモリ制限によりアップグレードできないことに注意してください。
要約手順
1. telephony-service
2. transfer-system {blind | full-blind | full-consult | local-consult}
3. transfer-pattern transfer-pattern
4. exit
5. ephone-dn dn-tag
6. transfer-mode {blind | consult}
7. exit
8. voice service voip
9. h323
10. h450 h450-2 timeout { T1 | T2 | T3 | T4 } milliseconds
11. exit
12. exit
詳細手順
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ステップ 1 |
telephony-service
Router(config)# telephony-service |
telephony-service 設定モードを開始します。 |
ステップ 2 |
transfer-system { blind | full-blind | full-consult | local-consult }
Router(config-telephony-service)# transfer-system full-consult |
ルータで管理する回線すべてに対するコール転送方式を定義します。
(注) SIP ネットワークの場合は、full-blind キーワードまたは full-consult キーワードだけを使用してください。詳細については、『Cisco IOS SIP Configuration Guide』を参照してください。
• blind:シスコ独自の方式を使用し、単一電話回線で、打診を行わずにコールを転送します。 • full-blind:H.450.2 標準方式を使用し、打診を行わずにコールを転送します。 • full-consult:使用可能な 2 つ目の電話回線を使用し、打診を行ってコールを転送します。2 つ目の回線が使用できない場合は、full-blind に戻ります。 • local-consult:使用可能な 2 つ目の電話回線を使用し、ローカルで打診を行ってコールを転送します。打診先または転送先がローカル以外の場合は、blind に戻ります。 |
ステップ 3 |
transfer-pattern transfer-pattern
Router(config-telephony-service)# transfer-pattern 52540.. |
Cisco IP Phone からの電話コールを、指定された電話番号パターンに転送します。転送パターンを設定しない場合は、デフォルトとして、転送先が他のローカル IP Phone に制限されます。 • transfer-pattern :許可するコール転送の数字列。ワイルドカードが使用可能です。
(注) ローカル以外の番号への転送を定義する場合、転送パターン番号の照合が実行されるのは、変換規則の操作が行われる前であることに注意してください。したがって、このコマンドで指定する番号は、変換前に電話機ユーザが実際に入力する番号である必要があります。詳細については、「Cisco CME システムでの電話機の設定」の 変換規則の項を参照してください。
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ステップ 4 |
exit
Router(config-telephony-service)# exit |
telephony-service 設定モードを終了します。 |
ステップ 5 |
ephone-dn dn-tag
Router(config)# ephone-dn 2134 |
(オプション)指定された ephone-dn の ephone-dn 設定モードを開始します。 • dn-tag :転送モードの定義対象となる ephone-dn を識別する固有のシーケンス番号。 |
ステップ 6 |
transfer-mode { blind | consult }
Router(config-ephone-dn)# transfer-mode consult |
(オプション)特定の Cisco IP Phone 回線に対して、コール転送のタイプを定義します。ephone-dn ごとにシステム デフォルトの転送システム設定(full-consult または full-blind)を無効にできます。 • blind:単一電話回線を使用し、打診を行わずにコールを転送します。 • consult:使用可能な 2 つ目の電話回線を使用し、打診を行ってコールを転送します。 |
ステップ 7 |
exit
Router(config-ephone-dn)# exit |
(オプション)ephone-dn 設定モードを終了します。 |
ステップ 8 |
voice service voip
Router(config) # voice service voip |
(オプション)voice service 設定モードを開始します。 |
ステップ 9 |
h323
Router(conf-voi-serv)# h323
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(オプション)H.323 voice service 設定モードを開始します。 |
ステップ 10 |
h450 h450-2 timeout { T1 | T2 | T3 | T4 } milliseconds
Router(conf-serv-h323)# h450 h450-2 timeout T1 750 |
(オプション)補足サービス タイマーのタイムアウト(ミリ秒)を設定します。この値は、このタイマーのデフォルト設定がネットワークの遅延パラメータと一致しない場合に優先的に使用されます。このタイマーの詳細については、ITU-T H.450.2 仕様を参照してください。 • T1 :応答を識別するまで待機するときのタイムアウト値。デフォルトは 2000 です。 • T2 :コールが設定されるまで待機するときのタイムアウト値。デフォルトは 5000 です。 • T3 :応答が開始するまで待機するときのタイムアウト値。デフォルトは 5000 です。 • T4 :応答が設定されるまで待機するときのタイムアウト値。デフォルトは 5000 です。 • milliseconds :タイムアウト期間(ミリ秒)。値の範囲は 500 ~ 60000 です。 |
ステップ 11 |
exit
Router(conf-serv-h323)# exit |
(オプション)H.323 voice service 設定モードを終了します。 |
ステップ 12 |
exit
Router(conf-voi-serv)# exit |
(オプション)voice service 設定モードを終了します。 |
例
次の例では、ルータで管理するすべての IP Phone に対して、H.450.2 標準を使用する、打診による転送を指定します。
dial-peer voice 4000 voip
session-target ipv4:1.1.1.1
transfer-system full-consult
シスコ独自のコール転送の設定
この作業では、VoFR ネットワークのため、および Cisco IOS Telephony Services V2.02 およびそれ以前のバージョンとの互換性保持のために、Cisco IP Phone と IP Phone 以外の電話機との間のコール転送を有効にします。
制約事項
• シスコ独自のコール転送はシスコ独自のプロトコルを使用しているので、Cisco IOS Release 12.2(8)T 以降を実行している Cisco 1700、Cisco 2600、Cisco 3600、および Cisco 3700 シリーズのルータとのインターワーキングが可能です。
• シスコ独自のコール転送は、次のタイプのネットワークおよびコール シグナリング対してのみサポートされます。
–Voice over Frame Relay(VoFR)
–Voice over ATM(VoATM)
–H.323 標準外の情報要素を使用した Cisco ゲートウェイ間の H.323 (両方のゲートウェイが Cisco IOS Release 12.2(15)ZJ 以降を実行している場合)
–Foreign Exchange Office(FXO)および Foreign Exchange Station(FXS)ループスタート(アナログ)
–FXO および FXS グラウンドスタート(アナログ)
–Ear and Mouth(E&M)(アナログ)および Direct Inward Dialing(DID; ダイヤルイン方式)(アナログ)
–FXO および FXS グラウンドスタート シグナリングによる T1 Channel Associated Signaling(CAS; チャネル連携シグナリング)
–E&M シグナリングによる T1 CAS
–PRI および BRI スイッチの全タイプ
要約手順
1. telephony-service
2. transfer-pattern transfer-pattern
3. exit
詳細手順
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ステップ 1 |
telephony-service
Router(config)# telephony-service |
telephony-service 設定モードを開始します。 |
ステップ 2 |
transfer-pattern transfer-pattern
Router(config-telephony-service)# transfer-pattern 5... |
Cisco IP Phone からの電話コールを、指定された電話番号パターンに転送します。転送パターンを設定しない場合は、デフォルトとして、転送先が他のローカル IP Phone に制限されます。 • transfer-pattern :許可するコール転送の数字列。ワイルドカードが使用可能です。
(注) ローカル以外の番号への転送を定義する場合、転送パターン番号の照合が実行されるのは、変換規則の操作が行われる前であることに注意してください。したがって、このコマンドで指定する番号は、変換前に電話機ユーザが実際に入力する番号である必要があります。詳細については、「Cisco CME システムでの電話機の設定」の 変換規則の項を参照してください。
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ステップ 3 |
exit
Router(config-telephony-service)# exit |
telephony-service 設定モードを終了します。 |
次の作業
コール転送を設定したら、必要に応じて自動転送を設定できます。操作手順については、「自動転送の設定」を参照してください。
自動転送を設定しない場合は、次に Cisco CME GUI を設定できます。操作手順については、「Cisco CME GUI の設定」を参照してください。