iBGP のマルチパス ロード シェアリング
この機能モジュールでは、internal BGP(iBGP; 内部 BGP)のマルチパス ロード シェアリング機能について説明します。
機能情報の検索
ご使用のソフトウェア リリースが、このモジュールで説明している機能の一部をサポートしていない場合があります。最新の機能情報および警告については、ご使用のプラットフォームおよびソフトウェア リリースのリリースノートを参照してください。このモジュールに記載されている機能に関する情報を検索したり、各機能がサポートされているリリースに関するリストを参照したりするには、「iBGP のマルチパス ロード シェアリングの機能情報」を参照してください。
プラットフォームのサポートと、Cisco IOS および Catalyst OS ソフトウェア イメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスしてください。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
iBGP のマルチパス ロード シェアリングの制約事項
• ルート リフレクタの制約:複数の iBGP のパスがルーティング テーブルにインストールされていると、ルート リフレクタは、パスの 1 つ(1 つのネクストホップ)だけにアドバタイズします。
• メモリ消費の制約事項:複数の iBGP パスがある BGP プレフィクス用の各 IP ルーティング テーブル エントリは、約 350 バイトの追加メモリを使用します。ルータの使用可能なメモリが少なく、特にルータがフル インターネット ルーティング テーブルを備えている場合は、この機能の使用を推奨しません。
• iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能は、Cisco IOS Release 12.2(14)S の次のプラットフォームでサポートされます。
– Cisco 7200 シリーズ
– Cisco 7400 シリーズ
– Cisco 7500 シリーズ
機能概要
ローカル ポリシーが設定されていない Border Gateway Protocol(BGP; ボーダー ゲートウェイ プロトコル)対応ルータが複数の Network Layer Reachability Information(NLRI; ネットワーク レイヤ到着達可能性情報)を同じ宛先の内部 BGP(iBGP)から受信すると、このルータは 1 つの iBGP パスを最良パスとして選択します。この最良パスは、次にこのルータの IP ルーティング テーブルにインストールされます。たとえば、図 1 では、自律システム 200 へのパスは 3 つありますが、ルータ 2 は、自律システム 200 へのパスの 1 つを最良パスであると判断し、このパスだけを使用して自律システム 200 に到達します。
図 1 1 つの最良パスを持つ非マルチプロトコル ラベル スイッチング(MPLS)トポロジ
iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能を使用すると、BGP 対応ルータがイネーブルになり、複数の iBGP パスを宛先への最良パスとして選択できます。この最良パスまたはマルチパスは、次にこのルータの IP ルーティング テーブルにインストールされます。たとえば、図 2 のルータ 2 で、ルータ 3、4 および 5 へのパスがマルチパスとして設定され、自律システム 200 に到達するために使用でき、結果として自律システム 200 への負荷が均等に負担されます。
図 2 3 つのマルチパスを持つ非 MPLS トポロジ
iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能は、サービス プロバイダー バックボーンを持つ Multiprotocol Label Switching(MPLS; マルチプロトコル ラベル スイッチング)Virtual Private Network(VPN; バーチャル プライベート ネットワーク)と同様に機能します。たとえば、図 3 のルータ PE1 では、ルータ PE2、PE3、および PE4 へのパスをマルチパスとして選択でき、サイト 2 への負荷を均等に負担するために使用できます。
図 3 3 つのマルチパスを持つ MPLS VPN
同じ宛先への複数のパスをマルチパスと見なすには、次の基準を満たす必要があります。
• すべてのアトリビュートが同じである必要があります。アトリビュートには、加重、ローカル プリファレンス、自律システム パス(長さだけでなくアトリビュート全体)、発信元コード、Multi Exit Discriminator(MED)、および Interior Gateway Protocol(IGP)距離が含まれます。
• 各マルチパスのネクストホップ ルータが異なっている必要があります。
基準を満たしていて、複数のパスがマルチパスと見なされても、BGP 対応ルータは、引き続きマルチパスの 1 つを最良パスに指定し、この最良パスをそのネイバーにアドバタイズします。
利点
複数の iBGP の最良パスを設定すると、ルータがイネーブルになり、特定のサイトを宛先とするトラフィックを均等に負担できます。
関連する機能およびテクノロジー
iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能は、external BGP(eBGP; 外部 BGP)パスに対する BGP マルチパス サポートに類似していますが、iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能は、eBGP パスではなく、内部に適用されます。
設定作業
iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能の設定作業については、次の項目を参照してください。リスト内の各作業は、必須または任意のいずれかに識別されています。
• iBGP のマルチパス ロード シェアリングの設定(必須)
• iBGP のマルチパス ロード シェアリングの確認(任意)
iBGP のマルチパス ロード シェアリングの設定
iBGP マルチパス ロード シェアリング機能を設定するには、ルータ コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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Router(config-router)# maximum-paths ibgp maximum-number |
ルーティング テーブルにインストールできる iBGP の最大パラレル ルート数を制御します。 |
iBGP のマルチパス ロード シェアリングの確認
iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能が正しく設定されていることを確認するには、次の手順を実行します。
ステップ 1 show ip bgp network-number EXEC コマンドを入力して、非 MPLS トポロジのネットワークのアトリビュートを表示するか、 show ip bgp vpnv4 all ip-prefix EXEC コマンドを入力して、MPLS VPN のネットワークのアトリビュートを表示します。
Router# show ip bgp 10.22.22.0
BGP routing table entry for 10.22.22.0/24, version 119
Paths:(6 available, best #1)
Advertised to non peer-group peers:
10.2.3.8 (metric 11) from 10.1.3.4 (100.0.0.5)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath, best
Originator:100.0.0.5, Cluster list:100.0.0.4
10.2.1.9 (metric 11) from 10.1.1.2 (100.0.0.9)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Originator:100.0.0.9, Cluster list:100.0.0.2
10.2.5.10 (metric 11) from 10.1.5.6 (100.0.0.10)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Originator:100.0.0.10, Cluster list:100.0.0.6
10.2.4.10 (metric 11) from 10.1.4.5 (100.0.0.10)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Originator:100.0.0.10, Cluster list:100.0.0.5
10.2.6.10 (metric 11) from 10.1.6.7 (100.0.0.10)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Originator:100.0.0.10, Cluster list:100.0.0.7
Router# show ip bgp vpnv4 all 10.22.22.0
BGP routing table entry for 100:1:10.22.22.0/24, version 50
Paths:(6 available, best #1)
Advertised to non peer-group peers:
10.22.7.8 (metric 11) from 10.11.3.4 (100.0.0.8)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath, best
Extended Community:RT:100:1
Originator:100.0.0.8, Cluster list:100.1.1.44
10.22.1.9 (metric 11) from 10.11.1.2 (100.0.0.9)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Extended Community:RT:100:1
Originator:100.0.0.9, Cluster list:100.1.1.22
10.22.6.10 (metric 11) from 10.11.6.7 (100.0.0.10)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Extended Community:RT:100:1
Originator:100.0.0.10, Cluster list:100.0.0.7
10.22.4.10 (metric 11) from 10.11.4.5 (100.0.0.10)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Extended Community:RT:100:1
Originator:100.0.0.10, Cluster list:100.0.0.5
10.22.5.10 (metric 11) from 10.11.5.6 (100.0.0.10)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, internal, multipath
Extended Community:RT:100:1
Originator:100.0.0.10, Cluster list:100.0.0.6
ステップ 2 show ip bgp network-number EXEC コマンドまたは show ip bgp vpnv4 all ip-prefix EXEC コマンドを入力して得られる表示で、目的のマルチパスが「multipath」としてマークされていることを確認します。マルチパスの 1 つが「best」としてマークされていることに留意してください。
ステップ 3 show ip route ip-address EXEC コマンドを入力して、非 MPLS トポロジのネットワークのルーティング情報を表示するか、 show ip route vrf vrf-name ip-prefix EXEC コマンドを入力して、MPLS VPN のネットワークのルーティング情報を表示します。
Router# show ip route 10.22.22.0
Routing entry for 10.22.22.0/24
Known via "bgp 1", distance 200, metric 0
Last update from 10.2.6.10 00:00:03 ago
Routing Descriptor Blocks:
* 10.2.3.8, from 10.1.3.4, 00:00:03 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.2.1.9, from 10.1.1.2, 00:00:03 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.2.5.10, from 10.1.5.6, 00:00:03 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.2.4.10, from 10.1.4.5, 00:00:03 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.2.6.10, from 10.1.6.7, 00:00:03 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
Router# show ip route vrf PATH 10.22.22.0
Routing entry for 10.22.22.0/24
Known via "bgp 1", distance 200, metric 0
Last update from 10.22.5.10 00:01:07 ago
Routing Descriptor Blocks:
* 10.22.7.8 (Default-IP-Routing-Table), from 10.11.3.4, 00:01:07 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.22.1.9 (Default-IP-Routing-Table), from 10.11.1.2, 00:01:07 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.22.6.10 (Default-IP-Routing-Table), from 10.11.6.7, 00:01:07 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.22.4.10 (Default-IP-Routing-Table), from 10.11.4.5, 00:01:07 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
10.22.5.10 (Default-IP-Routing-Table), from 10.11.5.6, 00:01:07 ago
Route metric is 0, traffic share count is 1
ステップ 4 show ip bgp ip-prefix EXEC コマンドまたは show ip bgp vpnv4 all ip-prefix EXEC コマンドを入力して得られる表示で、「multipath」としてマークされたパスがルーティング情報に含まれていることを確認します(ルーティング情報は、ステップ 3の実行後に表示されます)。
iBGP のマルチパス ロード シェアリングのモニタリングおよびメンテナンス
iBGP のマルチパス ロード シェアリング情報を表示するには、必要に応じて EXEC モードで次のコマンドを使用します。
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Router# show ip bgp ip-prefix |
非 MPLS トポロジのネットワークのアトリビュートおよびマルチパスを表示します。 |
Router# show ip bgp vpnv4 all ip-prefix |
MPLS VPN のネットワークのアトリビュートおよびマルチパスを表示します。 |
Router# show ip route ip-prefix |
非 MPLS トポロジのネットワークのルーティング情報を表示します。 |
Router# show ip route vrf vrf-name ip-prefix |
MPLS VPN のネットワークのルーティング情報を表示します。 |
設定例
ここでは、次の設定例について説明します。
• 非 MPLS トポロジの例
• MPLS VPN トポロジの例
設定例は両方とも、各パスの適切なアトリビュートが等しく、各マルチパスのネクストホップ ルータが異なっていることを前提としています。
非 MPLS トポロジの例
次の例は、非 MPLS トポロジで iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能をセットアップする方法を示します(図 4 を参照)。
図 4 非 MPLS トポロジの例
ルータ 2 の設定
MPLS VPN トポロジの例
次の例は、MPLS VPN トポロジで iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能をセットアップする方法を示します(図 5 を参照)。
図 5 MPLS VPN トポロジの例
ルータ PE1 の設定
address-family ipv4 unicast vrf site2
参考資料
ここでは、iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能に関する参考資料について説明します。
規格
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この機能がサポートする新しい規格または変更された規格はありません。また、この機能で変更された既存規格のサポートはありません。 |
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RFC
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この機能がサポートする新しい RFC または変更された RFC はありません。また、この機能は既存の規格に対するサポートに影響を及ぼしません。 |
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シスコのテクニカル サポート
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右の URL にアクセスして、シスコのテクニカル サポートを最大限に活用してください。 以下を含むさまざまな作業にこの Web サイトが役立ちます。 ・テクニカル サポートを受ける ・ソフトウェアをダウンロードする ・セキュリティの脆弱性を報告する、またはシスコ製品のセキュリティ問題に対する支援を受ける ・ツールおよびリソースへアクセスする - Product Alert の受信登録 - Field Notice の受信登録 - Bug Toolkit を使用した既知の問題の検索 ・Networking Professionals(NetPro)コミュニティで、技術関連のディスカッションに参加する ・トレーニング リソースへアクセスする ・TAC Case Collection ツールを使用して、ハードウェアや設定、パフォーマンスに関する一般的な問題をインタラクティブに特定および解決する この Web サイト上のツールにアクセスする際は、Cisco.com のログイン ID およびパスワードが必要です。 |
http://www.cisco.com/en/US/support/index.html |
iBGP のマルチパス ロード シェアリングの機能情報
表 1 に、このモジュールで説明した機能をリストし、特定の設定情報へのリンクを示します。
このテクノロジーの機能でここに記載されていない情報については、『 BGP Features Roadmap 』を参照してください。
ご使用の Cisco IOS ソフトウェア リリースでは、一部のコマンドが使用できない場合があります。特定のコマンドのリリース情報については、コマンド リファレンス マニュアルを参照してください。
プラットフォームのサポートおよびソフトウェア イメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator を使用すると、特定のソフトウェア リリース、機能セット、またはプラットフォームをサポートする Cisco IOS と Catalyst OS のソフトウェア イメージを判別できます。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスしてください。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
(注) 表 1 に、特定の Cisco IOS ソフトウェア リリース群で特定の機能をサポートする Cisco IOS ソフトウェア リリースだけを示します。特に明記されていない限り、Cisco IOS ソフトウェア リリース群の後続のリリースでもこの機能をサポートします。
表 1 iBGP のマルチパス ロード シェアリングの機能情報
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iBGP のマルチパス ロード シェアリング |
12.2(14)S 12.2(2)T |
iBGP のマルチパス ロード シェアリング機能を使用すると、BGP 対応ルータがイネーブルになり、複数の iBGP パスを宛先への最良パスとして選択できます。 次のコマンドが導入または変更されました。 maximum-paths ibgp 、 show ip bgp 、 show ip bgp vpnv4 、 show ip route 、 show ip route vrf 。 |
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