機能概要
Border Gateway Protocol(BGP; ボーダー ゲートウェイ プロトコル)ポリシー アカウンティングは、異なるピア間で送受信される Internet Protocol(IP; インターネット プロトコル)トラフィックを測定および分類します。ポリシー アカウンティングは入力インターフェイスでイネーブル化されます。また、コミュニティ リスト、自律システム番号、または自律システム パスなどのパラメータに基づくカウンタが割り当てられ、IP トラフィックを識別します。
BGP の table-map コマンドを使用することで、ルーティング テーブルに追加されるプレフィクスは、BGP アトリビュート、自律システム番号、または自律システム パス別に分類されます。パケットおよびバイト カウンタは、入力インターフェイス単位で増加します。トラフィックは、Cisco IOS ポリシーベースの分類子により、異なるトラフィック クラスを表す 8 つの可能性のあるバケットのうちの 1 つにマッピングされます。
BGP ポリシー アカウンティングを使用して、通過するルートに基づいてトラフィックのアカウンティングを行うことができます。Service Provider(SP; サービス プロバイダー)は、すべてのトラフィックをカスタマー別に識別してアカウンティングを行うことができ、それに応じて課金できます。図 1-1 では、BGP ポリシー アカウンティングはルータ A で実装され、自律システム バケットにおけるパケットおよびバイト ボリュームを測定します。カスタマーは、国内、海外、または衛星経由の送信元からルーティングされたトラフィックに応じて適切に課金されます。
図 1-1 BGP ポリシー アカウンティングのトポロジ例
自律システム番号を使用した BGP ポリシー アカウンティングは、Internet Service Provider(ISP; インターネット サービス プロバイダー)間でのネットワーク回線のピアリングおよび中継の契約に関する設計を改善するために使用できます。
利点
格差を付けた IP トラフィックのアカウンティング
BGP ポリシー アカウンティングは、自律システム番号、自律システム パス、またはコミュニティ リスト ストリングに基づいて IP トラフィックを分類し、パケットおよびバイト カウンタの値を増加させます。サービス プロバイダーは、ルート固有のトラフィック トラバースに基づいてトラフィックのアカウンティングを行い、請求に適用できます。
ネットワーク回線のピアリングおよび中継の契約に関する効率的な設計
BGP ポリシー アカウンティングをエッジ ルータに実装すると、ピアリングおよび中継の契約に関する設計の潜在的な改善点を明らかにすることができます。
サポート プラットフォーム
BGP ポリシー アカウンティング機能は、Cisco IOS Release 12.2(13)T をサポートする次のプラットフォームでサポートされています。
• Cisco 1400 シリーズ
• Cisco 1600 シリーズ
• Cisco 1700 シリーズ
• Cisco 2600 シリーズ
• Cisco 3600 シリーズ
• Cisco 7100 シリーズ
• Cisco 7200 シリーズ
• Cisco 7500 シリーズ
• Cisco AS5300
• Cisco AS5350
• Cisco AS5400
• Cisco AS5800
• Cisco AS5850
• Cisco ICS7750
• Cisco IGX 8400 URM
• Cisco MC3810
• Cisco MGX 8850
• Cisco uBR7200 シリーズ
プラットフォームと、Cisco IOS および Catalyst OS ソフトウェア イメージに関するサポート情報の検索
プラットフォームのサポートと、Cisco IOS および Catalyst OS ソフトウェア イメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスしてください。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
サポートされる標準、管理情報ベース(MIB)、コメント要求(RFC)
規格
この機能がサポートする新しい規格または変更された規格はありません。
MIB
• CISCO-BGP-POLICY-ACCOUNTING-MIB
(注) CISCO-BGP-POLICY-ACCOUNTING-MIB は、Cisco IOS Release 12.0(9)S、12.0(17)ST、およびそれ以降のリリースだけで使用可能です。この Management Information Base(MIB; 管理情報ベース)は、いずれのメインラインおよび T トレイン リリースでも使用できません。
選択したプラットフォーム、Cisco IOS リリース、および機能セットの MIB の場所を検索しダウンロードするには、次の URL にある Cisco MIB Locator を使用します。
http://tools.cisco.com/ITDIT/MIBS/servlet/index
Cisco MIB Locator で必要な MIB 情報がサポートされていない場合は、次の URL にある Cisco MIB ページにアクセスすれば、サポートされている MIB のリストを入手したり、MIB をダウンロードしたりできます。
http://www.cisco.com/public/sw-center/netmgmt/cmtk/mibs.shtml
Cisco MIB Locator にアクセスするには、Cisco.com のアカウントが必要です。アカウント情報を忘れた場合や紛失した場合は、cco-locksmith@cisco.com に空メールを送信してください。自動チェックにより、ご使用の E メール アドレスが Cisco.com に登録されているか検証されます。チェックが成功した場合は、アカウントの詳細がランダムな新パスワードと一緒に E メールで送信されます。認証されたユーザは、次の URL に表示される指示に従うことで、Cisco.com にアカウントを構築できます。
https://tools.cisco.com/RPF/register/register.do
RFC
この機能がサポートする新しい Request for Comments(RFC; コメント要求)または変更された RFC はありません。
前提条件
BGP ポリシー アカウンティング機能を使用する前に、ルータで BGP および CEF または dCEF をイネーブルにする必要があります。
設定作業
BGP ポリシー アカウンティング機能の設定作業については、次のセクションを参照してください。リスト内の各作業は、必須または任意のいずれかに識別されています。
• 「BGP ポリシー アカウンティングの一致基準の指定」(必須)
• 「IP トラフィックの分類および BGP ポリシー アカウンティングのイネーブル化」(必須)
• 「BGP ポリシー アカウンティングの確認」(任意)
BGP ポリシー アカウンティングの一致基準の指定
BGP ポリシー アカウンティングを設定する最初の作業は、一致する必要のある基準を指定することです。コミュニティ リスト、自律システム パス、または自律システム番号は、指定が可能で、後でルート マップを使用してマッチングできる BGP アトリビュートの例です。
BGP ポリシー アカウンティングに使用する BGP アトリビュートを指定し、ルート マップで一致基準を作成するには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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ステップ 1 |
Router(config)# ip community-list community-list-number { permit | deny } community-number |
BGP のコミュニティ リストを作成してアクセスを制御します。 このステップは、指定する対象のコミュニティごとに繰り返す必要があります。 |
ステップ 2 |
Router(config)# route-map map-name [ permit | deny ] [ sequence-number ] |
ルート マップ コンフィギュレーション モードを開始し、ポリシー ルーティングの条件を定義します。 map-name 引数はルート マップを識別します。 オプションの permit および deny の各キーワードは一致基準および設定基準とともに機能し、パケットのアカウンティングを行う方法を制御します。 オプションの sequence-number 引数は、同一の名前ですでに設定されているルート マップのリスト内における新しいルート マップの場所を示します。 |
ステップ 3 |
Router(config-route-map)# match community-list community-list-number [ exact ] |
BGP コミュニティを一致させます。 |
ステップ 4 |
Router(config-route-map)# set traffic-index bucket-number |
BGP ポリシー アカウンティングのルート マップの match 句を渡すパケットの出力先を示します。 |
IP トラフィックの分類および BGP ポリシー アカウンティングのイネーブル化
ルート マップを定義して一致基準を指定した後、BGP ポリシー アカウンティングをイネーブルにする前に、IP トラフィックを分類する方法を設定する必要があります。
ルーティング テーブルに追加される各プレフィクスは、 table-map コマンドで、一致基準に基づいて BGP により分類されます。BGP ポリシー アカウンティングは、インターフェイスで bgp-policy accounting コマンドが設定されたときにイネーブル化されます。
IP トラフィックを分類して BGP ポリシー アカウンティングをイネーブルにするには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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ステップ 1 |
Router(config)# router bgp as-number |
BGP ルーティング プロセスを設定し、指定されたルーティング プロセスのルータ コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Router(config-router)# table-map route-map-name |
ルーティング テーブルに入力された BGP プレフィクスを分類します。 |
ステップ 3 |
Router(config-router)# network network-number [ mask network-mask ] |
BGP ルーティング プロセスによってアドバタイズされるネットワークを指定します。 |
ステップ 4 |
Router(config-router)# neighbor ip-address remote-as as-number |
BGP ルーティング テーブルにエントリを追加して、BGP ピアを指定します。 |
ステップ 5 |
Router(config-router)# exit |
グローバル コンフィギュレーション モードを終了します。 |
ステップ 6 |
Router(config)# interface interface-type interface-number |
インターフェイスのタイプと番号を指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 7 |
Router(config-if)# no ip directed-broadcast |
ブロードキャストよりもインターフェイスが添付されたサブネットを宛先とする、誘導されたブロードキャストをドロップするようにインターフェイスを設定します。これはセキュリティの問題です。 |
ステップ 8 |
Router(config-if)# ip address ip-address mask |
IP アドレスを使用してインターフェイスを設定します。 |
ステップ 9 |
Router(config-if)# bgp-policy accounting |
インターフェイスに対して、BGP ポリシー アカウンティングをイネーブルにします。 |
BGP ポリシー アカウンティングの確認
BGP ポリシー アカウンティングが動作しているかを確認するために、次の手順を実行します。
ステップ 1 どのアカウンティング バケットが指定されたプレフィクスに割り当てられているかを学習するために、 detail キーワードを指定して show ip cef EXEC コマンドを入力します。
この例では、プレフィクス 192.168.5.0 についての出力が表示されます。この例では、アカウンティング バケット番号「4」(traffic_index 4)がこのプレフィクスに割り当てられていることが示されています。
Router# show ip cef 192.168.5.0 detail
192.168.5.0/24, version 21, cached adjacency to POS7/2
0 packets, 0 bytes, traffic_index 4
via 10.14.1.1, 0 dependencies, recursive
next hop 10.14.1.1, POS7/2 via 10.14.1.0/30
ステップ 2 ステップ 1 と同じプレフィクス(192.168.5.0)に対し、どのコミュニティが割り当てられているかを学習するために show ip bgp EXEC コマンドを入力します。
この例では、プレフィクス 192.168.5.0 についての出力が表示されます。この例では、コミュニティ「100:197」がこのプレフィクスに割り当てられていることが示されています。
Router# show ip bgp 192.168.5.0
BGP routing table entry for 192.168.5.0/24, version 2
Paths: (1 available, best #1)
Not advertised to any peer
10.14.1.1 from 10.14.1.1 (32.32.32.32)
Origin IGP, metric 0, localpref 100, valid, external, best
ステップ 3 show cef interface policy-statistics EXEC コマンドを入力し、インターフェイス単位のトラフィック統計情報を表示します。
この例では、各アカウンティング バケットに割り当てられているパケットおよびバイトの数が出力に表示されます。
LC-Slot7# show cef interface policy-statistics
POS7/0 is up (if_number 8)
BGP ポリシー アカウンティングのモニタリングおよびメンテナンス
BGP ポリシー アカウンティング機能をモニタリングおよびメンテナンスするには、必要に応じて次のコマンドを EXEC モードで使用します。
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Router# show cef interface [ type number ] policy-statistics |
すべてのインターフェイスに対する CEF ポリシー統計情報の詳細を表示します。 |
Router# show ip bgp [ network ] [ network mask ] [ longer-prefixes ] |
BGP ルーティング テーブル内のエントリを表示します。 |
Router# show ip cef [ network [ mask ]] [ detail ] |
Forwarding Information Base(FIB; 転送情報ベース)のエントリまたは FIB の概要を表示します。 |
設定例
ここでは、次の設定例について説明します。
• BGP ポリシー アカウンティングの一致基準の指定例
• IP トラフィックの分類および BGP ポリシー アカウンティングのイネーブル化の例
BGP ポリシー アカウンティングの一致基準の指定例
次の例では、BGP コミュニティがコミュニティ リストに指定され、set_bucket という名前のルート マップが、 set traffic-index コマンドを使用して、各コミュニティ リストが特定のアカウンティング バケットに一致するように設定されます。
ip community-list 30 permit 100:190
ip community-list 40 permit 100:198
ip community-list 50 permit 100:197
ip community-list 60 permit 100:296
route-map set_bucket permit 10
route-map set_bucket permit 20
route-map set_bucket permit 30
route-map set_bucket permit 40
IP トラフィックの分類および BGP ポリシー アカウンティングのイネーブル化の例
次に、POS インターフェイス 7/0 で BGP ポリシー アカウンティングがイネーブルにされ、 table-map コマンドにより IP ルーティング テーブルが BGP で学習されたルートによりアップデートされたときに、バケット番号が変更される例を示します。
network 10.15.1.0 mask 255.255.255.0
neighbor 10.14.1.1 remote-as 65100
ip bgp-community new-format
ip address 10.15.1.2 255.255.255.0
用語集
AS :Autonomous System(自律システム)。独自の独立したルーティング ポリシーを持ち、単一権限により管理されるルーティング ドメインを指す IP 用語です。
BGP :Border Gateway Protocol(ボーダー ゲートウェイ プロトコル)。他の BGP システムとの間で到着可能性情報を交換するドメイン間ルーティング プロトコルです。
CEF :Cisco Express Forwarding。
dCEF :distributed Cisco Express Forwarding。
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