ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポート
このモジュールでは、ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポート機能について説明します。この機能は、個別のボーダー ゲートウェイ プロトコル(BGP)ピアから学習したルートを(簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)コマンドを使用して)照会する機能を提供する新しいテーブルを CISCO-BGP4-MIB に導入します。
機能情報の確認
お使いのソフトウェア リリースが、このモジュールで説明されている機能の一部をサポートしていないことがあります。最新の機能情報と注意事項については、ご使用のプラットフォームとソフトウェア リリースに対応したリリース ノートを参照してください。このモジュールで説明される機能に関する情報、および各機能がサポートされるリリースの一覧については、「ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートの機能情報」を参照してください。
プラットフォーム サポートと Cisco IOS および Catalyst OS ソフトウェア イメージ サポートに関する情報を入手するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
制約事項
ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートは、ローカル BGP RIB テーブルの IPv4 AFI およびユニキャスト SAFI に格納されるルートのみをサポートします。ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートの拡張は BGP Version 4 でのみサポートされます。
機能の概要
ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートは、個別の BGP ピアから学習したルートを(SNMP コマンドを使用して)照会する機能を提供する新しいテーブルを CISCO-BGP4-MIB に導入します。
この新しい MIB テーブルが導入される前は、ネットワーク オペレータが SNMP コマンド( snmpwalk コマンドなど)でローカル BGP スピーカーを照会して、ローカル BGP-speaking ルータによって学習されたルートを取得できました。ネットワーク オペレータは SNMP コマンドを使用して CISCO-BGP4-MIB の bgp4PathAttrTable を照会していました。bgp4PathAttrTable のクエリーから返されたルートは、次の順序でインデックス化されました。
• プレフィクス
• プレフィクス長
• ピア アドレス
bgp4PathAttrTable は最初にプレフィクスをインデックス化するため、個別の BGP ピアから学習したルートを取得するには、ネットワーク オペレータが完全な bgp4PathAttrTable を「ウォークスルー」して、関心のあるピアからルートをフィルタで除去する必要があります。RIB Routing Information Base(RIB; ルーティング情報ベース)には 10,000 以上のルートが格納されることがあり、このため、手動の「ウォーク」操作が不可能になり、自動のウォーク操作が著しく非効率的になります。
ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートは、cbgpRouterTable という新しいテーブルを定義する Cisco 固有のエンタープライズ拡張を CISCO-BGP4-MIB に導入します。cbgpRouterTable は bgp4PathAttrTable と同じ情報を提供しますが、次の 2 つの違いがあります。
• ルートは次の順序でインデックス化されます。
– ピア アドレス
– プレフィクス
– プレフィクス長
ピア アドレスがプレフィックスの前にインデックス化されるため、ローカル ルートの SNMP クエリーの検索条件が改善されます。ピア アドレスがプレフィックスの前にインデックス化されるため、この拡張によって、個別のピアから学習されるルートの検索が改善されます。ネットワーク オペレータは、ローカル BGP RIB テーブルの学習されたルートを取得するために、数千の可能性のあるルートをすべて検索する必要がなくなります。
• マルチプロトコル BGP、Address Family Identifier(AFI)、Subsequent Address Family Identifier(SAFI)情報のサポートが追加されました。この情報は、cbgpRouterTable へのインデックスの形式で追加されます。CISCO-BGP4-MIB はローカル BGP スピーカーでサポートされる AFI と SAFI の任意の組み合わせで照会できます。
(注) ルータが BGP プロセスを実行するように設定されている場合にのみ、MIB に値が読み込まれます。ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートの現在の実装では、IPv4 AFI およびユニキャスト SAFI BGP ローカル RIB テーブルに格納されるルートのみが表示されます。他のローカル RIB テーブルに格納されるルートの表示のサポートは、将来追加される予定です。
BGP 4 ピアごとの受信ルート テーブルの要素とオブジェクト
次の項では、ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポート拡張によって導入された新しいテーブル要素、AFI および SAFI テーブルおよびオブジェクト、Network Layer Reachability Information(NLRI)フィールドのネットワーク アドレス プレフィクスについて説明します。
MIB テーブルおよびオブジェクト
表 1 に、cbgpRouterTable の MIB インデックスについて説明します。
MIB の完全な説明については、Cisco.com の次の URL から入手可能な CISCO-BGP4-MIB ファイル CISCO-BGP4-MIB.my を参照してください。
http://www.cisco.com/public/sw-center/netmgmt/cmtk/mibs.shtml
表 1 cbgpRouterTable の MIB インデックス
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cbgpRouteAfi |
ルートに関連付けられたネットワーク レイヤ プロトコルの AFI を表します。 |
cbgpRouteSafi |
ルートの SAFI を表します。これは、ルートのタイプに関する追加情報を提供します。AFI と SAFI を共に使用して、特定のルートを格納するローカル RIB(Loc-RIB)を特定します。 |
cbgpRoutePeerType |
cbgpRoutePeer オブジェクトに格納されるネットワーク レイヤ アドレスのタイプを表します。 |
cbgpRoutePeer |
ルート情報が学習されたピアのネットワーク レイヤ アドレスを表します。 |
cbgpRouteAddrPrefix |
BGP アップデート メッセージで伝送されるネットワーク アドレス プレフィクスを表します。 特定のタイプの AFI オブジェクトと SAFI オブジェクトに格納可能なネットワーク レイヤ アドレスのタイプについては、表 2 表 2 を参照してください。 |
cbgpRouteAddrPrefixLen |
NLRI フィールドのネットワーク アドレス プレフィクスのビット単位での長さを表します。 可能性のある 13 個のエントリの説明については、表 2 表 3 を参照してください。 |
AFI と SAFI
表 2 に、cbgpRouteAfi インデックスと cbgpRouteSafi インデックスに、割り当て可能であるか、またはそれらによって保持される AFI 値と SAFI 値を示します。 表 2 には、AFI と SAFI の特定の組み合わせによって保持可能なネットワーク アドレス プレフィクス タイプも示します。BGP アップデート メッセージで伝送可能なネットワーク アドレス プレフィクスのタイプは、AFI と SAFI の組み合わせによって異なります。
表 2 AFI と SAFI
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ipv4(1) |
unicast(1) |
IPv4 アドレス |
ipv4(1) |
multicast(2) |
IPv4 アドレス |
ipv4(1) |
vpn(128) |
VPN-IPv4 アドレス |
ipv6(2) |
unicast(1) |
IPv6 アドレス |
(注) VPN-IPv4 アドレスは 8 バイトの Route Distinguisher(RD; ルート識別子)で始まり、4 バイトの IPv4 アドレスで終わる 12 バイトの大きさです。cbgpRouteAddrPrefixLen で指定された長さを超えるすべてのビットは、ゼロで表されます。
NLRI フィールドのネットワーク アドレス プレフィックスの説明
表 3 に cbgpRouteTable の NLRI フィールドのネットワーク アドレス プレフィクスのビット単位での長さを示します。テーブルの各エントリは、 表 1 の 6 つのいずれかのインデックスによって選択されるルートに関する情報を提供します。
表 3 NLRI フィールドのネットワーク アドレス プレフィックスの説明
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cbgpRouteOrigin |
ルート情報の最終的な起源。 |
cbgpRouteASPathSegment |
自律システム パス セグメントのシーケンス。 |
cbgpRouteNextHop |
トラフィックが宛先のネットワークに到達するために、通過する必要がある自律システム ボーダー ルータのネットワーク レイヤ アドレス。 |
cbgpRouteMedPresent |
ルートの MULTI_EXIT_DISC 属性が存在するか存在しないかを示します。 |
cbgpRouteMultiExitDisc |
隣接する自律システムへの複数の出力点を区別するために使われるメトリック。cbgpRouteMedPresent オブジェクトの値が「false(2)」の場合、このオブジェクトの値は関係ありません。 |
cbgpRouteLocalPrefPresent |
ルートの LOCAL_PREF 属性が、存在するか存在しないかを示します。 |
cbgpRouteLocalPref |
発信元の BGP スピーカーによってアドバイタイズされるルートのプリファレンスのレベルを指定します。cbgRouteLocalPrefPresent オブジェクトの値が「false(2)」の場合、このオブジェクトの値は関係ありません。 |
cbgpRouteAtomicAggregate |
システムが具体的なルートを選択せずに、あまり具体的でないルートを選択したかどうかを判断します。 |
cbgpRouteAggregatorAS |
ルート集約を実行した最後の BGP スピーカーの自律システム番号。値 0 はこの属性が存在しないことを示します。 |
cbgpRouteAggregatorAddrType |
cbgpRouteAggregatorAddr オブジェクトに格納されるネットワーク レイヤ アドレスのタイプを表します。 |
cbgpRouteAggregatorAddr |
ルート集約を実行した最後の BGP 4 スピーカーのネットワーク レイヤ アドレス。すべて 0 の値は、この属性が存在しないことを示します。 |
cbgpRouteBest |
このルートが最適な BGP 4 ルートとして選択されたかどうかを示します。 |
cbgpRouteUnknownAttr |
ローカル BGP スピーカーによって理解されない 1 つ以上のパス属性。0 のサイズはこの属性が存在しないことを示します。 |
利点
SNMP クエリー機能の向上
プレフィックスの前にピア アドレスがインデックス化されるため、各ピアによってアドバタイズされるルートの SNMP クエリの検索条件が改善されました。ネットワーク オペレータは、ローカル BGP RIB テーブルの学習されたルートを取得するために、数千の可能性のあるルートをすべて検索する必要がなくなります。
AIM および SAFI のサポートの向上
マルチプロトコル BGP のサポートが追加されました。AFI と SAFI がインデックスとしてテーブルに追加されました。CISCO-BGP4-MIB はローカル BGP スピーカーでサポートされる AFI と SAFI の任意の組み合わせで照会できます。
その他の参考資料
次の項では、ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートに関する参考資料を説明します。
RFC
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RFC 1657 |
『BGP-4 MIB』 |
RFC 1771 |
『A Border Gateway Protocol 4 (BGP-4)』 |
RFC 2547 |
『BGP/MPLS VPNs』 |
RFC 2858 |
『Multiprotocol Extensions for BGP-4』 |
シスコのテクニカル サポート
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右の URL にアクセスして、シスコのテクニカル サポートを最大限に活用してください。 以下を含むさまざまな作業にこの Web サイトが役立ちます。 ・テクニカル サポートを受ける ・ソフトウェアをダウンロードする ・セキュリティの脆弱性を報告する、またはシスコ製品のセキュリティ問題に対する支援を受ける ・ツールおよびリソースへアクセスする - Product Alert の受信登録 - Field Notice の受信登録 - Bug Toolkit を使用した既知の問題の検索 ・Networking Professionals(NetPro)コミュニティで、技術関連のディスカッションに参加する ・トレーニング リソースへアクセスする ・TAC Case Collection ツールを使用して、ハードウェアや設定、パフォーマンスに関する一般的な問題をインタラクティブに特定および解決する この Web サイト上のツールにアクセスする際は、Cisco.com のログイン ID およびパスワードが必要です。 |
http://www.cisco.com/en/US/support/index.html |
ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートの機能情報
表 4 に、このモジュールで説明した機能をリストし、特定の設定情報へのリンクを示します。Cisco IOS Release 12.2(1)、12.0(3)S、12.2(27)SBC、12.2(33)SRB、12.2(33)SXH、またはそれ以降のリリースで追加または変更された機能だけが表に示されています。
このテクノロジーの機能でここに記載されていないものについては、『 Cisco BGP Features Roadmap 』を参照してください。
ご使用の Cisco IOS ソフトウェア リリースによっては、コマンドの中に一部使用できないものがあります。特定のコマンドのリリース情報については、コマンド リファレンス マニュアルを参照してください。
プラットフォーム サポートとソフトウェア イメージ サポートに関する情報を入手するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator を使用すると、Cisco IOS および Catalyst OS ソフトウェア イメージがサポートする特定のソフトウェア リリース、機能セット、またはプラットフォームを確認できます。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
(注) 表 4 には、一連の Cisco IOS ソフトウェア リリースのうち、特定の機能が初めて導入された Cisco IOS ソフトウェア リリースだけが記載されています。特に明記していないかぎり、その Cisco IOS ソフトウェア リリース トレインの以降のリリースでもその機能はサポートされます。
表 4 ピアごとの受信ルートに対する BGP 4 MIB サポートの機能情報
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『BGP 4 MIB Support for per-Peer Received Routes』 |
12.0(21)S 12.2(14)S 12.2(28)SB 15.0(1)S |
この機能は、個別の BGP ピアから学習したルートを(SNMP コマンドを使用して)照会する機能を提供する新しいテーブルを CISCO-BGP4-MIB に導入します。 この機能によって導入または変更されたコマンドはありません。 |
用語集
AFI:Address Family Identifier(AFI; アドレス ファミリ識別子)ネットワーク アドレスに関連付けられているネットワーク レイヤ プロトコルの ID を伝送します。
BGP:Border Gateway Protocol(ボーダー ゲートウェイ プロトコル)。到達可能性情報を他の BGP システムと交換するドメイン間ルーティング プロトコル。これは、RFC 1163『A Border Gateway Protocol(BGP)』で定義されています。BGP の現在の実装は BGP バージョン 4(BGP4)です。BGP4 はインターネットで使われる主要なドメイン間ルーティング プロトコルです。BGP4 は CIDR をサポートし、ルート集約メカニズムを使用して、ルーティング テーブルのサイズを抑制します。
MBGP:マルチプロトコル BGP。BGP の拡張バージョンで、複数のネットワーク レイヤ プロトコル、および IP マルチキャスト ルートに関するルーティング情報を伝送します。これは、RFC 2858『Multiprotocol Extensions for BGP-4』で定義されています。
MIB:Management Information Base(MIB; 管理情報ベース)。仮想情報ストアまたはデータベース内に格納されている管理対象オブジェクトのグループ。MIB オブジェクトは、その値をオブジェクト識別子に割り当てることができるように格納され、実装する必要がある MIB オブジェクトを定義することによって管理対象エージェントをサポートします。MIB オブジェクトの値は、SNMP コマンドまたは CMIP コマンドを使用して変更および取得できます。これらのコマンドは通常、GUI のネットワーク管理システムから実行します。MIB オブジェクトはツリー構造であり、ツリーにはパブリック(標準)ブランチとプライベート(独自)ブランチを含みます。
NLRI:Network Layer Reachability Information(ネットワーク レイヤ到達可能性情報)。ルートと宛先への接続方法を記述するルート 属性を伝送します。この情報は BGP アップデート メッセージで伝送されます。BGP アップデート メッセージは 1 つ以上の NLRI プレフィクスを伝送できます。
RIB:Routing Information Base(RIB)。レイヤ 3 到達可能性情報および送信先 IP アドレスまたはプレフィクスを含むルートの中央リポジトリ。RIB はルーティング テーブルとも呼ばれます。
SAFI:Subsequent Address Family Identifier。属性で伝送されるネットワーク レイヤ到着可能性情報のタイプに関する追加情報を提供します。
SNMP:Simple Network Management Protocol(SNMP; 簡易ネットワーク管理プロトコル)。TCP/IP ネットワークでほぼ独占的に使用されているネットワーク管理プロトコル。SNMP では、ネットワーク デバイスを監視および制御し、設定、統計情報収集、パフォーマンス、およびセキュリティを管理できます。
snmpwalk:snmpwalk コマンドは、Simple Network Management Protocol(SNMP)を使用したネットワーク エンティティ MIB との通信に使われる SNMP アプリケーションです。
VPN:Virtual Private Network(VPN; バーチャル プライベート ネットワーク)。ネットワーク間のトラフィックをすべて暗号化することにより、パブリック TCP/IP ネットワーク経由でも IP トラフィックをセキュアに転送できます。VPN では、「トンネリング」が使用され、すべての情報が IP レベルで暗号化されます。
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