MVR の設定

この章では、Cisco NX-OS デバイス上で MVR 機能を設定する方法について説明します。

この章は、次の項で構成されています。

MVR について

一般的なレイヤ 2 マルチ VLAN ネットワークでは、マルチキャスト グループへの加入者を複数の VLAN に設定できます。それらの VLAN 間でデータ分離を維持するには、送信元 VLAN 上のマルチキャスト ストリームをルータに渡す必要があります。そこで、そのストリームがすべての加入者 VLAN で複製され、アップストリーム帯域幅が消費されます。

マルチキャスト VLAN レジストレーション(MVR)を使用すると、レイヤ 2 スイッチでマルチキャスト データを共通の割り当て済み VLAN の送信元から加入者 VLAN に転送し、ルータのバイパスによってアップストリーム帯域幅を節約できます。スイッチは、MVR IP マルチキャスト ストリームのマルチキャスト データを、IGMP レポートまたは MVR のスタティック コンフィギュレーションのいずれかを使用して、ホストが加入した MVR ポートに対してだけ転送します。スイッチは、MVR ホストから受信した IGMP レポートを送信元ポートに対してだけ転送します。他のトラフィックでは、VLAN 分離が保持されます。

MVR では、マルチキャスト ストリームを送信元から伝送するために、少なくとも 1 つの VLAN を共通 VLAN として指定する必要があります。そのような複数のマルチキャスト VLAN(MVR VLAN)をシステムで設定でき、さらにグローバルなデフォルト MVR VLAN とインターフェイス固有のデフォルト MVR VLAN を設定できます。MVR を使用した各マルチキャスト グループは、MVR VLAN に割り当てられます。

MVR を使用すると、ポート上の加入者は、IGMP Join および Leave メッセージを送信することで、MVR VLAN 上のマルチキャスト ストリームへの加入および脱退を行うことができます。MVR グループからの IGMP Leave メッセージは、Leave メッセージを受信する VLAN の IGMP 設定に従って処理されます。IGMP 高速脱退が VLAN でイネーブルになっている場合、ポートがただちに削除されます。それ以外の場合は、他のホストがポートに存在するかどうかを判断するために、IGMP クエリーがグループに送信されます。

MVR の他の機能との相互運用性

MVR と IGMP スヌーピング

MVR は IGMP スヌーピングの基本メカニズムで動作しますが、この 2 つの機能はそれぞれ単独で動作します。それぞれ、もう一方の機能の動作に影響を与えずにイネーブルまたはディセーブルに設定できます。IGMP スヌーピングがグローバルに、あるいは VLAN でディセーブルになっている場合、および MVR が VLAN でイネーブルになっている場合、IGMP スヌーピングは VLAN で内部的にイネーブルになります。非 MVR レシーバ ポート上で MVR グループ用に受信した Join、または MVR レシーバ ポート上で非 MVR グループ用に受信した Join は、IGMP スヌーピングによって処理されます。

MVR と vPC

  • IGMP スヌーピングと同様に、仮想ポート チャネル(vPC)ピア スイッチで受信された IGMP 制御メッセージは、ピア間で交換され、MVR グループ情報を同期できます。

  • MVR 設定は、ピア間で一貫している必要があります。

  • no ip igmp snooping mrouter vpc-peer-link コマンドは MVR に適用されます。このコマンドを使用する際、VLAN に孤立ポートがない限り、マルチキャスト トラフィックは送信元 VLAN およびレシーバ VLAN のピア リンクに送信されません。

  • show mvr member コマンドは、vPC ピア スイッチのマルチキャスト グループを表示します。ただし、vPC ピア スイッチは、グループの IGMP メンバーシップ レポートを受信しない場合、マルチキャスト グループを表示しません。

MVR に関する注意事項と制約事項

MVR には、次のガイドラインと制限事項があります。

  • MVR は、N9K-X96136YC-R、N9K-X9636C-R、N9K-X9636Q-R、および N9K-X9636C-RX ライン カードを備えた Cisco Nexus 9508 および 9504 プラットフォーム スイッチでサポートされます。ライン カードは、N9K-C9508-FM-R および N9K-C9504-FM-R ファブリック モジュールでサポートされています。

  • MVR は、N9K-X9636C-R、N9K-X9636C-RX、または N9K-X9636Q-R ライン カードを備えた Cisco Nexus 9508 スイッチでのみサポートされます。

  • MVR は、個々のポート、ポート チャネル、仮想イーサネット(vEth)ポートなどのレイヤ 2 イーサネット ポートでのみサポートされます。

  • MVR レシーバ ポートはアクセス ポートでなければなりません。トランク ポートにはできません。MVR 送信元ポートは、アクセス ポートまたはトランク ポートのどちらかにする必要があります。

  • Flex Link ポートでの MVR の設定はサポートされません。

  • プライオリティ タギングは、MVR レシーバ ポートではサポートされません。

  • MVR VLAN の合計数は 250 未満にする必要があります。

デフォルトの MVR 設定

次の表に、MVR パラメータのデフォルト設定を示します。

表 1. デフォルトの MVR パラメータ
パラメータ デフォルト
MVR グローバルおよびインターフェイス単位でディセーブル
グローバル MVR VLAN 未設定
インターフェイス(ポートごと) 受信ポートでも送信元ポートでもない

MVR の設定

MVR グローバル パラメータの設定

MVR とさまざまな構成パラメータをグローバルに有効にすることができます。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. [no]mvr
  3. [no] mvr-vlan vlan-id
  4. [no] mvr-group addr [/mask] [count groups] [vlan vlan-id]
  5. (任意) clear mvr counters [source-ports | receiver-ports]
  6. (任意) show mvr
  7. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル設定モードを開始します。

ステップ 2

[no]mvr

例:

switch(config)# mvr
switch(config-mvr)#

MVR をグローバルにイネーブルにします。デフォルトではディセーブルになっています。

MVR をディセーブルにするには、このコマンドの no 形式を使用します。

ステップ 3

[no] mvr-vlan vlan-id

例:

switch(config-mvr)# mvr-vlan 7

グローバルなデフォルト MVR VLAN を指定します。MVR VLAN は、後続のレシーバが加入するマルチキャスト メッセージの送信元です。指定できる範囲は 1 ~ 4094 です。

MVR VLAN をクリアするには、コマンドの no 形式を使用します。

ステップ 4

[no] mvr-group addr [/mask] [count groups] [vlan vlan-id]

例:

switch(config-mvr)# mvr-group 230.1.1.1 count 4

指定した IPv4 アドレスのマルチキャスト グループ(およびオプションとしてのネットマスク長)をグローバルなデフォルト MVR VLAN に追加します。このコマンドを繰り返して、追加グループを MVR VLAN に追加することができます。

IP アドレスは a.b.c.d/m 形式で入力します。m はネットマスクのビット数(1 ~ 31)です。

オプションとして、指定した IP ドレスから始まる連続マルチキャスト IP アドレスを使用して、いくつかの MVR グループを指定できます。count キーワードを使用して、その後に 1 ~ 64 の番号を指定します。

オプションで、vlan キーワードを使用してグループの MVR VLAN を指定できます。それ以外の場合、グループはデフォルトの MVR VLAN に割り当てられます。

グループ設定をクリアするには、コマンドの no 形式を使用します。

ステップ 5

(任意) clear mvr counters [source-ports | receiver-ports]

例:

switch(config-mvr)# clear mvr counters
(任意)

MVR IGMP パケット カウンタをクリアします。

ステップ 6

(任意) show mvr

例:

switch(config-mvr)# show mvr
(任意)

グローバル MVR 設定を表示します。

ステップ 7

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-mvr)# copy running-config startup-config
(任意)

実行コンフィギュレーションを、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーします。

MVR インターフェイスの設定

Cisco NX-OS デバイスで MVR インターフェイスを設定できます。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. mvr
  3. interface {ethernet slot/port | port-channel channel-number | vethernet number}
  4. [no] mvr-type {source |receiver}
  5. (任意) [no] mvr-vlan vlan-id
  6. (任意) [no] mvr-group addr [/mask] [vlan vlan-id]
  7. (任意) copy running-config startup-config

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

mvr

例:

switch(config)# mvr
switch(config-mvr)#

MVR をグローバルにイネーブルにします。デフォルトではディセーブルになっています。

(注)  

 

MVR がグローバルにイネーブルになっている場合は、このコマンドは必要ありません。

ステップ 3

interface {ethernet slot/port | port-channel channel-number | vethernet number}

例:

switch(config-mvr)# interface ethernet 2/2
switch(config-mvr-if)#

設定するレイヤ 2 ポートを指定して、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 4

[no] mvr-type {source |receiver}

例:

switch(config-mvr-if)# mvr-type source

MVR ポートを、次のポート タイプのいずれかに設定します。

  • source :マルチキャスト データを送受信するアップリンク ポートが MVR 送信元として設定されます。そのポートは、自動的に MVR マルチキャスト グループのスタティック レシーバになります。送信元ポートを MVR VLAN のメンバにする必要があります。

  • receiver :MVR マルチキャスト グループに登録するホストに接続されているアクセス ポートが MVR 受信者として設定されます。レシーバ ポートでデータを受信するのは、IGMP Leave および Join メッセージを使用してそのポートがマルチキャスト グループのメンバになっている場合だけです。

MVR 特性を使用して非 MVR ポートを設定しようとすると、その設定はキャッシュされますが、そのポートが MVR ポートがになるまで有効になりません。デフォルトのポート モードは非 MVR です。

ステップ 5

(任意) [no] mvr-vlan vlan-id

例:

switch(config-mvr-if)# mvr-vlan 7
(任意)

インターフェイスで受信された Join 用にグローバルなデフォルト MVR VLAN を上書きするインタフェースのデフォルト MVR VLAN を指定します。MVR VLAN は、後続のレシーバが加入するマルチキャスト メッセージの送信元です。指定できる範囲は 1 ~ 4094 です。

ステップ 6

(任意) [no] mvr-group addr [/mask] [vlan vlan-id]

例:

switch(config-mvr-if)# mvr-group 225.1.3.1 vlan 100
(任意)

指定した IPv4 アドレスのマルチキャスト グループ(およびオプションのネットマスク長)をインターフェイス MVR VLAN に追加し、グローバル MVR グループ設定を上書きします。このコマンドを繰り返して、付加的なグループを MVR VLAN に追加することができます。

IP アドレスは a.b.c.d/m 形式で入力します。m はネットマスクのビット数(1 ~ 31)です。

オプションとして、グループの MVR VLAN を vlan キーワードを使用して指定することができます。このキーワードを使用しない場合、グループはインターフェイスのデフォルト(指定した場合)またはグローバルなデフォルト MVR VLAN に割り当てられます。

IPv4 アドレスとネットワークマスクをクリアするには、コマンドの no 形式を使用します。

ステップ 7

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config-mvr-if)# copy running-config startup-config
(任意)

実行コンフィギュレーションを、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーします。

VLAN からの IGMP クエリ転送の抑制

ソース VLAN からレシーバ VLAN への IGMP 一般クエリを抑制するには、次の手順を実行します。

手順の概要

  1. configure terminal
  2. mvr-config
  3. mvr-suppress-query vlan vlan-ID

手順の詳細

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

mvr-config

例:

switch# mvr-config
switch(config-mvr)#

グローバル MVR コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 3

mvr-suppress-query vlan vlan-ID

例:

switch(config-mvr)# mvr-suppress-query vlan 1-5
switch(config-mvr)#

一般クエリを抑制する必要がある MVR ID またはソース VLAN 範囲を表示します。VLAN ID の値は 1 ~ 3967 です。VLAN ID は、1 ~ 5、10、または 2 ~ 5、7 ~ 19 の範囲で表すこともできます。

MVR 設定の確認

MVR の設定情報を表示するには、次のいずれかの作業を行います。

コマンド

説明

show mvr

MVR サブシステムの設定およびステータスを表示します。

show mvr groups

MVR グループの設定を表示します。

show ip igmp snooping [ vlan vlan-id]

指定した VLAN 上の IGMP スヌーピング情報を表示します。

show mvr interface {ethernet slot/port | port-channel number}

指定したインターフェイスの MVR 設定を表示します。

show mvr members [count]

すべての MVR 受信者メンバーの数と詳細を表示します。

show mvr members interface {ethernet slot/port | port-channel number}

指定したインターフェイスの MVR メンバの詳細を表示します。

show mvr members vlan vlan-id

指定した VLAN の MVR メンバの詳細を表示します。

show mvr receiver-ports [ethernet slot/port | port-channel number]

すべてのインターフェイスまたは指定したインターフェイスのすべての MVR レシーバ ポートを表示します。

show mvr source-ports [ethernet slot/port | port-channel number]

すべてのインターフェイスまたは指定したインターフェイスのすべての MVR 送信元ポートを表示します。

次に、MVR パラメータを確認する例を示します。

switch# show mvr
MVR Status          : enabled
Global MVR VLAN     : 100
Number of MVR VLANs : 4

次に、MVR グループ設定を確認する例を示します。

switch# show mvr groups
* - Global default MVR VLAN.
 
Group start    Group end       Count  MVR-VLAN Interface
                               Mask
-------------  --------------- ------ -------- -----------
228.1.2.240    228.1.2.255     /28     101
230.1.1.1      230.1.1.4        4     *100
235.1.1.6      235.1.1.6        1      340
225.1.3.1      225.1.3.1        1     *100     Eth1/10

次に、MVR インターフェイス設定とステータスを確認する例を示します。

switch# show mvr interface
Port         VLAN Type      Status    MVR-VLAN
----         ---- ----      ------    --------
Po10         100  SOURCE    ACTIVE    100-101
Po201        201  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Po202        202  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Po203        203  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Po204        204  RECEIVER  INACTIVE  100-101,340
Po205        205  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Po206        206  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Po207        207  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Po208        208  RECEIVER  ACTIVE    2000-2001
Eth1/9       340  SOURCE    ACTIVE    340
Eth1/10      20   RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Eth2/2       20   RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Eth102/1/1   102  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Eth102/1/2   102  RECEIVER  INACTIVE  100-101,340
Eth103/1/1   103  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
Eth103/1/2   103  RECEIVER  ACTIVE    100-101,340
 
Status INVALID indicates one of the following misconfiguration:
a) Interface is not a switchport.
b) MVR receiver is not in access mode.
c) MVR source is in fex-fabric mode.

次に、すべての MVR メンバを表示する例を示します。

switch# show mvr members
MVR-VLAN  Group Address  Status   Members
--------  -------------  -------  -------
100       230.1.1.1     ACTIVE    Po201 Po202 Po203 Po205 Po206
100       230.1.1.2     ACTIVE    Po205 Po206 Po207 Po208
340       235.1.1.6     ACTIVE    Eth102/1/1
101       225.1.3.1     ACTIVE    Eth1/10 Eth2/2
101       228.1.2.241   ACTIVE    Eth103/1/1 Eth103/1/2

次に、すべてのインターフェイスのすべての MVR レシーバ ポートを表示する例を示します。

switch# show mvr receiver-ports
Port          MVR-VLAN  Status   Joins         Leaves
                                 (v1,v2,v3)
------------  --------  -------- ------------  ------------
Po201         100       ACTIVE   8             2
Po202         100       ACTIVE   8             2
Po203         100       ACTIVE   8             2
Po204         100       INACTIVE 0             0
Po205         100       ACTIVE   10            6
Po206         100       ACTIVE   10            6
Po207         100       ACTIVE   5             0
Po208         100       ACTIVE   6             0
Eth1/10       101       ACTIVE   12            2
Eth2/2        101       ACTIVE   12            2
Eth102/1/1    340       ACTIVE   16            15
Eth102/1/2    340       INACTIVE 16            16
Eth103/1/1    101       ACTIVE   33            0
Eth103/1/2    101       ACTIVE   33            0

次に、すべてのインターフェイスのすべての MVR 送信元ポートを表示する例を示します。

switch# show mvr source-ports
Port          MVR-VLAN  Status
------------  --------  --------
Po10          100       ACTIVE
Eth1/9        340       ACTIVE

MVR 設定の例

次の例は、MVR をグローバルにイネーブルにし、グローバル パラメータを設定する方法を示しています。

switch# configure terminal
switch(config)# mvr
switch(config-mvr)# mvr-vlan 100
switch(config-mvr)# mvr-group 230.1.1.1 count 4
switch(config-mvr)# mvr-group 228.1.2.240/28 vlan 101
switch(config-mvr)# mvr-group 235.1.1.6 vlan 340

switch# show mvr
MVR Status           : enabled
Global MVR VLAN      : 100
Number of MVR VLANs  : 3

次の例は、イーサネット ポートを MVR レシーバ ポートとして設定する方法を示しています。

switch# configure terminal
switch(config)# mvr
switch(config-mvr)# interface ethernet 1/10
switch(config-mvr-if)# mvr-group 225.1.3.1 vlan 100
switch(config-mvr-if)# mvr-type receiver
switch(config-mvr-if)## copy running-config startup-config