IP アンナンバード インターフェイス サポートについて
IP アンナンバード インターフェイスを使用した VLAN および LAN インターフェイスを設定する前に、次の概念を理解する必要があります。
• 「DHCP サーバとリレー エージェントでの IP アンナンバード インターフェイス サポート」
• 「DHCP オプション 82」
• 「接続ホストのポーリングを使用した IP アンナンバード インターフェイス」
DHCP サーバとリレー エージェントでの IP アンナンバード インターフェイス サポート
IP アンナンバード インターフェイスの構成では、明示的に IP アドレスを割り当てないで、インターフェイス上で IP 処理を行うことが可能になります。IP アンナンバード インターフェイスは、Catalyst 4500 シリーズ スイッチにすでに設定されている別のインターフェイスから IP アドレスを「借りる」ことができるので、ネットワークとアドレス空間を節約できます。DHCP サーバ/リレー エージェントでこの機能を使用すると、DHCP サーバによって割り当てられたホスト アドレスを DHCP リレー エージェントで動的に学習できます。
図 17-1 に、IP アンナンバード インターフェイス機能を実装するネットワーク トポロジ例を示します。このトポロジでは、DHCP サーバが IP アドレスをホストに割り当てるときに、集約スイッチが IP ルートを動的に確立します。
図 17-1 VLAN 上で IP アンナンバード インターフェイス機能を使用するネットワーク トポロジ例
DHCP オプション 82
DHCP は、TCP/IP ネットワーク上のホストに設定情報を渡すフレームワークを提供します。設定パラメータと他の制御情報は、DHCP メッセージのオプション フィールドに保存されているタグ付きデータ項目で伝送されます。データ項目は、オプションとも呼ばれます。オプション 82 は、リレー エージェントが認識する情報を含んだ単一の DHCP オプションとして構成されています。
IP アンナンバード インターフェイス機能は、 エージェント リモート ID と呼ばれる DHCP リレー エージェント情報オプションのサブオプションを使用して、DHCP サーバに情報を伝えます。エージェント リモート ID で送信された情報には、リレー エージェントを特定する IP アドレス、インターフェイスに関する情報、および DHCP 要求を入力した接続に関する情報が含まれます。DHCP サーバはこの情報を使用して、IP アドレスの割り当てとセキュリティ ポリシーの決定を行うことができます。
図 17-2 に、IP アンナンバード インターフェイス機能で使用されるエージェント リモート ID サブオプションの形式を示します。
図 17-2 エージェント リモート ID サブオプションの形式
表 17-1 で、図 17-2 に示されたエージェント リモート ID サブオプション フィールドについて説明します。
表 17-1 エージェント リモート ID サブオプション フィールドの説明
|
|
タイプ |
形式タイプ。値 2 はこの機能で使用する形式を指定します。(1 バイト) |
長さ |
エージェント リモート ID サブオプションの長さ。タイプ フィールドと長さフィールドは含まれません。(1 バイト) |
予備 |
予備。(2 バイト) |
NAS IP アドレス |
ip unnumbered コマンドで指定したインターフェイスの IP アドレス。(4 バイト) |
インターフェイス |
物理インターフェイス。このフィールドの形式は次のとおりです。 スロット(4 ビット)| モジュール(1 ビット)| ポート(3 ビット) たとえば、インターフェイス名がインターフェイス Ethernet 2/1/1 の場合、スロットは 2、モジュールは 1、およびポートは 1 です。(1 バイト) |
予備 |
予備。(1 バイト) |
VLAN ID |
イーサネット インターフェイスの VLAN ID。(2 バイト) |
接続ホストのポーリングを使用した IP アンナンバード インターフェイス
(注) この機能オプションは、LAN および VLAN インターフェイスだけに適用できます。
場合によっては、ホスト IP アドレスが静的に割り当てられていることがあります。IP アンナンバード インターフェイス機能は、動的にスタティック ホスト IP アドレスを学習できます。
IP アンナンバード コンフィギュレーションの注意事項および制約事項
IP アンナンバード インターフェイスを使用(または設定)した場合、次の注意事項および制約事項を考慮してください。
• IP アンナンバード インターフェイスの場合、次の機能がサポートされません。
– ダイナミック ルーティング プロトコル
– HSRP/VRRP
– スタティック ARP
– 別の VRF でのアンナンバード インターフェイスとナンバード インターフェイス
• Cisco IOS では、dhcp host routes を接続ルートとして追加するオプションを使用できます。ただし、接続モードを使用している場合、clear ip route * コマンドは dhcp ホスト接続ルートを永久的に削除します。
回避策:
– レイヤ 3 インターフェイス(SVI)の場合は、shut と入力してから no shut と入力します。
– スタティック ルートを使用するために IP アンナンバードをイネーブルにするには、ip dhcp route static コマンドを入力します。
• IP アンナンバード インターフェイスで設定されたインターフェイスで IP リダイレクトは送信されません。
• IP アンナンバード インターフェイスはマルチキャスト ソース パケットを転送できません。
DHCP サーバにおける IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
(注) DHCP は、次の作業を実行する前に設定され、動作可能である必要があります。
ここでは、次の手順について説明します。
• 「LAN および VLAN インターフェイスに対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定」
• 「イーサネット VLAN 範囲に対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定」
LAN および VLAN インターフェイスに対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
単一 LAN または VLAN インターフェイスに IP アンナンバード インターフェイス サポートを設定するには、次の作業を行います。
|
|
|
ステップ 1 |
|
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
Switch#
configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config)#
interface [
fastethernet |
gigabitethernet |
tengigabitethernet | vlan
vlan |
port-channel | loopback
]
|
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、トンネル ポートとして設定するインターフェイスを入力します。 |
ステップ 4 |
Switch(config-if)#
ip unnumbered
type number
|
明示的な IP アドレスをインターフェイスに割り当てずにインターフェイス上の IP 処理をイネーブルにします。 type および number 引数は、IP アドレスが割り当てられているスイッチ上の別のインターフェイスを指定します。指定したインターフェイスを別のアンナンバード インターフェイスに設定することはできません。 |
ステップ 5 |
|
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
|
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
Switch#
show running-config
|
IP アンナンバード サポートが正しく設定されていることを確認します。 |
次に、イーサネット VLAN 10 が IP アンナンバード インターフェイスとして設定されている例を示します。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# interface vlan 10
Switch(config-if)# ip unnumbered Lookback 0
イーサネット VLAN 範囲に対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
特定の範囲のイーサネット VLAN インターフェイスに IP アンナンバード インターフェイス サポートを設定するには、次の作業を行います。
|
|
|
ステップ 1 |
|
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
Switch#
configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config)#
interface range {{
fastethernet |
gigabitethernet |
vlan
vlan }
slot
/
interface
{
fastethernet |
gigabitethernet |
vlan
vlan }
slot
/
interface
|
macro
macro-name }
|
複数のインターフェイスで同時にコマンドを実行します。 範囲情報を分けるために、両側にスペースを付けた形でハイフンを入力する必要があります。 |
ステップ 4 |
Switch(config-if)#
ip unnumbered
type number
|
明示的な IP アドレスをインターフェイスに割り当てずにインターフェイス上の IP 処理をイネーブルにします。 type および number 引数は、IP アドレスが割り当てられているスイッチ上の別のインターフェイスを指定します。指定したインターフェイスを別のアンナンバード インターフェイスに設定することはできません。 |
ステップ 5 |
|
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
|
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
Switch#
show running-config
|
IP アンナンバード サポートが正しく設定されていることを確認します。 |
次に、1 ~ 10 の範囲の VLAN を IP アンナンバード インターフェイスとして設定する例を示します。Fast Ethernet 3/1 の IP アドレスを共有しています。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# interface range vlan 1 - 10
Switch(config-if)# ip unnumbered fastethernet 3/1
接続先ホストのポーリングを使用した IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
接続ホストのポーリングを使用する IP アンナンバード インターフェイス サポートを設定するには、次の作業を行います。
|
|
|
ステップ 1 |
|
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
Switch#
configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config)#
interface vlan
vlan-id
|
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、トンネル ポートとして設定するインターフェイスを入力します。 |
ステップ 4 |
Switch(config-if)# ip unnumbered type number poll
|
明示的な IP アドレスをインターフェイスに割り当てずに、インターフェイス上の IP 処理および、接続ホストのポーリングをイネーブルにします。 type および number は、IP アドレスが割り当てられているスイッチ上の別のインターフェイスを指定します。指定したインターフェイスを別のアンナンバード インターフェイスに設定することはできません。 type 引数には、loopback、fastethernet、gigabitethernet、svi、および portchannel の値を設定できます。 |
ステップ 5 |
|
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
Switch(config)# ip arp poll queue <10-10000>
|
ホスト アドレスのグローバル バックログ キューが検出されるように設定します。 キュー サイズのデフォルトは 1000 です。 |
ステップ 7 |
Switch(config)# ip arp poll rate <10-10000>
|
アンナンバード インターフェイスで送信される ARP 要求の最大数を設定します。 ARP 要求のデフォルト数は、1000 pps です。 |
ステップ 8 |
|
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 9 |
Switch#
show running-config
|
IP アンナンバード サポートが正しく設定されていることを確認します。 |
次に、ファスト イーサネット インターフェイス 6/2 での IP 処理および接続ホストのポーリングをイネーブルにする例を示します。また、グローバル バックログ キューを 2000 に設定し、ARP 要求の最大数を 500 に設定する例も示します。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# interface fastEthernet 6/2
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip unnumbered loopback 0 poll
Warning: dynamic routing protocols will not work on non-point-to-point interfaces with IP unnumbered configured.
Switch(config)# ip arp poll queue 2000
Switch(config)# ip arp poll rate 500
IP アンナンバード インターフェイス設定の表示
show ip interface unnumbered コマンドを使用して、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのステータスを表示します。
アンナンバード インターフェイスのステータス を表示するには、このコマンドを入力します。
|
|
Switch# show ip interface [type number] unnumbered [detail] |
Catalyst 4500 シリーズ スイッチ上の接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのステータスを表示します。 |
次に、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのステータスを表示する例を示します。
Switch# show ip interface loopback 0 unnumbered detail
Number of unnumbered interfaces with polling: 1
Number of IP addresses processed for polling: 2
Number of IP addresses in queue for polling: 2(high water mark: 3)
スイッチの接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのバックログの主要な統計情報を表示するには、次の作業を行います。
|
|
Switch# show ip arp poll [detail] |
スイッチの接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのバックログの主要な統計情報を表示します。 |
次に、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのバックログの主要な統計情報を表示する例を示します。
Number of IP addresses processed for polling: 439
Number of IP addresses in queue for polling: 3 (high water mark: 0, max: 1000)
Number of requests dropped:
Request was throttled by incomplete ARP: 0
Duplicate request was found in queue: 0
アンナンバード インターフェイス バックログの主要な統計情報をクリアするには、次のように clear ip arp poll statistic コマンドを使用します。
Switch# clear ip arp poll statistic
Number of IP addresses processed for polling: 0
Number of IP addresses in queue for polling: 0 (high water mark: 0, max: 1000)
Number of requests dropped:
Request was throttled by incomplete ARP: 0
Duplicate request was found in queue: 0
IP アンナンバード インターフェイスのトラブルシューティング
接続ホストのポーリングをデバッグする方法については、Cisco.com で debug arp コマンドの Cisco IOS マニュアルを参照してください。
プレフィックスが OSPF ネットワークにアドバタイズされているループバック インターフェイスの IP アドレスを IP アンナンバード インターフェイスが共有する場合、ループバック インターフェイスをポイントツーポイント インターフェイスに変更する必要があります。そうしないと、ループバック インターフェイスのホスト ルートだけが OSPF ネイバーにアドバタイズされます。
Switch(config)# int loopback 0
Switch(config-if)# ip address
Switch(config-if)# ip address 10.1.0.1 255.255.0.0
Switch(config-if)# ip ospf network point-to-point
Switch(config-if)# end
関連資料
|
|
DHCP およびその他の IP アドレッシングの設定作業 |
『 Cisco IOS IP Addressing Services Configuration Guide, Release 12.4 』の「 IP Addressing and Services 」の項 |
DHCP およびその他の IP アドレッシングのコマンド |
『 Cisco IOS IP Addressing Services Command Reference , Release12.4 T 』 |
VLAN の設定作業 |
『 Cisco IOS LAN Switching Configuration Guide ,Release 12.4』の「Virtual LANs」の章 |
VLAN コンフィギュレーション コマンド |
『 Cisco IOS LAN Switching Command Reference, Release12.4 T』 |