Flex Link および MAC アドレス テーブル移行更新の概要
ここでは、次の情報について説明します。
• 「Flex Link」
• 「MAC アドレス テーブル移行更新」
Flex Link
Flex Link は、レイヤ 2 インターフェイス(スイッチ ポートまたはポート チャネル)のペアで、一方のインターフェイスが他方のインターフェイスのバックアップとして動作するように設定されています。この機能は、Spanning-Tree Protocol(STP; スパニングツリー プロトコル)の代替ソリューションとなります。STP をディセーブルにしても、基本的なリンクの冗長を維持できます。Flex Link は一般的に、カスタマーがスイッチで STP を稼働したくない場合に、サービス プロバイダーまたは企業ネットワークで設定されます。スイッチで STP が稼働している場合、すでに STP がリンクレベル冗長またはバックアップを提供しているので、Flex Link を設定する必要はありません。
一方のレイヤ 2 インターフェイスを Flex Link またはバックアップ リンクとして割り当てることで、他方のレイヤ 2 インターフェイス(アクティブ リンク)に Flex Link を設定できます。一方のリンクがアップ状態でトラフィックを転送する場合、他方のリンクはスタンバイ モードになって、シャット ダウンした場合にトラフィックを転送する準備をします。指定された時間に、インターフェイス 1 つだけが linkup ステートになってトラフィックを転送します。プライマリ リンクがシャット ダウンした場合、スタンバイ リンクがトラフィックの転送を開始します。アクティブ リンクがバックアップ状態になった場合、リンクはスタンバイ モードになって、トラフィックは転送されません。Flex Link インターフェイスでは、STP はディセーブルです。
図18-1では、スイッチ A のポート 1 および 2 はアップリンク スイッチ B および C と接続されています。ポートは Flex Link として設定されているので、インターフェイスのうち 1 つだけがトラフィックを転送し、残りのインターフェイスがスタンバイ モードになります。ポート 1 がアクティブ リンクの場合、ポート 1 とスイッチ B の間でトラフィックの転送を開始します。ポート 2(バックアップ リンク)とスイッチ C の間のリンクは、トラフィックを転送しません。ポート 1 がダウンした場合、ポート 2 がアップ状態になってスイッチ C へのトラフィックの転送を開始します。ポート 1 が再びバックアップ状態になった場合、ポート 1 はスタンバイ モードになってトラフィックは転送しません。ポート 2 はトラフィックを転送し続けます。
図18-1 Flex Link の設定例
プライマリ(転送)リンクがダウンした場合、トラップはネットワーク管理ステーションに通知します。スタンバイ リンクがダウンした場合、トラップはユーザに通知します。
Flex Link をサポートするのは、レイヤ 2 ポートとポート チャネルだけです。VLAN ではサポートされません。
MAC アドレス テーブル移行更新
MAC アドレス テーブル移行更新機能を使用すると、プライマリ(転送)リンクがダウンしてスタンバイ リンクがトラフィック転送を開始した場合に、スイッチで双方向コンバージェンスを高速で行うことができます。
図18-2では、スイッチ A はアクセス スイッチで、スイッチ A のポート 1 および 2 は Flex Link ペアを経由してアップリンク スイッチ B および D に接続されます。ポート 1 はトラフィックの転送を行い、ポート 2 はバックアップ ステートとなります。PC からサーバへのトラフィックは、ポート 1 から ポート 3 へ転送されます。PC の MAC アドレスは、スイッチ C のポート 3 で学習されています。サーバから PC へのトラフィックは、ポート 3 からポート 1 へ転送されます。
MAC アドレス テーブル移行更新機能が設定されていない状態でポート 1 がダウンすると、ポート 2 がトラフィックの転送を開始します。ただし、一時的にスイッチ C がポート 3 経由でサーバから PC へのトラフィック転送を続行しますが、ポート 1 がダウンしているため、PC はトラフィックを受信しません。スイッチ C がポート 3 で PC の MAC アドレスを削除し、ポート 4 で再び学習すると、ポート 2 経由でのサーバから PC へのトラフィック転送が可能になります。
MAC アドレス テーブル移行更新機能が設定されていて図18-2に示すスイッチでイネーブル化されると、ポート 2 が PC からサーバへのトラフィックの転送を開始します。スイッチは、ポート 2 から MAC アドレス テーブル移行更新パケットを送信します。スイッチ C はこのパケットをポート 4 で受信し、ただちにポート 4 で PC の MAC アドレスを学習します。これにより、再コンバージェンスに要する時間が短縮されます。
アクセス スイッチ(スイッチ A)を、MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを 送信する ように設定できます。アップリンク スイッチ B、C、および D を、MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを 受信し 、処理するように設定することもできます。スイッチ C は、スイッチ A から MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを受信すると、ポート 4 で PC の MAC アドレスを学習します。さらに、スイッチ C は、PC に対する転送テーブル エントリを含む MAC アドレス テーブルを更新し、ポート 4 経由でのサーバから PC へのトラフィック転送を開始します。これにより、サーバから PC へのトラフィックの損失が低減します。
図18-2 MAC アドレス テーブル移行更新の例
Flex Link および MAC アドレス テーブル移行更新の設定
ここでは、次の情報について説明します。
• 「設定時の注意事項」
• 「デフォルト設定」
設定時の注意事項
Flex Link を設定するときには、次の注意事項に従ってください。
• アクティブ リンクに対し、Flex Link バックアップ リンクを 1 つのみ設定できます。このリンクはアクティブ インターフェイスとは異なるインターフェイスである必要があります。
• インターフェイスは Flex Link ペアの 1 つにのみ、所属できます。インターフェイスは 1 つのアクティブ リンクに対してのみ、バックアップ リンクになれます。アクティブ リンクは別の Flex Link ペアに所属できません。
• どちらのリンクも EtherChannel のポートにはなれません。ただし、ポート チャネルまたは物理インターフェイスのいずれかがアクティブ リンクである場合、ポート チャネル 2 つ(EtherChannel 論理インターフェイス)を Flex Link として、またポート チャネルと物理インターフェイスを Flex Link として設定できます。
• バックアップ リンクは、アクティブ リンクと同じタイプ(ファスト イーサネット、ギガビット イーサネット、またはポート チャネル)である必要はありません。ただし、スタンバイ リンクがトラフィックの転送を開始した場合に、ループや動作変更が起きないように、両方の Flex Link を類似の特性で設定する必要があります。
• Flex Link ポートでは、STP はディセーブルです。Flex Link ポートは、ポートの VLAN が STP 用に設定されている場合でも、STP に参加しません。STP がイネーブルになっていない場合、設定したトポロジーでループの発生がないようにしてください。
MAC アドレス テーブル移行更新機能を設定する場合には、次の注意事項に従ってください。
• アクセス スイッチでは、この機能を設定してイネーブル化することにより、MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを 送信する ようにできます。
• アップリンク スイッチでは、この機能を設定してイネーブル化することにより、MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを 受信する ようにできます。
デフォルト設定
Flex Link は設定されていません。また、バックアップ インターフェイスも定義されていません。
スイッチで MAC アドレス テーブル移行更新機能は設定されていません。
Flex Link および MAC アドレス テーブル移行更新の設定
ここでは、次の情報について説明します。
• 「Flex Link の設定」
• 「MAC アドレス テーブル移行更新機能の設定」
Flex Link の設定
ペアの Flex Link を設定するには、イネーブル EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。インターフェイスは物理レイヤ 2 インターフェイスにすることもポート チャネル(論理インターフェイス)にすることもできます。ポート チャネルの範囲は 1 ~ 6 です。 |
ステップ 3 |
switchport backup interface interface-id |
物理レイヤ 2 インターフェイス(またはポート チャネル)を、インターフェイスを装備した Flex Link ペアの一部として設定します。1 つのリンクがトラフィックを転送している場合、残りのインターフェイスはスタンバイ モードです。 |
ステップ 4 |
end |
イネーブル EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
show interface [ interface-id ] switchport backup |
設定を確認します。 |
ステップ 6 |
copy running-config startup config |
(任意)スイッチのスタートアップ コンフィギュレーション ファイルにエントリを保存します。 |
次に、バックアップ インターフェイスを装備し、設定を確認するようにインターフェイスを設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(conf)# interface fastethernet0/1
Switch(conf-if)# switchport backup interface fastethernet0/2
Switch# show interface switchport backup
Switch Backup Interface Pairs:
Active Interface Backup Interface State
------------------------------------------------------------------------------------------
FastEthernet0/1 FastEthernet0/2 Active Up/Backup Standby
FastEthernet0/3 FastEthernet0/4 Active Up/Backup Standby
Port-channel1 GigabitEthernet0/1 Active Up/Backup Standby
MAC アドレス テーブル移行更新機能の設定
ここでは、次の情報について説明します。
• MAC アドレス テーブル移行更新を送信するためのスイッチの設定
• MAC アドレス テーブル移行更新を受信するためのスイッチの設定
MAC アドレス テーブル移行更新を送信するようにアクセス スイッチを設定するには、イネーブル EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
インターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。インターフェイスとしては、物理レイヤ 2 インターフェイスもポート チャネル(論理インターフェイス)も指定できます。ポート チャネルの範囲は 1 ~ 6 です。 |
ステップ 3 |
switchport backup interface interface-id または switchport backup interface interface-id mmu primary vlan vlan-id |
物理レイヤ 2 インターフェイス(またはポート チャネル)を、インターフェイスを装備した Flex Link ペアの一部として設定します。MAC アドレス テーブル移行更新 VLAN は、インターフェイスで一番小さい VLAN ID です。 物理レイヤ 2 インターフェイス(またはポート チャネル)を設定し、インターフェイスの VLAN ID を指定します。これは、MAC アドレス テーブル移行更新の送信に使用されます。 一方のリンクがトラフィックを転送している場合、もう一方のインターフェイスはスタンバイ モードです。 |
ステップ 4 |
end |
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
mac address-table move update transmit |
プライマリ リンクがダウンし、スイッチがスタンバイ リンク経由でのトラフィック転送を開始した場合に、アクセス スイッチがネットワーク内の他のスイッチに MAC アドレス テーブル移行更新を送信できるよう、イネーブル化します。 |
ステップ 6 |
end |
イネーブル EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
show mac address-table move update |
設定を確認します。 |
ステップ 8 |
copy running-config startup config |
(任意)スイッチのスタートアップ コンフィギュレーション ファイルにエントリを保存します。 |
アクセス スイッチで MAC アドレス テーブル移行更新機能をディセーブル化するには、 no mac address-table move update transmit インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。MAC アドレス テーブル移行更新情報を表示するには、 show mac address-table move update イネーブル EXEC コマンドを使用します。
次に、アクセス スイッチを、MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを送信するように設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(conf)# interface fastethernet0/1
Switch(conf-if)# switchport backup interface fastethernet0/2mmu primary vlan 2
Switch(conf)# mac address-table move update transmit
次の例に示す設定を確認してください。
Switch#show mac-address-table move update
Switch-ID : 01d0.2bfc.3180
Dst mac-address : 0180.c200.0010
Vlans/Macs supported : 1023/8320
Default/Current settings: Rcv Off/Off, Xmt Off/Off
Max packets per min : Rcv 40, Xmt 60
Rcv conforming packet count : 0
Rcv invalid packet count : 0
Rcv packet count this min : 0
Rcv threshold exceed count : 0
Rcv last sequence# this min : 0
Rcv last interface : None
Rcv last src-mac-address : 0000.0000.0000
Rcv last switch-ID : 0000.0000.0000
Xmt packet count this min : 0
Xmt threshold exceed count : 0
Xmt pak buf unavail cnt : 0
Xmt last interface : None
MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを受信して処理するようにスイッチを設定するには、イネーブル EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
mac address-table move update receive |
スイッチで MAC アドレス テーブル移行更新を受信して処理するよう、イネーブル化します。 |
ステップ 3 |
end |
イネーブル EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 4 |
show mac address-table move update |
設定を確認します。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup config |
(任意)スイッチのスタートアップ コンフィギュレーション ファイルにエントリを保存します。 |
アクセス スイッチで MAC アドレス テーブル移行更新機能をディセーブル化するには、 no mac address-table move update receive コンフィギュレーション コマンドを使用します。MAC アドレス テーブル移行更新情報を表示するには、 show mac address-table move update イネーブル EXEC コマンドを使用します。
次に、スイッチを、MAC アドレス テーブル移行更新メッセージを受信して処理するように設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(conf)# mac address-table move update receive
Flex Link および MAC アドレス テーブル移行更新のモニタ
表18-1 に、Flex Link 設定と MAC アドレス テーブル移行更新情報をモニタするためのイネーブル EXEC コマンドを示します。
表18-1 Flex Link および MAC アドレス テーブル移行更新のモニタ コマンド
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show interface [ interface-id ] switchport backup |
1 つのインターフェイス用に設定された Flex Link バックアップ インターフェイス、または設定された Flex Link すべてと、各アクティブおよびバックアップ インターフェイスのステート(アップまたはスタンバイ モード)を表示します。 |
show mac address-table move update |
スイッチの MAC アドレス テーブル移行更新情報を表示します。 |