スタティック IP ユニキャスト ルーティングの設定
この章では、Catalyst 2960-S および 2960 スイッチに IP Version 4(IPv4)スタティック IP ユニキャスト ルーティングを設定する方法について説明します。スタティック ルーティングは、Switch Virtual Interface(SVI; スイッチ仮想インターフェイス)でのみサポートされており、物理インターフェイスではサポートされていません。スイッチでは、ルーティング プロトコルはサポートされていません。
特に明記しない限り、 スイッチ という用語は、スタンドアロン スイッチおよびスイッチ スタックを指します。スイッチ スタックは、ネットワーク内のルータに対して、単一のスイッチとして動作し、認識されます。
(注) スタック構成がサポートされているのは、Catalyst 2960-S スイッチだけです。
この章で使用するコマンドの構文および使用方法の詳細については、『 Cisco IOS IP Command Reference, Volume 1 of 3: Addressing and Services, Release 12.2 』を参照してください。
• 「IP ルーティングの概要」
• 「ルーティングを設定する手順」
• 「IP ユニキャスト ルーティングのイネーブル化」
• 「スタティック ユニキャスト ルートの設定」
• 「IP ネットワークのモニタリングおよびメンテナンス」
(注) スイッチにルーティング パラメータを設定する場合、使用できるユニキャスト ルート数が最大となるようにシステム リソースを割り当てるには、sdm prefer lanbase-routing グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用し、ルーティング テンプレートに Switch Database Management(SDM; スイッチング データベース管理)機能を設定します。SDM テンプレートの詳細については、「SDM テンプレートの設定」、またはこのリリースのコマンド リファレンスの sdm prefer コマンドを参照してください。
IP ルーティングの概要
一部のネットワーク環境で、VLAN(仮想 LAN)は各ネットワークまたはサブネットワークに関連付けられています。IP ネットワークで、各サブネットワークは 1 つの VLAN に対応しています。VLAN を設定すると、ブロードキャスト ドメインのサイズを制御し、ローカル トラフィックをローカル内にとどめることができます。ただし、異なる VLAN 内のネットワーク デバイスが相互に通信するには、VLAN 間でトラフィックをルーティング(VLAN 間ルーティング)するレイヤ 3 デバイスが必要です。VLAN 間ルーティングでは、適切な宛先 VLAN にトラフィックをルーティングするため、1 つまたは複数のルータを設定します。
図 34-1 に基本的なルーティング トポロジを示します。スイッチ A は VLAN 10 内、スイッチ B は VLAN 20 内にあります。ルータには各 VLAN のインターフェイスが備わっています。
図 34-1 ルーティング トポロジの例
VLAN 10 内のホスト A が VLAN 10 内のホスト B と通信する場合、ホスト A はホスト B 宛にアドレス指定されたパケットを送信します。スイッチ A はパケットをルータに送信せず、ホスト B に直接転送します。
ホスト A から VLAN 20 内のホスト C にパケットを送信する場合、スイッチ A はパケットをルータに転送し、ルータは VLAN 10 インターフェイスでトラフィックを受信します。ルータはルーティング テーブルを使用して正しい発信インターフェイスを判別し、VLAN 20 インターフェイスを経由してパケットをスイッチ B に送信します。スイッチ B はパケットを受信し、ホスト C に転送します。
スイッチ A と B でスタティック ルーティングをイネーブルにすると、パケットをルーティングするためのルータ デバイスは必要なくなります。
ルーティング タイプ
ルータおよびレイヤ 3 スイッチは、次の方法でパケットをルーティングできます。
• 宛先がルータにとって不明であるトラフィックをデフォルトの出口または宛先に送信するには、デフォルト ルーティングを使用します。
• パケットが事前に設定されたポートから単一のパスを通り、ネットワークの内部または外部に転送されるようにするには、スタティック ルートを使用します。
• ルーティング プロトコルによるルートの動的な計算。
スイッチでは、スタティック ルートとデフォルト ルートはサポートされますが、ルーティング プロトコルはサポートされていません。
IP ルーティングおよびスイッチ スタック
(注) スタック構成がサポートされているのは、Catalyst 2960-S スイッチだけです。
スタックのスイッチがピアに接続されているかどうかに関係なく、スイッチ スタックはネットワークからは単一のスイッチとして認識されます。スイッチ スタックの動作の詳細については、「スイッチ スタックの管理」を参照してください。
スタック マスターは、次に示す機能を実行します。
• スタック マスターの MAC アドレスはスタック全体のルータ MAC アドレスとして使用され、すべての外部デバイスはこのアドレスを使用して IP パケットをスタックに送信します。
• ソフトウェア転送またはソフトウェア処理を必要とするすべての IP パケットは、スタック マスターの CPU を通ります。
スタック メンバは、次に示す機能を実行します。
• ルーティング スタンバイ スイッチとして機能します。スタック マスターに障害が発生し、新規スタック マスターとして選択された場合に、処理を引き継ぐことができます。
• ルートをハードウェアにプログラムします。
スタック マスターに障害が発生すると、スタックはスタック マスターがダウンしていることを検出し、スタック メンバの 1 つを新規スタック マスターとして選択します。一時的な中断を除き、ハードウェアはパケットを転送し続けます。
新規スタック マスターは、選択されたときに次の機能を実行します。
• ルーティング テーブルを作成し、スタック メンバに配信します。
• ルータ MAC アドレスとして自身の MAC アドレスを使用します。新規 MAC アドレスのネットワーク ピアに通知するために、新規ルータ MAC アドレスを使用して余分の Address Resolution Protocol(ARP; アドレス解決プロトコル)応答を定期的に(5 分間の間、数秒おきに)送信します。
(注) 固定 MAC アドレス機能をスタックに設定していて、スタック マスターに変更があった場合、設定された時間スタック MAC アドレスは変更されません。この期間に前のスタック マスターがメンバ スイッチとしてスタックに再加入する場合、スタック MAC アドレスは前のスタック マスターの MAC アドレスのままになります。「永続的 MAC アドレスのイネーブル化」を参照してください。
ルーティングを設定する手順
デフォルトでは、IP ルーティングはスイッチ上でディセーブルです。IP ルーティング設定情報に関する詳細については、『 Cisco IOS IP Configuration Guide, Release 12.2 』を参照してください。これには、Cisco.com([Documentation] > [Cisco IOS Software Releases] > [12.2 Mainline] > [Configuration Guides])からアクセス可能です。
この手順では、特定のインターフェイスを Switch Virtual Interface(SVI; スイッチ仮想インターフェイス)にする必要があります。これは、 interface vlan vlan_id グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して作成された VLAN インターフェイスであり、デフォルトではレイヤ 3 インターフェイスです。ルーティングが発生するすべてのレイヤ 3 インターフェイスに、IP アドレスを割り当てる必要があります。「IP アドレスの SVI への割り当て」を参照してください。
(注) スイッチでは、16 のスタティック ルート(ユーザ設定のルートとデフォルト ルートを含む)と、管理インターフェイスの直接接続されたルートとデフォルト ルートがサポートされています。スイッチには、各 SVI に割り当てられた IP アドレスを指定できます。ルーティングをイネーブルにする前に、sdm prefer lanbase-routing グローバル コンフィギュレーション コマンドを入力して、スイッチをリロードします。
ルーティングを設定する手順は次のとおりです。
• VLAN インターフェイスをサポートするために、スイッチまたはスイッチ スタックで VLAN を作成および設定し、レイヤ 2 インターフェイスに VLAN メンバシップを割り当てます。詳細については、「VLAN の設定」を参照してください。
• レイヤ 3 インターフェイス(SVI)を設定します。
• スイッチ上で IP ルーティングをイネーブルに設定します。
• レイヤ 3 インターフェイスに IP アドレスを割り当てます。
• スタティック ルートを設定します。
IP ユニキャスト ルーティングのイネーブル化
デフォルトで、スイッチはレイヤ 2 スイッチング モード、IP ルーティングはディセーブルとなっています。スイッチのレイヤ 3 機能を使用するには、IP ルーティングをイネーブルにします。
IP ルーティングをイネーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ip routing |
IP ルーティングをイネーブルにします |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 4 |
show running-config |
設定を確認します。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
ルーティングをディセーブルにするには、 no ip routing グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次の例では、スイッチで IP ルーティングをイネーブルにする方法を示しています。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# ip routing
IP アドレスの SVI への割り当て
IP ルーティングを設定するには、IP アドレスをレイヤ 3 ネットワーク インターフェイスに割り当てる必要があります。これにより、IP を使用するインターフェイスでホストとの通信が可能になります。IP ルーティングはデフォルトでディセーブルであり、IP アドレスは SVI に割り当てられていません。
IP アドレスは、IP パケットの宛先を特定します。一部の IP アドレスは特殊な目的のために予約されていて、ホスト、サブネット、またはネットワーク アドレスには使用できません。RFC 1166『Internet Numbers』には、これらの IP アドレスに関する公式の説明が記載されています。
インターフェイスには、1 つのプライマリ IP アドレスを設定できます。サブネット マスクは、IP アドレスのネットワーク番号を表すビットを特定します。
IP アドレスおよびネットワーク マスクを SVI に割り当てるには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface vlan vlan_id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、設定するレイヤ 3 VLAN を指定します。 |
ステップ 3 |
ip address ip-address subnet-mask |
IP アドレスおよび IP サブネット マスクを設定します。 |
ステップ 4 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
show interfaces [ interface-id ] show ip interface [ interface-id ] show running-config interface [ interface-id ] |
設定を確認します。 |
ステップ 6 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
スタティック ユニキャスト ルートの設定
スタティック ユニキャスト ルートは、特定のパスを通過して送信元と宛先間でパケットを送受信するユーザ定義のルートです。ルータが特定の宛先へのルートを構築できない場合、スタティック ルートは重要で、到達不能なすべてのパケットが送信される最終ゲートウェイを指定する場合に有効です。
スタティック ルートを設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
ip route prefix mask { address | interface } [ distance ] |
スタティック ルートを確立します。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 4 |
show ip route |
設定を確認するため、ルーティング テーブルの現在のステートを表示します。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
スタティック ルートを削除するには、 no ip route prefix mask { address | interface } グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。ユーザによって削除されるまで、スタティック ルートはスイッチに保持されます。
インターフェイスがダウンすると、ダウンしたインターフェイスを経由するすべてのスタティック ルートが IP ルーティング テーブルから削除されます。転送ルータのアドレスとして指定されたアドレスへ向かう有効なネクストホップがスタティック ルート内に見つからない場合は、IP ルーティング テーブルからそのスタティック ルートも削除されます。
IP ネットワークのモニタリングおよびメンテナンス
ルーティング テーブルまたはデータベースの統計情報を指定できます。ステータスを表示するには、 表 34-1 の特権 EXEC コマンドを使用します。
表 34-1 IP ルートの削除またはルート ステータスの表示を行うコマンド
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show ip route [ address [ mask ] [ longer-prefixes ]] | |
ルーティング テーブルのステートを表示します。 |
show ip route summary |
ルーティング テーブルのステートをサマリー形式で表示します。 |
show platform ip unicast |
プラットフォームに依存する IP ユニキャストの情報を表示します。 |