FSPF の概要
FSPF は、ファイバ チャネル ネットワーク内でのルーティング用として、T11 委員会によって現在標準化されているプロトコルです。FSPF プロトコルには、次の特性および特徴があります。
- 複数パスのルーティングをサポートします。
- パス ステータスはリンク ステート プロトコルによって決まります。
- ドメイン ID だけに基づいて、ホップ単位ルーティングを行います。
- E ポートまたは TE ポートだけで稼働し、ループのないトポロジを形成します。
- VSAN(仮想 SAN)単位で稼働します。ファブリック内の各 VSAN では、この VSAN に設定されたスイッチとの接続が保証されます。
- トポロジ データベースを使用して、ファブリック内のすべてのスイッチのリンク ステートを追跡し、各リンクにコストを対応付けます。
- トポロジが変更された場合、高速な再コンバージェンス タイムを保証します。標準ダイクストラ アルゴリズムを使用します。ただし、より強固で、効率的な差分ダイクストラ アルゴリズムを静的に、あるいは動的に選択することができます。VSAN 単位でルートが計算されるため、再コンバージェンス タイムは高速かつ効率的です。
FSPF の例
ここでは、FSPF の利点を示すトポロジおよびアプリケーション例について説明します。
(注) |
FSPF 機能は任意のトポロジで使用できます。 |
フォールト トレラント ファブリック
図 1 に、部分的メッシュ トポロジを使用するフォールト トレラント ファブリックを示します。ファブリック内のどの部分でリンク ダウンが発生しても、各スイッチはファブリック内の他のすべてのスイッチと通信できます。同様に、どのスイッチがダウンしても、ファブリックの残りの接続は維持されます。
たとえば、すべてのリンク速度が等しい場合、FSPF は A ~ C 2 つの同等なパス(A-D-C [グリーン] と A-E-C [ブルー])を計算します。
冗長リンク
図 1 のトポロジを改良するには、任意のスイッチ ペア間の接続をそれぞれ重複させます。スイッチ ペア間には、リンクを複数設定できます。図 1に、この配置例を示します。Cisco MDS 9000 ファミリのスイッチはポート チャネル機能をサポートしているため、物理リンクの各ペアは単一の論理リンクとして FSPF プロトコルに認識されます。
物理リンク ペアをバンドルすることにより、データベース サイズは小さくなり、リンク アップデート頻度が減少するため、FSPF の効率が大幅に改善されます。物理リンクを集約すると、障害は単一のリンクだけにとどまらずポート チャネル全体に波及します。この設定により、ネットワークの復元力も向上します。ポート チャネルのリンクに障害が発生しても、ルートは変更されないため、ルーティング ループ、トラフィック消失、またはルート再設定のためのファブリック ダウンタイムが生じるリスクが軽減されます。
たとえば、すべてのリンクの速度が等しく、PortChannel が存在しない場合、FSPF では A から C への同等パス 4 つ(A1-E-C、A2-E-C、A3-D-C、および A4-D-C)が計算されます。PortChannel が存在する場合は、これらのパスが 2 つに削減されます。
PortChannel および FSPF リンクのフェールオーバー シナリオ
SmartBits トラフィック ジェネレータを使用して、図 1 に示されたシナリオを評価しました。スイッチ 1 とスイッチ 2 の間に存在する 2 つのリンクは、等コストの ISL リンクまたはポートチャネル リンクのどちらかです。トラフィック ジェネレータ 1 からトラフィック ジェネレータ 2 へのフローは、1 つ存在します。次のような 2 とおりのシナリオを想定して、100% の利用率、1 Gbps のトラフィックをテストしました。
ポートチャネル シナリオ |
FSPF シナリオ(等コスト ISL) |
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スイッチ 1 |
スイッチ 2 |
スイッチ 1 |
スイッチ 2 |
110 ミリ秒(削除フレーム数は 2 K 以下) |
130+ ミリ秒(削除フレーム数は 4 K 以下) |
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100 ミリ秒(標準の規定に従って信号損失を通知するときのホールド タイム) |
ポートチャネル シナリオ |
FSPF シナリオ(等コスト ISL) |
||
---|---|---|---|
スイッチ 1 |
スイッチ 2 |
スイッチ 1 |
スイッチ 2 |
~ 0 ミリ秒(削除フレーム数は 8 以下) |
110 ミリ秒(削除フレーム数は 2 K 以下) |
130+ ミリ秒(削除フレーム数は 4 K 以下) |
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ホールド タイム不要 |
スイッチ 1 での信号損失 |
ホールド タイム不要 |
スイッチ 1 での信号損失 |