コール スロットリングと Code Yellow 状態
コール スロットリングを使用すると、Cisco Unified CallManager は、さまざまな要因(負荷の高いコール アクティビティ、Cisco Unified CallManager に対する CPU 稼働率の低下、ルーティング ループ、ディスク入出力の制限、ディスク フラグメンテーションのようなイベントなど)でダイヤル トーンの遅延(ユーザがオフフックにしてからダイヤル トーンを受信するまでの間隔)が発生する可能性があると判断した場合、新しいコールの試行を自動的にスロットル(拒否)することができます。
この章では、コール スロットリングに関する次の情報を提供します。
• 「コール スロットリングの概要」
• 「コール スロットリングのトラブルシューティング」
• 「関連項目」
コール スロットリングの概要
コール スロットリングは、Cisco Unified CallManager が上記のような状態が存在すると判断したときに自動的に実行され、そのような状態が緩和されたときにシステムは自動的にスロットリングを終了します。コール スロットリングの開始と終了に関連付けられたパラメータを設定するには、Cisco Unified CallManager の管理ページ( [システム] >[サービスパラメータ] )で、いくつかのサービス パラメータを使用します。ただし、シスコのカスタマー サポートが推奨する場合を除き、これらのパラメータを変更することはお勧めしません。サービス パラメータへのアクセス方法、およびサービス パラメータの設定方法については、『 Cisco Unified CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「サービス パラメータの設定」を参照してください。
Cisco Unified CallManager は、コール スロットリングに関連するパラメータで指定されている値を使用して、ダイヤル トーンの遅延の可能性を評価し、コール スロットリングが必要でなくなった状態を判断します。ダイヤル トーンの過剰な遅延を回避するためにスロットリングが必要になったときに、Cisco Unified CallManager は Code Yellow 状態に入り、新しいコールの試行がスロットル(拒否)されます。コール スロットリングは、System Throttle Sample Size サービス パラメータを使用して無効にできますが、コール スロットリングを無効にすることはお勧めしません。次に、コール スロットリングに関連するいくつかのサービス パラメータの定義を示します。
• Code Yellow Entry Latency は、システム内のさまざまなデバイスから Cisco Unified CallManager に送信される SDL メッセージに加え、さまざまアクティビティ(キープアライブ、変更通知、多様な内部メッセージングなど)に関して Cisco Unified CallManager で送受信される大量の内部メッセージを処理する際の最大許容遅延をミリ秒単位で定義します。計算された平均予想遅延が、このサービス パラメータで指定されている値を超える場合、Cisco Unified CallManager は Code Yellow 状態に入ってコール スロットリングを開始し、新しいコールの受け入れを停止します。
• Code Yellow Exit Latency Calculation は、Cisco Unified CallManager がコール スロットリングを開始したときに Code Yellow 状態の終了基準(Code Yellow 終了遅延)を指定するために、Code Yellow Entry Latency の許容可能なパーセンテージを決定します。このパラメータに指定する値を基礎として、Code Yellow Entry Latency パラメータの値(ミリ秒単位で指定する遅延)を使用する数式が構成されます。パーセンテージを決定するには、「Code Yellow Entry Latency 値 × Code Yellow Exit Latency 値」という数式を使用します。次の例を参考にしてください。
Code Yellow Entry Latency サービス パラメータ値:20 ミリ秒
Code Yellow Exit Latency サービス パラメータ値:40%
Code Yellow Exit Latency 値 = 20 × 0.4 = 8 ミリ秒。つまり、計算されたメッセージ遅延時間が 8 ミリ秒以下に低下すると、Cisco Unified CallManager は Code Yellow 状態を終了します。
Code Yellow 状態から脱するために、Cisco Unified CallManager は平均予想遅延が Code Yellow 終了遅延の値より小さいことを確認します。
• Code Yellow Duration は、Cisco Unified CallManager システムが Code Yellow 状態(コール スロットリング)を継続できる時間を分単位で指定します。この期間が満了しても、システムが引き続き Code Yellow 状態にある場合、Cisco Unified CallManager は Code Red 状態に入ります。これは Cisco Unified CallManager が長期間にわたって Code Yellow 状態にあり、回復できないことを示します。Cisco Unified CallManager が Code Red 状態に入ると、Cisco CallManager サービスが再開します。このサービスは、障害の分析に利用できるメモリ ダンプを生成します。
• System Throttle Sample Size は、Cisco Unified CallManager が SDL メッセージを処理する平均予想遅延を計算するために使用する、サンプルのサイズを秒単位で示します。たとえば、サンプル サイズ 10 は、Cisco Unified CallManager が、平均予想遅延を計算して、それを CodeYellow Entry Latency パラメータの値と比較する前に、10 秒連続してゼロ以外の遅延値を計算する必要があることを意味します。このパラメータを使用して、コール スロットリングを無効にできます。
ダイヤル トーンの遅延が、コール スロットリング関連のサービス パラメータで設定されているしきい値を超えると計算された場合、Cisco Unified CallManager は新しいコールの拒否を開始します。コール スロットリングが行われているとき、新しいコールを試行するユーザはリオーダー音を受信します。電話機モデルによっては、電話機のディスプレイにプロンプトが表示される場合もあります。コール スロットリングは、ユーザが新しいコールの発信を試行するときの問題を効果的に回避しますが、オフフックにしてからダイヤル トーンを受信するまでの遅延時間が過度に長くなると、ユーザの反応(たとえば、システム管理者への苦情、システム ダウンや電話機の故障についての問い合せなど)を引き起こします。Cisco Unified CallManager は、そのような遅延が発生するタイミングを予測するため、複雑なアルゴリズムを使用して常時システムを監視します。
ダイヤル トーンへの遅延がコール スロットリング関連のサービス パラメータのガイドラインの範囲内である場合は、Cisco Unified CallManager は Code Yellow 状態を終了してスロットリングを中止します。新しいコール イベントは再び許可されるようになります。
コール スロットリングのトラブルシューティング
CCM/SDI および SDL トレース ファイルは、コール スロットリング イベントを記録して、役立つ情報を提供できます。また、多くの場合、デバッグ用のパフォーマンス監視データも必要になります。Cisco CallManager System Performance オブジェクト(Real-Time Monitoring Tool で表示可能)には、ThrottlingSampleActivity と呼ばれるカウンタが含まれています。このカウンタは、Cisco Unified CallManager がゼロ以外の遅延値を計算したかどうかを示し、システムのビジー状態の程度を把握するのに役立ちます。このカウンタが頻繁にゼロ以外の値になる場合、システムの潜在的な過負荷状態を示している可能性があります。Code Yellow イベントの可能性を回避するには、システムの過負荷状態を発生させていると考えられる原因(負荷の高いコール アクティビティ、Cisco Unified CallManager に対する CPU 稼働率の低下、ルーティング ループ、ディスク入出力の制限、ディスク フラグメンテーションのようなイベントなど)を検討し、それらの可能性の調査を開始します。
一般に、コール スロットリング イベントが繰り返される場合は、Cisco Technical Assistance Center(TAC)のサポートを受ける必要があります。TAC では、より厳密な検査を行うために、これらのトレース ファイルの提示を求めることがあります。
関連項目
『 Cisco Unified CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「サービス パラメータの設定」