サイレントの設定
この章では、Cisco Unified Communications Manager Express(Cisco Unified CME)の Do Not Disturb(サイレント)機能について説明します。
このモジュールで紹介する機能情報の入手方法
お使いの Cisco Unified CME のバージョンが、このモジュールで説明されている機能の一部をサポートしていないことがあります。 各機能がサポートされているバージョンのリストについては、「サイレントに関する機能情報」を参照してください。
サイレントについて
Do Not Disturb(サイレント)を設定するには、次の概念について理解しておく必要があります。
• 「SCCP:サイレント」
• 「SIP:サイレント」
SCCP:サイレント
サイレント(DND)機能を使用すると、電話機ユーザは着信コールの呼び出し音をディセーブルにできます。DND がイネーブルになっていると、電話機で着信コールは鳴りませんが、視覚的なアラートと、コール情報の表示は行われるため、必要であればコールに応答できます。ローカル IP Phone が、DND 状態の別のローカル IP Phone を呼び出すと、「サイレントでリングアウト(Ring out DND)」というメッセージが着信側の電話機に表示され、発信先の電話が DND 状態であることが示されます。
電話機ユーザは、アイドル状態または呼び出し状態で [サイレント(DND)] ソフトキーを使用して、DND のオンとオフを切り替えることができます。SSCP 電話機ユーザは、電話機で DND がまだアクティブになっていない場合にのみ、呼び出し状態で DND のオンとオフを切り替えることができます。新しいコールが着信したときに DND がすでにアクティブになっていた場合、SCCP 電話機ユーザは、[サイレント(DND)] ソフトキーを押しても DND 状態を変更できません。
SSCP 電話機ユーザが着信コール中に DND を切り替えても、DND 状態は、現在のコールの間のみはアクティブのままになります。SIP 電話機ユーザが着信コール中に DND を切り替えると、現在のコールの間に加え、ユーザが明示的に DND をオフに切り替えるまで、将来のすべてのコールに関しても DND 状態はアクティブのままになります。
応答なしのコール転送がイネーブルになっている場合、着信コール中に [サイレント(DND)] ソフトキーを押すと、そのコールが応答なしのコール転送用の宛先に転送されます。コール自動転送がイネーブルになっていない場合、[サイレント(DND)] ソフトキーを押すと呼び出し音と視覚的なアラートはディセーブルになりますが、コール情報は電話機の画面に表示されます。
Cisco CME 3.2.1 以降のバージョンでは、フィーチャ呼び出し機能を使用して DND を電話機でブロックできます。フィーチャ呼び出しはトリプル パルスの呼び出し音であり、内部コールや外部コールの呼び出しリズムなど、呼び出しリズムのタイプの 1 つです。たとえば、米国では内部コールの呼び出しは 2 秒間オンになって、4 秒間オフになり(シングル パルス呼び出し)、外部コールの呼び出しは 0.4 秒間オンになって、0.2 秒間オフになり、0.4 秒間オンになってから、0.2 秒間オフになります(ダブル パルス呼び出し)。
トリプル パルス呼び出しは、電話機ユーザのオーディオ ID として使用されます。たとえば、販売部門の各販売員は、IP Phone のボタンを使用して他の販売員と同じセットの ephone-dn を共有し、別のボタンをお得意様への専用回線として使用できます。着信コールが自分宛の専用回線かどうかを販売員が簡単に識別できるように、フィーチャ呼び出し機能を使用して専用回線を設定できます。DND 機能は、フィーチャ呼び出し回線でディセーブルにできます。前の例では、販売員は自分の電話機で DND をアクティブ化しても、専用回線へのコールを聞くことができます。
SIP:サイレント
Cisco Unified CME 7.1 以降のバージョンでは、SIP 電話機のサイレント(DND)機能を使用して、着信コールで電話の呼び出し音が鳴らないように設定できます。DND をイネーブルにすると、電話機は呼び出し音を鳴らす代わりに、アラートを点滅して着信コールを視覚的に示し、必要に応じて電話に出ることができます。「サイレントはアクティブです(Do Not Disturb is active)」というメッセージが電話機に表示され、コールは Missed Calls ディレクトリに記録されます。
Cisco Unified CME 7.1 よりも前のバージョンでは、DND 機能を使用すると、ビジー音が流れて SIP 電話機への着信コールがブロックされます。Cisco Unified CME は電話機のすべての回線へのコールを拒否し、発信者にビジー音を流します。受信されたコールは電話機の Missed Calls ディレクトリに記録されません。
DND は電話機のすべての回線に適用されます。電話機で DND とすべてのコールの転送の両方がイネーブルになっている場合、着信コールではすべてのコールの転送が優先されます。
SIP 電話機の DND は、Cisco Unified CME からイネーブルにする必要があります。呼び出し状態とアイドル状態の両方で、サポートされる SIP 電話機に [サイレント(DND)] ソフトキーがデフォルトで表示されます。音声レジスタ テンプレートを使用して、ソフトキーを削除したり、順番を変更したりできます。
電話機ユーザは、[サイレント(DND)] ソフトキーを使用して、電話機で DND のオンとオフを切り替えることができます。SIP 電話機ユーザが着信コール中に DND をアクティブにすると、現在のコールの間に加え、ユーザが明示的に DND をオフに切り替えるまで、将来のすべてのコールに関しても DND 状態はアクティブのままになります。
電話機ユーザが電話機で DND のオンとオフを切り替えた場合は、Cisco Unified CME をリブートする前に実行中の設定を保存しておくと、電話機をリセットまたは再起動した後、Cisco Unified CME が DND 状態を復元します。
設定については、「SIP:サイレントの設定」を参照してください。
表 87 に、さまざまな電話機ファームウェア バージョンの SIP 電話機の、DND 設定の比較を示します。
表 87 SIP 電話機の DND 機能の比較
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電話機ファームウェア 8.3 の Cisco Unified IP Phone 7911、7941、7961、7970、または 7971
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電話機ファームウェア 8.2 の Cisco Unified IP Phone 7911、7941、7961、7970、または 7971、あるいは Cisco Unified
IP Phone 7940 または 7960
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DND のサポート |
音声レジスタ プール モードの dnd コマンド |
音声レジスタ プール モードの dnd コマンド |
[サイレント(DND)] ソフトキーの表示 |
音声レジスタ テンプレート モードの softkey idle および softkey ringIn コマンド |
音声レジスタ テンプレート モードの dnd-control コマンド |
設定時の動作 |
着信コールに対して呼び出し音がオフになります。視覚アラートが表示されます。 |
コールは拒否され、発信者にビジー音が流れます。 |
サイレントの設定方法
ここでは、次の作業について説明します。
• 「SCCP:サイレントのブロック」(必須)
• 「SCCP:サイレントの確認」(任意)
• 「SIP:サイレントの設定」(必須)
SCCP:サイレントのブロック
フィーチャ呼び出し用にボタンが設定されている電話機で DND をブロックするには、次の手順を実行します。DND は、ソフトキーをサポートしている Cisco Unified IP Phone で、[サイレント(DND)] ソフトキーを使用してイネーブルにします。
前提条件
• Cisco Unified 3.2.1 以降のバージョン。
• button f コマンドを使用して、フィーチャ呼び出しに対応するように電話回線が設定されていること。
• コールの転送に DND が使用されるよう、電話機に無応答時コール転送が設定されていること。設定情報については、 コール転送とコール自動転送の設定を参照してください。基本的な DND には、その他の設定は不要です。
制約事項
• 電話機ユーザは、ハント グループで、共有回線に対して DND をイネーブルにすることはできません。アイドル状態および呼び出し状態でソフトキーは表示されますが、ハント グループでは、共有回線に対して DND がイネーブルになりません。
手順の概要
1. e nable
2. configure terminal
3. ephone phone-tag
4. no dnd feature-ring
5. end
手順の詳細
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ステップ 1 |
enable
Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
configure terminal
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
ephone phone-tag
Router(config)# ephone 10 |
ephone コンフィギュレーション モードを開始します。 • phone-tag :設定対象の ephone を識別する一意のシーケンス番号。 |
ステップ 4 |
no dnd feature-ring
Router(config-ephone)# no dnd feature-ring |
電話機が DND モードになっている場合に、フィーチャ呼び出し用に設定された電話機ボタンで呼び出しをイネーブルにします。 |
ステップ 5 |
end
Router(config-ephone)# end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
例
次の設定例では、DND が ephone 1 と ephone 2 でアクティブになっている場合、button 1 は鳴りますが、button 2 は鳴りません。
ephone-dn 1
number 1001
ephone-dn 2
number 1002
ephone-dn 10
number 1110
preference 0
no huntstop
ephone-dn 11
number 1111
preference 1
ephone 1
button 1f1
button 2o10,11
no dnd feature-ring
ephone 2
button 1f2
button 2o10,11
no dnd feature-ring
SCCP:サイレントの確認
show ephone dnd
このコマンドを使用して、DND がイネーブルになっている SCCP 電話機のリストを表示します。
Router# show ephone dnd
ephone-1 Mac:0007.0EA6.353A TCP socket:[1] activeLine:0 REGISTERED
mediaActive:0 offhook:0 ringing:0 reset:0 reset_sent:0 paging 0 debug:0
IP:1.2.205.205 52486 Telecaster 7960 keepalive 2729 max_line 6 DnD
button 1: dn 11 number 60011 CH1 IDLE
SIP:サイレントの設定
SIP 電話機でサイレント(DND)機能をイネーブルにするには、次の手順を実行します。
前提条件
• Cisco CME 3.4 以降のバージョン。
• [サイレント(DND)] ソフトキーを使用するには Cisco Unified CME 7.1 以降のバージョン。
• コールの転送に DND が使用されるように、SIP IP Phone に話中転送が設定されていること。設定情報については、『 Cisco Unified CME System Administrator Guide 』の「 Configuring Call Transfer and Forwarding 」を参照してください。
制約事項
• Cisco Unified CME 7.1 よりも前のバージョンでは、 dnd-control コマンドを使用して、SIP 電話機の [サイレント(DND)] ソフトキーをイネーブルにします。
• 電話機で DND をイネーブルにしたうえで、[サイレント(DND)] ソフトキーを削除すると、ユーザは電話機で DND をオフに切り替えられなくなります。
Cisco Unified IP Phone 7911G、7941G、7941GE、7961G、7961GE、7970G、および 7971GE
• ファームウェア 8.3 以降のバージョンを使用する SIP 電話機の場合、DND 機能によって電話機の呼び出し音は鳴らなくなります。ただし、コールがブロックされたり、発信者にビジー音が流れることはありません。
• 電話機ユーザによって DND がディセーブルに設定されている場合、電話機がリセットまたは再起動された後、DND はイネーブルになりません。電話機の [サイレント(DND)] ソフトキーを使用して、Cisco Unified CME と の両方で DND をイネーブルにする必要があります。
手順の概要
1. enable
2. configure terminal
3. voice register template template-tag
4. softkeys idle {[ Cfwdall ] [ DND ] [ Gpickup ] [ Newcall ] [ Pickup ] [ Redial ]}
5. softkeys ringIn [ Answer ] [ DND ]
6. exit
7. voice register pool phone-tag
8. dnd
9. template template-tag
10. end
手順の詳細
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ステップ 1 |
enable
Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
configure terminal
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
voice register template template-tag
Router(config)# voice register template 5 |
ephone テンプレート コンフィギュレーション モードを開始して、ephone テンプレートを作成します。 • template-tag :作成される ephone テンプレートの固有識別子。範囲:1 ~ 10。 |
ステップ 4 |
softkeys idle {[ Cfwdall ] [ DND ] [ Gpickup ] [ Newcall ] [ Pickup ] [ Redial ]}
Router(config-register-temp)# softkeys idle |
アイドル コール状態時に、SIP 電話機に表示されるソフトキーの順序とタイプを変更します。 |
ステップ 5 |
softkeys ringIn [ Answer ] [ DND ]
Router(config-register-temp)# softkeys ringin dnd answer |
呼び出し中のコール状態時に SIP 電話機に表示されるソフトキーの順序とタイプを変更します。 |
ステップ 6 |
exit
Router(config-register-temp)# exit |
ephone テンプレート コンフィギュレーション モードを終了します。 |
ステップ 7 |
voice register pool phone-tag
Router(config)# voice register pool 1 |
音声レジスタ プール コンフィギュレーション モードを開始して、SIP 電話機にパラメータを設定します。 |
ステップ 8 |
dnd
Router(config-register-pool)# dnd |
電話機で DND をイネーブルにします。 • 内線に対して応答なしのコール転送が設定されていない場合、[サイレント(DND)] ソフトキーを押すと、着信コールの呼び出し音がミュートされます。 |
ステップ 9 |
template template-tag
Router(config-register-pool)# template 5 |
ephone テンプレートを電話機に適用します。 • template-tag :ステップ 3 で作成したテンプレートの固有識別子 |
ステップ 10 |
end
Router(config-register-pool)# end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
例
次に、電話機 130 で DND がイネーブルになり、電話機に割り当てられている template 6 で [サイレント(DND)] ソフトキーを変更する例を示します。
voice register template 6
softkeys idle Gpickup Pickup DND Redial
softkeys ringIn DND Answer
!
voice register pool 130
id mac 001A.A11B.500E
type 7941
number 1 dn 30
template 6
dnd
次の作業
ephone ハント グループと Cisco Unified CME B-ACD のエージェント ステータスの制御
ephone ハント グループ エージェントは、電話機の DND 機能または HLog 機能を使用して、受信可/受信不可ステータス(コールを受信できるかどうかを示すステータス)を制御できます。[サイレント(DND)] ソフトキーを使用すると、電話機のどの内線でもコールが受信されません。HLog ソフトキーを使用する場合、ハント グループの内線ではコールが受信されませんが、他の内線ではコールが受信されます。エージェント ステータスの制御と HLog 機能の詳細については、 コール カバレッジ機能の設定を参照してください。
コール自動転送
[サイレント(DND)] ソフトキーを使用してコールを転送するには、SCCP 電話機で無応答時コール転送をイネーブルにするか、SIP IP Phone で話中転送をイネーブルにします。 コール転送とコール自動転送の設定を参照してください。
機能アクセス コード(FAC)
標準またはカスタムの機能アクセス コード(FAC)がイネーブルになっている場合、DND は、[サイレント(DND)] ソフトキーではなく、FAC を使用してアクティブ化および非アクティブ化できます。DND の標準 FAC を次に示します。
• DND:**7
機能アクセス コードの設定を参照してください。
ソフトキーの表示
[サイレント(DND)] ソフトキーは、削除または位置を変えることができます。 ソフトキーのカスタマイズを参照してください。
その他の参考資料
次の各項では、Cisco Unified CME 機能に関連するその他の資料について説明します。
シスコのテクニカル サポート
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右の URL にアクセスして、シスコのテクニカル サポートを最大限に活用してください。 以下を含むさまざまな作業にこの Web サイトが役立ちます。 ・テクニカル サポートを受ける ・ソフトウェアをダウンロードする ・セキュリティの脆弱性を報告する、またはシスコ製品のセキュリティ問題に対する支援を受ける ・ツールおよびリソースへアクセスする - Product Alert の受信登録 - Field Notice の受信登録 - Bug Toolkit を使用した既知の問題の検索 ・Networking Professionals(NetPro)コミュニティで、技術関連のディスカッションに参加する ・トレーニング リソースへアクセスする ・TAC Case Collection ツールを使用して、ハードウェアや設定、パフォーマンスに関する一般的な問題をインタラクティブに特定および解決する この Web サイト上のツールにアクセスする際は、Cisco.com のログイン ID およびパスワードが必要です。 |
http://www.cisco.com/en/US/support/index.html |
サイレントに関する機能情報
表 88 に、このモジュールで説明した機能、およびバージョンごとの拡張機能を示します。
特定の Cisco Unified CME バージョンをサポートするための適切な Cisco IOS リリースを判断するには、 http://www.cisco.com/en/US/docs/voice_ip_comm/cucme/requirements/guide/33matrix.htm にある『 Cisco Unified CME and Cisco IOS Software Version Compatibility Matrix 』を参照してください。
プラットフォームのサポートおよびソフトウェア イメージのサポートに関する情報を検索するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator では、特定のソフトウェア リリース、フィーチャ セット、またはプラットフォームをサポートしている Cisco IOS ソフトウェア イメージを確認できます。Cisco Feature Navigator にアクセスするには、 http://www.cisco.com/go/cfn に移動します。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
(注) 表 88 には、特定の機能に対するサポートを導入した Cisco Unified CME のバージョンが示されています。特に明記されていない限り、Cisco Unified CME ソフトウェアの後続のバージョンでもこの機能をサポートします。
表 88 サイレントに関する機能情報
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サイレント |
7.1 |
SIP 電話機の DND サポートが拡張され、着信コールでアラートを視覚的に点滅できるようになりました。 |
3.4 |
SIP 電話機のサイレント(DND)ソフトキーのサポートが追加されました。 |
3.2.1 |
フィーチャ呼び出し電話機の DND バイパスが導入されました。 |
3.2 |
DND が導入されました。 |