GGSN での UMTS QoS の設定
ここでは、GGSN で UMTS QoS を設定する方法について説明します。内容は次のとおりです。
• 「UMTS QoS の概要」
• 「UMTS QoS の設定の作業リスト」
• 「GGSN での UMTS QoS マッピングのイネーブル」
• 「DiffServ PHB グループへの UMTS QoS トラフィック クラスのマッピング」
• 「DiffServ PHB グループへの DSCP への割り当て」
• 「加入者データグラムでの DSCP の設定」
• 「Cisco 7600 プラットフォームでの GGSN UMTS QoS 要件の設定」
• 「UMTS QoS 設定の確認」
UMTS QoS の概要
3GPP 規格では、UMTS の遅延、ジッタ、帯域幅、および信頼性に基づいて、4 つの QoS トラフィック クラスが定義されています。 表 10-1 は、これらの UMTS トラフィック クラスとその特性、アプリケーション、およびマッピングされている Cisco IOS QoS Diffserv クラスを示しています。
表 10-1 UMTS トラフィック クラス
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ストリームの情報エンティティ間で時間関係(バリエーション)を保持します。 したがって、会話パターンの遅延とジッタが大幅に低くなります。 |
ストリームの情報エンティティ間で時間関係(バリエーション)を保持します。 遅延とジッタの要件は、conversational クラスほど厳密ではありません。 |
要求/応答パターン。 ペイロード コンテンツ インルートの再送信。 |
宛先で期待されるデータの時間は厳密ではありません。 ペイロード コンテンツ インルートの再送信が発生する可能性があります。 |
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Voice over IP |
オーディオやビデオのストリーミング |
Web ブラウズ |
電子メールのダウンロード |
Diffserv クラス /
DSCP へのマッピング
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緊急転送クラス |
確認転送 2 クラス |
確認転送 3 クラス |
ベストエフォート |
Cisco GGSN では、Cisco IOS Differentiated Services(Diffserv)モデルを使用して実装することにより、エンドツーエンドの UMTS QoS がサポートされています。DiffServ モデルは、異なる QoS 要件を満たすことが可能な複数サービス モデルです。ネットワークでは、DiffServ を使用し、パケットごとに指定された QoS に基づいて特定の種類のサービスを提供しようとします。この仕様は、IP パケットまたは送信元アドレスと宛先アドレスでの 6 ビット Differentiated Services Code Point(DSCP; DiffServ コード ポイント)設定の使用など、さまざまな方法で使用されます。ネットワークでは、この QoS 仕様に基づいてトラフィックのマーキング、形成、およびポリシングを行い、インテリジェント キューイングを実行します。
Cisco IOS QoS および DiffServ サービス モデルの詳細については、『 Cisco IOS Quality of Service Solutions Configuration Guide 』を参照してください。
GGSN での UMTS QoS マッピングのイネーブル
デフォルトでは、GGSN で UMTS QoS はイネーブルではありません。GGSN でモバイル UMTS QoS をイネーブルにするには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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Router(config)# gprs qos map umts
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GGSN で UMTS QoS マッピングをイネーブルにします。 |
DiffServ PHB グループへの UMTS QoS トラフィック クラスのマッピング
UMTS QoS トラフィック クラスから DiffServ Per-Hop Behavior(PHB)グループへの QoS マッピングを指定する前に、グローバル コンフィギュレーション モードで gprs qos map umts コマンドを使用して UMTS QoS マッピングをイネーブルにする必要があります。
UMTS QoS トラフィック クラスのデフォルトのマッピング値は、次のとおりです。
• conversational トラフィック クラスと ef-class DiffServ PHB グループ
• streaming トラフィック クラスと af2-class DiffServ PHB グループ
• interactive トラフィック クラスと af3-class DiffServ PHB グループ
• background トラフィック クラスと best-effort DiffServ PHB グループ
これらのデフォルト以外のマッピング値を使用する場合は、 gprs umts-qos map traffic-class コマンドを使用して、UMTS トラフィック クラスを別の DiffServ PHB グループにマッピングできます。
(注) UMTS QoS トラフィック クラスを DiffServ PHB に正常にマッピングするには、Cisco IOS ソフトウェア コマンドである class map および match ip dscp を使用して、クラス マップを設定する必要があります。クラス マップの設定の詳細については、『Cisco IOS Quality of Service Solutions Configuration Guide』を参照してください。
UMTS トラフィック クラスを DiffServ PHB グループにマッピングするには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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Router(config)# gprs umts-qos map traffic-class traffic-class diffserv-phb-group |
DiffServ PHB への UMTS QoS トラフィック クラスのマッピングをイネーブルにします。UMTS トラフィック クラスは次のとおりです。 • signalling • conversational • streaming • interactive • background DiffServ PHB グループは次のとおりです。 • signalling-class • ef-class • af1-class • af2-class • af3-class • af4-class • best-effort |
DiffServ PHB グループへの DSCP への割り当て
デフォルトでは、PHB クラスに関連付けられているデフォルトの DiffServ コード ポイント(DSCP)値が使用されます。 表 10-2 は、各 PHB グループに対する DSCP のデフォルト値を示しています。
表 10-2 PHB グループに対する DSCP のデフォルト値
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EF |
101110 |
AF11 |
001010 |
AF12 |
001100 |
AF13 |
001110 |
AF21 |
010010 |
AF22 |
010100 |
AF23 |
010110 |
AF31 |
011010 |
AF32 |
011100 |
AF33 |
011110 |
AF41 |
100010 |
AF42 |
100100 |
AF43 |
100110 |
Best Effort |
000000 |
ただし、1 つの DSCP を複数の PHB グループに割り当てることができます。
Assured Forwarding(AF; 確認転送)PHB グループの場合は、廃棄優先順位ごとに最大 3 つの DSCP を指定できます。signalling、EF、および best-effort の各クラスには廃棄優先順位がないため、最初の DSCP 値だけが使用されます。これらのクラスの引数 dscp2 または dscp3 に値を入力した場合、この値は無視されます。
(注) 廃棄優先順位は、ネットワークで輻輳が発生した場合にパケットが廃棄される順序を示しています。
(注) UMTS QoS トラフィック クラスを DiffServ PHB に正常にマッピングし、DSCP 値を DiffServ PHB グループに割り当てるには、class map と match ip dscp の各コマンドを使用してクラス マップを設定する必要があります。クラス マップの設定の詳細については、『Cisco IOS Quality of Service Solutions Configuration Guide』および『Cisco IOS Quality of Service Solutions Command Reference』を参照してください。
(注) デフォルトでは、signalling クラスは CS5(101000)に割り当てられます。これは IP precedence 5 と同等です。
DSCP 値を DiffServ PHB グループに割り当てるには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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Router(config)# gprs umts-qos map diffserv-phb diffserv-phb-group [ dscp1 ] [ dscp2 ] [ dscp3 ] |
DSCP を DiffServ PHB グループに割り当てます。DiffServ PHB グループは次のとおりです。 • signalling • ef-class • af1-class • af2-class • af3-class • af4-class • best-effort DSCP は次のとおりです。 • dscp1:すべてのクラスで必要です。64 個の DSCP 値(0 ~ 63)から 1 つ指定します。この DSCP 値は廃棄優先順位 1 と対応します。 • dscp2:(AF クラスの場合は任意)64 個の DSCP 値(0 ~ 63)から 1 つ指定します。この DSCP 値は廃棄優先順位 2 と対応します。 • dscp3:(AF クラスの場合は任意)64 個の DSCP 値(0 ~ 63)から 1 つ指定します。この DSCP 値は廃棄優先順位 3 と対応します。 |
加入者データグラムでの DSCP の設定
デフォルトでは、加入者データグラム内の DSCP は、PDP コンテキストが作成されたときにトラフィック クラスに割り当てられた DSCP で再マーキングされます。
加入者データグラムが、DSCP を変更することなく GPRS Tunneling Protocol(GTP; GPRS トンネリング プロトコル)パスを介して転送されるように指定するには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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Router(config)# gprs umts-qos dscp unmodified [ up | down | all ] |
加入者データグラムが、DSCP を変更することなく GTP パスを介して転送されるように指定します。 |
デフォルト値に戻すには、 no gprs umts-qos dscp unmodified コマンドを発行します。
Cisco 7600 プラットフォームでの GGSN UMTS QoS 要件の設定
Cisco 7600 プラットフォームの Cisco Service and Application Module for IP(SAMI)上で実行されている GGSN の UMTS QoS を設定する場合、プラットフォームの各種コンポーネントでさまざまな QoS 機能が実行されます。 表 10-3 は、Cisco 7600 プラットフォームのコンポーネントで実行される QoS 機能を示しています。
表 10-3 Cisco 7600 プラットフォームのコンポーネントでの QoS 機能
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Catalyst ラインカード |
分類、および入力/出力のスケジューリング |
スーパーバイザ エンジン |
分類および集約ポリシング |
Cisco SAMI での Cisco IOS GGSN イメージ |
分類、DSCP マーキング、および出力キューイング |
GGSN で UMTS QoS を設定したあと、次の作業を完了する必要があります。
スーパーバイザ エンジン
(注) 次のリストは、GGSN で UMTS QoS のスーパーバイザ エンジンで完了しておく必要がある、必須作業の概要を示しています。これらの各作業の詳細については、『Cisco 7600 Series Cisco IOS Software Configuration Guide』を参照してください。
1. グローバル コンフィギュレーション モードで mls qos コマンドを使用して、マルチレイヤ スイッチング QoS をイネーブルにします。
2. スーパーバイザ エンジンで、Gi トラフィックの集約ポリシングを設定します。
(注) 複数の Gn インターフェイスと Gi インターフェイスを使用できますが、すべてのトラフィックが最終的に SAMI 上の単一の GE ポートに到達する必要があるため(2 つの GGSN に対して 1 つの GE)、SAMI へのトラフィックのレートを制限するために名前付き集約ポリサーを使用することを推奨します。また、不適合トラフィックはすべて廃棄することも推奨します。
次の例は、名前付き集約ポリサーの設定を示しています。名前付きポリサーは Gi インターフェイスに付加されます。
Access-list 101 permit ip any any dscp ef
Access-list 102 permit ip any any dscp af21
Access-list 103 permit ip any any dscp af31
Access-list 103 permit ip any any dscp af32
Access-list 103 permit ip any any dscp af33
Access-list 104 permit ip any any
Class-map match-all conversational
Class-map match-all streaming
Class-map match-all interactive
Class-map match-all background
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-CONV bit-rate1 normal-burst max-burst conform-action transmit exceed-action drop
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-STREAMING bit-rate1 normal-burst max-burst conform-action transmit exceed-action drop
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-INTERACTIVE bit-rate1 normal-burst max-burst conform-action transmit exceed-action drop
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-BACKGROUND bit-rate1 normal-burst max-burst conform-action transmit exceed-action drop
Police aggregate AGGREGATE-CONV
Police aggregate AGGREGATE-STREAMING
Police aggregate AGGREGATE-INTERACTIVE
Police aggregate AGGREGATE-BACKGROUND
Router(config-if)# service-policy input Gi-incoming
(注) ポリシング統計情報をモニタリングするときは、次の show コマンドを使用できます。
- show mls qos aggregate-policer name
- show policy-map interface interface
- show policy interface interface
3. msl qos trust dscp インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、入力ポートの信頼状態を trust-dscp モードに設定します。
Router(config)# interface FastEthernet2/1
Router(config-if)# mls qos trust dscp
4. 次の作業を実行して、出力ポート スケジューリングを設定します。
a. Cisco SAMI で実行されている GGSN インスタンスで show gprs umts-qos traffic class 特権 EXEC コマンドを使用して、UMTS トラフィックのクラス/DSCP マッピングを取得します。
Router# ggsn show gprs umts-qos traffic-class
b. show mls qos maps 特権 EXEC コマンドを使用して QoS マッピング情報を表示することにより、デフォルトの DSCP/CoS マッピングを取得します。
Router# show mls qos maps
c. show queuing interface 特権 EXEC コマンドを使用して、インターフェイスのキューイング統計情報を表示することにより、デフォルトの CoS /キュー マッピングを取得します。
Router# show queuing interface interface
d. ステップ A、B、および C で取得される情報を使用して、カスタマイズされた DSCP/CoS 出力マッピングが必要かどうかを判別します。必要な場合は、グローバル コンフィギュレーション モードで mls qos map dscp-cos コマンドを使用してマッピングを定義します。
Router(config)# mls qos map dscp-cos dscp to cos
DSCP/CoS マッピングをカスタマイズする場合は、次のことを確認します。
- conversational トラフィックと streaming トラフィックが出力キュー 4 に割り当てられていること
- interactive トラフィックと background トラフィックが、2 つの通常キューの間で同等に分散されること
- 異なるしきい値をキューで設定して Weighted Random Early Detection(WRED; 重み付けランダム早期検出)を活用できるように、interactive トラフィックが他の CoS 値にマッピングされていること
5. ラインカードで重み付けランダム早期検出(WRED)がサポートされている場合は、次の作業を実行して輻輳回避を設定します。
a. wrr-queue random-detect max-threshold インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、WRED をイネーブルにし、指定したキューに対するしきい値の下限と上限を指定します(デフォルトを推奨します)。
Router(config-if)# wrr-queue random-detect max-threshold queue percent-of-queue-size
b. wrr-queue cos map インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、CoS 値を廃棄しきい値にマッピングします。このしきい値を超過すると、特定の CoS 値を持つフレームが廃棄されます。
wrr-queue cos-map queue-id threshold-id cos-1 ... cos-n
次の例では、CoS 値 3 および 4 は、送信キュー 1/しきい値 2 および送信キュー 2/しきい値 1 にそれぞれ割り当てられます。
Router(config-if)# wrr-queue cos-map 1 1 3
Router(config-if)# wrr-queue cos-map 1 2 4
c. wrr-queue bandwidth インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、帯域幅を標準送信キュー 1(低プライオリティ)と標準送信キュー 2(高プライオリティ)に割り振ります。
Router(config-if)# wrr-queue bandwidth weight1 weight2 weight3
Cisco GGSN
1. 各 GGSN の UMTS トラフィック クラスに対して出力キューイング方法を設定します。
各 GGSN の UMTS トラフィック クラスごとにキューイング方法を設定できます。
次の設定例では、UMTS トラフィック クラスとクラス マップが定義されていると想定しています。
Interface GigabitEthernet0/0
Bandwidth <max-bandwidth>
Service-policy output sami-output
UMTS QoS 設定の確認
UMTS QoS 設定を確認するには、Cisco SAMI で実行されているスーパーバイザ エンジンおよび GGSN インスタンスで show running-config コマンドを使用して、次の例の UMTS QoS パラメータを確認します。
スーパーバイザ エンジン設定
Mls qos map dscp-cos 18 20 22 to 5
Mls qos map dscp-cos 26 to 4
Mls qos map dscp-cos 28,30 to 3
Access-list 101 permit ip any any dscp ef
Access-list 102 permit ip any any dscp af21
Access-list 103 permit ip any any dscp af31
Access-list 103 permit ip any any dscp af32
Access-list 103 permit ip any any dscp af33
Access-list 104 permit ip any any
Class-map match-all conversational
Class-map match-all streaming
Class-map match-all interactive
Class-map match-all background
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-CONV <bit rate1> <normal-burst> <max-burst>
Conform-action transmit exceed-action drop
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-STREAMING <bit rate2> <normal-burst> <max-burst> conform-action transmit exceed-action drop
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-INTERACTIVE <bit rate3> <normal-burst> <max-burst> conform-action transmit exceed-action drop
Mls qos aggregate-policer AGGREGATE-BACKGROUND <bit rate4> <normal-burst> <max-burst> conform-action transmit exceed-action drop
Police aggregate AGGREGATE-CONV
Police aggregate AGGREGATE-STREAMING
Police aggregate AGGREGATE-INTERACTIVE
Police aggregate AGGREGATE-BACKGROUND
Interface FastEthernet2/1
Description “Gi interface”
Wrr-queue bandwidth 50 40 10
Service-policy input Gi-incoming
Interface FastEthernet2/2
Description “Gn interface”
GGSN 設定
Class-map match-all conversational
Class-map match-any interactive
Class-map match-any streaming
Class-map match-all signaling
Class-map match-any background
Description default class
interface Gigabitthernet 0/0
service-policy output max-output
GGSN でのコール アドミッション制御の設定
GGSN の Call Admission Control(CAC; コール アドミッション制御)機能を使用すると、リアルタイムのデータ トラフィック(音声やビデオなど)で必要なネットワーク リソースを確実に使用できます。CAC は Access Point Name(APN; アクセス ポイント ネーム)で適用され、最大 QoS 認可と帯域幅管理という 2 つの機能で構成されています。
次の項では、GGSN でこれらの機能を設定する方法について説明します。
• 「最大 QoS 認可の設定」
• 「帯域幅管理の設定」
• 「設定例」
• 「CAC の設定例」
(注) GGSN の CAC を使用するには、グローバル コンフィギュレーション モードで gprs qos map umts コマンドを使用して UMTS QoS がイネーブルにされており、かつトラフィック クラス基準とトラフィック ポリシーが作成されている必要があります。
最大 QoS 認可の設定
CAC 最大 QoS 認可機能を使用すると、PDP コンテキストの作成によって要求された QoS が、APN 内で設定された最大 QoS を超えないようにできます。 CAC 最大 QoS ポリシー を使用すると、ポリシー内で特定の QoS パラメータを定義し、そのポリシーを APN に付加できます。CAC 最大 QoS ポリシーにより、PDP の作成プロセスおよび変更プロセス中に PDP によって要求される QoS が制限されます。
(注) CAC 最大 QoS ポリシーは複数の APN に付加できます。
CAC 最大 QoS ポリシーでは次のパラメータを定義できます。
• アクティブな PDP コンテキストの最大数 :APN に対してアクティブな PDP コンテキストの最大数。APN でアクティブな PDP の合計数が、このパラメータを使用してポリシー内に設定した数を超過すると、GGSN は PDP コンテキストを拒否します。任意で、このしきい値に達したあとに、割り当て/保持プライオリティが 1 に設定されている PDP コンテキストだけを受け入れるように CAC を設定できます。
• 最大ビット レート :APN のアップリンク方向とダウンリンク方向の両方で、各トラフィック クラスに対して許可できる Maximum Bit Rate(MBR; 最大ビット レート)の最高値。ポリシーに MBR を設定すると、CAC で MBR が最大 GBR よりも大きい値になります。MBR を設定しない場合、CAC は PDP コンテキストによって要求される任意の MBR を受け入れます。
• 保証ビット レート :APN のアップリンク方向とダウンリンク方向の両方で、リアルタイム トラフィック(conversational および streaming)に対して受け入れ可能な Guaranteed Bit Rate(GBR; 保証ビット レート)の最高値。ポリシーで GBR を設定しない場合、CAC は PDP コンテキストによって要求される任意の GBR を受け入れます。
• 最高トラフィック クラス :APN で受け入れ可能な最高トラフィック クラス。要求されたトラフィック クラスが、ポリシーで指定した最高トラフィック クラスよりも高い場合、PDP コンテキストは拒否されます。このパラメータが設定されていない場合は、任意のトラフィック クラスが受け入れられます。
GGSN では、PDP コンテキストの作成中にトラフィック クラスをダウングレードしません。ただし、PDP コンテキストの作成後に APN で設定した最高トラフィック クラスが変更され、かつ、この新しい最高トラフィック クラスよりも大きい値の新しいトラフィック クラスの要求を GGSN が受信した(PDP コンテキストの更新要求で)場合、GGSN では PDP コンテキストの変更中にトラフィック クラスをダウングレードします。この場合、GGSN は要求を新規の最高トラフィック クラスまでダウングレードします。
• 最大トラフィック処理プライオリティ :APN で受け入れ可能な interactive トラフィック クラスの最大トラフィック処理プライオリティを指定します。このパラメータが指定されていない場合は、すべてのトラフィック処理プライオリティが受け入れられます。
• 最大遅延クラス :APN で受け入れ可能な R97/R98 QoS の最大遅延クラスを定義します。
• 最大ピーク スループット クラス :APN で受け入れ可能な R97/R98 QoS の最大ピーク スループット クラスを定義します。
CAC 最大 QoS ポリシーの設定
CAC 最大 QoS ポリシーを設定するには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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ステップ 1 |
Router(config)# gprs qos cac-policy policy-name |
CAC 最大 QoS ポリシーを作成または変更します。 |
ステップ 2 |
Router(config-umts-cac-policy)# maximum pdp-context number [ threshold number2 ] |
特定の APN に対して作成可能な PDP コンテキストの最大数を指定します。任意で、2 番めのしきい値を設定し、このしきい値に到達したあと、割り当て/保持プライオリティが 1 である PDP コンテキストだけを受け入れるように設定できます。 |
ステップ 3 |
Router(config-umts-cac-policy)# maximum traffic-class traffic-class-name [ priority value ] |
APN で受け入れ可能な最高トラフィック クラスを指定します。有効な値は、conversational、streaming、interactive、または background です。 任意で、interactive トラフィック クラスの最高トラフィック処理プライオリティを指定できます。 |
ステップ 4 |
Router(config-umts-cac-policy)# maximum peak-throughput value [ reject ] |
APN で受け入れ可能な R97/R98 QoS の最大ピーク スループットを定義します。有効な値は 1 ~ 9 です。 デフォルトでは、ピーク スループットが設定値よりも高い PDP コンテキストは、設定値までダウングレードされます。代わりに、任意で、 reject キーワードを指定して、このような PDP コンテキストが拒否されるようにできます。 |
ステップ 5 |
Router(config-umts-cac-policy)# maximum delay-class value [ reject ] |
APN で受け入れ可能な R97/R98 QoS の最大遅延クラスを指定します。 デフォルトでは、最大遅延クラスが設定値よりも高い PDP コンテキストは、設定値までダウングレードされます。代わりに、任意で、 reject キーワードを指定して、このような PDP コンテキストが拒否されるようにできます。 |
ステップ 6 |
Router(config-umts-cac-policy)# mbr traffic-class traffic-class-name bitrate { uplink | downlink } [ reject ] |
両方向(アップリンクとダウンリンク)で、各トラフィック クラスに対して許可できる Maximum Bit Rate(MBR; 最大ビット レート)の最高値を指定します。有効な値は 1 ~ 256000 です。 任意で、 reject キーワード オプションを使用して、MBR が設定値を超過したときに PDP コンテキストの作成要求が拒否されるように指定できます。 |
ステップ 7 |
Router(config-umts-cac-policy)# gbr traffic-class traffic-class-name bitrate { uplink | downlink } [ reject ] |
APN でリアルタイム クラス(conversational および streaming)に対して、アップリンク方向とダウンリンク方向で許可できる保証ビット レート(GBR)の最高値を指定します。有効な値は 1 ~ 256000 です。 任意で、 reject キーワード オプションを使用して、GBR が設定値を超過したときに PDP コンテキストの作成要求が拒否されるように指定できます。 |
CAC 最大 QoS ポリシー機能のイネーブルおよび APN へのポリシーの付加
CAC 最大 QoS ポリシー機能をイネーブルにし、ポリシーを APN に付加するには、アクセス ポイント コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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Router(config-access-point)#
cac-policy
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CAC 機能の最大 QoS ポリシー機能をイネーブルにし、ポリシーを APN に適用します。 |
帯域幅管理の設定
CAC 帯域幅管理機能を使用すると、PDP コンテキストのアクティベーションや変更プロセス中に、リアルタイム PDP コンテキストに十分な帯域幅を確保できます。
CAC 機能では、帯域幅をネゴシエーションおよび確保するために、ユーザ定義の帯域幅プールを使用します。これらのプールについて、各プールに割り当てる総帯域幅を定義し、次に、その帯域幅のパーセンテージを各トラフィック クラスに割り当てます。
次の例では、作成する帯域幅プール(プール A)に 100000 kbps を割り当てます。また、帯域幅 100000 kbps のパーセンテージを各トラフィック クラスに割り当てて、トラフィック クラスベースの帯域幅プールを 4 つ作成します。
traffic-class conversational percent 40
traffic-class streaming percent 30
traffic-class interactive percent 20
traffic-class background percent 10
CAC 帯域幅プールの設定
(注) CAC 帯域幅プールは、帯域幅をネゴシエーションおよび確保するために CAC によって使用されます。ただし、確保した帯域幅を保証するために、キューイングとスケジューリングを定義する Cisco IOS QoS サービス ポリシーを作成し、物理インターフェイスに付加する必要があります。
CAC 帯域幅プールを設定するには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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ステップ 1 |
Router(config)# gprs qos bandwidth-pool pool-name |
CAC 帯域幅プールを作成または変更します。 |
ステップ 2 |
Router(config-gprs-bw-pool)# bandwidth value |
帯域幅プールの総帯域幅をキロビット/秒単位で指定します。有効な値は 1 ~ 4294967295 の数値です。 |
ステップ 3 |
Router(config-gprs-bw-pool)# traffic-class traffic-class [ percent ] value |
帯域幅プールの帯域幅を特定のトラフィック クラスに割り当てます。この割り当ては、パーセンテージ(オプションの percent キーワードとともに使用する場合は 1 ~ 100%)、またはキロビット/秒単位の絶対値(0 ~ 4292967295)で指定します。すべてのトラフィック クラスで同じ単位(パーセンテージまたは絶対値)を使用する必要があります。 |
CAC 帯域幅管理機能のイネーブルおよび APN への帯域幅プールの適用
CAC 帯域幅管理機能をイネーブルにし、帯域幅プールを APN に適用するには、アクセス ポイント コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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Router(config-access-point)#
bandwidth pool {
input |
output }
pool-name
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CAC 帯域幅管理機能をイネーブルにし、帯域幅プールを、APN のダウンリンク方向の入力(Gn)インターフェイス( input キーワード)、またはアップリンク方向の出力(Gi)インターフェイス( output キーワード)に適用します。 |
(注) CAC 帯域幅プールは複数の APN に適用できます。
Per-PDP ポリシングの設定
Per-PDP ポリシング(セッションベースのポリシング)は、GGSN Traffic Conditioner(3G TS 23.107)の機能です。この機能を使用すると、特定の PDP コンテキストについて Gi インターフェイスで受信するトラフィックの最大レートを制限できます。
このポリシング機能により、PDP コンテキストに対して CAC ネゴシエーション データ レートが適用されます。輻輳が発生した場合に、不適合トラフィックを廃棄するか、または不適合トラフィックを優先廃棄としてマーキングするように GGSN を設定できます。
使用するポリシング パラメータは、PDP コンテキストによって異なります。詳細は次のとおりです。
• R99 QoS プロファイルを持つ GTPv1 PDP の場合、CAC ネゴシエーション QoS プロファイルの MBR パラメータと GBR パラメータが使用されます。非リアルタイム トラフィックの場合、MBR パラメータだけが使用されます。
• R98 QoS プロファイルを持つ GTPv1 PDP および GTPv0 PDP の場合、CAC ネゴシエーション QoS ポリシーのピーク スループット パラメータが使用されます。
制約事項
Per-PDP ポリシングを設定する場合は、次の点に注意してください。
• Per-PDP ポリシングは、IPv4 PDP コンテキストでだけサポートされています。
• GGSN で UMTS QoS マッピングがイネーブルである必要があります。
• Gi インターフェイスで Cisco Express Forwarding(CEF)がイネーブルである必要があります。
• Per-PDP ポリシングは、Gi インターフェイスのダウンリンク トラフィックでだけサポートされています。
• PDP コンテキストの初期パケットはポリシングされません。
• 階層ポリシングはサポートされていません。
• APN に付加されたポリシー マップでフローベースのポリシングが設定されている場合、 show policy-map apn コマンドによって、ポリシング前に受信したパケットの総数が表示されますが、ポリシング カウンタは表示されません。
• APN に適用されるサービス ポリシーは変更できません。サービス ポリシーを変更するには、APN からサービス ポリシーを削除し、変更を加えてから再適用します。
• それぞれ match flow pdp が設定されており、異なる DiffServ コード ポイント(DSCP)を持つ複数のクラス マップは、この DSCP が信頼されている場合にだけ、ポリシー マップでサポートされます(GGSN で gprs umts-qos dscp unmodified グローバル コンフィギュレーション コマンドが設定されていません)。
PDP フローを一致基準として設定したクラス マップの作成
クラス一致を作成し、PDP フローを一致基準として指定するには、グローバル コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
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ステップ 1 |
Router(config)# class-map class-map-name |
一致するパケットに使用するクラス マップを作成します。 |
ステップ 2 |
Router(config-cmap)# match flow pdp |
クラス マップで PDP フローを一致基準として指定します。 |
ステップ 3 |
Router(config-cmap)# exit |
クラス マップ コンフィギュレーション モードを終了します。 |
(注) PDP フォロー分類のクラスを定義するときは、match-any オプションを指定しないでください。デフォルトは match-all です。
(注) クラス マップで追加の一致基準を設定することもできます。DSCP および優先順位ベースの分類がサポートされています。