MPLS Quality of Service(QoS)について
MPLS QoS を使用すると、差別化したサービス タイプを MPLS ネットワーク上で提供できます。差別化したサービス タイプを使用して、各パケットで指定されたサービスを提供することで、さまざまな要件を満たすことができます。QoS では、ネットワーク トラフィックの分類、トラフィック フローのポリシングとプライオリティ設定、および輻輳回避が可能です。
このセクションは、次のトピックで構成されています。
MPLS QoS 用語
ここでは、MPLS QoS 用語を定義します。
-
分類とはマーキングするトラフィックを選択するプロセスです。分類では、選択基準とのマッチングにより、トラフィックを複数の優先レベルまたはサービス クラスに分割します。トラフィック分類は、クラス ベースの QoS プロビジョニングのプライマリ コンポーネントです。スイッチは、受信した MPLS パケット(ポリシーのインストール後)の最上位ラベルの EXP ビットに基づき、分類を行います。
-
Diffserv コード ポイント(DSCP)
-
IP ヘッダーの ToS バイトの最初の 6 ビット。
-
IP パケットだけに存在します。
-
IPv4 または IPv6 パケットに存在できます。
-
IPv6 ヘッダーの 8 ビット トラフィック クラス オクテットの最初の 6 ビットです。
-
-
E-LSP:ラベル スイッチド パス(LSP)の 1 つであり、ノードはここで MPLS ヘッダーの実験(EXP)ビットから排他的に MPLS パケットの QoS 処理を判断します。QoS 処理が EXP(クラスおよびドロップ優先順位の両方)から判断されるため、いくつかのクラスのトラフィックを 1 つの LSP に多重化することができます(同じラベルを使用)。EXP フィールドは 3 ビット フィールドであるため 1 つの LSP は最大 8 つのトラフィックのクラスをサポートすることができます。
-
EXP ビット:ノードがパケットに与える QoS 処理(Per Hop Behavior)を定義します。これは、IP ネットワークの DiffServ コード ポイント(DSCP)に相当します。DSCP は、クラスとドロップ優先順位を定義します。EXP ビットは、一般に IP DSCP でエンコードされた情報をすべて伝送するのに用いられます。ただし、ドロップ優先順位をエンコードするために EXP ビットが排他的に用いられる場合もあります。
-
マーキング:パケットのレイヤ 3 DSCP 値を設定するプロセスです。マーキングはまた、MPLS EXP フィールドで異なった値を選択してパケットにマーキングし、輻輳時にパケットが必要なプライオリティを持つようにするプロセスでもあります。
-
MPLS 実験フィールド:MPLS 実験(EXP)フィールド値を設定すると、自己のネットワークで伝送される IP パケット内で IP precedence フィールドの値が変更されることを望まないという、オペレータの要件を満たすことができます。MPLS EXP フィールドで異なった値を選択することにより、輻輳時にパケットが必要なプライオリティを持つようパケットをマーキングすることができます。デフォルトでは、インポジション中に、DSCP の最上位 3 ビットが MPLS EXP フィールドにコピーされます。MPLS QoS ポリシーで MPLS EXP ビットをマークできます。
MPLS QoS の機能
QoS により、ネットワークは選択されたネットワーク トラフィックに提供するサービスを向上させることができます。ここでは、次の MPLS QoS 機能について説明します。これらは MPLS ネットワークでサポートされます。
MPLS 実験フィールド
MPLS EXP(実験)フィールド値を設定すると、サービス プロバイダーが自己のネットワークで伝送された IP パケット内で変更された IP precedence フィールドの値を望まない場合に、サービス プロバイダーの要件を満たすことができます。
MPLS EXP フィールドで異なった値を選択することにより、輻輳時にパケットが必要なプライオリティを持つようパケットをマーキングすることができます。
デフォルトでは、インポジション中に、IP precedence 値が MPLS EXP フィールドにコピーされます。MPLS QoS ポリシーで MPLS EXP ビットをマークできます。
分類
分類とはマーキングするトラフィックを選択するプロセスです。分類は、トラフィックを複数の優先順位レベル、つまり、サービス クラスに分割することによりこのプロセスを実施します。トラフィック分類は、クラス ベースの QoS プロビジョニングのプライマリ コンポーネントです。
ポリシングおよびマーキング
ポリシングを行うと、設定レートを超えたトラフィックは廃棄されるか、またはより高いドロップ優先順位にマークダウンされます。マーキングは、パケット フローを識別して、これらを区別する手法です。パケット マーキングを利用すれば、ネットワークを複数の優先プライオリティ レベルまたはサービス クラスに分割することができます。
実装可能な MPLS QoS ポリシングおよびマーキング機能は、受信したトラフィック タイプ、およびトラフィックに適用される転送処理によって決まります。
DSCP のデフォルト動作
入力および出力に設定された DiffServ トンネリング モードによって、DSCP フィールド処理のデフォルト動作が決まります。DiffServ 仕様の MPLS ネットワーク サポートでは、次のトンネリング モードが定義されています。
-
均一モード
入力 トンネル エンドポイントによって、着信 IP パケットの DSCP ビットが、カプセル化中にインポーズされたラベルの MPLS EXP ビットにコピーされます。出力トンネル エンドポイントでのカプセル化解除中は、元の DSCP 値は保持されません。代わりに、外部ヘッダー MPLS EXP が内部 IP ヘッダーの DSCP にコピーされます。
-
パイプ モード
出力トンネル エンドポイントでのカプセル化解除時に、外部ヘッダーの MPLS EXP は廃棄されますが、内部 IP ヘッダーの DSCP は保持されます。
デフォルトでは、すべての Cisco Nexus プラットフォーム スイッチは、カプセル化に均一モードを使用します。
デフォルトでは、次のスイッチはカプセル化解除にパイプ モードを使用します。
-
Cisco Nexus 92348GC-X プラットフォーム スイッチ
-
Cisco Nexus 9300-FX/FX2/FX3/GX/GX2 プラットフォーム スイッチ
-
Cisco Nexus 9500-EX/FX/GX ライン カード
-
Cisco Nexus 9800 プラットフォーム スイッチ
(注) |
Cisco Nexus 9500-R ライン カードは、カプセル化解除に均一モードを使用します。 |
セグメント ルーティング(SR)Traceroute のサポートを提供するためには、残りのプラットフォームとのモード動作の違いが必要です。SR traceroute は、MPLS エコー要求を伝送するパケットの存続可能時間(TTL)値の有効期限に依存しています。
パイプ モードの動作では、TTL 値はパケットが最初にカプセル化されたときに内部 IP ヘッダーの元の値を保持し、外部ヘッダーを削除します。これは、SR traceroute の誤動作に影響します。ただし均一モードでは、外部ヘッダーの TTL 値は、カプセル化解除中に内部 IP ヘッダーにコピーされ、MPLS トンネルを通過することで減少した値が保持されます。
必要に応じて、内部 IP ヘッダーの DSCP 値を保持するために、トンネルのカプセル化解除モードを Uniform to Pipe および Pipe to Uniform モードに構成できます。
switch(config)#mpls qos pipe-mode
このコマンドの no 形式が存在し、スイッチをデフォルトの均一モードに設定します。
(注) |
このコマンドは、Cisco Nexus 9500-R ライン カードにのみ適用されます。 |
このコマンドは、MPLS インターフェイス/ラベルを作成する前に構成する必要があります。Pipe-mode コマンドを使用して構成する場合、SR traceroute は使用できません。