Cisco IOS XRv 9000 ルータ Smart Licensing

Cisco IOS XR リリース 5.4 以降、Cisco IOS XRv 9000 ルータでは、Cisco Smart Licensing を使用したアクティベーションがサポートされています。Cisco Smart Licensing があると、Cisco IOS XRv 9000 インスタンスにノード ロック ライセンスをインストールしなければならないという要件はなくなります。

Cisco Smart Licensing

Cisco Smart Licensing は、時間のかかる手動のライセンス タスクを自動化できるクラウドベースのソフトウェア ライセンス管理ソリューションです。このソリューションを使用すると、ライセンスのステータスとソフトウェアの使用傾向を簡単に追跡できます。

Cisco Smart Licensing によって、次の 3 つのコア機能が簡素化されます。
  • 購入:ネットワークにインストールされているソフトウェアを製品アクティベーション キー(PAK)を指定せずに自動的に登録できます。

  • 管理:ライセンス エンタイトルメントの有効化を自動的に追跡できます。また、すべてのノードにライセンス ファイルをインストールする必要はありません。組織構造に合わせたライセンス プール(ライセンスの論理的なグループ)を作成できます。Smart Licensing には、すべての Cisco ソフトウェア ライセンスを 1 つの一元化された Web サイトで管理できる集中型ポータルである Cisco Smart Software Manager が用意されています。

  • レポート:Cisco Smart Licensing では、ポータルを使用することで、購入したライセンスとネットワークに実際に展開された製品を統合して表示できます。このデータを使用すると、購入の意思決定を実際の使用状況に基づいてより適切に行うことができます。

Cisco IOS XRv 9000 ルータは、Cisco Smart Licensing を使用した有効化のみをサポートします。Cisco Smart Licensing があると、Cisco IOS XRv 9000 ルータのインスタンスにノード ロック ライセンスをインストールしなければならないという要件はなくなります。代わりに、Cisco IOS XRv 9000 ルータが Cisco Licensing Cloud と(直接、プロキシ経由で、または Smart Licensing Satellite 経由で)通信して、使用される機能とシステムの使用規模に関するレポートを提供します。

Cisco Smart Licensing は、Cisco Smart Call Home 機能を使用して Cisco Smart Software Manager と通信します。Smart Call Home は、Smart Licensing のデフォルト設定に合わせて自動設定されます。Cisco Smart Call Home およびデフォルト以外の設定の詳細については、『Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router System Management Configuration Guide』の「Configuring Call Home on the Cisco ASR 9000 Series Router」の章を参照してください。

Cisco Smart Licensing は、Cisco Smart Software Manager を使用してライセンスを管理します。Cisco Smart Software Manager にアクセスするには、ここをクリックしてください。

手動でスマート ライセンスを更新する方法および Cisco Smart Licensing からデバイスの登録を解除する方法については、スマート ライセンスの管理を参照してください。

Cisco Smart Software Manager の詳細については、Smart Software Manager ツールからアクセスできる『Cisco Smart Software Manager User Guide』を参照してください。

Cisco IOS XRv 9000 ルータのライセンシング モデル

Cisco IOS XRv 9000 ルータのライセンスには、デモおよび実稼働モードが含まれています。

表 1. Cisco IOS XRv ルータのライセンス モード

モード

説明

デモ

  • これは、ルータが起動するときのデフォルトのモードです。

  • クラウドへの接続は必要ありません。

  • 機能レベルは強制されません。

  • すべてのインターフェイスのスループットに対する 200 Kbps のレート制限。

実稼働

  • このモードには登録が必要です。

  • 強制措置がとられることはありません。

専用のハードウェアを持つその他のシスコ製品(ASR9K、NCS 4K、NCS 6K)とは異なり、仮想という性質ゆえに、起動した Cisco IOS XRv 9000 ルータは評価モードにはなりません(これを可能にすると、数カ月ごとにソフトウェアを再インストールするだけで、ライセンスを必要とせずに無制限に機能を使用することができるようになるため)。

このためデモ モードでは、Cisco IOS XRv 9000 ルータは、システムを導入シナリオでは使用できないようにしながらも、デモ目的としては十分に機能する程度の、スループット スケール制限を課します。


(注)  


ルータが未登録状態の場合、ライセンスは EVAL(評価)モードになります。評価期間は 90 日間です。


図 1. ライセンス モード


この図は、デモおよび実稼働モードをサポートする、基本的な状態遷移を示しています。
  • システムがシスコ バックエンドに現在登録されていることを Smart Licensing エージェントの状態が示しているかどうかによって、起動したシステムはデモまたは実稼働モードのいずれかになります。

  • デモ モードの場合、システムではスループットに 200 kbps のレート制限が課されます。

  • 実稼働モードでは、コンプライアンスに従っているかどうかに関係なく、ライセンスの観点から制限が課されたり強制措置がとられることはありません。(これは Smart Licensing の原理に従っています。各ルータは使用状況をバックエンドにレポートするだけで、コンプライアンスに従っていないアカウントがある場合は、バックエンドによって顧客にライセンスの購入または更新を促すための処理が行われます)。

Cisco IOS XRv 9000 ルータのライセンス PID の詳細については、最新の『Cisco IOS XRv 9000 Router Release Notes』の「License Ordering Information」セクションを参照してください。

評価期間の管理

デモ モードで課される制限のため、Cisco IOS XRv 9000 を制限のない状態で評価したい顧客をサポートする別の手段が必要になります。ここでは、この別の手段の手順について説明します。

  1. 顧客がライセンスを細かく分割するための手段として、Smart Licensing のバックエンドではバーチャルアカウントをサポートします。通常、これは主に大規模な顧客に適用されますが、どこでも利用できます。

  2. 顧客は、評価目的のみの用途で、ライセンス ポータル内に「バーチャル アカウント」を作成します。

  3. シスコの担当者が、バーチャルアカウントに、顧客が関心がある各機能の期間限定のエンタイトルメントを付与します。

  4. 顧客は、実稼働の場合と同じ手順でオン ルータの登録に進みます(この場合は、使用されるライセンスがバーチャル アカウントからのものであることを除いて)。

オン ルータの操作は同一であるため、この手続きにより、顧客が評価フェーズで登録手続きの練習(または自動化、あるいは両方)を行うことができるという、付加的なメリットがあります。

Cisco Smart Licence の設定

Cisco IOS XRv 9000 ルータは、Smart Licensing の実行に十分なデフォルトの Smart Call Home が設定されています。Smart Call Home のデフォルト設定は、組み込み CiscoTAC-1 プロファイルを使用して、Smart Licensing によって内部的にトリガーされます。このデフォルト設定には、トラフィック ポートまたは管理ポートを介して cisco.com にルータが接続されている必要があります。

Cisco クラウドへの IP 接続を確保する以外は、ユーザの介入は必要ありません。

Smart Call Home Gateway ゲートウェイを介した別の Smart Licensing 設定が必要な場合は、『Cisco ASR 9000 Series Aggregation Services Router System Management Configuration Guide』の「Configuring Call Home on the Cisco ASR 9000 Series Router」の章を参照してください。

Cisco IOS XRv 9000 ルータをシスコ ライセンシング クラウドに登録する

Cisco Smart Licensing は、Cisco IOS XRv 9000 ルータ上で常に有効です。ルータを実稼働モードで使用するには、そのルータをシスコに登録する必要があります。ID トークンを使用して、ルータのライセンス エージェントは製品をシスコに登録し、アイデンティティ証明書を受け取ります。この証明書は、それ以降のシスコとの通信すべてに使用されます。ルータのライセンス エージェントは、シスコへの登録情報を 30 日ごとに自動的に更新します。

この登録手順は、各製品インスタンスにつき一度実行されます。

手順


ステップ 1

MgmtEth か他のイーサネット インターフェイスを使用して、cisco.com への接続を設定します。

ステップ 2

Cisco Smart Software Manager Web サイトに移動し、適切なアカウントを選択して ID トークンを要求し、これをクリップボードにコピーします。

ステップ 3

ルータ上で、license smart register idtoken id-token コマンドを設定モードで実行します。

上記の id-token は、ステップ 2 でコピーしたものです。

例:

Router(config)# license smart register idtoken YjBkOWM5YTItMDFiOS00ZjBmLTllY2YtODEzMzg1YTMyZDVhLTEz ODE0MjE0%0ANzc5NDF8U1BDUTAySWFRTmJqa1NnbmlzRUIyaGlYU
053L0pHZTNvUW9VTFpE%0AekxCOD0%3D%0A

システムが Cisco Smart Licensing サーバと通信し、Smart Licensing の認証を取得します。ライセンスの認証ステータスについては、次を参照してください。 Cisco Smart License に関する問題のトラブルシューティング


スマート ライセンスの管理

ライセンス エージェントは、シスコへの登録情報を 30 日ごとに自動的に更新します。ただし、スマート ライセンスの登録は手動で更新できます。また、Cisco Smart Licensing からルータの登録を解除することができます。これらのオプションの詳細については、該当セクションを参照してください。

シスコ スマート ライセンシング登録の手動確認

手動で登録情報を更新する必要がある場合は、EXEC モードで license smart renew コマンドを実行します。


(注)  


シスコに登録された VM を削除する前に、登録を解除して、エンタイトルメントとしてカウントされないようにする必要があります。


Cisco Smart Licensing からのデバイスの登録解除

ルータ インスタンスの Cisco Smart Licensing の登録を削除するには、EXEC モードで license smart deregister コマンドを実行します。シスコ スマート ライセンシングのすべての証明書と権限が削除されます。

仮想固有デバイス識別子(vUDI)

すべてのシスコ プラットフォームは、製品 ID、バージョン、およびシリアル番号で構成される固有デバイス識別子(UDI)を持っています。物理プラットフォームの場合は、デバイスの製造時にこれらがシャーシに焼き付けられます。仮想プラットフォームの場合は、システムによってシリアル番号が生成され、それを製品 ID およびバージョンと組み合わせて仮想 UDI が作成されます。

ルータの UDI 情報を表示するには、EXEC モードで show license udi コマンドを実行します。
RP/0/RP0/CPU0:ios#show license udi
Tue Aug 25 09:47:09.780 UTC

Product Information
===================
UDI: PID:R-IOSXRV9000-IMG,SN:DF855094AA4,SUVI:R-IOSXRV9000-IMGDF855094AA4,UUID:1BB98DDC-3EE1-4A60-95A6-530870AC19D9
Cisco IOS XRv 9000 ルータは仮想化されており、仮想ディスク イメージで表されているため、コピーまたは複製することができます。したがって、同じ vUDI を持つインスタンスが複数存在する可能性があります。vUDI はライセンスの一部としてインスタンスを識別するために使用されるため、競合が発生しないように注意する必要があります。ただし、仮想化環境ではハイパーバイザから提供される情報がないとインスタンス自体が機能しないため、ブートアップ ロジックに加えて virtual-platform udi reset コマンドがフェールセーフ機能として用意されています。

(注)  


virtual-platform udi reset コマンドを実行すると、VM がリロードされます。


ブートアップ時の UDI の動作

Cisco IOS XRv 9000 VM インスタンスが初めて起動したときに、Cisco IOS XRv 9000 ルータによって一意のシリアル番号(UDI)が作成されます。シリアル番号が作成されなかった場合は、乱数ジェネレータによって VM インスタンスのシリアル番号が生成され、製品 ID およびバージョンと組み合わせて vUDI が作成されます。これは安全なストレージに格納され、ユーザが手動で変更することはできません。

VM をコピーまたは複製すると、その VM に関連付けられている vUDI が重複します。vUDI の重複を抑制するため、ハイパーバイザは起動のたびに VM インスタンスに対して仮想ディスクに格納されている汎用一意識別子(UUID)を提供します。仮想ディスク イメージからルータが初めて起動するときに、ルータはハイパーバイザによって割り当てられた UUID をその仮想ディスクの内部に格納します。その後の起動では、ハイパーバイザによって割り当てられた新しい UUID が最後の起動時に使用されたものと比較されます。同じハイパーバイザが同じ仮想ディスク イメージを起動する場合、UUID は同じままである必要があります。ただし、ディスク イメージが別のハイパーバイザにコピーされて実行された場合、UUID は異なるものになります。そのため、システムによって新しいシリアル番号が生成され、複製された VM の新しい vUDI が作成されます。

次の場合、ユーザは同じ UDI を検出します。
  • 乱数ジェネレータが同じシリアル番号を 2 つ作成した

  • ハイパーバイザから UUID が提供されなかった

このような場合、ユーザは管理モードで virtual-platform udi reset コマンドを実行して新しい vUDI を生成できます。

virtual-platform udi reset コマンドを実行すると、確認のプロンプトが表示され、要求を確認する一連のシステム メッセージが表示されます。これによって、Smart Licensing が Cisco Smart Software Manager で登録を更新し、新しい vUDI が Cisco IOS XRv 9000 VM インスタンスに割り当てられます。

Cisco Smart License に関する問題のトラブルシューティング

Cisco Smart License に関する問題をトラブルシューティングする場合、以下のコマンドをすべての Smart Licensing プラットフォームで使用できます。これらのコマンドを使用して、使用されているエンタイトルメントやデバイスのコンプライアンスなどを確認できます。

  • show license all

  • show license status

  • show license summary

  • show license tech support

  • show license udi

  • show license usage

以下は、シスコ サポートが使用する Cisco IOS XRv 9000 ルータ プラットフォーム専用のコマンドです。

  • show license platform detail

  • show license platform summary

  • show license platform trace

ライセンス認証ステータス

ライセンス認証ステータスとして、主に次の 4 つの状態が用意されています。

ステータス

説明

登録済み

デバイス登録が完了し、ID 証明書を受信しています。ID 証明書は、シスコのライセンス機関との今後の通信に使用されます。

承認済み

有効なスマート アカウントを使用して登録が完了しました。ライセンスの利用が開始されました。これは、コンプライアンスに従っている状態を示しています。

コンプライアンス違反

利用数がスマート アカウントの使用可能なライセンスを超えています。

承認が期限切れ

デバイスは、Cisco Smart Software Manager(CSSM)と一定期間にわたって通信できていません。通常、90 日後にこの状態になります。デバイスは、登録期間が終了するまで、承認を更新するために 1 時間ごとに CSSM への接続を試行します。