Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上のソフトウェア実装
具体的な内容は、次のとおりです。
• 「ASR 1000 シリーズ ルータのソフトウェアの概要」
• 「統合パッケージ」
• 「統合パッケージに含まれる個別のソフトウェア サブパッケージ」
• 「統合パッケージに含まれないオプションのソフトウェア サブパッケージ」
• 「プロビジョニング ファイル」
• 「ROMmon イメージ」
• 「Field-Programmable ハードウェア デバイスをアップグレードするファイル」
ASR 1000 シリーズ ルータのソフトウェアの概要
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは、Cisco IOS XE ソフトウェアを使用して稼働します。Cisco IOS XE は、統合パッケージとオプションのサブパッケージによりリリースされています。
各統合パッケージは、ソフトウェア サブパッケージがまとまって構成されています。各ソフトウェア サブパッケージは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの 1 つまたは複数の要素を制御するための個別のソフトウェア ファイルとなっています。各個別ソフトウェア サブパッケージは別々にアップグレードすることができます。あるいは、特定の統合パッケージのすべてのサブパッケージを、統合パッケージ全体のアップグレードの一部としてアップグレードすることも可能です。IOS(RPIOS サブパッケージ)は、統合パッケージ全体を構成する 7 つの個別のサブパッケージの 1 つとなっていることに留意してください。個別のソフトウェア サブパッケージの詳細については、「統合パッケージ」を参照してください。
単一の統合パッケージは、ソフトウェア サブパッケージの集まりにより作成されます。統合パッケージを使用すると、ルータ上の個々のすべてのサブパッケージを 1 度のソフトウェア イメージのダウンロードによりアップグレードすることができます。統合パッケージは Cisco.com からダウンロードできます。統合パッケージを構成する個別のサブパッケージを使用してルータを稼働する場合は、まず Cisco.com からイメージをダウンロードし、そこから個別のサブパッケージを抽出する必要があります。これは、 request platform コマンドライン インターフェイス コマンドを入力して実行できます。
Cisco IOS XE Release 2.4 から、ASR 1000 シリーズの Shared Port Adapter(SPA)用の Cisco WebEx ノードをサポートするために、「 sipspawma 」というタイプの補助的なオプション サブパッケージのサポートが導入されました。オプションのサブパッケージは、個別のサブパッケージと同様にインストールされています。ただし、オプションのサブパッケージは個別のサブパッケージの以前のサポートなどの統合パッケージの一部としてバンドルされておらず、オプションのサブパッケージは個別にダウンロードする必要があります。
統合パッケージ、補助的なオプション サブパッケージ、その他の管理ソフトウェアからの個別のサブパッケージの抽出に関する詳細については、このマニュアルの「統合パッケージに含まれる個別のソフトウェア サブパッケージ」および「統合パッケージ」を参照してください。
統合パッケージ
統合パッケージは、いくつかの個別のソフトウェア サブパッケージ ファイルで構成される単一のイメージです。単一の統合パッケージ ファイルはブート可能なファイルで、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは統合パッケージを使用して実行できます。
(注) 統合パッケージは、必要な個別サブパッケージ ファイルだけで構成されます。これらのパッケージには、補助的なオプション サブパッケージ(ASR 1000 シリーズの Cisco WebEx ノード用の「sipspawma」パッケージなど)は含まれません。
各統合パッケージには、プロビジョニング ファイルも含まれています。プロビジョニング ファイルは、統合パッケージから抽出された個別のサブパッケージ、またはオプションのサブパッケージを使用してルータを実行する場合にブート処理に使用されます。統合パッケージ全体を実行する場合の利点および欠点についての詳細情報は、「Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの実行:概要」を参照してください。プロビジョニング ファイルの詳細については、「プロビジョニング ファイル」を参照してください。
Cisco IOS XE の特定のバージョンで使用できる統合パッケージの詳細については、その特定の Cisco IOS XE バージョンのリリース ノートを参照してください。Cisco IOS XE の各バージョンのリリース ノートは、「 Cisco IOS XE Software Release Notes 」にあります。
統合パッケージについての重要事項
統合パッケージに関する重要な情報は次のとおりです。
• 各統合パッケージのバージョンが異なる場合でも、RPBase、RPControl、ESPBase、SIPBase、SIPSPA、および SIPBase サブパッケージは統合パッケージ間では同一となります。
• RPIOS サブパッケージは、各統合パッケージのバージョンごとに内容がすべて異なります。
• 統合パッケージ ファイルは、ブート可能なファイルです。ルータが統合パッケージ全体を使用して稼働するように設定されている場合は、統合パッケージ ファイルを使用してルータをブートします。ルータが個別のサブパッケージを使用して稼働するように設定されている場合は、プロビジョニング ファイルを使用してルータをブートします。統合パッケージ全体を実行する場合の利点および欠点についての詳細情報は、「Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの実行:概要」を参照してください。プロビジョニング ファイルの詳細については、「プロビジョニング ファイル」を参照してください。
• オプションのサブパッケージをインストールする場合は、個別のサブパッケージと同様に、プロビジョニング ファイルを使用してルータをブートする必要があります。
統合パッケージに含まれる個別のソフトウェア サブパッケージ
に、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータのサブパッケージと、各個別サブパッケージの目的を示します。どの統合パッケージにも、これらの個別サブパッケージがすべて含まれます。特定の Cisco IOS XE Release に含まれる各個別サブパッケージの詳細については、そのリリースの『 Cisco IOS XE Software Release Notes 』を参照してください。
表 1 個別のサブパッケージ
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RPBase |
ルート プロセッサ(RP)のオペレーティング システム ソフトウェアを提供します。 |
RPControl |
IOS プロセスとプラットフォームの他の部分との間のインターフェイスとなるコントロール プレーンのプロセスを制御します。 |
RPAccess |
Secure Socket Layer(SSL)、Secure Shell(SSH; セキュア シェル)、およびその他のセキュリティ機能など、制限付きコンポーネントの処理をエクスポートします。 |
RPIOS |
Cisco IOS 機能が保存および実行される Cisco IOS カーネルを提供します。 各統合パッケージには、異なる RPIOS が含まれています。 |
ESPBase |
ESP オペレーティング システム、制御プロセス、および ESP ソフトウェアを提供します。 |
SIPBase |
SIP オペレーティング システムおよび制御プロセスを制御します。 |
SIPSPA |
SPA ドライバおよび Field Programmable Device(FPD)イメージを提供します。 |
個別のサブパッケージに関する重要事項
個別のサブパッケージに関する重要な情報は次のとおりです。
• 個別のサブパッケージを Cisco.com から別々にダウンロードできません。ユーザがこれらの個別のサブパッケージを入手するには、最初に統合パッケージをダウンロードしてから、コマンドライン インターフェイスを使用して、統合パッケージからサブパッケージを抽出する必要があります。
• ルータが統合パッケージではなく、個別のサブパッケージを使用して稼働している場合は、プロビジョニング ファイルを使用してルータをブートする必要があります。プロビジョニング ファイルはすべての統合パッケージの中に含まれており、個別のサブパッケージが抽出されるたびに、それぞれのサブパッケージに含まれるイメージから抽出されます。プロビジョニング ファイルの詳細については、「プロビジョニング ファイル」を参照してください。
統合パッケージに含まれないオプションのソフトウェア サブパッケージ
Cisco IOS XE Release 2.4 から、ASR 1000 シリーズ ルータで新しいタイプのサブパッケージがサポートされるようになりました。これは単独の外部パッケージとして使用できるオプションのソフトウェア サブパッケージで、他の必須サブパッケージに加えてダウンロードおよびインストールされます。
sipspawmak9 は、ASR 1000 シリーズ ルータの Cisco WebEx ノード用のシステム ソフトウェアを提供するオプションのサブパッケージです。
オプションのサブパッケージに関する重要事項
オプションのサブパッケージに関する重要な情報は次のとおりです。
• オプションのサブパッケージは、統合パッケージ ファイルとは別にダウンロードされます。オプションのサブパッケージは、各リリースの統合パッケージには含まれません。
• インストールされたオプション パッケージは、個別サブパッケージと同じように、プロビジョニング ファイルを使用して稼働します。
• オプションのサブパッケージが RP で利用されなくなった場合は、アンインストールしてプロビジョニングを削除できます。
• オプションのサブパッケージは、各 RP 用のプロビジョニング ファイルのディレクトリに存在する限り、標準の ISSU アップグレード プロセスによって容易にサポートされます。
プロビジョニング ファイル
(注) オプションのサブパッケージをインストールする場合は、プロビジョニング ファイルを使用してブート プロセスを管理する必要があります。
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータが個別のサブパッケージまたはオプションのサブパッケージ(ASR 1000 シリーズの Cisco WebEx ノード用のパッケージなど)を使用して稼働するように設定されている場合は、プロビジョニング ファイルがブート プロセスを管理します。個別のサブパッケージを使用して Cisco ASR 1000 シリーズ ルータを実行する場合は、プロビジョニング ファイルをブートするようにルータを設定する必要があります。プロビジョニング ファイルによって、個別のサブパッケージのブートアップが管理され、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータは通常どおりに動作します。
個別のサブパッケージが統合パッケージから抽出されると、プロビジョニング ファイルも自動的に抽出されます。
統合パッケージ全体を使用してルータを実行する場合、プロビジョニング ファイルは必要ありません。この場合は、統合パッケージ ファイルを使用してルータをブートします。
個別のサブパッケージを実行する場合と統合パッケージ全体を実行する場合の利点および欠点についての詳細は、「Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの実行:概要」を参照してください。
プロビジョニング ファイルについての重要事項
プロビジョニング ファイルに関する重要な情報は次のとおりです。
• 各統合パッケージには、2 つのプロビジョニング ファイルが格納されています。1 つのファイルは「packages.conf」という決められた名前が付いたプロビジョニング ファイルで、もう 1 つのファイルは統合パッケージの命名規則に基づく名前のプロビジョニング ファイルです。2 つのプロビジョニング ファイルの機能は、すべての統合パッケージで完全に同一です。
• ほとんどの場合、ルータのブートには、「packages.conf」プロビジョニング ファイルを使用する必要があります。通常は、「packages.conf」ファイルを使用してブートするようにルータを設定する方が簡単です。このファイルでブートするように設定すると、Cisco IOS XE をアップグレードする際に、ブート ステートメントを変更する必要がなくなるためです( boot system file-system : packages.conf コンフィギュレーション コマンドをアップグレードの前後で変更する必要がなくなります)。
• プロビジョニング ファイルと個別のサブパッケージ ファイルは、同じディレクトリに保管する必要があります。プロビジョニング ファイルが、個別のサブパッケージとは異なるディレクトリ内にあると、適切に動作しません。
• プロビジョニング ファイルの名前は変更できますが、個別のサブパッケージのファイルの名前は変更できません。
• プロビジョニング ファイルと個別のサブパッケージ ファイルを同じディレクトリに格納して、ルータをブートしたあとは、これらのファイルの名前変更、削除、または変更を行わないことを強く推奨します。ファイルの名前変更、削除、またはその他の変更を行うと、ルータで予期せぬ問題および動作が発生する可能性があります。
ROMmon イメージ
個別の ROMmon イメージは、統合パッケージまたはその他のソフトウェア リリースとは別に、定期的にリリースされています。
各 ROMmon イメージの詳細については、ROMmon に付属のマニュアルを参照してください。ROMmon の詳細については、 『Cisco ASR 1000 Series Routers Maintain and Operate Guide』 を参照してください。
Field-Programmable ハードウェア デバイスをアップグレードするファイル
Cisco IOS XE Release 3.1.0S 以降、Field Programmable ハードウェア デバイスのアップグレードに使用される Field Programmable パッケージが必要に応じてリリースされています。 パッケージ ファイルは、フィールドのアップグレードが必要な場合に、カスタマーの Field Programmable デバイスに提供されます。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータが、Cisco ASR1000-RP、Cisco ASR1000-SIP、または Cisco ASR1000-ESP に hardware programmable ファームウェアの互換性のないバージョンを含む場合、ファームウェアをアップグレードする必要があります。
通常アップグレードは、システム メッセージが Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの Field Programmable デバイスの 1 つにアップグレードが必要であることを示す、または Cisco のテクニカル サポートの担当者がアップグレードを提案する場合にのみ必要です。
Cisco IOS XE Release 3.1.0S では、Complex Programmable Logic Device(CPLD)コードの新しいバージョンが含まれているパッケージ ファイルは、Cisco ASR1000-RP2 のファームウェアの古いバージョンまたは Cisco ASR 1013 ルータの Cisco ASR1000-SIP10 をアップグレードする必要があるユーザが使用できます。
Field-Programmable ハードウェア デバイスのアップグレードの詳細については、『 Upgrading Field Programmable Hardware Devices for Cisco ASR 1000 Series Routers 』を参照してください。
プロセスの概要
Cisco IOS XE には、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上で完全に別々のプロセスとして稼働する数多くのコンポーネントがあります。このモジュラ アーキテクチャにより、それぞれの動作を担当するプロセスが分散されるため、すべての動作が Cisco IOS ソフトウェアに依存する場合よりも、ネットワークの復元力が向上します。
具体的な内容は、次のとおりです。
• 「プロセスとしての IOS」
• 「デュアル IOS プロセス」
表 2 に、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの重要な個別のプロセスを示します。これらのプロセスはバックグラウンドで稼働します。Cisco IOS-XE を使用する Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの CLI の表示、特徴、および使用方法は、ほとんどのプラットフォームの Cisco IOS CLI と同じです。この情報は、ルータ ステートのチェックおよびトラブルシューティングには役立つ可能性がありますが、ルータ動作の大半を理解するためにこの情報を理解しておく必要はありません。
表 2 個別のプロセス
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Chassis Manager |
ハイ アベイラビリティ(HA)ステート、環境モニタリング、および FRU ステート制御の管理など、すべてのシャーシ管理機能を担当します。 |
RP(各 RP に 1 つのインスタンス) SIP(SIP ごとに 1 つのインスタンス) ESP(ESP ごとに 1 つのインスタンス) |
RPControl SIPBase ESPBase |
Host Manager |
IOS プロセスと、基盤となるプラットフォーム カーネルおよびオペレーティング システムの多くの情報収集機能との間のインターフェイスを提供します。 |
RP(各 RP に 1 つのインスタンス) SIP(SIP ごとに 1 つのインスタンス) ESP(ESP ごとに 1 つのインスタンス) |
RPControl SIPBase ESPBase |
Logger |
各 FRU で実行されるプロセスに対して、IOS 側のロギング サービスを提供します。 |
RP(各 RP に 1 つのインスタンス) SIP(SIP ごとに 1 つのインスタンス) ESP(ESP ごとに 1 つのインスタンス) |
RPControl SIPBase ESPBase |
Interface Manager |
IOS プロセスと SIP 上の SPA 単位のインターフェイス プロセスとの間のインターフェイスを提供します。 |
RP(各 RP に 1 つのインスタンス) SIP(SIP ごとに 1 つのインスタンス) |
RPControl SIPBase |
IOS |
IOS プロセスには、ルータのすべてのフォワーディングおよびルーティング機能が実装されます。 |
RP(各 RP のソフトウェア冗長インスタンスごとに 1 つ) RP ごとに最大 2 つのインスタンス |
RPIOS |
Forwarding Manager |
各 ESP への設定のダウンロード、および統計情報などフォワーディング プレーン情報の IOS プロセスとの通信を管理します。 |
RP(各 RP のソフトウェア冗長インスタンスごとに 1 つ) RP ごとに最大 2 つのインスタンス ESP(ESP ごとに 1 つ) |
RPControl ESPBase |
Pluggable Services |
認証などのプラットフォームのポリシー アプリケーションと IOS プロセス間の統合ポイントです。 |
RP(各 RP のソフトウェア冗長インスタンスごとに 1 つ) RP ごとに最大 2 つのインスタンス |
RPControl |
Shell Manager |
すべてのユーザ インターフェイス機能、および統合パッケージの非 IOS イメージの機能(IOS プロセスに障害が発生した場合にも診断モードで使用できる機能)に関連する処理を提供します。 |
RP(各 RP に 1 つのインスタンス) |
RPControl |
SPA ドライバ プロセス |
特定の SPA の独立したプロセス ドライバを提供します。 |
SPA(各 SIP の SPA ごとに 1 つのインスタンス) |
SIPSPA |
CPP ドライバ プロセス |
ESP 上の CPP ハードウェア フォワーディング エンジンを管理します。 |
ESP(ESP ごとに 1 つのインスタンス) |
ESPBase |
CPP HA プロセス |
CPP ハードウェア フォワーディング エンジンの HA ステートを管理します。 |
ESP(ESP ごとに 1 つのインスタンス) |
ESPBase |
CPP SP プロセス |
Forwarding Manager プロセスの ESP インスタンスで CPP 側機能への高遅延タスクを実行します。 |
ESP(ESP ごとに 1 つのインスタンス) |
ESPBase |
プロセスとしての IOS
従来、ほとんどすべてのシスコ ルータ プラットフォームでは、ほとんどすべての内部ソフトウェア プロセスが Cisco IOS メモリを使用して実行されてきました。
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、オペレーティング システムの多数の役割を IOS プロセスから移行させる分散型ソフトウェア アーキテクチャを導入しています。このアーキテクチャでは、以前はほとんどすべての内部ソフトウェア プロセスを処理していた IOS が、多数の Linux プロセスの 1 つとして稼働するようになり、ルータを実行する役割を他の Linux プロセスと共有できるようになりました。
このアーキテクチャを使用すると、メモリをさらに有効に割り当てることができるため、ルータを効率よく稼働できます。また、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータには、IOS プロセスに障害が発生しても特定の状況下でアクセスできる診断モードの CLI があります。診断モードについては、「診断モードの概要」を参照してください。
デュアル IOS プロセス
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、デュアル IOS プロセスを導入しているため、高可用性を常に向上させることができます。
Stateful Switchover(SSO)または Route Processor Redundancy(RPR)を使用することで、Cisco ASR 1002 または 1004 ルータ上で 2 つめの IOS プロセスを有効にできます。Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでデュアル ルート プロセッサ(RP)を設定すると、2 つめの IOS プロセスがスタンバイ RP 上で稼働します。
これらのデュアル IOS プロセスの状態は、 show platform コマンドを入力して確認できます。
2 つめの IOS プロセスの使用によって、次の利点を得られます。
• 耐障害性の向上:アクティブ IOS 障害のイベントが発生しても、サービスをほとんど中断させることなく、即座に 2 番めの IOS プロセスがアクティブ IOS プロセスになります。
• ダウンタイムのないソフトウェア アップグレード:ルータ上の IOS およびその他のソフトウェアは、スタンバイ IOS プロセスの In Service Software Upgrade(ISSU)機能を使用してアップグレードできます。これにより、ソフトウェアのアップグレード中にネットワークをアクティブな状態に維持できます。ISSU を使用してダウンタイムなしのソフトウェア アップグレードを実行できる場合、およびできない場合の詳細については、「Router#」を参照してください。
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上のファイル システム
表 3 に、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータに実装されているファイル システムのリストを示します。
表 3 ファイル システム
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bootflash: |
アクティブ RP 上のブートフラッシュ メモリのファイル システム |
cns: |
Cisco Networking Service のファイル ディレクトリ |
harddisk: |
アクティブ RP 上のハード ディスクのファイル システム Cisco ASR 1002 ルータでは、harddisk: ファイル システムは使用できません。 |
nvram: |
ルータの NVRAM。NVRAM 間で startup-config をコピーできます。 |
obfl: |
Onboard Failure Logging ファイル用のファイル システム |
stby-bootflash: |
スタンバイ RP 上のブート フラッシュ メモリのファイル システム |
stby-harddisk: |
スタンバイ RP 上のハード ディスクのファイル システム Cisco ASR 1002 ルータでは、harddisk: ファイル システムは使用できません。 |
stby-usb[0-1]: |
スタンバイ RP 上の Universal Serial Bus(USB)フラッシュ ドライブのファイル システム Cisco ASR 1002 ルータでは、stby-usb: ファイル システムは使用できません。 |
system: |
実行コンフィギュレーションを含む、システム メモリのファイル システム |
tar: |
アーカイブ ファイル システム |
tmpsys: |
一時システム ファイルのファイル システム |
usb[0-1]: |
アクティブ RP 上の USB フラッシュ ドライブのファイル システム Cisco ASR 1002 ルータでは usb0: だけを使用できます。 |
表 3 に示されていないファイル システムを実行する場合は、 ? ヘルプ オプションを入力するか、またはそのファイル システムの詳細について copy コマンド リファレンスを参照してください。
自動生成されるファイル ディレクトリおよびファイル
ここでは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上で表示される可能性のある、自動生成されるファイルとディレクトリ、およびこれらのディレクトリ内のファイルの管理方法について説明します。
表 4 に、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上で自動生成されるファイルのリストと各内容を示します。
表 4 自動生成されるファイル
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crashinfo ファイル |
crashinfo ファイルは、bootflash: または harddisk: ファイル システムに作成される場合があります。 これらのファイルでは、クラッシュに関する情報が提供されており、調整またはトラブルシューティングを行う場合に役立ちます。ただし、ファイルはルータ動作に含まれていないため、ルータの機能に影響を及ぼさずに消去することができます。 |
core ディレクトリ |
.core ファイルのストレージ領域 このディレクトリは消去されると、ブートアップ時に自動的に再生成されます。このディレクトリ内の .core ファイルは、ルータ機能に影響を及ぼさずに消去することはできますが、ディレクトリ自体は消去しないでください。 |
lost+found ディレクトリ |
システム チェックが実行されると、ブートアップ時にこのディレクトリが作成されます。このディレクトリが表示されることは完全に正常な状態であり、ルータに問題が発生したわけではありません。 |
tracelogs ディレクトリ |
trace ファイルのストレージ領域 trace ファイルはトラブルシューティングに役立ちます。たとえば IOS プロセスで障害が発生した場合、ユーザまたはトラブルシューティングの担当者は診断モードを使用して trace ファイルにアクセスし、IOS 障害に関連する情報を収集できます。 ただし、trace ファイルはルータ動作に含まれないため、ルータのパフォーマンスに影響を及ぼすことなく消去することができます。 |
自動生成されるディレクトリに関する重要事項
自動生成されるディレクトリに関する重要な情報は次のとおりです。
• bootflash: ディレクトリに自動生成されたファイルは、カスタマー サポートから指示されない限り、削除、名前変更、移動、またはその他の変更は行わないでください。bootflash: に自動生成されたファイルを変更すると、システム パフォーマンスに予期せぬ結果をもたらす場合があります。
• crashinfo、core、および trace ファイルは削除できますが、harddisk: ファイル システムに自動的に含まれている core および tracelog ディレクトリは削除しないでください。