トレースの実行および管理
この章は、次の内容で構成されています。
• 「トレースの概要」
• 「トレースの機能」
• 「トレース レベル」
• 「トレース レベルの表示」
• 「トレース レベルの設定」
• 「トレース バッファのデータの表示」
トレースの概要
トレースは、内部イベントをログする機能です。トレース ファイルは、Cisco ASR 1002 ルータを除くすべての Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上の harddisk: ファイル システムの tracelogs ディレクトリに自動的に作成および保存されます。Cisco ASR 1002 の場合は、bootflash: ファイル システムに保存されます。トレース ファイルは、トレース データの保存に使用されます。
トレース ファイルのデータは、次の処理を行う場合に役立ちます。
• トラブルシューティング:Cisco ASR 1000 シリーズ ルータに問題がある場合、トレース ファイルの出力によって、問題の特定および解決に役立つ情報を得ることができます。トレース ファイルには、他のシステムで問題が発生している場合でも、ほぼ確実に診断モードを介してアクセスできます。
• デバッグ:トレース ファイルの出力により、システム動作について、さらに詳細な表示を得ることができます。
トレースの機能
トレース機能は、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上の内部イベントの内容を記録します。モジュールのすべてのトレース出力を含むトレース ファイルは、定期的に作成およびアップデートされて、tracelog ディレクトリに保存されます。トレース ファイルは、システム パフォーマンスに影響を及ぼすことなく、このディレクトリから消去して、ファイル システムのスペースを回復することができます。
特定のモジュールの最新のトレース情報は、 show platform software trace message 特権 EXEC モードおよび診断モード コマンドを使用して表示できます。このコマンドは診断モードでも使用できるため、IOS 障害がある場合でも入力して、トレース ログ情報を収集できます。
トレース ファイルの他の宛先へのコピーは、ほとんどのファイル転送機能(FTP、TFTP など)で実行できます。また、トレース ファイルを開く場合は、プレーンテキスト エディタで開くことができます。
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータでは、トレース機能をディセーブルにできません。ただし、メッセージ タイプ(トレース出力を生成)を設定するトレース レベルは、ユーザによる設定が可能で、 platform trace コマンドで設定できます。トレース レベルを変更してトレース メッセージ出力の量を調整する場合は、 platform trace コマンドを使用して新しいトレーシング レベルを設定する必要があります。トレース レベルは、 platform trace コマンドで all-modules キーワードを使用したプロセス、またはプロセス内のモジュールによって設定できます。このコマンドの詳細については platform trace コマンド リファレンスを参照し、トレーシング レベルの詳細情報については、このマニュアルの「トレース レベル」を参照してください。
トレース レベル
トレース レベルは、トレース バッファまたはトレース ファイルに保存する必要のあるモジュール情報の量を決定します。
表 3 に、使用可能なすべてのトレース レベルを示し、各トレース レベルで表示されるメッセージ タイプについて説明します。
表 3 トレース レベルとその内容
|
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Emergency |
0 |
システムが使用不能になる問題のメッセージです。 |
Alert |
1 |
ただちに対応する必要のある動作についてのメッセージです。 |
Critical |
2 |
クリティカルな状態についてのメッセージです。これは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上のすべてのモジュールで、デフォルト設定されています。 |
Error |
3 |
システム エラーについてのメッセージです。 |
Warning |
4 |
システム警告についてのメッセージです。 |
Notice |
5 |
重大な問題に関するメッセージです。ただし、ルータは通常どおり動作しています。 |
Informational |
6 |
単に情報を提供するだけのメッセージです。 |
Debug |
7 |
デバッグレベルの出力を提供するメッセージです。 |
Verbose |
8 |
生成可能なすべてのトレース メッセージが送信されます。 |
Noise |
- |
モジュールについての生成可能なすべてのトレース メッセージが記録されます。 ノイズ レベルは常に最上位のトレース レベルに相当します。今後、トレース機能の拡張が行われ、さらに低いトレース レベルが導入された場合でも、ノイズ レベルはこの新しい拡張機能のレベルと同じレベルに相当します。 |
トレース レベルの設定はレベル階層になっています。そのため、どの設定にも自身より低いレベル設定の全メッセージと自身のレベル設定のメッセージが含まれます。たとえば、トレース レベルを 3(エラー)に設定した場合、トレース ファイルには必ず 0(緊急)、1(アラート)、2(クリティカル)、および 3(エラー)設定のすべての出力が含まれます。トレース レベルを 4(警告)に設定した場合は、このトレース ファイルには特定のモジュールのすべてのトレース出力が含まれることになります。
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上のすべてのモジュールで、トレース レベルはデフォルトで「注意」に設定されています。
トレース レベルはユーザが設定できません。特に、アラート、クリティカル、および通知のトレース レベルについては、ユーザによる設定は不可となります。これらのメッセージをトレースする場合は、これらのメッセージを収集するトレース レベルより高いレベルに設定します。
トレース レベルの設定は、コンフィギュレーション モードでは行われないため、ルータをリロードすると、トレース レベルはデフォルトの設定に戻る点に注意してください。
注意 モジュールのトレースをデバッグ レベル以上に設定すると、パフォーマンスに悪影響が生じる可能性があります。このレベル以上に設定する場合は、注意が必要です。
注意 多数のモジュールを高いトレース レベルに設定すると、パフォーマンスが著しく低下する可能性があります。特定の状況で高いトレース レベルを設定する必要がある場合は、複数のモジュールで高いトレース レベルを設定するのではなく、単一のモジュールで高いトレース レベルを設定することを強く推奨します。
トレース レベルの表示
デフォルトでは、Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上のすべてのモジュールが「注意」に設定されています。ユーザが変更しないかぎり、この設定はそのまま維持されます。
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上のモジュールのトレース レベルを確認するには、特権 EXEC モードまたは診断モードで show platform software trace level コマンドを入力します。
次の例では、 show platform software trace level コマンドを使用して、アクティブな RP 上の Forwarding Manager プロセスのトレース レベルを表示します。
Router# show platform software trace level forwarding-manager rp active
-----------------------------------------------
tdl_acl_config_type Notice
tdl_cdlcore_message Notice
tdl_cef_config_common_type Notice
tdl_cef_config_type Notice
tdl_dpidb_config_type Notice
tdl_fman_rp_comm_type Notice
tdl_fman_rp_message Notice
tdl_fw_config_type Notice
tdl_ip_options_type Notice
tdl_mlp_config_type Notice
tdl_urpf_config_type Notice
トレース レベルの設定
Cisco ASR 1000 シリーズ ルータ上の任意のモジュールのトレース レベル、または Cisco ASR 1000 シリーズ ルータの特定プロセス内のすべてのモジュールのトレース レベルを設定するには、 platform software trace 特権 EXEC モード コマンドまたは診断モード コマンドを入力します。
次の例では、スロット 0 の ESP プロセッサの Forwarding Manager フォワーディング プロセッサ モジュールのトレース レベルを情報トレース レベル(info)に設定します。
Router(config)# platform trace runtime slot F0 bay 0 process forwarding-manager module interfaces level info
次の例では、スロット R0 の ESP プロセッサの Forwarding Manager フォワーディング プロセッサ モジュールのトレース レベルを情報トレース レベル(max)に設定します。
Router(config)# platform trace boottime slot R0 bay 1 process forwarding-manager forwarding-manager level max
このコマンドのオプションの詳細については、 platform trace boottime process forwarding-manager moduleinterfaces および platform trace runtime process forwarding-manager moduleinterfaces コマンド リファレンスを参照してください。
トレース バッファのデータの表示
トレース バッファまたはファイル内のトレース メッセージを表示するには、 show platform software trace message 特権 EXEC モード コマンドおよび診断モード コマンドを入力します。
次の例では、 show platform software trace message コマンドを使用して、RP スロット 0 の Host Manager プロセスのトレース メッセージを表示します。
Router# show platform software trace message host-manager R0
08/23 12:09:14.408 [uipeer]: (info): Looking for a ui_req msg
08/23 12:09:14.408 [uipeer]: (info): Start of request handling for con 0x100a61c8
08/23 12:09:14.399 [uipeer]: (info): Accepted connection for 14 as 0x100a61c8
08/23 12:09:14.399 [uipeer]: (info): Received new connection 0x100a61c8 on descriptor 14
08/23 12:09:14.398 [uipeer]: (info): Accepting command connection on listen fd 7
08/23 11:53:57.440 [uipeer]: (info): Going to send a status update to the shell manager in slot 0
08/23 11:53:47.417 [uipeer]: (info): Going to send a status update to the shell manager in slot 0