LLDP および LLDP-MED の設定
この章では、Cisco ME 3400E スイッチに Link Layer Discovery Protocol(LLDP)および LLDP Media Endpoint Discovery(LLDP-MED)を設定する方法について説明します。
(注) この章で使用されるコマンドの構文および使用方法の詳細については、このリリースに対応するコマンド リファレンス、および『Cisco IOS Configuration Fundamentals Command Reference』Release 12.2 の「System Management Commands」を参照してください。
この章で説明する内容は、次のとおりです。
• 「LLDP および LLDP-MED の概要」
• 「LLDP および LLDP-MED の設定」
• 「LLDP および LLDP-MED のモニタおよびメンテナンス」
LLDP および LLDP-MED の概要
• 「LLDP の概要」
• 「LLDP-MED の概要」
LLDP の概要
Cisco Discovery Protocol(CDP; シスコ検出プロトコル)は、すべてのシスコ製デバイス(ルータ、ブリッジ、アクセス サーバ、およびスイッチ)のレイヤ 2(データリンク層)で動作するデバイス ディスカバリ プロトコルです。CDP により、ネットワーク管理アプリケーションは、ネットワークに接続している他のシスコ製デバイスを自動的に検出し、これらのデバイスについて学習します。
他社製デバイスをサポートし、他のデバイス間での相互運用性を可能にするために、スイッチは IEEE 802.1AB Link Layer Discovery Protocol(LLDP; リンク レイヤ検出プロトコル)をサポートしています。LLDP は、ネットワーク デバイスが自身の情報をネットワーク上の他のデバイスにアドバタイズするために使用する近隣探索プロトコルです。このプロトコルがデータリンク層で稼動するため、異なるネットワーク レイヤ プロトコルを実行する 2 つのシステムは、相互に学習できます。
LLDP は、近接デバイスを検出するために使用する一連のアトリビュートをサポートします。これらのアトリビュートは、Type(タイプ)、Length(長さ)、および Value(値)の記述が含まれているため、TLV と呼ばれます。LLDP がサポートされているデバイスでは、TLV を使用して、近接デバイスに情報を送受信できます。設定情報、デバイスの機能、およびデバイス ID などの詳細情報を、このプロトコルを使用してアドバタイズできます。
デフォルトでは、LLDP は Network Node Interface(NNI; ネットワーク ノード インターフェイス)ではイネーブルに設定されています。Enhanced Network Interface(ENI; 拡張ネットワーク インターフェイス)ではディセーブルに設定されていますが、イネーブルにできます。LLDP は、User Network Interface(UNI; ユーザ ネットワーク インターフェイス)ではサポートされていません。
スイッチは、次の基本的な管理 TLV をサポートします。これらは必須の LLDP TLV です。
• ポート記述の TLV
• システム名の TLV
• システムの説明
• システム機能の TLV
• 管理アドレスの TLV
次の組織的に固有な LLDP TLV も、LLDP-MED をサポートするためにアドバタイズされます。
• ポート VLAN ID TLV(IEEE 802.1 で組織的に固有な TLV)
• MAC/PHY コンフィギュレーション/ステータス TLV(IEEE 802.3 で組織的に固有な TLV)
LLDP-MED の概要
LLDP for Media Endpoint Devices(LLDP-MED)は、IP Phone などのエンドポイント デバイスとスイッチなどのネットワーク デバイスの間で動作する LLDP の拡張機能です。LLDP-MED は特に Voice over IP(VoIP)アプリケーションをサポートし、機能検出、ネットワーク ポリシー、Power over Ethernet(PoE)、およびコンポーネント管理のための TLV を追加します。
LLDP-MED は次の TLV をサポートします。
• LLDP-MED 機能の TLV
LLDP-MED エンドポイントにより、接続されたデバイスがサポートする機能を決定し、デバイスでイネーブルになっている機能を決定できるようにします。
• ネットワーク ポリシーの TLV
ネットワーク接続デバイスとエンドポイントの両方で、VLAN の設定とそのポート上の特定のアプリケーションに関連するレイヤ 2 およびレイヤ 3 のアトリビュートをアドバタイズできるようにします。たとえば、スイッチは、使用すべき VLAN 番号を電話機に通知することができます。電話機は、任意のスイッチに接続してその VLAN 番号を取得してから、コール制御との通信を開始できます。
• 電源管理の TLV
LLDP-MED エンドポイントとネットワーク接続デバイスの間の高度な電源管理を可能にします。スイッチと電話機により、デバイスの電源を投入する方法、電源の優先順位、およびデバイスが必要とする電力の量など、電源に関する情報を伝達できるようにします。
• コンポーネント管理の TLV
エンドポイントにより、エンドポイントの詳細なコンポーネント情報(ハードウェアのリビジョン番号、ファームウェアのバージョン、ソフトウェアのバージョン、シリアル番号、メーカー名、モデル名、資産 ID TLV など)をスイッチに送信できるようにします。
• ロケーションの TLV
スイッチからエンドポイント デバイスへロケーション情報を提供します。所在地の TLV は次の情報を送信できます。
– 都市ロケーション情報
都市の住所情報と郵便番号情報を提供します。都市ロケーション情報の例には、地名、番地、郵便番号などがあります。
– ELIN ロケーション情報
発信者のロケーション情報を提供します。ロケーションは Emergency Location Identifier Number(ELIN; 緊急ロケーション識別番号)によって決定されます。この番号は、緊急通報を最寄りの Public Safety Answering Point(PSAP)にルーティングする電話番号で、PSAP はこの番号を使用して通報者にコールバックできます。
LLDP および LLDP-MED の設定
• 「LLDP のデフォルト設定」
• 「LLDP 特性の設定」
• 「グローバルでの LLDP のディセーブル化およびイネーブル化」
• 「インターフェイスでの LLDP のディセーブル化およびイネーブル化」
• 「LLDP-MED TLV の設定」
LLDP のデフォルト設定
表 25-1 に、LLDP のデフォルト設定を示します。デフォルト設定を変更するには、LLDP グローバル コンフィギュレーションおよび LLDP インターフェイス コンフィギュレーションのコマンドを使用します。
表 25-1 LLDP のデフォルト設定
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LLDP グローバル ステート |
ディセーブル |
LLDP ホールドタイム(廃棄までの時間) |
120 秒 |
LLDP タイマー(パケット アップデート頻度) |
30 秒 |
LLDP 再初期化遅延 |
2 秒 |
LLDP TLV 選択 |
すべての TLV の送受信がディセーブルです。 |
LLDP インターフェイス ステート |
ディセーブル |
LLDP 受信 |
Network Node Interface(NNI; ネットワーク ノード インターフェイス)でイネーブル、Enhanced Network Interface(ENI; 拡張ネットワーク インターフェイス)でディセーブル、User Network Interface(UNI; ユーザ ネットワーク インターフェイス)では未サポート |
LLDP 送信 |
NNI でイネーブル ENI でディセーブル UNI で未サポート |
LLDP-MED TLV 選択 |
すべての LLDP-MED TLV の送信がディセーブル |
LLDP 特性の設定
LLDP のアップデート頻度、廃棄するまでに情報を保持する時間、および初期化遅延時間を設定できます。送受信する LLDP TLV および LLDP-MED TLV も選択できます。
これらの特性を設定するには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
(注) ステップ 2 ~ 5 はすべて任意なので、順序不同で実行できます。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
lldp holdtime seconds |
(任意)このデバイスから送信された情報を受信デバイスが廃棄するまで保持する時間を指定します。 指定できる範囲は 0 ~ 65535 秒で、デフォルトは 120 秒です。 |
ステップ 3 |
lldp reinit |
(任意)任意のインターフェイスでの LLDP 初期化の遅延時間を秒単位で指定します。 指定できる範囲は 2 ~ 5 秒で、デフォルトは 2 秒です。 |
ステップ 4 |
lldp timer seconds |
(任意)LLDP アップデートの伝送頻度を秒単位で設定します。 指定できる範囲は 5 ~ 65534 秒で、デフォルトは 30 秒です。 |
ステップ 5ll |
lldp tlv-select |
(任意)送信または受信する LLDP TLV を指定します。 |
ステップ 6 |
lldp med-tlv-select |
(任意)送信または受信する LLDP-MED TLV を指定します。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
デフォルト設定に戻すには、各 LLDP コマンドの no 形式を使用します。
次に、LLDP 特性を設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# lldp holdtime 120
Switch(config)# lldp reinit 2
Switch(config)# lldp timer 30
LLDP の show コマンドの詳細については、「LLDP および LLDP-MED のモニタおよびメンテナンス」を参照してください。
グローバルでの LLDP のディセーブル化およびイネーブル化
デフォルトでは LLDP はグローバルにディセーブルに設定されており、NNI ではイネーブルに設定されています。デフォルトでは ENI でディセーブルに設定されていますが、インターフェイスごとにイネーブルに設定できます。LLDP は UNI ではサポートしません。
LLDP をグローバルにディセーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
no lldp run |
LLDP をディセーブルにします。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ディセーブル化されている LLDP-MED をイネーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
lldp run |
LLDP をイネーブルにします。 |
ステップ 3 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
次に、LLDP をグローバルにディセーブルにする例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# no lldp run
Switch(config)# end
次に、LLDP をグローバルにイネーブルにする例を示します。
Switch# configure terminal
インターフェイスでの LLDP のディセーブル化およびイネーブル化
LLDP 情報の送受信をサポートするすべての NNI では、LLDP はデフォルトでディセーブルに設定されています。ENI ではデフォルトでディセーブルに設定されていますが、 lldp transmit および lldp receive インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを入力してイネーブルに設定できます。LLDP は UNI ではサポートしません。
(注) インターフェイスがトンネル ポートとして設定されている場合、LLDP は自動的にディセーブルになります。
インターフェイスの LLDP をディセーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP をディセーブルにするインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 lldp コマンドを利用するには、インターフェイスは NNI または ENI でなければなりません。 |
ステップ 3 |
no lldp transmit |
インターフェイスで LLDP パケットを送信しません。 |
ステップ 4 |
no lldp receive |
インターフェイスで LLDP パケットを受信しません。 |
ステップ 5 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
ディセーブル化されている LLDP をインターフェイス上でイネーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP をイネーブルにするインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。LLDP は NNI および ENI でだけサポートします。UNI ではサポートしません。必要に応じて、 port-type { eni | nni } インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用してポート タイプを変更します。 |
ステップ 3 |
no shutdown |
必要に応じて、ポートをイネーブルに設定します。デフォルトでは、NNI はイネーブルに、ENI および UNI はディセーブルに設定されています。 |
ステップ 4 |
lldp transmit |
インターフェイスで LLDP パケットを送信します。 |
ステップ 5 |
lldp receive |
インターフェイスで LLDP パケットを受信します。 |
ステップ 6 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
次に、インターフェイス上で LLDP をイネーブルにする例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface GigabitEthernet1/0/1
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config-if)# port-type nni
Switch(config-if)# lldp transmit
Switch(config-if)# lldp receive
LLDP-MED TLV の設定
デフォルトでは、スイッチは、LLDP-MED パケットをエンドポイント デバイスから受信するまで、LLDP パケットだけを送信します。その後、MED TLV とともに LLDP パケットを送信します。LLDP-MED のエントリが古くなると、ふたたび LLDP パケットだけを送信します。
lldp インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、 表 25-2 に示された TLV を送信しないようにインターフェイスを設定できます。
表 25-2 LLDP-MED TLV
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inventory-management |
LLDP-MED コンポーネント管理 TLV |
location |
LLDP-MED ロケーション TLV |
network-policy |
LLDP-MED ネットワーク ポリシー TLV |
power-management |
LLDP-MED 電源管理 TLV |
インターフェイスの TLV をディセーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP-MED TLV を設定するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
no lldp med-tlv-select tlv |
ディセーブルにする TLV を指定します。 |
ステップ 4 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
インターフェイスの TLV をイネーブルにするには、特権 EXEC モードで次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
interface interface-id |
LLDP-MED TLV を設定するインターフェイスを指定し、インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
lldp med-tlv-select tlv |
イネーブルにする TLV を指定します。 |
ステップ 4 |
end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
copy running-config startup-config |
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
次に、インターフェイス上でディセーブル化されている TLV をイネーブルにする手順を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface GigabitEthernet1/0/1
Switch(config-if)# lldp med-tlv-select inventory-management
LLDP および LLDP-MED のモニタおよびメンテナンス
ご使用のデバイスの LLDP および LLDP-MED をモニタおよびメンテナンスするには、特権 EXEC モードで次の手順を 1 つまたは複数実行します。
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clear lldp counters |
トラフィックのカウンタをゼロにリセットします。 |
clear lldp table |
ネイバに関する LLDP テーブルの情報を削除します。 |
show lldp |
送信頻度、送信されたパケットのホールドタイム、インターフェイス上での LLDP 初期化の遅延時間などのグローバル情報を表示します。 |
show lldp entry entry-name |
特定のネイバに関する情報を表示します。 アスタリスク(*)を入力してすべてのネイバを表示することも、情報が必要なネイバの名前を入力することもできます。 |
show lldp interface [ interface-id ] |
LLDP がイネーブル化されているインターフェイスに関する情報を表示します。 表示する情報に関して、インターフェイスの表示を制限できます。 |
show lldp neighbors [ interface-id ] [ detail ] |
デバイスのタイプ、インターフェイスのタイプおよび番号、ホールドタイム設定、機能、ポート ID など、ネイバに関する情報を表示します。 特定のインターフェイスのネイバ情報だけを表示することも、より詳細な情報を表示することもできます。 |
show lldp traffic |
LLDP カウンタ(送受信されたパケット数、廃棄されたパケット数、認識されない TLV の数など)を表示します。 |