MLPP の概要
Multilevel Precedence and Preemption(MLPP)サービスを使用すると、優先コールをかけることができます。適切に検証されたユーザは、優先順位の低いコールよりも優先順位の高いコールを優先させることができます。認証されたユーザは、宛先ステーションへ、または完全にサブスクライブされた TDM トランクを介して、コールを Preemption 処理することができます。この機能により、国家の非常事態やネットワークの機能低下など、ネットワークに負荷がかかっている場合に、優先順位の高いユーザが重要な組織や担当者への通信を確実に行うことができます。
次のトピックで、MLPP サービスについて説明します。
• 「MLPP の用語」
• 「Precedence」
• 「Preemption」
• 「ドメイン」
• 「MLPP 優先パターン」
• 「MLPP Indication Enabled」
• 「優先コールの設定」
• 「Alternate Party Diversion」
• 「MLPP Preemption Enabled」
• 「Preemption の詳細」
• 「MLPP アナウンス」
• 「優先順位パターン用の MLPP 番号計画アクセス制御」
• 「MLPP トランク選択」
• 「MLPP 階層設定」
• 「サービス パラメータの特別なトレース設定」
• 「優先コール用の CDR の録音」
• 「回線機能のインタラクション」
• 「コール保存」
• 「MGCP と PRI プロトコル」
MLPP の用語
MLPP サービスでは次の用語を使用します。
• コール:Architecture for Voice, Video and Integrated Data(AVVID)ネットワーク内の関連するすべての接続およびリソースを含みます。
• Precedence:コールに関連付けられた優先レベル。
• Preemption:優先順位の低い既存のコールを終了させ、優先順位の高いコールにターゲット デバイスを使用させるプロセス。
• 優先コール:最も低い優先レベルよりも高い優先レベルを持つコール。
• MLPP コール:優先レベルが確立された、設定中(つまり、アラート前)のコールまたは設定済みのコール。
• アクティブなコール:接続が確立され、発信側と着信側がアクティブになったコール。
• MLPP ドメイン ID:MLPP 加入者に関連付けられたデバイスとリソースの集合。特定のドメインに属す MLPP 加入者が、同じドメインに属す別の MLPP 加入者に優先コールをかけると、MLPP サービスは、着信側の MLPP 加入者の既存のコールを優先順位の高いコールに差し替えます。MLPP サービスは、異なるドメイン間では使用できません。
• MLPP Indication Enabled デバイス:Cisco CallManager で、デバイスと Cisco CallManager によってデバイス制御プロトコルで優先順位とPreemption のシグナリング手順がサポートされ、Cisco CallManager システムでそのように設定されているデバイス。
• MLPP Preemption Enabled デバイス:Cisco CallManager で、デバイスと Cisco CallManager によってデバイス制御プロトコルで Preemption のシグナリング手順がサポートされ、Cisco CallManager システムでそのように設定されているデバイス。Cisco CallManager はこのインターフェイスで Preemption を開始できます。
Precedence
優先順位は、コールに関連付けられた優先レベルを示します。優先順位の割り当てはその場限りのものであり、ユーザは自分がかけようとしているコールに優先レベルを適用するかしないかを選択します。MLPP の優先順位は、コール アドミッション制御または拡張型緊急通報システム(E911)とは関係していません。ユーザは Cisco CallManager Administration の専用ダイヤル パターンによって MLPP 要求を開始できます。発信側(デバイスや回線など)に関連付けられたコール検索スペース(CSS)の設定によって、発信側が優先パターンをダイヤルして優先コールを発信できるかどうかが制御されます。
Defense Switched Network(DSN)は、初期 MLPP 配置用のターゲット システムを示します。通常は、優先レベルをコールに割り当てるメカニズムを適用しますが、Cisco CallManager Administration では、優先ダイヤル パターンやそのパターンへのアクセスを許可または制限するコール検索スペースを定義することによって、任意のダイヤル プランに優先レベルを割り当てることができます。DSN では、ストリング プレフィックス NP を使用して優先コールを要求できるようにダイヤル プランが定義されます。NP の P は優先レベルの要求を示し、N は事前設定された MLPP へのアクセス番号を示します。 表 11-1 に、優先値の範囲を示します。優先順位を呼び出さなければ、システムは通常のコール処理とコール転送を使用してコールを処理します。
表 11-1 優先レベル
|
|
0 (最高) |
Flash Override |
1 |
Flash |
2 |
Immediate |
3 |
Priority |
4 (最低) |
Routine |
デフォルトの割り当てまたはエクステンション モビリティでユーザ プロファイルが電話機に割り当てられている場合、電話機は、ユーザに関連付けられた CSS を含め、割り当てられたユーザの設定を継承します。ただし、電話機の CSS はユーザ プロファイルを上書きできます。Cisco CallManager は、パターンが一致した場合に、ダイヤルされたパターンに関連する優先レベルをコールに割り当てます。システムは、割り当てられた優先レベルで、コール要求を優先コールとして設定します。
ある宛先に対して優先コールが発信されると、Cisco CallManager は、優先コールの発信元または宛先のいずれかが MLPP Indication Enabled である場合に、発信元と宛先の両方に優先順位のインジケータを送信します。発信元の場合、このインジケータは、優先順位の呼び戻し音と、デバイスで表示がサポートされている場合はコールの優先レベルまたはドメインの表示で示されます。宛先の場合、このインジケータは、優先順位呼び出し音と、デバイスで表示がサポートされている場合はコールの優先レベルまたはドメインの表示で示されます。
Preemption
Preemption プロセスは、優先順位の高いコールがデバイスを使用できるように、現在ターゲット デバイスを使用している優先順位の低いコールを終了させます。Preemption には、Preemption 処理されるユーザへの通知とそれに対する受信応答、および Preemption の直後とコールの終了前の共有リソースの予約が含まれます。Preemption は、どのメソッドが起動するかに応じて、次のいずれかの形式をとります。
• ユーザ アクセス チャネル プリエンプション:このタイプのPreemption は、電話機およびその他のエンドユーザ デバイスに適用されます。また、着信側のユーザ アクセス チャネルを差し替える必要がある場合に、着信側と接続先の両方が Preemption 通知を受信し、既存の MLPP コールがすぐにクリアされます。着信側は、優先順位の高いコールが実行される前に、Preemption に受信応答する必要があります。その後、着信側には新規 MLPP コールが提供されます。着信側が Preemption に受信応答しない場合、優先順位の高いコールは 30 秒後に実行されます。
• 共通ネットワーク ファシリティ プリエンプション:このタイプのPreemption は、トランクに適用されます。このタイプの Preemption では、ネットワーク リソースがコールで混雑しており、一部のコールの優先順位が、発信側が要求しているコールよりも低くなっています。1 つまたは複数の優先順位の低いコールが、優先順位の高いコールに差し替えられます。
(注) 既存のコールを差し替えるためにコールが使用するすべてのデバイスで Preemption が有効になっていることを確認してください。発信側と着信側のデバイス(電話機)で Preemption が有効になっているだけでは不十分なので、コールに使用されるゲートウェイでも Preemption が有効になっていることを確認してください。
ドメイン
発信ユーザによる MLPP ドメインへの加入によって、コールのドメインとその接続が決まります。あるドメイン内の優先順位の高いコールだけが、同じドメイン内のコールが使用している接続を差し替えることができます。
管理者は、ゼロ以上の 16 進数として Cisco CallManager Administration にドメインを入力します。
MLPP 優先パターン
MLPP 優先パターンを設定するには、Cisco CallManager Administration の Translation Pattern Configuration ウィンドウにアクセスします。このウィンドウで、次の MLPP 優先パターンを使用できます。
• Flash Override (レベル 0)(最高)
• Flash (レベル 1)
• Immediate (レベル 2)
• Priority (レベル 3)
• Routine (レベル 4)(最低)
• Default (優先レベルが変更されないことを意味します)
詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 変換パターンの設定」 の項を参照してください。
MLPP Indication Enabled
MLPP Indication Enabled デバイスには次の特徴があります。
• MLPP Indication Enabled デバイスは、Preemption トーンを再生できます。
• MLPP Indication Enabled デバイスは、アナウンス サーバが生成する MLPP Preemption アナウンスを受信できます。
• MLPP Indication Enabled デバイスは、Preemption を受信できます。
デバイスを設定して MLPP Indication を有効にするには、各デバイスの設定ウィンドウを使用します。各デバイスの MLPP Indication フィールドで、値を On に設定します。
デバイスに対する MLPP Indication の設定の詳細については、次のトピックを参照してください。
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 デバイス プールの設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 ゲートウェイの設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 Cisco IP Phone の設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 デバイス プロファイルの設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 デバイス プロファイル デフォルトの設定 」
優先コールの設定
優先コールの設定では、次の一連のイベントが発生します。
1. ユーザが電話機をオフフックにして優先コールをダイヤルします。コール パターンは NP-XXX を指定しています。ここで、N は有線アクセス番号を示し、P はコールの優先レベルを示します。
2. 発信側は、コールの処理中に特別な優先順位の呼び戻し音と優先順位表示を受信します。
3. 着信側は、優先コールを示す特別な優先順位呼び出し音と優先順位表示を受信します。
例
ユーザ 1000 がユーザ 1001 に 優先コールをかけます。そのために、ユーザ 1000 は 90-1001 などの優先コール パターンをダイヤルします。この例では、9 が優先順位アクセス番号、0 が優先レベル(最高)です。
コールが処理されると、発信側の Cisco IP Phone が優先順位呼び戻し音と優先順位表示を受信します。着信側が優先コールに受信応答すると、着信側の Cisco IP Phone は、優先順位呼び出し音(特別な呼び出し音)と優先順位表示を受信します。
Alternate Party Diversion
Alternate Party Diversion(APD)は、特別なタイプのコール転送から構成されます。ユーザが APD に設定されている場合は、通話中または応答のない電話番号(DN)に優先コールがかけられたときに APD が実行されます。
MLPP APD は優先コールだけに適用されます。MLPP APD コールは、優先コールの DN Call Forward No Answer 設定を無効にします。
通常、優先コールは、Use Standard VM Handling For Precedence Calls エンタープライズ パラメータの値で制御されるので、ボイスメールには転送されません。詳細については、「MLPP のエンタープライズ パラメータの設定」を参照してください。
APD を設定するために、管理者は、MLPP 優先コールのターゲットとなる電話番号の Directory Number Configuration ウィンドウで Multilevel Precedence and Preemption Alternate Party Settings を設定します。詳細については、
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 Cisco IP Phone の設定」 の項を参照してください。
例
図 11-1に、着信側が優先コールを受信し、Alternate Party Diversion の発信先が設定されている場合の Alternate Party Diversion を示します。
図 11-1 Alternate Party Diversion の例
この例では、発信側がユーザ 1000 に優先コールをかけます。着信側 1000 には Call Forward Busy(CFB)用に 2000 が設定され、Call Forward Alternate Party(CFAP)用に 1001 が設定されています。この図には、この例のほかのすべてのユーザの CFB 設定と CFAP 設定が示されています。
1000 が優先コールを受信したときに通話中である場合、コールはユーザ 2000 へ送信されます。ユーザ 2000 も通話中である場合、コールはユーザ 3000 へ送信されます。ユーザ 2000 もユーザ 3000 もコールに応答しない場合、コールはユーザ 1001 へ送信されます。つまり、コールは、元の着信側に関連する Call Forward Busy ユーザに対して指定された代替パーティ ではなく 、元の着信側に対して指定された代替パーティへ送信されます。
同様に、ユーザ 1001 が通話中でコールに応答しない場合、コールはユーザ 5000 へ転送されます。ユーザ 5000 が通話中である場合、コールはユーザ 6000 へ転送されます。ユーザ 5000 もユーザ 6000 もコールに応答しない場合、コールはユーザ 1001 の代替パーティであるユーザ 1002 へ送信されます。ユーザ 1002 が通話中で応答しない場合、コールはユーザ 1002 の代替パーティであるユーザ 1003 へ転送されます。
MLPP Preemption Enabled
MLPP Preemption を有効にするには、Preemption 機能のあるデバイスでPreemption を明示的に設定します。
Preemptionの受信
Preemption が無効になっているデバイス(MLPP Preemption 値が Disabled に設定されているデバイス)は、MLPP ネットワークで優先コールを受信できますが、そのデバイス自体を Preemption 処理することはできません。Preemption が無効になっているデバイスは(別のデバイスで)、差し替えられたコールに接続できます。この場合、デバイスは Preemption を受信します。
Preemption Enabled
デバイスで Preemption を有効にするには、デバイスの MLPP Preemption 値を Forceful または Default に設定します。デバイスの MLPP Preemption 値が Forceful に設定されている場合、システムは、その独自のインターフェイスでデバイスを Preemption 処理することができます。つまり、デバイスは、優先コールがデバイス リソースについて競合している場合に Preemption 処理を受けることができます。
デバイスの MLPP Preemption 設定が Default である場合、デバイスはデバイス プールから MLPP Preemption 設定を継承します。デバイスのデバイス プールの MLPP Preemption 設定が Forceful である場合や、デバイス プールの MLPP Preemption 設定が Default で MLPP Preemption Setting エンタープライズ パラメータ値が Forceful Preemption である場合、デバイスは有効な Preemption を継承します。
デバイスを設定して MLPP Preemption を有効にするには、各デバイスの設定ウィンドウを使用します。各デバイスの MLPP Preemption フィールドで、値を Forceful または Default に設定します。
デバイスに対する MLPP Preemption の設定の詳細については、次のトピックを参照してください。
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 デバイス プールの設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 ゲートウェイの設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 Cisco IP Phone の設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 デバイス プロファイルの設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 デバイス プロファイル デフォルトの設定 」
Preemption の詳細
Preemption には、ユーザ アクセス プリエンプションと共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションの 2 つのタイプがあります。
ユーザ アクセス プリエンプション
ユーザ アクセス プリエンプションは、優先レベルの低いコールですでにアクティブになっているユーザへ優先コールをかけたとき、両方のコールが同じ MLPP ドメイン内にある場合に発生します。このタイプのPreemption は、Cisco CallManager MLPP システムで Cisco Skinny Client Control Protocol が制御する MLPP Indication Enabled 電話機に対して使用できます。Preemption は、優先コール要求が検証された場合や、要求されたコールの優先順位が宛先の MLPP Preemption Enabled 電話機で接続されている既存のコールの優先順位よりも高い場合に実行されます。コール処理は、Preemption トーンを使用して接続先に Preemption を通知し、アクティブなコールをリリースします。着信側は電話を切ることによって Preemption に応答し、新規 MLPP コールを取得します。
ユーザ アクセス プリエンプションで実行される一連のステップを理解するために、次の例を参照してください。
例
図 11-2 に、ユーザ アクセス プリエンプションの例を示します。
図 11-2 ユーザ アクセス プリエンプションの例
このユーザ アクセス プリエンプションの例では、次の一連のイベントが発生します。
1. ユーザ 1000 がユーザ 1001 に優先レベル 1 の優先コールをかけ、ユーザ 1001 がそれに応答します。この例では、ユーザ 1000 が優先コールをかけるために 91-1001 をダイヤルします。
2. ユーザ 1002 が 90-1001 をダイヤルしてユーザ 1001 に優先コールをかけます。優先レベル 0 のこのコールは、アクティブな優先コールよりも優先順位の高いコールになります(ユーザ 1000 と 1002 が同じ MLPP ドメイン内にあると想定しています)。
3. ユーザ 1001 にコールが送信されると、発信側は優先順位表示を受信し、既存の優先順位の低いコールのユーザはどちらも Preemption トーンを受信します。
4. Preemption を実行するために、優先順位の低いコールのユーザ(ユーザ 1000 とユーザ 1001)が電話を切ります(ユーザ 1001 だけが電話を切る必要があります。ユーザ 1000 とユーザ 1001 が電話を切らない場合は、どちらもタイムアウトになり、自動的にオンフックになります)。
5. 優先順位の高いコールがユーザ 1001 に送信され、ユーザ 1001 は優先順位呼び出し音を受信します。発信側であるユーザ 1002 は、優先順位呼び戻し音を受信します。
このインスタンスでは別個の Preemption が実行されます。優先順位の高いコールの宛先ではないユーザに対しては、Preemption Not for Reuse が実行されます。このインターフェイスでは Preemption は実行されないので、このデバイスで Preemption が有効である必要はありません。優先順位の高いコールの宛先であるユーザに対しては、Preemption for Reuse が実行されます。このインターフェイスでは Preemption が実行されるので、このデバイスで Preemption が有効であることを確認してください。
User Access Channel Nonpreemptable
エンドユーザ デバイスは MLPP Indication Enabled として設定できますが、MLPP Preemption Enabled としては設定できません。この場合、電話機は、(特別な Preemption トーンと呼び出し音を使用して) MLPP Indication を生成できますが、Cisco CallManager のデバイス制御プロトコルでは Preemption がサポートされていません。管理者は、Cisco CallManager Administration が手順をサポートしている場合でも、電話機で Preemption 手順を無効にできます。
以前から、ユーザ アクセス デバイス(電話機)では、複数の同時コールを処理するメカニズムが制限されているか、まったくありませんでした。コール待機機能でも、多数の電話機および関連するスイッチには、ユーザが同じ回線で複数のコールを同時に管理できるようなメカニズムはありません。
Cisco CallManager Administration は、コール待機機能を効果的に強化し、
Cisco IP Phone (794X および 796X シリーズ)のユーザにこの機能を提供しています。これらの Cisco IP Phone には、ユーザが Cisco CallManager システムとインターフェイスする際に複数の同時コールを適切に制御するためのユーザ インターフェイスが含まれています。この拡張機能によって、ユーザがすでにほかのコールを管理している場合でも、これらのタイプの電話機に送信されたすべての優先コールにコール待機機能を適用できます。ユーザが優先コールを受信すると、宛先の電話機のユーザは、優先順位の低いコールを単にリリースするだけでなく、既存のコールをどう処理するかを決定できます。これらのデバイスのユーザに対して、Cisco CallManager 管理者は、Cisco CallManager でこの機能を利用するためデバイスを非 MLPP Preemption Enabled として設定できます。
共通ネットワーク ファシリティ プリエンプション
共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションは、MLPP システムでトランクなどのネットワーク リソースに適用されます。共通ネットワーク ファシリティで Preemption が行われると、既存のコールのユーザすべてが Preemption の通知を受信し、既存の接続がすぐに切断されます。新規コールは、新しい着信側への特別な通知なしで、Preemption 処理されるファシリティを使用して通常どおり設定されます。ターゲット MGCP ゲートウェイ プラットフォーム上の PRI トランクと T1-CAS トランクは、Cisco CallManager でこのタイプの Preemption をサポートします。
Preemption は、優先コール要求が検証された場合や、要求されたコールの優先順位が宛先の MLPP Preemption Enabled トランクを介した既存のコールの優先順位よりも高く、トランクが完全に使用中である(つまり、コールをそれ以上処理できない)場合に実行されます。コール処理は、優先順位の低いコールを特定し、接続されたユーザに PRI トランク インターフェイスの Preemption を通知し、後続の使用のためにチャネルを予約し、選択された優先順位の低いコールを切断します。システムは予約されたチャネルを使用して、Preemption を起動した優先コール用にゲートウェイを介して接続を確立します。
共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションで実行される一連のステップについては、次の例を参照してください。
例 1
図 11-3に、共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションの例を示します。
図 11-3 共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションの例
この共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションの例では、次の一連のイベントが発生します。
1. ユーザ 1000 がユーザ 2000 に優先レベル 1 の優先コールをかけ、ユーザ 2000 がそれに応答します。この例では、ユーザ 1000 が優先コールをかけるために 91-2000 をダイヤルします。優先レベル 1 の Flash コールはアクティブを指定します。
コールは、2 つのゲートウェイが完全にサブスクライブされた TDM を定義する共通ネットワーク ファシリティを使用します。
2. ユーザ 1001 は次に、90-2001 をダイヤルしてユーザ 2001 に優先順位の高い(Flash Override)コールをかけます(Flash コールがゲートウェイ A 上で最も優先順位の低いコールであることと、ユーザ 1000 とユーザ 1001 が同じ MLPP ドメイン内にあることを想定しています)。
ゲートウェイ A で Preemption が実行され、ゲートウェイ A が再利用のため Preemption 処理されます。このインターフェイスでは Preemption が実行されるので、このデバイスで Preemption が有効であることを確認する必要があります。ゲートウェイ B も再利用のため Preemption 処理されますが、このインターフェイスでは Preemption は実行されないので、このデバイスで Preemption を有効にする必要はありません。
ユーザ 1000 とユーザ 2000 の両方が Preemption トーンを受信します。どちらのデバイスも再利用のための Preemption 処理はされず、これらのインターフェイスでは Preemption は実行されないので、これらのデバイスで Preemption を有効にする必要はありません。
この例では、ほとんどすべてのイベントが即時に発生します。共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションを実行するために、ユーザが電話を切る必要はありません。
例 2
図 11-4に、リトライ タイマー Trr のある共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションの例を示します。リトライ タイマー Trr は、あるチャネルで Preemption が成功しなかった場合に別のチャネルで Preemption を再試行するメカニズムを提供します。このタイマーは、TDM トランクだけに適用されます。
図 11-4 リトライ タイマー Trr のある共通ネットワーク ファシリティ プリエンプション
このリトライ タイマー Trr のある共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションの例では、次の一連のイベントが発生します。
1. 優先順位が Flash Override の着信コールが PRI トランク デバイスに到着します。
着信コールによってチャネル 3 の Preemption が起動しますが、リトライ タイマー Trr で指定された時間内に応答がありません。
2. リトライ タイマー Trr が時間切れになります。
チャネル 3 で Preemption が実行されます。
3. この Preemption によって応答が行われ、チャネル 1 で優先コールが発信されます。
MLPP アナウンス
MLPP 優先コールの試行が失敗したユーザは、優先コールがブロックされた理由を説明する各種のアナウンスを受信します。
次の各項では、特定の MLPP アナウンスについて説明します。
• 「Unauthorized Precedence Announcement」
• 「Blocked Precedence Announcement」
• 「Busy Station Not Equipped for Preemption」
MLPP アナウンスについては、『 Cisco CallManager System Guide 』の 「Annunciator 」の項の「 サポートされているトーンおよびアナウンス 」のトピックを参照してください。Unauthorized Precedence Announcement を生成する Precedence Level Exceeded 条件の設定の詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「ルート パターンおよびハント パイロットの設定」 および「 変換パターンの設定」 の項を参照してください。
関連項目
• 『 Cisco CallManager System Guide 』の「 Annunciator 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 Annunciator の設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 ルート パターンおよびハント パイロットの設定 」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 変換パターンの設定 」
Unauthorized Precedence Announcement
ユーザは、自分の回線に許可された最高の優先レベルよりも高い優先レベルのコールをかけようとすると、Unauthorized Precedence Announcement を受信します。ユーザは、自分に権限のない発信パターンを使用して優先コールをダイヤルしたときに、Unauthorized Precedence Announcement を受信します。
Cisco CallManager は、パターンと一致してコールをブロックする理由が示されたコールの試行をブロックするように特定のパターンまたはパーティションが設定されている場合だけ、Precedence Level Exceeded 条件を認識します。
許可された発信パターンを割り当てるには、Cisco CallManager Administration の Route Pattern/Hunt Pilot Configuration ウィンドウと Translation Pattern Configuration ウィンドウを使用します。MLPP Precedence Level Exceeded 条件を設定するには、Cisco CallManager Administration で、Route Pattern/Hunt Pilot Configuration ウィンドウと Translation Pattern Configuration ウィンドウの Route Option フィールドを使用して Block this pattern オプションを選択します。ドロップダウン リスト ボックスで、 Precedence Level Exceeded を選択します。詳細については、
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 ルート パターンおよびハント パイロットの設定」 と「 変換パターンの設定」 の項を参照してください。
例
図 11-5に、Unauthorized Precedence Announcement を受信するユーザの例を示します。
図 11-5 Unauthorized Precedence Announcement の例
この例では、ユーザ 1002 が優先コールを開始するために 90 をダイヤルします。9 は優先順位アクセス番号を示し、0 はユーザが使おうとしている優先レベルを示します。このユーザは Flash Override 優先コール(優先レベル 0 のコール)を許可されていないので、ユーザは Unauthorized Precedence Announcement を受信します。
Blocked Precedence Announcement
優先コールの宛先がオフフックである場合や、宛先が同等かそれ以上の優先順位の優先コールで通話中で、コール待機機能もコール転送機能もなく、Alternate Party Diversion(APD)の発信先も指定されていない場合、あるいは共通ネットワーク リソースがない場合、ユーザは Blocked Precedence Announcement を受信します。
例
図 11-6に、Blocked Precedence Announcement の例を示します。
図 11-6 Blocked Precedence Announcement の例
この例では、ユーザ 1000 が 90-1001 をダイヤルしてユーザ 1001 に優先コールをかけます。ユーザ 1001 は、オフフックまたは同等以上の優先レベルの優先コールで通話中であり、コール待機機能もコール転送機能もなく、Alternate Party Diversion の発信先も指定されていないため、ユーザ 1000 は Blocked Precedence Announcement を受信します。
Busy Station Not Equipped for Preemption
ユーザは、ダイヤルした番号が Preemption 対応ではない場合に、このアナウンスを受信します。つまり、ダイヤルした番号が通話中で、コール待機機能やコール転送機能がなく、Alternate Party Diversion の発信先も指定されていない場合です。
優先順位パターン用の MLPP 番号計画アクセス制御
MLPP は、ユーザに対して定義されたコール検索スペースとパーティションを使用して MLPP コールを認証および検証し、優先順位パターンにアクセス制御を提供します。
ユーザの最高優先順位は、ユーザ設定時に設定されます。MLPP 機能を備えたすべてのステーション デバイスが、MLPP 対応または MLPP 非対応として設定されます。ユーザ プロファイルが適用されるデバイスは、そのデバイスから開始される優先コールに関して、そのユーザの優先レベルを継承します。デフォルト ユーザが割り当てられたデバイスは、デフォルト ユーザの Routine 優先レベルを継承します。
発信側に関連付けられたコール検索スペース(CSS)の設定によって、ユーザが優先パターンをダイヤル(優先コールを発信)できるかどうかが制御されます。Cisco CallManager には、許可される最高の優先順位値を明示的に示す設定はありません。
次の例に、第 3 のユーザに Priority レベルの優先コールをかけようとする 2 人のユーザについて、優先コールへのアクセスの違いを示します。
例
図 11-7に、優先順位パターン用の MLPP 番号計画アクセス制御の例を示します。
図 11-7 優先順位パターン用の MLPP 番号計画アクセス制御の例
次の表で、この例の 3 人のユーザを定義します。
|
|
|
|
General |
1000 |
Routine |
Flash Override |
Major |
2000 |
Routine |
Priority |
Private |
3000 |
Routine |
Routine |
この例では、パーティションとコール検索スペースを使用して優先コールへのアクセスを制御する方法を示します。
Private 3000 が優先順位パターン 93 をダイヤルして優先コールをかけると、次のイベントが発生します。
• コール処理は、Private 3000 のコール検索スペースを検索し、Routine CSS を検出します。
• Private 3000 の Routine CSS 内で、コール処理は Block Priority パーティションを検出します。
• Block Priority パーティションで、コール処理はパターン 93 を検出し、変換パターン 93 に移動します。
• 変換パターン 93 は、優先コールがこのユーザ(DN)に対してブロックされることを決定し、コール処理は Unauthorized Precedence Announcement(UPA)を発行します。
Major 2000 が番号 931000 をダイヤルして優先コールをかけると、次のイベントが発生します。
• コール処理は、Major 2000 のコール検索スペースを検索し、Priority CSS を検出します。
• Major 2000 の Priority CSS 内で、コール処理は Priority パーティションを検出します。
• Priority パーティションで、コール処理はパターン 93.XXXX を検出し、変換パターン 93.XXXX に移動します。
• 変換パターン 93.XXXX は、優先コールがこのユーザ(DN)に対して許可されることを決定します。したがって、コール処理は、ユーザ General 1000 への Priority レベルの優先コールを実行します。
MLPP トランク選択
MLPP トランク選択では、ルート リストとルート グループを使用して使用可能なトランクのハントが実行されます。Cisco CallManager Administration では、単一のダイヤル パターンを介して複数のゲートウェイへコールをルーティングし、使用可能なチャネルを検索するようにルート リストおよび関連するルート グループを設定することができます。ルート リストには、ルート リストがコールをルーティングできる多数のトランク リソースがありますが、個々のリソースは多数のゲートウェイに分散している場合があります。
ゲートウェイの集合(つまり、ルート リストとルート グループの設定)で使用可能なトランク リソースを特定できない場合、Cisco CallManager は、集合内で優先レベルの低い共有リソースの Preemption の開始を試みます。ルート リストとルート グループの設定で Preemption 対応のチャネルをさらに検索する方法は 2 つあります。
方法 1
使用可能なルート(トランク インターフェイス)ごとに、ルート リストおよび個別のルート グループを設定します。1 つのルート グループを Direct ルート グループとして指定し、残りのルート グループを Alternate ルート グループとして指定します。Direct Route トランク インターフェイス(ゲートウェイ)を Direct ルート グループの唯一のメンバーとして追加します。Alternate Route ゲートウェイを個々の Alternate ルート グループに追加します。ルート グループをルート リストに関連付け、Direct ルート グループをルート リスト内の最初のルート グループとして設定し、ルート グループの関連付けごとに Top Down 分散アルゴリズムを選択します。
この設定を使用して、まず Direct ルート グループ内の Direct ゲートウェイでアイドル状態のチャネルが検索されます。Direct ゲートウェイ内にアイドル状態のチャネルがない場合、システムは次のように、この Direct ゲートウェイに対して優先的なトランク選択を開始します。
• コール処理は、Direct ルートを選択し、このゲートウェイ デバイスにコールを発信して、ゲートウェイ デバイスが Preemption を開始できるかどうかを判別します。
• Direct ゲートウェイ デバイスが優先コール要求を拒否した場合(つまり、ゲートウェイ デバイスが Preemption を開始できない場合)は、ルート リスト内の次のルート グループが現在のルートとして選択されます。現在のゲートウェイでアイドル状態のチャネルが見つかるか、現在のゲートウェイ デバイスが Preemption を開始するか、ルート リストとルート グループの集合内のすべてのゲートウェイ デバイスが検索されるまで、この手順が続行されます。
方法 2
ルート リストおよび単一のルート グループを設定します。ルート グループにトランク インターフェイス(ゲートウェイ)を追加し、 Direct Route ゲートウェイをルート グループ内の最初のゲートウェイとして位置決めします。ルート グループをルート リストに関連付け、Top Down 分散アルゴリズムを選択します。この設定を使用して、システムはまずルート グループ内のすべてのゲートウェイでアイドル状態のチャネルを検索します。ルート グループ内のどのゲートウェイにもアイドル状態のチャネルがない場合は、次のように、ルート グループ内の最初のゲートウェイ(つまり、Direct Route ゲートウェイ)で優先的なトランク選択が開始されます。
• コール処理は、分散アルゴリズムに基づいて集合から現在のルートを選択し、ゲートウェイ デバイスが Preemption を開始できるかどうかを判別するために、このゲートウェイ デバイスへコールを発信します。
• 現在のゲートウェイ デバイスが優先コール要求を拒否した場合(つまり、ゲートウェイ デバイスが Preemption を開始できない場合)、コール処理は集合内の次のゲートウェイを現在のルートとして選択し、ゲートウェイ デバイスが Preemption を開始するか、ルート リストとルート グループの集合内のすべてのゲートウェイ デバイスが検索されるまで、この手順を続行します。
例
次の例は、Flash レベルの着信優先コールが使用可能なトランク デバイスを探している場合に、使用可能なトランク デバイスを検索する 2 つの方法を示しています。
図 11-8に、ルート リストとルート グループを使用して使用可能なトランク デバイスをハントする MLPP トランク選択の例を示します。
図 11-8 MLPP トランク選択(ハント)の例
方法 1 では、次の一連のイベントが発生します。
1. Flash レベルの着信優先コールがルート リスト RL に到達し、まずルート グループ RG1 へ移動します。ここで、コールはトランク デバイス 1 へ送信されますが、トランク デバイス 1 は通話中です。
トランク デバイス 1 の場合、このデバイスを使用しているコールを差し替えるには、Flash よりも優先順位の高いコールである必要があります。
2. コールはルート リスト RL 内で次のルート グループを探し、ルート グループ RG2 を検出します。ルート グループ RG2 にはトランク デバイス 2 が含まれています。これも通話中ですが、Priority よりも優先レベルの高い優先コールであれば、トランク デバイス 2 で Preemption を実行できます。
このコールの方が優先順位が高いので、トランク デバイス 2 の既存のコールが差し替えられます。
方法 2 では、次の一連のイベントが発生します。
1. Flash レベルの着信優先コールがルート リスト RL に到達します。これには、ルート グループ RG1 だけが含まれています。
2. ルート グループ RG1 には 3 つのトランク デバイスが含まれています。
RG1 内の 3 つのトランク デバイスのうち、トランク デバイス 1 とトランク デバイス 2 は通話中なので、システムは使用可能なトランク デバイス 3 にコールを発信します。
MLPP 階層設定
デバイスの MLPP 設定は次の階層に従っています。
• デバイスの MLPP Indication が Off に設定されている場合、デバイスは MLPP コールのインジケータを送信できません。デバイスの MLPP Preemption が Disabled に設定されている場合、デバイスはコールを差し替えることができません。これらの設定は、デバイスのデバイス プール設定を上書きします。
• デバイスの MLPP Indication が On に設定されている場合、デバイスは MLPP コールのインジケータを送信できます。デバイスの MLPP Preemption が Forceful に設定されている場合、デバイスはコールを差し替えることができます。これらの設定は、デバイスのデバイス プール設定を上書きします。
• デバイスの MLPP Indication が Default に設定されている場合、デバイスはそのデバイスのデバイス プールから、MLPP コールのインジケータの送信の設定を継承します。デバイスの MLPP Preemption が Default に設定されている場合、デバイスはそのデバイスのデバイス プールから、コールの差し替えの設定を継承します。
デバイス プールの MLPP 設定は次の階層に従っています。
• デバイス プールの MLPP Indication が Off に設定されている場合、デバイス プール内のデバイスは MLPP コールのインジケータを送信できません。デバイス プールの MLPP Preemption が Disabled に設定されている場合、デバイス プール内のデバイスはコールを差し替えることができません。これらの設定は、MLPP エンタープライズ パラメータ設定を上書きします。
• デバイス プールの MLPP Indication が On に設定されている場合、デバイス プール内のデバイスは MLPP コールのインジケータを送信できます。デバイス プールの MLPP Preemption が Forceful に設定されている場合、デバイス プール内のデバイスはコールを差し替えることができます。これらの設定は、MLPP エンタープライズ パラメータ設定を上書きします。
• デバイス プールの MLPP Indication が Default に設定されている場合、デバイスは MLPP Indication Status エンタープライズ パラメータから、MLPP コールのインジケータの送信の設定を継承します。デバイス プールの MLPP Preemption が Default に設定されている場合、デバイスは MLPP Preemption Setting エンタープライズ パラメータから、コールの差し替えの設定を継承します。
MLPP Indication Status エンタープライズ パラメータは、エンタープライズ内のデバイス プールおよびデバイスのインジケータ ステータスを定義しますが、デバイス プールおよび個々のデバイスのデフォルト以外の設定でその値を上書きできます。このエンタープライズ パラメータのデフォルト値は、 MLPP Indication turned off です。
MLPP Preemption Setting エンタープライズ パラメータは、エンタープライズ内のデバイス プールおよびデバイスの Preemption 機能を定義しますが、デバイス プールおよび個々のデバイスのデフォルト以外の設定でその値を上書きできます。このエンタープライズ パラメータのデフォルト値は、 No preemption allowed です。
MLPP Domain Identifier エンタープライズ パラメータは、MLPP ドメインを指定します。MLPP サービスはドメインだけに適用されます。つまり、特定のドメインに属す加入者と、ネットワークおよびアクセス リソースだけに適用されます。MLPP 加入者からのコールに属す接続とリソースには、優先レベルと MLPP ドメイン識別子のマークが付けられます。同じドメイン内の MLPP ユーザからの優先順位の高いコールだけが、同じドメイン内の優先順位の低いコールを差し替えることができます。
サービス パラメータの特別なトレース設定
MLPP は、トレース用のサービス パラメータを発行します。
詳細については、『 Cisco CallManager Serviceability System Guide 』および『 Cisco CallManager Serviceability アドミニストレーション ガイド 』を参照してください。
優先コール用の CDR の録音
MLPP 優先コールは、Call Detail Records(CDR)を生成します。CDR は、優先コールの優先レベルを示します。
通常は、同じ優先レベルのコール レッグが適用されます。転送コールや会議コールでは優先レベルが異なる場合があるので、Cisco CallManager CDR はコールの各レッグの優先レベルを示します。
Cisco CallManager CDR は、差し替えられたコールの切断の Preemption 値を記録します。
詳細については、『 Cisco CallManager Serviceability System Guide 』および『 Cisco CallManager Serviceability アドミニストレーション ガイド 』を参照してください。
コール転送
MLPP は、次のリストで説明しているように、コール転送機能と通信します。
• コールの話中転送
–オプションで、任意の MLPP 対応ステーションに対して事前設定の Precedence Alternate Party ターゲットを設定できます。
–Cisco CallManager は、コールに Precedence Alternate Party Diversion 手順を適用する前に、通常の方法で優先コールを転送する Call Forward Busy 機能を適用します。
–着信優先コールの優先順位が既存のコールの優先順位と同じかそれより低い場合、コール処理は通常のコール転送機能を呼び出します。
–優先コールの宛先ステーションが Preemption 対応ではない場合(つまり、MLPP が設定されていない場合)、コール処理はコール転送機能を呼び出します。
–システムは、転送された複数のコール間でのコールの優先順位を保存します。
–着信優先コールの優先順位が既存のコールの優先順位より高い場合は、Preemption が実行されます。優先コールが送信されたステーションの電話が切られるまで、アクティブなコールによって差し替えられるコールの両方のユーザに、連続的な Preemption トーンが再生されます。電話を切ると、優先コールが送信されたステーションに優先順位呼び出し音が再生されます。宛先ステーションは、オフフックになると、優先コールに接続されます。
• 応答なし時のコール転送
–コールの優先レベルが Priority 以上である場合、コール処理は、転送プロセスでコールの優先レベルを保存し、転送先のユーザの差し替えを試みます。
–優先コールの宛先に対して Alternate Party が設定されている場合、コール処理は、Precedence Call Alternate Party タイムアウトの期限が切れた後に、優先コールを代替パーティに転送します。
優先コールの宛先に対して Alternate Party が設定されていない場合、コール処理は、優先コールを Call Forward No Answer 設定に転送します。
–優先コールは通常、ボイスメール システムではなくユーザにルーティングされます。管理者は、優先コールがボイスメール システムに転送されるのを避けるため、Use Standard VM Handling For Precedence Calls エンタープライズ パラメータを設定します。詳細については、「MLPP のエンタープライズ パラメータの設定」を参照してください。
コール転送
MLPP は、コール転送機能と通信します。ブラインド転送と打診転送の場合は、コンサルト コールも含め、転送されるコールの各接続が、コールが確立されたときに接続に割り当てられた優先順位を維持します。
共有回線
MLPP は、共有回線と通信します。保留中のコールがある共有回線表示は、同じ電話番号(DN)を持つ別の端末への優先順位の高いコールを確立するため、差し替えられる可能性があります。この場合、保留中の元のコールは切断されず、優先コールが接続されます。優先コールが終了すると、ユーザは保留中の元のコールを取得できます。
コール待機
MLPP は、次のリストで説明しているように、コール待機機能と通信します。
• ネットワーク リソースの不足のためコール待機ステータスと MLPP 優先コールの間に競合が発生した場合、コールは差し替えられます。
• コール待機が設定された宛先ステーションに優先コールが発信されると、次のイベントが発生します。
–要求された優先順位が既存のコールの優先順位よりも高い場合、既存のコールは差し替えられます。宛先ユーザが Preemption 対応ではない場合、コール処理は、通常のコール待機機能とアラートを呼び出します。優先コールの優先レベルが Priority 以上である場合、宛先ユーザは優先コール待機トーンとカデンツを受信します。
–要求された優先レベルが既存のコールの優先順位と同じである場合、コール処理は、通常のコール待機機能を呼び出します。優先コールの優先順位が Routine である場合、コール処理は、標準コール待機トーンで宛先に警告します。優先コールの優先順位が Priority 以上である場合、コール処理は、優先コール待機トーンで宛先に警告します。
–要求された優先レベルが既存のコールの優先順位より低い場合、コール処理は、通常のコール待機機能を呼び出します。優先コールの優先順位が Routine である場合、コール処理は、標準コール待機トーンで宛先に警告します。優先コールの優先順位が Priority 以上である場合、コール処理は、優先コール待機トーンで宛先に警告します。
–デバイスに複数の表示がある場合、宛先ユーザは、優先順位の低いコールを保留にし、優先順位の高いコールに受信応答することができます。優先順位の高いコールが終了すると、宛先ユーザは、保留にした優先順位の低いコールを再開できます。
コール保存
Cisco CallManager Call Preservation 機能によって保存される MGCP トランク コールまたは接続は、コール保存機能が呼び出された後、優先レベルと MLPP ドメインを保存します。デバイスが Cisco CallManager に登録された後、システムは、保存されたコールを Cisco CallManager システムのデバイス層だけに保存します。そのため、保存されたコールは 2 つの半々のコールとして扱われます。これらのデバイスで Preemption が実行された場合、一方のレッグだけが他方のレッグへの Preemption プロトコルに従うことができます。システムは、RTP ポートのクローズによってしかコールの終了を検知できません。
自動代替ルーティング
AAR の拡張機能である Automated Alternate Routing (AAR) for Insufficient Bandwidth 機能は、ロケーションの帯域幅が不十分で Cisco CallManager がコールをブロックした場合に、代替番号を使用し、 Public Switched Telephone Network (PSTN)またはその他のネットワークを介してコールを再ルーティングするため、自動的にフォールバックするメカニズムを提供します。この機能を使用すると、発信者は電話を切ったり着信側に再びダイヤルする必要がなくなります。
優先コールの試みが AAR サービスの起動条件と一致した場合、優先コールは AAR 設定の指定に従い、PSTN またはその他のネットワークを介して再ルーティングされます。Cisco CallManager は、コールがルーティングされたネットワーク インターフェイスの MLPP Indication Enabled および MLPP Preemption Enabled の設定に基づいて、コールが最初から PSTN またはその他のネットワークを介してルーティングされた場合と同じように、コールの優先順位を処理します。
自動代替ルーティングの設定の詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 自動代替ルーティングのグループ設定 」の項を参照してください。
MGCP と PRI プロトコル
MLPP は、Cisco CallManager が MGCP プロトコルを使用して制御し、MLPP Preemption Enabled として設定されたターゲット Voice over IP ゲートウェイ上の T1-CAS および T1-PRI(北米)インターフェイスに対してだけ、共通ネットワーク ファシリティ プリエンプションをサポートします。