ビデオ テレフォニーについて
次の各トピックでは、Cisco Unified Communications Manager 環境におけるビデオ テレフォニーの詳細を説明します。
• 「ビデオ コール」
• 「ビデオ コーデック」
• 「ビデオ ネットワーク」
• 「H.323 ビデオ」
• 「H.239 による H.323 コールの拡張ビデオ チャネル」
• 「Skinny Client Control Protocol ビデオ」
• 「Skinny Client Control Protocol ビデオ ブリッジ」
• 「SIP ビデオ」
• 「帯域幅の管理」
• 「ビデオ コール用の電話機の設定」
• 「ビデオ コールの追加設定」
• 「ビデオ会議に対する会議制御」
ビデオ コール
一般的なビデオ コールには、上下用の 2 つまたは 3 つのリアルタイム プロトコル(RTP)のストリーム(つまり、4 または 6 ストリーム)があります。コールには、次のタイプのストリームを含めることができます。
• オーディオ(通常のコールと同一のコーデックに G.722 および G.728 コーデックを追加)
• 別ポート上のビデオ(H.261、H.263、H.263+、H.264、および Cisco VT Camera wideband video コーデック)
• 遠端カメラ制御(FECC)(オプション)
SIP ビデオは、SIP シグナリング インターフェイス(SSI)を使用して、次のビデオ コールをサポートします。
• SIP から SIP
• SIP から H.323
• SIP から SCCP
• SIP クラスタ間トランク
• H.323 トランク
• SIP および H.323 トランクの組み合せ
SIP ビデオ コールには、ビデオ会議のメディア制御機能もあります。
ビデオ コールのコール制御は、他のすべてのコールを管理するコール制御と同じように動作します。 「メディア リソースの管理」 の章の「コール制御」を参照してください。
(注) ビデオ会議ブリッジを Cisco Unified Communications Manager で自動的に割り当てる方法の詳細についてには、「インテリジェント ブリッジ選択」を参照してください。
ビデオ コーデック
通常のビデオ コーデックには、古いビデオ コーデックの H.261、インターネット プロトコル(IP)ビデオの提供時に使用される新しいコーデックの H.263、および高品質コーデックの H.264 が含まれます。システムでは、H.264 は、発信および終端エンドポイントで Skinny Client Control Protocol(SCCP)、H.323、および SIP を使用するコール専用にサポートされています。また、リージョンとロケーションもサポートされています。
H.261 および H.263 コーデックは、次のパラメータおよび標準値を示します。
• ビット レートの範囲は、64 kb/s ~数 mb/s です。これらのビット レートは、100 b/s の任意の倍数にすることができます。H.261 および H.263 はビット レートが 64 kb/s 未満でも機能しますが、このような低ビット レートの場合はビデオ品質が低下します。
• 解像度:
– One-quarter Common Interchange Format(QCIF)(解像度は、176x144)
– Common Interchange Format(CIF)(解像度は、352x288)
– 4CIF(解像度は、704x576)
– Sub QCIF(SQCIF)(解像度は、128x96)
– 16CIF(解像度は、1408x1152)
– Custom Picture Format
• フレーム レート:15 fps、30 fps
• Annex:F、D、I、J、K、L、P、T、N
固定ビット レート コーデックである Cisco VT Camera wideband video コーデックは、電話機に接続された PC で機能します。このコーデックを使用すると、電話機が受信するコールに PC を関連付けることができます。 Cisco Unified Communications Manager は、現在、クラスタ内の Cisco VT Camera wideband video コーデック コールをサポートしますが、クラスタ間の Cisco VT Camera wideband video コーデック コールはサポートしていません。
Cisco Unified Video Advantage は、Cisco VT Camera wideband video コーデックと H.263 コーデックをサポートしており、それぞれクラスタ内コールとクラスタ間コールに使用可能です。関連する機能とリージョンを正しく設定していることが、サポートの前提になります。また、このサポートは通話中にも適用されます。
ビデオ コールの帯域幅は、オーディオとビデオの帯域幅の合計に一致します。合計帯域幅には、オーバーヘッドは含まれません。
例
384 kb/s のビデオ コールを、64 kb/s(オーディオ)による G.711 と 320 kb/s(ビデオ)で構成することができます。この合計には、オーバーヘッドは含まれません。ビデオ コールのオーディオ コーデックが 24 kb/s による G.729 である場合、ビデオ レートは、合計帯域幅 384 kb/s を維持するために増加します。コールが H.323 エンドポイントを使用する場合、H.323 エンドポイントは、利用可能な合計ビデオ帯域幅より少ない帯域幅を使用することができます。プロトコルに関係なく、エンドポイントは常にコールの最大ビット レート未満で送信することを選択できます。
ビデオ ネットワーク
図 43-1 に、ビデオ ネットワークの例を示します。正常なビデオ ネットワークでは、任意のエンドポイントが、他のすべてのエンドポイントにコールできます。両方のエンドポイントでビデオが有効である場合だけ、ビデオのアベイラビリティが存在します。ビデオ機能は、トランク全体に拡張できます。
図 43-1 ビデオ ネットワークの例
シスコのビデオ会議のポートフォリオは、次の H.323 デバイスで構成されます。
• Cisco Unified Videoconferencing 3511(Video Bridge または Media Control Unit [MCU])
• Cisco Unified Videoconferencing 3521(BRI H.323/H.320 ゲートウェイ)
• Cisco Unified Videoconferencing 3526(PRI H.323/H.320 ゲートウェイ)
• Cisco Unified Videoconferencing 3540 MCU(複数のカードを使用可能で、H.323 と Skinny Client Control Protocol をサポートするシャーシベースのブリッジ/ゲートウェイ ユニット。 IPVC Gateway は H.323 だけをサポートします)
• IOS H.323 Gatekeeper
これらの各デバイスは、インターネット プロトコル(IP)ネットワークをサポートし、ゲートウェイは統合サービス デジタル ネットワーク(ISDN)をサポートします。
Cisco Unified Communications Manager の管理に Cisco Unified Videoconferencing 3511(MCU)および 3540(MCU)を設定する方法の詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の 「会議ブリッジの設定」 の章を参照してください。
ビデオに対するオーディオ専用デバイスの有効化
オーディオ専用デバイスをビデオに対して有効にするには、Cisco アプリケーションの Cisco Unified Video Advantage を使用します。アプリケーションを Cisco Unified IP Phone に関連付けます。この関連付けを実行できるのは、コールの発信前またはコール中(通話中)です。 Cisco Unified IP Phone 7940/41、7960/61、および 7970/71 は Cisco Unified Video Advantage をサポートしています。
たとえば、Cisco Unified IP Phone 7960 から Video Phone にコールを発信するとします。コールはオーディオ専用として確立されます。Cisco Unified Video Advantage を Cisco Unified IP Phone 7960 に関連付けると、コールはビデオ コールとして再確立されます。
関連付けが存在する間、Cisco Unified Communications Manager は既存の SCCP メッセージを介して IP Phone の最新機能を受信します。最新機能を受信すると、Cisco Unified Communications Manager はビデオに関してネゴシエートします。
メディア レイヤは、リージョンでビデオが許可されているかどうか、および両端がビデオ機能に対応しているかどうかをチェックします。これらの条件が満たされると、メディア レイヤがビデオ チャネルを確立し、ビデオ コールが確立されます。帯域幅管理の制約違反を回避するには、リージョン チェックを行う必要があります。
最初のコールで IP Phone を使用し、ビデオを使用しない場合は、オーディオ ロケーションの帯域幅だけが予約され、メディア レイヤがオーディオ専用コールを確立します。
H.323 ビデオ
H.323 ビデオは、次の特性を示します。
• H.323 エンドポイントを H.323 電話機、H.323 ゲートウェイ、または H.323 トランクとして設定可能です。
• 自動転送、ダイヤル プラン、他のコール ルーティング関連機能が、H.323 エンドポイントで機能します。
• H.323 ビデオ エンドポイントは、保留、再開、転送、パーク、およびその他の類似機能を開始することはできません。
• H.323 エンドポイントが Empty Capability Set(ECS)をサポートする場合は、エンドポイントの保留、パークなどが可能です。
• 一部のベンダーでは、コールが転送またはリダイレクトされる際に、コールの帯域幅を増やすことができないようにコール設定を実装しています。このようなケースでは、最初のコールがオーディオであると、ビデオ エンドポイントに転送された場合に、ユーザはビデオを受信できません。
• 現在、ビデオのメディア ターミネーション ポイント(MTP)またはビデオ トランスコーダは存在しません。オーディオ トランスコーダまたは MTP がコールに挿入されている場合、そのコールはオーディオだけになります。これに該当するのは、IPVC オーディオ変換機能を使用していない場合です。IPVC トランスコーダを使用する場合は、オーディオを変換して、ビデオを送信/受信することができます。
• H.323 ビデオ コールでは、ユーザがビデオ コールの帯域幅を指定する必要があります。
ダイナミック H.323 アドレッシング
H.323 クライアントには、ゲートキーパーに登録されている E.164 アドレスを設定できます。E.164 アドレッシングを使用すると、Cisco Unified Communications Manager がゲートキーパーに代わってすべてのコールをルーティングできるため、H.323 設定とコール ルーティングが容易になります。設定対象のゲートキーパーには、次の特性が必要です。
• ルーティング用の Cisco Unified Communications Manager にすべてのコールを自動転送します。
• Cisco Unified Communications Manager からルーティングされたコールを Cisco Unified Communications Manager に戻してはなりません。
ゲートキーパーへの登録
Cisco Unified Communications Manager はブート時に、E.164 アドレスや、H.323 クライアントごとに設定されたゲートキーパーなどの、スタティック設定情報をロードします。同一のゲートキーパー ゾーンにある H.323 クライアントは、同一グループのままになります。そのグループに対して、ゲートキーパーへの登録が起動されます。プロセスでは、グループの各メンバーを個別に登録する必要はありません。
同じゲートキーパーとゾーンに所属する H.323 クライアントは、同じグループに所属し、このグループに対して登録が 1 回だけ起動されます。同じゲートキーパーに最初のグループとして所属するものの、所属するゲートキーパー ゾーンが異なる H.323 デバイスは、別々のグループであり、このグループに対して登録が 1 回だけ起動されます。同一グループのメンバーはすべて、同一のテクノロジー プレフィックスを使用します。
コール処理
H.323 クライアントを着信側とする発信コールでは、Cisco Unified Communications Manager が H.323 デバイスにコールを DN 単位でルーティングします。 Cisco Unified Communications Manager は H.323 デバイス設定を使用して、ゲートキーパーが設定されているかどうかを判別し、設定済みの E.164 アドレスを使用して Admission Request Message(ARQ; 許可要求)を送信します。デバイスがゲートキーパーに登録されると、ゲートキーパーはデバイスの現在の IP アドレスを使用して、Admission Confirm Message(ACF; アドミッション確認)を送信します。 Cisco Unified Communications Manager はコールをこのアドレスに直接ルーティングします。
H.323 デバイスを発信側とする着信コールでは、ゲートキーパーが Cisco Unified Communications Manager にコールをルーティングします。 Cisco Unified Communications Manager は発信元の E.164 アドレスを使用して、発信側デバイスが設定されているかどうかを判別します。次に、その設定を使用して、その電話機の設定を特定します。電話機の設定には、リージョン、ロケーション、MRGL などが含まれています。
次の事項に注意してください。
• システムでは、H.323 トランク、クラスタ間トランク、および H.323 ゲートウェイに対する E.164 アドレッシングはサポートされていません。
• ゲートキーパーによって制御される H.323 クライアントが設定されている場合、Cisco Unified Communications Manager はデバイス名を解決しません。 Cisco Unified Communications Manager は H.323 クライアントのゲートキーパー フィールドにアクセスして、デバイスを検出することができます。このため、Cisco Unified Communications Manager はデバイス名の名前解決を避けることができます。
• Cisco Unified Communications Manager は、ゲートキーパーによって制御される H.323 クライアントごとに、E.164 番号を最大で 1 つサポートします。ゲートキーパー フィールドにデータを入力した場合、2 番目の DN を設定することはできません。複数の DN が設定されている H.323 クライアントがある場合、追加のゲートキーパー情報をデータベースに追加することはできません。
• ゾーン プレフィックスがない場合、ゲートキーパーはゾーン情報を使用してコールをルーティングします。
設定に関する注意事項
設定時は次の事項に注意してください。
• H.323 クライアントの設定でゲートキーパーを指定するには、そのゲートキーパーが Cisco Unified Communications Manager で設定されていることを確認する必要があります。デフォルトでは、ゲートキーパー フィールドは空になっています。
• H.323 クライアント設定に、[ゲートキーパー名(Gatekeeper Name)]、[テクノロジープレフィックス(Technology Prefix)]、[ゾーン(Zone)]、および [E.164] フィールドを必ず追加してください。[ターミナルタイプ(Terminal Type)] を追加する必要はありません。デフォルトは、ゲートウェイ タイプを指定します。これらの各フィールドを設定するときにゲートキーパーがゲートキーパー フィールドで選択されていない場合、これらのフィールドにデータを入力することはできません。
• ゲートキーパー フィールド、ゾーン フィールド、テクノロジー プリフィックス フィールド、および E.164 情報は、H.323 クライアント設定の [ゲートキーパー情報(Gatekeeper Information)] グループの下に表示されます。
• H.323 クライアントが別のクライアントと同じゲートキーパー、ゾーン、およびテクノロジー プレフィックスを使用する場合は、両方のクライアントを同一グループに含めることを考慮します。このグループは、ゲートキーパーに対する単一エンドポイントを表します。
• H.323 クライアントおよびトランクに、同一のゾーン名を使用することはできません。H.323 クライアントが使用するゾーンは、H.323 トランクや、ゲートキーパーによって制御されるクラスタ間トランクが使用するゾーンとは異なる必要があります。
• Send Product Id and Version ID サービス パラメータが [True] に設定されていることを確認します。
H.323 クライアントに E.164 アドレスとゲートキーパーを設定する場合、設定が更新されると、データベースがこの情報を格納します。この情報は、ブート時またはデバイスのリセット時にロードされます。
サードパーティの H.323 デバイスのサポート
拡張ビデオ チャネル機能は、サードパーティのビデオ エンドポイント間での H.239 の相互運用性と、Cisco Unified Voice Conferencing をサポートしています。 Cisco Unified Communications Manager では、プレゼンテーションや、会議のライブ転送に拡張ビデオ チャネルを使用できます。この機能は、H.245 シグナリングによるマルチ ビデオ チャネルのサポートに重点を置いています。このマルチチャネルのサポートの基盤となるのが次のプレゼンテーション アプリケーションです。
• Natural Presenter Package(サードパーティ ベンダーの Tandberg 製)
• People+Content(サードパーティ ベンダーの Polycom 製)
Natural Presenter Package と People+Content のいずれも、H.239 プロトコルを使用して機能のネゴシエートを実行し、追加ビデオ チャネルのロールを定義します。
(注) Tandberg 製の Natural Presenter Package と Polycom 製の People+Content のみがプレゼンテーション モード用に H.239 をサポートしています。
(注) ただし、Tandberg と Polycom から提供されているプレゼンテーション アプリケーションはオプションの機能です。追加ビデオ チャネルのネゴシエートを実行するには、このオプション機能のいずれかが使用可能になっている必要があるほか、発信者と被発信者の両方のエンドポイントで H.239 が有効になっている必要があります。そうでない場合、コールのビデオ チャネルが 1 つに制限されます。
H.323 デバイスによるプレゼンテーション機能の起動
Tandberg と Polycom の端末を使用すると、さまざまなコンポーネント(VCR、プロジェクター、PC など)のプレゼンテーション資料を共有できます。このコンポーネントを端末に物理的に接続できます。また、ベンダーから提供されるプレゼンテーション アプリケーションを PC で実行して、プレゼンテーション イメージを転送することも可能です。プレゼンテーション ソースと、端末へのコンポーネントの接続は、H.239 を使用してビデオ チャネルを確立するメカニズムとは無関係です。
(注) プレゼンテーション ソースの設定方法の詳細については、ビデオ端末のユーザ ガイドを参照してください。
H.239 対応の 2 台の端末がビデオ コールを確立するとき、これらの端末は、会議の参加者用のメイン ビデオ チャネルと、追加ビデオ チャネル用の拡張ビデオ機能(H.239 機能)を確保するために、自身のビデオ機能を宣言します。H.239 機能のシグナルは次のように構成されます。
1. H.239 をサポートしていることを示す信号を端末が送信します。また、これらの端末は、関連コマンドや追加ビデオ チャネルを管理する指示信号も送信します。これにより、両方の端末がコールで複数のビデオ チャネルを開くことができると認識できます。
2. 端末は、1 つまたは複数の拡張ビデオ コーデックの機能を送信して、追加チャネルのビデオ コーデックの機能を提示します。この端末は、追加ビデオ チャネルのロールを指定する必要があります。定義されるロールのラベルを次に示します。
– ライブ ビデオ:このチャネルは標準的に処理されます。ユーザのライブ ビデオに適しています。
– プレゼンテーション:このチャネルは、デバイスに配信されるトークン管理のプレゼンテーションを中継します。
機能に関するやり取りが行われた直後、従来のビデオ コールと同じように、両方の端末は双方向のオーディオ チャネルとメイン ビデオ チャネルを開きます。
追加ビデオ チャネルのオープン
実装されているサードパーティ製の端末に応じて、ベンダー間で追加ビデオ チャネルの処理は異なります。
Natural Presenter Package(Tandberg)
Tandberg の場合、要求に応じて追加ビデオ チャネルが開始されます。Tandberg のデバイスは、メイン ビデオ チャネルが確立されても、追加ビデオ チャネルをすぐに開きません。追加チャネルが開かれるのは、発信者のいずれか(プレゼンター)がプレゼンテーションのソースを指定し、プレゼンテーションを開始するコマンドを実行したときです。
Tandberg ユーザがプレゼンテーションの共有を開始することを決定すると、Tandberg は、プレゼンテーションのイメージを受信するための拡張ビデオ チャネルを開くことをコール相手に要求します。このため、Tandberg ユーザ間のコールでは、一方向のみの追加ビデオ チャネルが使用されます。
People+Content(Polycom)
Tandberg とは異なり、Polycom の端末は、そのメカニズムのデフォルトの動作として、両方の端末が追加ビデオ チャネルをサポートしていることを確認した後、すぐに追加ビデオ チャネルを開きます。
(注) 両方の端末が H.239 をサポートし、拡張ビデオ チャネル機能が有効になっている場合、チャネルは自動的に確立されますが、 どちらかの端末がプレゼンテーションの共有を開始するまで、追加チャネルからは何も表示されません。
Polycom は、追加ビデオ チャネルを使用するかどうかに関係なく、追加ビデオ チャネルをコール相手に要求します。このため、Polycom ユーザ間のコールでは、1 つのデバイスのみがプレゼンテーションのイメージやビデオを送信する場合でも、双方向のビデオ チャネルがデバイス間で開かれます。
このような実装により、何かを提示するトークンを取得することを決定したときには、コールの両端で追加ビデオ チャネルでの転送準備ができていることになります。2 つのビデオ チャネルのどちらかはアイドル(なにも送信しない)状態ですが、Polycom デバイスは帯域幅を制御して負荷を効率化します。
(注) この追加ビデオ チャネルの扱い方の違いは、H.239 の実装には影響しません。 Cisco Unified Communications Manager は、H.323 対 H.323 のコールでは受信チャネル要求を行いません。端末間ですべてのチャネル要求を中継するだけです。
(注) Cisco Unified Communications Manager は、追加のビデオ チャネルのセットに対して双方向の転送を強制しません。これは、H.239 プロトコルの要件ではないためです。
追加ビデオ チャネルでのコール アドミッション制御(CAC)
Cisco Unified Communications Manager の次のコール アドミッション制御ポリシーが追加ビデオ チャネルに適用されます。
Cisco Unified Communications Manager は、ロケーション設定に基づいて、追加ビデオ チャネルによる帯域幅の使用を制限します。追加ビデオ チャネルが確立されているとき、Cisco Unified Communications Manager はロケーション プールで充分な帯域幅が使用できる状態が維持されることを確認し、適切な帯域幅を予約します。必要な帯域幅が使用できない場合、Cisco Unified Communications Manager は使用可能な帯域幅をゼロにするようにチャネルに指示します。
リージョンの設定やポリシーが、追加ビデオ チャネルをサポートするために変更されることはありません。
従来の Cisco Unified Communications Manager のリージョン ポリシーは、ビデオ チャネルが 1 つのコールのみをサポートしており、このコールの帯域幅の合計使用量がリージョンの設定で指定されている値を超えることはありません。
管理者が H.239 コールを対象としてリージョンのビデオ帯域幅に一定の制限を設定した場合、そのリージョンの値が、ビデオ チャネルごとに独立して要求される帯域幅に対して使用されるため、Cisco Unified Communications Manager でリージョン ポリシーの違反が発生します。
例:
リージョンの帯域幅が 384 Kbps に設定されており、オーディオ チャネルが 64 Kb/sを使用している場合、各ビデオ チャネルの使用可能な最大帯域幅は、(384 Kb/s - 64 Kb/s) = 320 Kb/s です。H.239 コールで使用される最大帯域幅は、(オーディオ帯域幅 + 2*(384 - オーディオ帯域幅)) = 704 Kb/s で、リージョンで指定されている帯域幅 384 Kb/s を超えます。
(注) H.239 コールのリージョンとロケーションの両方の帯域幅制限を緩和して、Cisco Unified Communications Manager が関与しなくても H.239 デバイスが両方のビデオ チャネルの負荷を再調整およびバランシングできるようにすることを検討する必要があります。
許容ビデオ チャネル数
Cisco Unified Communications Manager 8.0(1) は、次の理由により、最大で 2 つのビデオ チャネルだけをサポートしています。
• Tandberg と Polycom のいずれも、サポートするビデオ チャネルは 2 つだけです。このうち、1 つはメイン ビデオ用で、もう 1 つはプレゼンテーション用です。
• H.239 では、プレゼンテーションのために H.320 ベースのシステムが従来の H.320 ビデオ チャネルを分割できるようにする Additional Media Channel(AMC)のみが定義されています。
H.239 Command and Indication(C&I)メッセージ
Command and Indication(C&I)メッセージは、 H.239 がプレゼンテーション ロールや Live ロールのトークンを管理したり、ビデオ フロー制御の解放要求をデバイスに許可して、追加のメディア チャネルを操作できるようにしたりするために使用されます。 Cisco Unified Communications Manager はすべての C&I メッセージをサポートしています。Cisco Unified Communications Manager は、C&I メッセージを受け取ると、コール相手に適切に中継します。
フロー制御解放の要求メッセージと応答メッセージは、相手側のフロー制御解放の要求に使用できるため、エンドポイントは指定されたチャネルを指定されたビット レートで送信できます。
(注) コール相手は、フロー制御解放の応答に示されているとおりに要求を受け付けることもあれば、受け付けないこともあります。
プレゼンテーション ロールのトークンのメッセージにより、 H.239 デバイスはプレゼンテーションのトークンを取得できます。コール相手は、要求を受諾または拒否できます。プレゼンターのデバイスは、不要になった時点で、トークンの解放メッセージを送信します。
トポロジとプロトコルの相互運用性の制限
Cisco Unified Communications Manager 8.0(1) は、H.323 対 H.323 のコールで H.239 だけをサポートしています。 Cisco Unified Communications Manager により、H.239 コールを H.323 クラスタ間トランクまたは複数のノード経由で確立できます。H.239 対応のデバイスが、非 H.323 デバイスにコールを実行した場合、H.239 の機能は無視され、コールは Cisco Unified Communications Manager でサポートされる従来のビデオ コールと同じように実行されます。
メディア ターミネーション ポイントまたはトランスコーダがコールに挿入されていると、追加ビデオ チャネルは Cisco Unified Communications Manager でサポートされません。この場合、コールは通常のビデオ コールにフォールバックされます。
コール中の機能の制限
Cisco Unified Communications Manager では、H.323 対 H.323 のダイレクト コールでのみ、追加ビデオ チャネルを開くことができます。
警告 コール転送や保留/再開操作など、コール中の機能を実行しないでください。実行すると、問題が発生し、追加ビデオ チャネルが切断されることがあります。
Skinny Client Control Protocol ビデオ
Skinny Client Control Protocol ビデオは、次の特性を示します。
• Skinny Client Control Protocol 電話機がビデオ機能を通知すると、相手方がビデオをサポートする場合は、Cisco Unified Communications Manager が自動的にビデオ チャネルを開きます。
• Skinny Client Control Protocol ビデオ コールでは、システム管理者がリージョンを使用してビデオ コール帯域幅を決定します。システムは、ユーザに対してビット レートを問い合せしません。
Skinny Client Control Protocol ビデオ ブリッジ
ビデオ会議では、Skinny Client Control Protocol ビデオ ブリッジが必要になります。Skinny Client Control Protocol ビデオ ブリッジは、次の特性を示します。
• Skinny Client Control Protocol ビデオ ブリッジでは、オーディオ ブリッジと同一のセットアップが必要です。
• Skinny Client Control Protocol ビデオ ブリッジは、会議においてオーディオとビデオの混在をサポートします。
• メディア リソース グループ リストは、エンドポイントがオーディオまたはビデオ ブリッジを受信するかどうかを決定します。つまり、会議を設定するユーザが行うメディア リソース グループ リストの設定によって、ビデオ会議になるか、またはオーディオだけの会議になるかが決定されます。メディア リソース グループ リストの設定の詳細については、『Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド』の 「メディア リソース グループ リストの設定」 の章を参照してください。
SIP ビデオ
Cisco Unified Communications Manager ビデオは、SIP をサポートし、SIP のトランクと回線はどちらもビデオ シグナリングをサポートします。SIP は、H.261、H.263、H.263+、H.264 の各ビデオ コーデックをサポートします(VTA で使用される wideband video コーデックはサポートしません)。
次の表は、SIP インターフェイスがサポートするコーデックのタイプを示しています。
|
|
G.711 u-Law |
0 |
GSM |
3(GSM Full Rate とも呼ばれる) |
G.723 |
4 |
G.711 a-Law |
8 |
G.722 |
9 |
G.728 |
15 |
G.729 |
18(AnnexA と AnnexB の組み合せをサポート) |
RFC 2833 に使用される Media Termination Point(MTP; メディア ターミネーション ポイント)は、1 つのセッション内で複数の論理チャネルをサポートします。論理チャネルは、オーディオ用でもビデオ用でもかまいません。ビデオ チャネルをサポートするため、MTP はパススルー モードを使用します。ビデオ パススルーは、MTP がパススルーと複数の論理チャネルの両方をサポートしている場合に使用可能です。MTP デバイスの中には、複数の論理チャネルとパススルー モードをサポートしていないものもあります。
ビデオ コール用の SIP トランクの設定
SIP トランク上でビデオ コールを使用可能にするには、次の手順を実行します。
• コールでビデオ接続を使用できないときにオーディオを使用する場合は、Cisco Unified Communications Manager の管理ページの [トランクの設定(Trunk Configuration)] ウィンドウで [ビデオコールを音声として再試行(Retry Video Call as Audio)] チェックボックスをオンにします。
• トランクをリセットします。
詳細については、「ビデオ コールの追加設定」および「トランクと H.323 クライアントの相互対話」を参照してください。
帯域幅の管理
ビデオ コールの帯域幅の管理は、Cisco Unified Communications Manager の管理でリージョンおよびロケーションを提供するコール アドミッション制御によって管理されます。
現在のリリースの『 Cisco Unified Communications Solution Reference Network Design (SRND) 』の「IP Video Telephony」の章の「Administration Considerations」にある「Regions」を参照してください。リージョンとロケーションにビデオ帯域幅を設定する方法に関する推奨事項が記載されており、ビデオ コールのビデオ部分が正しく処理されるようにし、ビデオ コールが拒否されたりオーディオのみのコールとして設定されたりするのを回避するのに役立ちます。
リージョン
Cisco Unified Communications Manager でリージョンを使用すると、ビデオ コールの帯域幅を設定できます。ビデオとオーディオの帯域幅の合計であるビデオ コール帯域幅には、オーバーヘッドは含まれません。
Cisco Unified Communications Manager のリージョン設定の詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の 「リージョンの設定」 の項を参照してください。
ロケーション
Cisco Unified Communications Manager の管理では、ロケーションに 2 つのプール(ビデオ コール用のプールが 1 つ、オーディオ コール用の別個のプールが 1 つ)があります。
Cisco Unified Communications Manager のロケーション設定の詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の 「ロケーションの設定」 の項を参照してください。
RSVP
RSVP は、SCCP と SIP のビデオ コールをサポートします。コール アドミッション制御の RSVP ポリシーは、Cisco Unified Communications Manager の管理ページの [ロケーションの設定(Location Configuration)] ウィンドウを使用して設定します。RSVP 機能の詳細については、「Resource Reservation Protocol」を参照してください。
代替ルーティング
エンドポイントが、ビデオ コールに必要な帯域幅を取得できない場合、デフォルトの動作でビデオ コールはオーディオ コールとして再試行します。このようなビデオ コールでルート/ハント リストまたは自動代替ルーティング(AAR)グループを使用して別のルートを試行するには、該当するゲートウェイ、トランクおよび電話機の Retry Video Call as Audio 設定をオフにします。詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager アドミニストレーション ガイド 』の 「ルート リストの設定」 および 「自動代替ルーティングのグループ設定」 の項を参照してください。
DSCP マーキング
DiffServ コード ポイント(DSCP)パケット マーキングは、各パケットのサービス クラスを指定するために使用され、次の特性が含まれます。
• オーディオだけのコールのオーディオ ストリームのデフォルト値は EF です。
• ビデオ コールのビデオ ストリームおよび関連オーディオ ストリームのデフォルト値は AF41 です。
• これらのデフォルト値は、サービス パラメータを使用して変更可能です。次のサービス パラメータ設定値は、DSCP パケット マーキングに影響を与えます。
– DSCP For Audio Calls(メディア [RTP] ストリーム用)
– DSCP For Video Calls(メディア [RTP] ストリーム用)
– DSCP for Audio Calls when RSVP Fails
– DSCP for Video Calls when RSVP Fails
– DSCP for ICCP Protocol Links
ビデオ コール用の電話機の設定
ビデオ対応デバイスの次の設定は、ビデオ コールに影響を与えます。
• [ビデオコールをオーディオとして再試行(Retry Video Call as Audio)]:デフォルトでは、このチェックボックスはオンになっています。したがって、エンドポイント(電話機、ゲートウェイ、トランク)が、ビデオ コールに必要な帯域幅を取得できない場合は、コール制御によってオーディオ コールとしてコールが再試行されます。この設定は、ビデオ コールの宛先デバイスに適用されます。
• [Video Capabilities Enabled/disabled]:このドロップダウン リスト ボックスは、ビデオ機能のオン/オフを切り替えます。
ビデオ コールの追加設定
次の設定考慮事項も、Cisco Unified Communications Manager でビデオ コールを実行可能であるかどうかに影響します。
• トランクと H.323 クライアントの相互対話
• コール ルーティングの考慮事項
• ゲートウェイ タイマー パラメータのリセット
ビデオ コールのコール ルーティング
ビデオ コールのコール ルーティングは、オーディオ コールのコール ルーティングと同じように機能します。
ゲートウェイ タイマー パラメータ
H.323/H.320 ゲートウェイを経由する一部のボンディング コールでは、ゲートウェイで H.323 TCS メッセージの交換にかかる時間が長くなります。必要な時間が複数の Cisco CallManager サービス パラメータのタイマー設定値を超えていると、Cisco Unified Communications Manager によってコールがドロップされます。
デフォルトの Cisco Unified Communications Manager ゲートウェイ タイマー値が小さすぎると、Cisco Unified Communications Manager がコール接続の完了前にコールをドロップします。このようなコール失敗を防ぐために、次のサービス パラメータのタイマー値を増やすことをお勧めします。
• H245TCSTimeout=25
• Media Exchange Interface CapabilityTimer=25
• Media Exchange Timer=25
ビデオ会議に対する会議制御
Cisco Unified Communications Manager は、次の会議制御機能をサポートしています。
• Roster/Attendee List
• Drop Participant
• Terminate Conference
• Show Conference Chairperson/Controller
• Continuous Presence
また、Cisco Unified Communications Manager は、Skinny Client Control Protocol 電話機に対する次のビデオ会議機能をサポートしています。
• ビデオ会議の制御を表示します。Skinny Client Control Protocol 電話機では、continuous presence モードまたは voice-activated モードを使用すると、ビデオ会議を表示できます。モードを選択すると、ビデオ チャネルで使用するモードを示すメッセージがブリッジに送信されます。モードを切り替えても、メディアの再ネゴシエーションは必要ありません。
• ユーザ名などの参加者情報をビデオ ストリームに表示します。システムでは、参加者情報を、roster などの会議機能に使用することができます。