IPv6 での選択的パケット廃棄の実装
このマニュアルでは、IPv6 の Selective Packet Discard(SPD; 選択的パケット廃棄)機能について説明します。IPv6 の SPD 機能は、Route Processor(RP; ルート プロセッサ)上でプロセス レベル入力キューを管理します。SPD では、プロセス レベル キューに輻輳が発生している間、ルーティング プロトコル パケットや、その他の重要なトラフィック制御レイヤ 2 キープアライブが優先されます。
機能情報の確認
お使いのソフトウェア リリースが、このモジュールで説明されている機能の一部をサポートしていないことがあります。最新の機能情報と注意事項については、ご使用のプラットフォームとソフトウェア リリースに対応したリリース ノートを参照してください。このモジュールで説明される機能に関する情報、および各機能がサポートされるリリースの一覧については、「IPv6 で選択的パケット廃棄を実装するための機能情報」を参照してください。
Cisco Feature Navigator を使用すると、プラットフォーム、および Cisco ソフトウェア イメージの各サポート情報を検索できます。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
IPv6 での選択的パケット廃棄の実装に関する情報
• 「IPv6 での SPD の概要」
IPv6 での SPD の概要
SPD メカニズムは、RP 上でプロセス レベル入力キューを管理します。SPD では、プロセス レベル キューに輻輳が発生している間、ルーティング プロトコル パケットや、その他の重要なトラフィック制御レイヤ 2 キープアライブが優先されます。
SPD ステート チェック
RP 上の IPv6 プロセス入力キューでは、SPD ステート チェックが実行されます。IP precedence が 7 などのプライオリティの高いパケットは、SPD の対象にはならず、決してドロップされることはありません。一方、それ以外のすべてのパケットは、IPv6 パケット入力キューの長さと SPD ステートに従ってドロップされる可能性があります。SPD ステートには次の種類があります。
• normal:キュー サイズが最大値未満です。
• full drop:キュー サイズが最大値以上です。
normal ステートでは、正しい形式と不正な形式のパケットがルータでドロップされることはありません。full drop ステートでは、正しい形式と不正な形式のすべてのパケットがルータでドロップされます。
SPD モード
ユーザは、ルータが特定の SPD ステートになったときに、IPv6 SPD モードをイネーブルにできます。IPv6 SPD が random drop ステートの場合、SPD aggressive drop モードにより、 不正な形式のパケットがドロップされます。OSPF モードでは、 OSPF パケットを SPD プライオリティで処理できます。
SPD ステートは、プロセス入力キューのサイズに応じて normal(ドロップなし)、random drop、または max になります。プロセス入力キューが SPD 最小しきい値よりも小さい場合、SPD は何も行わず、normal ステートになります。normal ステートでは、パケットはドロップされません。入力キューが最大しきい値に到達すると、SPD は max ステートになります。このステートでは、通常プライオリティのパケットが廃棄されます。入力キューが最小しきい値と最大しきい値の間にある場合、SPD は random drop ステートになります。このステートでは、通常パケットがドロップされることがあります。
SPD ヘッドルーム
SPD では、通常の IPv6 パケットの動作は変更されません。一方、ルーティング プロトコル パケットは、SPD が IPv6 precedence フィールドで認識するため、より高いプライオリティが与えられます。したがって、IPv6 precedence が 7 に設定されていると、そのパケットが優先されます。
SPD では、precedence が 7 の IPv6 パケットを優先させるために、それらを通常の入力キュー制限を超えてプロセス レベル入力キューにキューイングすることを Cisco IOS ソフトウェアに許可します。通常の制限を超えて許可されるパケットの数は、SPD ヘッドルームと呼ばれます。SPD ヘッドルームのデフォルトは 100 です。つまり、precedence の高いパケットは、入力保持キューのサイズが 175(入力キューのデフォルト サイズ + SPD ヘッドルーム サイズ)よりも小さければドロップされません。
Connectionless Network Service Intermediate System-to-Intermediate System(CLNS IS-IS)パケット、PPP パケット、High-Level Data Link Control(HDLC; ハイレベル データリンク コントロール)キープアライブなどの非 IPv6 パケットは、レイヤ 3 ではなくレイヤ 2 であるため、通常のプライオリティとして処理されました。さらに、レイヤ 3 以上で動作する Interior Gateway Protocol(IGP; 内部ゲートウェイ プロトコル)は、通常の IPv6 パケットよりも優先されますが、Border Gateway Protocol(BGP; ボーダー ゲートウェイ プロトコル)とは同じプライオリティが与えられます。そのため、BGP コンバージェンス中または BGP アクティビティが非常に活発な間は、IGP の hello および keepalive がドロップされて IGP 隣接関係が失われることがよくありました。
IGP とリンクの安定性は微妙かつ重要な問題であるため、こうしたパケットには最高のプライオリティが与えられ、デフォルトが 10 パケットの拡張 SPD ヘッドルームも与えられます。これらのパケットは、入力保持キューのサイズが 185(入力キューのデフォルト サイズ + SPD ヘッドルーム サイズ + SPD 拡張ヘッドルーム)未満であれば、ドロップされません。
IPv6 での選択的パケット廃棄の実装方法
• 「SPD プロセス入力キューの設定」
• 「SPD モードの設定」
• 「SPD ヘッドルームの設定」
SPD プロセス入力キューの設定
IPv6 での SPD 機能は、デフォルトでイネーブルになっています。IPv6 SPD プロセス入力キュー内の最大および最小パケット数を設定するには、次の作業を実行します。
手順の概要
1. enable
2. configure terminal
3. ipv6 spd queue max-threshold value
4. ipv6 spd queue min-threshold value
5. exit
6. show ipv6 spd
手順の詳細
|
|
|
ステップ 1 |
enable
Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
configure terminal
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
ipv6 spd queue max-threshold value
Router(config)# ipv6 spd queue max-threshold 100
|
SPD プロセス入力キュー内の最大パケット数を設定します。 |
ステップ 4 |
ipv6 spd queue min-threshold value
Router(config)# ipv6 spd queue min-threshold 4094 |
IPv6 SPD プロセス入力キュー内の最小パケット数を設定します。 (注) この最小しきい値は、最大しきい値の設定よりも小さくする必要があります。 |
ステップ 5 |
exit
Router(config)# exit |
ルータを特権 EXEC モードに戻します。 |
ステップ 6 |
show ipv6 spd
Router# show ipv6 spd |
IPv6 SPD 設定を表示します。 |
手順の概要
1. enable
2. configure terminal
3. ipv6 spd mode { aggressive | tos protocol ospf }
手順の詳細
|
|
|
ステップ 1 |
enable
Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
configure terminal
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
ipv6 spd mode { aggressive | tos protocol ospf }
Router(config)# ipv6 spf mode aggressive |
IPv6 SPD モードを設定します。 |
手順の概要
1. enable
2. configure terminal
3. spd headroom size
4. spd extended-headroom size
5. exit
6. show ipv6 spd
手順の詳細
|
|
|
ステップ 1 |
enable
Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
configure terminal
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Router(config)# spd headroom 200 |
SPD ヘッドルームを設定します。 |
ステップ 4 |
spd extended-headroom
size
Router(config)# spd extended-headroom 11 |
拡張 SPD ヘッドルームを設定します。 |
ステップ 5 |
exit
Router(config)# exit |
ルータを特権 EXEC モードに戻します。 |
ステップ 6 |
show ipv6 spd
Router# show ipv6 spd |
IPv6 SPD 設定を表示します。 |
IPv6 で選択的パケット廃棄を実装するための設定例
• 「例:SPD プロセス入力キューの設定」
例:SPD プロセス入力キューの設定
次に、SPD プロセス入力キュー設定の例を示します。最大プロセス入力キューしきい値は 1、SPD ステートは normal です。ヘッドルームと拡張ヘッドルームの各値はデフォルトに設定されています。
Router# ipv6 spd queue max-threshold 1
Queue max threshold: 1, Headroom: 100, Extended Headroom: 10
その他の参考資料
規格
|
|
この機能によってサポートされる新しい規格または変更された規格はありません。またこの機能による既存規格のサポートに変更はありません。 |
-- |
RFC
|
|
RFC 2474 |
『Definition of the Differentiated Services Field (DS Field) in the IPv4 and IPv6 Headers』 |
RFC 4594 |
『Configuration Guidelines for DiffServ Service Classes』 |
シスコのテクニカル サポート
|
|
右の URL にアクセスして、シスコのテクニカル サポートを最大限に活用してください。 以下を含むさまざまな作業にこの Web サイトが役立ちます。 ・テクニカル サポートを受ける ・ソフトウェアをダウンロードする ・セキュリティの脆弱性を報告する、またはシスコ製品のセキュリティ問題に対する支援を受ける ・ツールおよびリソースへアクセスする - Product Alert の受信登録 - Field Notice の受信登録 - Bug Toolkit を使用した既知の問題の検索 ・Networking Professionals(NetPro)コミュニティで、技術関連のディスカッションに参加する ・トレーニング リソースへアクセスする ・TAC Case Collection ツールを使用して、ハードウェアや設定、パフォーマンスに関する一般的な問題をインタラクティブに特定および解決する この Web サイト上のツールにアクセスする際は、Cisco.com のログイン ID およびパスワードが必要です。 |
http://www.cisco.com/cisco/web/support/index.html |
IPv6 で選択的パケット廃棄を実装するための機能情報
表 1 に、このモジュールで説明した機能をリストし、特定の設定情報へのリンクを示します。
プラットフォーム サポートとソフトウェア イメージ サポートに関する情報を入手するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator により、どのソフトウェア イメージが特定のソフトウェア リリース、機能セット、またはプラットフォームをサポートするか調べることができます。Cisco Feature Navigator には、 http://www.cisco.com/go/cfn からアクセスします。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
(注) 表 1には、一連のソフトウェア リリースのうち、特定の機能が初めて導入されたソフトウェア リリースだけが記載されています。その機能は、特に断りがない限り、それ以降の一連のソフトウェア リリースでもサポートされます。
表 1 IPv6 で選択的パケット廃棄を実装するための機能情報
|
|
|
IPv6 選択的パケット廃棄 |
12.2(33)SRC 12.2(33)SXH 15.0(1)S |
SPD メカニズムは、RP 上でプロセス レベル入力キューを管理します。SPD では、プロセス レベル キューに輻輳が発生している間、ルーティング プロトコル パケットや、その他の重要なトラフィック制御レイヤ 2 キープアライブが優先されます。 この機能に関する詳細については、次の各項を参照してください。 • 「IPv6 での SPD の概要」 • 「SPD プロセス入力キューの設定」 • 「SPD ヘッドルームの設定」 • 「例:SPD プロセス入力キューの設定」 ipv6 spd queue max-threshold 、 show ipv6 spd 、 spd extended-headroom 、 spd headroom の各コマンドが導入または修正されました。 |
IPv6:完全な選択的パケット廃棄サポート |
15.1(3)T |
ユーザは、ルータが特定の SPD ステートになったときの IPv6 SPD モードを設定できるようになりました。 この機能に関する詳細については、次の各項を参照してください。 • 「SPD モード」 • 「SPD プロセス入力キューの設定」 • 「SPD モードの設定」 clear ipv6 spd 、 debug ipv6 spd 、 ipv6 spd mode 、 ipv6 spd queue max-threshold 、 ipv6 spd queue min-threshold 、 monitor event-trace ipv6 spd 、 show ipv6 spd 、 spd extended-headroom 、 spd headroom の各コマンドが導入または修正されました。 |
Cisco and the Cisco Logo are trademarks of Cisco Systems, Inc. and/or its affiliates in the U.S. and other countries. A listing of Cisco's trademarks can be found at www.cisco.com/go/trademarks . Third party trademarks mentioned are the property of their respective owners. The use of the word partner does not imply a partnership relationship between Cisco and any other company. (1005R)
このマニュアルで使用している IP アドレスおよび電話番号は、実際のアドレスおよび電話番号を示すものではありません。マニュアル内の例、コマンド出力、および図は、説明のみを目的として使用されています。説明の中に実際のアドレスが使用されていたとしても、それは意図的なものではなく、偶然の一致によるものです。
© 2007-2011 Cisco Systems, Inc.
All rights reserved.
Copyright © 2007-2011, シスコシステムズ合同会社.
All rights reserved.