IP アンナンバード サポートの概要
IP アンナンバード インターフェイスを使用した VLAN および LAN インターフェイスを設定する前に、次の概念を理解する必要があります。
• 「DHCP サーバとリレー エージェントでの IP アンナンバード インターフェイス サポート」
• 「接続ホストのポーリングを行う IP アンナンバード」
DHCP サーバとリレー エージェントでの IP アンナンバード インターフェイス サポート
IP アンナンバード インターフェイスの構成では、明示的に IP アドレスを割り当てないで、インターフェイス上で IP 処理を行うことが可能になります。IP アンナンバード インターフェイスは、Catalyst 4500 シリーズ スイッチにすでに設定されている別のインターフェイスから IP アドレスを「借りる」ことができるので、ネットワークとアドレス スペースを節約できます。DHCP サーバ/リレー エージェントでこの機能を使用すると、DHCP サーバによって割り当てられたホスト アドレスを DHCP リレー エージェントで動的に学習できます。
図14-1 に、IP アンナンバード インターフェイス機能を実装するネットワーク トポロジ例を示します。このトポロジでは、DHCP サーバが IP アドレスをホストに割り当てるときに、集約スイッチが IP ルートを動的に確立します。
図14-1 VLAN 上で IP アンナンバード インターフェイス機能を使用するネットワーク トポロジ例
DHCP オプション 82
DHCP は、TCP/IP ネットワーク上のホストに設定情報を渡すフレームワークを提供します。設定パラメータと他の制御情報は、DHCP メッセージのオプション フィールドに保存されているタグ付きデータ項目で伝送されます。データ項目は、オプションとも呼ばれます。オプション 82 は、リレー エージェントが認識する情報を含んだ単一の DHCP オプションとして構成されています。
IP アンナンバード インターフェイス機能は、 エージェント リモート ID と呼ばれる DHCP リレー エージェント情報オプションのサブオプションを使用して、DHCP サーバに情報を伝えます。エージェント リモート ID で送信された情報には、リレー エージェントを特定する IP アドレス、インターフェイスに関する情報、および DHCP 要求を入力した接続に関する情報が含まれます。DHCP サーバはこの情報を使用して、IP アドレスの割り当てとセキュリティ ポリシーの決定を行うことができます。
図14-2 に、IP アンナンバード インターフェイス機能で使用されるエージェント リモート ID サブオプションの形式を示します。
図14-2 エージェント リモート ID サブオプションの形式
表14-1 で、図14-2 に示されたエージェント リモート ID サブオプション フィールドについて説明します。
表14-1 エージェント リモート ID サブオプション フィールドの説明
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タイプ |
形式タイプ。値 2 はこの機能で使用する形式を指定します(1 バイト)。 |
長さ |
エージェント リモート ID サブオプションの長さ。タイプ フィールドと長さフィールドは含まれません(1 バイト)。 |
予約 |
予約済み(2 バイト) |
NAS IP アドレス |
ip unnumbered コマンドで指定したインターフェイスの IP アドレス(4 バイト) |
インターフェイス |
物理インターフェイス。このフィールドの形式は、次のとおりです。 スロット(4 ビット) | モジュール(1 ビット) | ポート(3 ビット) たとえば、インターフェイス名がインターフェイス Ethernet 2/1/1 の場合、スロットは 2、モジュールは 1、およびポートは 1 です(1 バイト)。 |
予約 |
予約済み(1 バイト) |
VLAN ID |
イーサネット インターフェイスの VLAN ID(2 バイト) |
接続ホストのポーリングを行う IP アンナンバード
(注) この機能オプションは、LAN および VLAN インターフェイスにのみ適用できます。
場合によっては、ホスト IP アドレスが静的に割り当てられていることがあります。IP アンナンバード インターフェイス機能は、動的にスタティック ホスト IP アドレスを学習できます。
DHCP サーバにおける IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
(注) DHCP が設定されており、動作可能な状態である必要があります。
ここでは、次の手順について説明します。
• 「LAN および VLAN インターフェイスに対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定」
• 「イーサネット VLAN 範囲に対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定」
LAN および VLAN インターフェイスに対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
単一 LAN または VLAN インターフェイスに IP アンナンバード インターフェイス サポートを設定するには、次の作業を行います。
手順の要約
1. enable
2. configure terminal
3. interface [ fastethernet | gigabitethernet | tengigabitethernet | vlan vlan } port-channel | loopback ]
4. ip unnumbered type number
手順の詳細
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ステップ 1 |
Switch# enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
Switch# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config)# interface [ fastethernet | gigabitethernet | tengigabitethernet | vlan vlan | port-channel | loopback ] |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、トンネル ポートとして設定するインターフェイスを入力します。 |
ステップ 4 |
Switch(config-if)# ip unnumbered type number |
明示的な IP アドレスをインターフェイスに割り当てずにインターフェイス上の IP 処理をイネーブルにします。 type および number 引数は、IP アドレスが割り当てられているスイッチ上の別のインターフェイスを指定します。指定したインターフェイスを別のアンナンバード インターフェイスに設定することはできません。 |
ステップ 5 |
Switch(config-if)# exit |
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
Switch(config)# end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
Switch# show running-config |
IP アンナンバード サポートが正しく設定されていることを確認します。 |
次に、イーサネット VLAN 10 が IP アンナンバード インターフェイスとして設定されている例を示します。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# interface vlan 10
Switch(config-if)# ip unnumbered Lookback 0
イーサネット VLAN 範囲に対する IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
特定の範囲のイーサネット VLAN インターフェイスに IP アンナンバード インターフェイス サポートを設定するには、次の作業を行います。
手順の要約
1. enable
2. configure terminal
3. interface range {{ fastethernet | gigabitethernet | vlan vlan } slot / interface { fastethernet | gigabitethernet | vlan vlan } slot / interface macro macro-name }
4. ip unnumbered type number
手順の詳細
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ステップ 1 |
Switch# enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
Switch# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config)# interface range {{ fastethernet | gigabitethernet | vlan vlan } slot / interface { fastethernet | gigabitethernet | vlan vlan } slot / interface | macro macro-name } |
複数のインターフェイスで同時にコマンドを実行します。 範囲情報を分けるために、両側にスペースを付けた形でハイフンを入力する必要があります。 |
ステップ 4 |
Switch(config-if)#
ip unnumbered
type number
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明示的な IP アドレスをインターフェイスに割り当てずにインターフェイス上の IP 処理をイネーブルにします。 type および number 引数は、IP アドレスが割り当てられているスイッチ上の別のインターフェイスを指定します。指定したインターフェイスを別のアンナンバード インターフェイスに設定することはできません。 |
ステップ 5 |
Switch(config-if)# exit |
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
Switch(config)# end |
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 7 |
Switch# show running-config |
IP アンナンバード サポートが正しく設定されていることを確認します。 |
次に、1 ~ 10 の範囲の VLAN を IP アンナンバード インターフェイスとして設定する例を示します。FastEthernet 3/1 の IP アドレスを共有しています。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# interface range vlan 1 - 10
Switch(config-if)# ip unnumbered fastethernet 3/1
接続ホストのポーリングを行う IP アンナンバード インターフェイス サポートの設定
接続ホストのポーリングを使用する IP アンナンバード インターフェイス サポートを設定するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Switch# enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
Switch# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config)# interface vlan vlan-id |
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、トンネル ポートとして設定するインターフェイスを入力します。 |
ステップ 4 |
Switch(config-if)# ip unnumbered type number poll
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明示的な IP アドレスをインターフェイスに割り当てずに、インターフェイス上の IP 処理および、接続ホストのポーリングをイネーブルにします。 type および number は、IP アドレスが割り当てられているスイッチ上の別のインターフェイスを指定します。指定したインターフェイスを別のアンナンバード インターフェイスに設定することはできません。 type 引数には、loopback、fastethernet、gigabitethernet、svi、および portchannel の値を設定できます。 |
ステップ 5 |
Switch(config-if)# exit |
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
Switch(config)# ip arp poll queue <10-10000>
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ホスト アドレスのグローバル バックログ キューが検出されるように設定します。 キュー サイズのデフォルトは 1000 です。 |
ステップ 7 |
Switch(config)# ip arp poll rate <10-10000>
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アンナンバード インターフェイスで送信される Address Resolution Protocol(ARP; アドレス 解決 プロトコル)要求の最大数を設定します。 ARP 要求のデフォルト数は、1000 pps です。 |
ステップ 8 |
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特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 9 |
Switch# show running-config |
IP アンナンバード サポートが正しく設定されていることを確認します。 |
次に、インターフェイス FastEthernet 6/2 での IP 処理および接続ホストのポーリングをイネーブルにする例を示します。また、グローバル バックログ キューを 2000 に設定し、ARP 要求の最大数を 500 に設定する例も示します。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# interface fastEthernet 6/2
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip unnumbered loopback 0 poll
Warning: dynamic routing protocols will not work on non-point-to-point interfaces with IP unnumbered configured.
Switch(config)# ip arp poll queue 2000
Switch(config)# ip arp poll rate 500
IP アンナンバード インターフェイス設定の表示
show ip interface [type number] unnumbered [detail] コマンドを使用して、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのステータスを表示します。
アンナンバード インターフェイスのステータスを表示するには、次の作業を 1 つまたは複数行います。
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Switch# show ip interface [type number] unnumbered [detail] |
Catalyst 4500 シリーズ スイッチ上の接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのステータスを表示します。 |
次に、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのステータスを表示する例を示します。
Switch# show ip interface loopback 0 unnumbered detail
Number of unnumbered interfaces with polling: 1
Number of IP addresses processed for polling: 2
Number of IP addresses in queue for polling: 2(high water mark: 3)
スイッチ上の、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイス バックログの主要な統計情報を表示するには、 show ip arp poll コマンドを使用します。
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Switch# show ip arp poll [detail] |
スイッチ上の、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイス バックログの主要な統計情報を表示します。 |
次に、接続ホストのポーリングを行うアンナンバード インターフェイスのバックログの主要な統計情報を表示する例を示します。
Number of IP addresses processed for polling: 439
Number of IP addresses in queue for polling: 3 (high water mark: 0, max: 1000)
Number of requests dropped:
Request was throttled by incomplete ARP: 0
Duplicate request was found in queue: 0
アンナンバード インターフェイス バックログの主要な統計情報をクリアするには、次のように clear ip arp poll statistic コマンドを使用します。
Switch# clear ip arp poll statistic
Number of IP addresses processed for polling: 0
Number of IP addresses in queue for polling: 0 (high water mark: 0, max: 1000)
Number of requests dropped:
Request was throttled by incomplete ARP: 0
Duplicate request was found in queue: 0
IP アンナンバードのトラブルシューティング
接続ホストのポーリングをデバッグする方法については、Cisco.com で debug arp コマンドの IOS マニュアルを参照してください。
プレフィクスが OSPF ネットワークにアドバタイズされているループバック インターフェイスの IP アドレスを IP アンナンバード インターフェイスが共有する場合、ループバック インターフェイスをポイントツーポイント インターフェイスに変更する必要があります。そうしないと、ループバック インターフェイスのホスト ルートだけが OSPF ネイバーにアドバタイズされます。
Switch(config)# int loopback 0
Switch(config-if)# ip address
Switch(config-if)# ip address 10.1.0.1 255.255.0.0
Switch(config-if)# ip ospf network point-to-point
Switch(config-if)# end