ROM モニタ
この章では、Cisco 806 ルータの ROM モニタ(ブートストラップ プログラムとも呼ぶ)について説明します。ROM モニタ ファームウェアは、ルータの電源投入時またはリセット時に起動します。ファームウェアは、プロセッサ ハードウェアの初期化とオペレーティング システムの起動を助けます。ROM モニタを使用して、忘れてしまったパスワードの回復やコンソール ポートでのソフトウェアのダウンロードなど、特定の設定作業を実行できます。ルータに Cisco IOS ソフトウェア イメージがロードされていない場合、ROM モニタがルータを実行します。
この章の内容は、次のとおりです。
• ROM モニタの設置
• ROM モニタ コマンド
• コマンドの説明
• コンフィギュレーション レジスタ
• コンソール ダウンロード
• デバッグ コマンド
• ROM モニタの終了
ROM モニタの設置
ROM モニタを使用するには、端末または PC をコンソール ポート経由でルータに接続している必要があります。ルータに付属の『 Cisco 806 Router Hardware Installation Guide 』のインストレーションの章を参照して、ルータと PC または端末を接続します。
次に再起動する場合は ROM モニタ モードで起動するようにルータを設定するには、次のステップを実行します。
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ステップ 1 |
enable |
イネーブル パスワードが設定されている場合、イネーブル コマンドとイネーブル パスワードを入力して特権 EXEC モードを開始します。 |
ステップ 2 |
configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
config-reg 0x0 |
コンフィギュレーション レジスタをリセットします。 |
ステップ 4 |
exit |
グローバル コンフィギュレーション モードを終了します。 |
ステップ 5 |
reload |
新しいコンフィギュレーション レジスタ値をルータを使用して起動します。ルータは ROM モニタ モードのままで、Cisco IOS ソフトウェアを起動しません。 設定値が 0x0 であるかぎり、コンソールから手動でオペレーティング システムを起動する必要があります。この章の「コマンドの説明」の boot コマンドを参照してください。 再起動したルータは ROM モニタ モードになります。新しく行が増えるごとにプロンプトの数字が増加します。 |
ROM モニタ コマンド
利用できるコマンドおよびオプションのリストを表示するには、ROM プロンプトで ? または help を入力します。次に例を示します。
alias set and display aliases command
boot boot up an external process
confreg configuration register utility
dev list the device table
dir list files in file system
help monitor builtin command help
history monitor command history
meminfo main memory information
repeat repeat a monitor command
set display the monitor variables
sysret print out info from last system return
unset unset a monitor variable
コマンドの大文字と小文字を区別は区別されます。端末上で Break キーを押すとコマンドを停止できます。PC を使用している場合、Ctrl キーと Break キーを同時に押すと、ほとんどのターミナル エミュレーション プログラムはコマンドを停止します。別のタイプのターミナル エミュレータやターミナル エミュレーション ソフトウェアを使用している場合に Break コマンドを送信する方法については、その製品のマニュアルを参照してください。
コマンドの説明
表53-1 に、一般的に使用される ROM モニタ コマンドを示します。
表53-1 一般的に使用される ROM モニタ コマンド
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reset または i |
ルータをリセットまたは初期化します。電源投入に似ています。 |
dev |
ルータの起動装置の ID を表示します。次に例を示します。
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dir device : |
指定した装置のファイルを表示します。次に例を示します。
File size Checksum File name
2835276 bytes (0x2b434c) 0x2073 c806-oy6-mz
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ブート コマンド |
ROM モニタのブート コマンドの詳細については、『Cisco IOS Configuration Guide』および『Cisco IOS Command Reference』を参照してください。 |
b |
フラッシュ メモリの最初のイメージを起動します。 |
b flash: [ filename ] |
フラッシュ メモリの最初のパーティションからイメージを直接起動しようとします。ファイル名を入力しなかった場合、フラッシュの最初のイメージが起動されます。 |
コンフィギュレーション レジスタ
仮想コンフィギュレーション レジスタは Nonvolatile RAM(NVRAM; 不揮発性 RAM)にあり、他の Cisco ルータと同じ機能を持っています。仮想コンフィギュレーション レジスタは、ROM モニタまたはオペレーティング システムで表示または変更できます。ROM モニタで 16 進形式のレジスタ値を入力するか、ROM モニタのプロンプトに従って各ビットを指定すると、コンフィギュレーション レジスタを変更できます。
コンフィギュレーション レジスタの手動での変更
仮想コンフィギュレーション レジスタを ROM モニタから手動で変更するには、 confreg コマンドに続けて新しいレジスタ値を 16 進数で入力します。次に例を示します。
rommon 1 > confreg 0x2101
You must reset or power cycle for new config to take effect
値は常に 16 進数とみなされます。新しい仮想コンフィギュレーション レジスタ値は NVRAM に書き込まれますが、ルータをリセットまたは再起動するまでは有効になりません。
コンフィギュレーション レジスタのプロンプトでの変更
confreg コマンドを引数なしで入力すると、仮想コンフィギュレーション レジスタの内容とプロンプトが表示されます。プロンプトに各ビットの意味を指定すると、内容が変更できます。
いずれの場合も、新しい仮想コンフィギュレーション レジスタ値は NVRAM に書き込まれますが、ルータをリセットまたは再起動するまでは有効になりません。
次に、confreg コマンドの入力例を示します。
do you wish to change the configuration? y/n [n]: y
enable “diagnostic mode”? y/n [n]: y
enable “use net in IP bcast address”? y/n [n]:
enable “load rom after netboot fails”? y/n [n]:
enable “use all zero broadcast”? y/n [n]:
enable “break/abort has effect”? y/n [n]:
enable “ignore system config info”? y/n [n]:
change console baud rate? y/n [n]: y
enter rate: 0 = 9600, 1 = 4800, 2 = 1200, 3 = 2400 [0]: 0
change the boot characteristics? y/n [n]: y
1 = the boot helper image
do you wish to change the configuration? y/n [n]:
You must reset or power cycle for new config to take effect
コンソール ダウンロード
ROM モニタのコンソール ダウンロード機能を使用し、ルータのコンソール ポートを通じてソフトウェア イメージまたはコンフィギュレーション ファイルをダウンロードできます。ダウンロードしたファイルはミニフラッシュ メモリ モジュールまたはメイン メモリに保存され、実行されます(イメージ ファイルのみ)。
Trivial File Transfer Protocol(TFTP)サーバにアクセスできない場合は、コンソール ダウンロードを使用します。
(注) コンソール ポートを通じてルータにソフトウェア イメージまたはコンフィギュレーション ファイルをダウンロードする場合は、ROM monitor コマンドを使用します。
(注) PC を使用し Cisco IOS イメージをルータ コンソール ポート経由で 115,200 bps でダウンロードする場合は、PC シリアル ポートで 16550 Universal Asynchronous Receiver/Transmitter(UART; 汎用非同期送受信器)が使用されていることを確認します。PC シリアル ポートで 16550 UART が使用されていない場合、コンソール ポート経由で Cisco IOS イメージをダウンロードするには 38,400 bps 以下の速度を使用することを推奨します。
エラー レポート
ROM モニタ コンソール ダウンロードではデータの転送にコンソールが使用されるため、エラー メッセージはデータ転送が終了した場合にのみコンソールに表示されます。
データ転送中にエラーが発生すると転送が中止され、エラー メッセージが表示されます。デフォルトのボー レートを変更した場合は、端末のボー レートをコンフィギュレーション レジスタに指定されたボー レートに戻すことを指示するメッセージがエラー メッセージに続いて表示されます。
デバッグ コマンド
ROM モニタのほとんどのデバッグ コマンドは、Cisco IOS ソフトウェアがクラッシュまたは停止した場合にのみ機能します。
次に、ROM モニタのデバッグ コマンドを示します。
• frame ― 個別のスタック フレームを表示します。
• sysret ― 最後に起動したシステム イメージから返された情報を表示します。この情報には、イメージを中止した理由、最大 8 フレームのスタック ダンプ、および例外が発生したアドレス(例外がある場合)などが含まれます。
count: 19, reason: user break
pc:0x801111b0, error address: 0x801111b0
FP: 0x80005ea8, PC: 0x801111b0
FP: 0x80005eb4, PC: 0x80113694
FP: 0x80005f74, PC: 0x8010eb44
FP: 0x80005f9c, PC: 0x80008118
FP: 0x80005fac, PC: 0x80008064
FP: 0x80005fc4, PC: 0xfff03d70
FP: 0x80005ffc, PC: 0x00000000
FP: 0x00000000, PC: 0x00000000
• meminfo ― サイズ(バイト)、開始アドレス、使用可能なメイン メモリの範囲、パケット メモリの開始点およびサイズ、NVRAM のサイズなどを表示します。
Available main memory starts at 0x10000, size 40896KB
IO (packet) memory size: 5 percent of main memory.
ROM モニタの終了
起動時またはリロード時にフラッシュ メモリから Cisco IOS イメージを起動するには、ルータのコンフィギュレーション レジスタに 0x2 ~ 0xF の値を設定する必要があります。
次に、コンフィギュレーション レジスタをリセットし、フラッシュ メモリに保存した Cisco IOS イメージをルータが起動する例を示します。
rommon 1 > confreg 0x2101
You must reset or power cycle for new config to take effect
ルータは、フラッシュ メモリの Cisco IOS イメージを起動します。ルータの次のリセット時または電源の再投入時に、コンフィギュレーション レジスタの値は 0x2101 になります。