ACL の概要
ここでは、次の内容について説明します。
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「ACL の概要」
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「ACL を使用するサポート対象機能」
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「ルータ ACL」
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「PACL」
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「VLAN マップ」
ACL の概要
ACL は、パケットに適用される許可条件および拒否条件を集めて順番に並べたものです。パケットがインターフェイスに着信すると、スイッチはパケットのフィールドと適用される ACL を比較し、アクセス リストに指定されている条件に基づいて、転送に必要な許可がパケットに与えられているかどうかを調べます。スイッチはパケットをアクセス リストの条件と 1 つ 1 つ突き合わせます。最初に一致した条件によって、スイッチがパケットを許可するかまたは拒否するかが決まります。スイッチは最初に一致した時点で条件のテストを中止するため、リストに条件を指定する順序が重要です。いずれの条件とも一致しなかった場合、スイッチはパケットを拒否します。制限がない場合、スイッチはパケットを転送し、制限がある場合はパケットをドロップします。
従来、スイッチはレイヤ 2 で稼働し、VLAN(仮想 LAN)内でトラフィックをスイッチングしていました。一方、ルータはレイヤ 3 の VLAN 間でトラフィックをルーティングしていました。Catalyst 4500 シリーズ スイッチは、レイヤ 3 スイッチングを使用して、VLAN 間のパケット ルーティングの速度を向上させます。レイヤ 3 スイッチでブリッジングされたパケットは、外部ルータに送信されずに内部でルーティングされます。そのあと、再度ブリッジングされて宛先に送信されます。スイッチはこのプロセス中に、VLAN 内でブリッジングされるパケットを含めて、すべてのパケットを制御します。
トラフィックをフィルタリングし、ネットワークに基本的なセキュリティを導入するには、ルータまたはスイッチにアクセス リストを設定します。ACL を設定しないと、スイッチを通過するすべてのパケットが、ネットワーク内のすべての場所に転送されることがあります。ACL を使用すると、ネットワークの場所ごとにアクセス可能なホストを制御したり、ルータ インターフェイスで転送またはブロックされるトラフィックの種類を決定できます。たとえば、電子メール トラフィックの転送を許可して、Telnet トラフィックの転送を禁止できます。ACL は着信トラフィック、発信トラフィック、またはその両方をブロックするように設定できます。ただし、レイヤ 2 インターフェイスでは、ACL を適用できるのは着信方向だけです。
ACL には、Access Control Entry(ACE; アクセス コントロール エントリ)が順番に記述されています。各 ACE では、許可(permit)または拒否(deny)、および ACE と一致するためのパケットの必須条件のセットを指定します。許可または拒否の意味は、ACL の使用状況に応じて変わります。
Catalyst 4500 シリーズ スイッチでは、次の 3 つの ACL タイプがサポートされています。
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TCP、UDP、Internet Group Management Protocol(IGMP)、Internet Control Message Protocol(ICMP)などの IP トラフィックをフィルタリングする IP ACL
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IPv6 ACL(Supervisor Engine 6-E にのみ該当)
ACL を使用するサポート対象機能
スイッチは、トラフィックをフィルタリングするため、次に示す 3 種類の ACL をサポートしています。
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ルータ ACL は、レイヤ 3 インターフェイスに適用されます。この ACL は、VLAN 間でルーティングされたトラフィックのアクセスを制御します。すべてのCatalyst 4500 シリーズ スイッチでルータ ACL を作成できますが、レイヤ 3 インターフェイスに ACL を適用して、VLAN 間でルーティングされたパケットをフィルタリングするには、スイッチに Cisco IOS ソフトウェア イメージをインストールする必要があります。
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Port ACL(PACL; ポート ACL)は、レイヤ 2 インターフェイスに入るトラフィックのアクセスを制御します。ハードウェアの CAM(連想メモリ)エントリが十分でない場合、出力 PACL がポートに適用されず、警告メッセージがユーザに送られます(この制限は、出力 PACLのすべてのアクセス グループ モードに適用します)。CAM エントリが十分な場合、出力ポート ACL は再適用されます。
レイヤ 2 ポートに出力 PACL が設定されている場合、レイヤ 2 ポートが属する VLAN に VACL またはルータ ACL を設定できません。その逆の場合も同じです。つまり、PACL および VLAN ベースの ACL(VACL およびルータ ACL)は、レイヤ 2 ポート上では相互に排他的です。この制限はすべてのアクセス グループ モードに適用されます。入力方向では、ポート ACL、VLAN ベース ACL、およびルータ ACL が共存できます。
1 つのレイヤ 2 インターフェイスに適用できるのは、IP アクセス リスト 1 つと MAC(メディア アクセス制御)アクセス リスト 1 つです。
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VLAN ACL または VLAN マップは、すべてのパケット(ブリッジド パケットおよびルーテッド パケット)のアクセスを制御します。VLAN マップを使用すると、同じ VLAN 内のデバイス間で転送されるトラフィックをフィルタリングできます。VLAN マップを作成または適用するために、拡張イメージをインストールする必要はありません。VLAN マップは、IP のレイヤ 3 アドレスに基づいてアクセス コントロールするように設定されています。イーサネット ACE を使用する MAC アドレスにより、サポートされていないプロトコルがアクセス コントロールされます。VLAN マップを VLAN に適用すると、VLAN に入るすべてのパケット(ルーテッド パケットまたはブリッジド パケット)が VLAN マップと照合されます。パケットはスイッチ ポートを介して VLAN に入ることができます。ルーティングされたパケットの場合は、ルーテッド ポートを介して VLAN に入ることができます。
同じスイッチ上でルータ ACL と VLAN マップを両方使用できます。
ルータ ACL
サポートされる各タイプのアクセス リスト 1 つをインターフェイスに適用できます。
(注) Cisco IOS Release 12.2(40)SG を実行している Catalyst 4500 シリーズ スイッチは、IPv6 Port ACL(PACL)をサポートしません。
1 つの ACL を特定のインターフェイスの複数の機能に使用できます。また、1 つの機能に複数の ACL を使用することもできます。1 つのルータ ACL を複数の機能で使用する場合、そのルータ ACL は複数回テストされます。アクセス リストのタイプによって、一致処理に対する入力が決まります。
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標準 IP アクセス リストは、送信元アドレスを使用して一致処理を行います。
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拡張 IP アクセス リストは、送信元アドレス、宛先アドレス、およびオプションのプロトコル タイプ情報を使用して一致処理を行います。
スイッチは、特定のインターフェイスおよび方向に対する設定機能に関連付けられている ACL をテストします。パケットがスイッチのインターフェイスに着信すると、そのインターフェイスに設定されているすべての着信機能に対応する ACL がテストされます。パケットがルーティングされてからネクスト ホップに転送されるまでの間に、出力インターフェイスに設定された発信機能に対応するすべての ACL がテストされます。
ACL は、ACL 内のエントリとの一致結果に基づいて、転送を許可または拒否します。たとえば、アクセス リストを使用すると、ネットワークの特定の場所へのアクセスを特定のホストに許可し、別のホストに対しては禁止できます。図42-1 の例では、ルータへの入力に適用されている ACL に基づき、ホスト A は人事部ネットワークへのアクセスを許可されますが、ホスト B は拒否されます。
図42-1 ACL によるネットワーク トラフィックの制御
PACL
スイッチ上のレイヤ 2 インターフェイスにも ACL を適用できます。PACL は、物理インターフェイスおよび EtherChannel インターフェイス上でサポートされています。
レイヤ 2 インターフェイス上では、次のアクセス リストがサポートされています。
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送信元アドレスを使用する標準 IP アクセス リスト
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送信元アドレス、宛先アドレス、およびオプションのプロトコル タイプ情報を使用する拡張 IP アクセス リスト
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送信元 MAC アドレス、宛先 MAC アドレス、およびオプションのプロトコル タイプ情報を使用する MAC 拡張アクセス リスト
ルータ ACL と同様、スイッチは所定のインターフェイスに設定されている機能に関連付けられている ACL をテストし、パケットが ACL 内のエントリと一致するかどうかによって、パケットの転送を許可または拒否します。図42-1 の例では、すべてのワークステーションが同じ VLAN 内にある場合、レイヤ 2 の入力に適用されている ACL によって、ホスト A は人事部ネットワークへのアクセスが許可されますが、ホスト B は同じネットワークへのアクセスを拒否されます。
PACL をトランク ポートに適用すると、そのトランク ポートにあるすべての VLAN 上で ACL によるトラフィックのフィルタリングが行われます。音声 VLAN があるポートに PACL を適用すると、データ VLAN と音声 VLAN の両方でその ACL によるトラフィックのフィルタリングが行われます。
PACL を使用すると、IP アクセス リストを使用して IP トラフィックをフィルタリングし、MAC アドレスを使用して IP 以外のトラフィックをフィルタリングできます。インターフェイスに IP アクセス リストと MAC アクセス リストの両方を適用することにより、同一のレイヤ 2 インターフェイス上で IP トラフィックと IP 以外のトラフィックをフィルタリングできます。
(注) 1 つのレイヤ 2 インターフェイスに、IP アクセス リストと MAC アクセス リストのそれぞれを 2 つ以上適用できません。すでに IP アクセス リストまたは MAC アクセス リストが 1 つずつ設定されているレイヤ 2 インターフェイスに、新しい IP アクセス リストまたは MAC アクセス リストを適用すると、前に設定した ACL が新しい ACL に置き換わります。
VLAN マップ
VLAN マップを使用すると、VLAN のすべてのトラフィックのアクセスを制御できます。VLAN の内外でルーティングされる、または VLAN 内でブリッジングされるすべてのパケットに対して、スイッチの VLAN マップを適用できます。ルータ ACL と異なり、VLAN マップでは方向(着信または発信)は定義されません。
VLAN マップを設定すると、IP トラフィックのレイヤ 3 アドレスを照合できます。すべての IP 以外のプロトコルは、VLAN マップの MAC ACL を使用して、MAC アドレスおよび EtherType によってアクセス コントロールされます(IP トラフィックには、VLAN マップの MAC ACL によるアクセス コントロールが行われません)。VLAN マップはスイッチを通過するパケットにのみ適用できます。ハブのホスト間、またはこのスイッチに接続された別のスイッチのホスト間を通過するトラフィックには、VLAN マップを適用できません。
VLAN マップを使用すると、パケットの転送は、マップに指定されたアクションに基づいて許可または拒否されます。図42-2 に、VLAN マップを適用して、特定タイプのトラフィックを VLAN 10 のホスト A から転送できないように設定する例を示します。
図42-2 VLAN マップによるトラフィックの制御
ハードウェアおよびソフトウェア ACL のサポート
ここでは、ACL をハードウェア、ソフトウェアのどちらで処理するかを決定する方法について説明します。
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標準および拡張 ACL の拒否 (deny) 文と一致するフローは、ICMP 到達不能メッセージがディセーブルの場合、ハードウェアでドロップされます。
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標準 ACL の (permit) 文に一致するフローは、ハードウェアで処理されます。
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ソフトウェアでは、次の ACL タイプはサポートされていません。
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標準 Xerox Network Systems(XNS)プロトコル アクセス リスト
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拡張 XNS アクセス リスト
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DECnet アクセス リスト
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プロトコル タイプコード アクセス リスト
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標準 Internet Packet Exchange(IPX)アクセス リスト
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拡張 IPX アクセス リスト
(注) ロギングが必要なパケットは、ソフトウェアで処理されます。ロギング用にパケットのコピーが CPU に送信され、実際のパケットはハードウェアで転送されるので、ロギング対象外のパケットの処理は影響を受けません。
デフォルトでは、アクセス リストによりパケットが拒否されると、ICMP 到達不能メッセージがCatalyst 4500 シリーズ スイッチ スイッチによって送信されます。
入力インターフェイス上でハードウェア内のアクセス リスト拒否パケットをドロップするには、 no ip unreachables インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して ICMP 到達不能メッセージをディセーブルにする必要があります。 ip unreachables コマンドはデフォルトでイネーブルに設定されています。
(注) Cisco IOS Release 12.2(40)SG は、IPv6 トラフィックをルーティングするインターフェイス上での ip unreachables のディセーブル化をサポートしません。
(注) すべてのレイヤ 3 インターフェイスで no ip unreachable コマンドを設定する場合、出力 ACL 拒否パケットは、CPU に届きません。
TCAM プログラミングと Supervisor Engine II-Plus、Supervisor Engine IV、Supervisor Engine V、および Supervisor Engine V-10GE の ACL
Catalyst 4500 シリーズ スイッチでの TCAM エントリおよびマスク利用率は、次の要素に基づきます。
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ACL 設定
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スーパーバイザ モデル
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IOS ソフトウェアのバージョン
Supervisor Engine II-Plus-10GE、Supervisor Engine V-10GE、および Catalyst 4948-10GE スイッチの場合、エントリおよびマスク利用率は、IOS ソフトウェア バージョンに関係なく、TCAM リージョンのエントリ数で割った ACL 設定の ACE 数と等しくなります。最適化された TCAM 利用率は、必要ありません。
Supervisor Engine II-Plus-TS、Supervisor Engines IV、Supervisor Engines V、および Catalyst 4948 スイッチの場合、IOS ソフトウェアのリリースに関係なく、8 つまでのエントリが TCAM の 1 つのマスクを共有します。したがって、TCAM 利用率は、ACL の設定によって変わります。また、各 ACL の設定順によっても変わります。ある ACL が別の ACL の前に設定された場合と、その逆の順で設定された場合では、TCAM 利用率は異なります。同じ ACL 設定を実行コンフィギュレーションにコピーしても、TCAM 利用率が変わります。
Supervisor II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 スイッチでの TCAM 利用率は、ACL 設定および IOS ソフトウェア バージョンに従って最適化されます。たとえば、Cisco IOS Release 12.2(31)SGA 以降のリリースでは、マスクを保持するために、順番に依存しない ACL エントリの順序を自動的に付け直します。単一パケットが ACL の 1 つにのみ一致する場合、2 つの ACE は順番に依存しません。たとえば、次の 2 つの ACE は順番に依存しません。
permit ip host 10.1.1.10 any
permit ip host 10.1.1.20 any
最初の ACE に一致するパケットは、2 番めの ACE には一致せず、その逆も同様です。これに対して、次の 2 つの ACE は順番に依存します。
permit ip host 10.1.1.10 any
permit ip any host 10.1.1.20
送信元 IP アドレスが 10.1.1.10、宛先 IP アドレスが 10.1.1.20 のパケットは、両方の ACE に一致することができるため、その順番が問題になります。
展開する前に Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 スイッチの TCAM 利用率を見積もるときは、デフォルトの設定から開始します。マスクを共有する ACE をプログラミングするときのダイナミックな性質により、ACL がすでにプログラミングされているときの TCAM 利用率の見積もりは、予想できません。
Cisco IOS Release 12.2(31)SGA 以降では、TCAM が空である場合、IP ACL の TCAM 利用率を見積もることができます。各 IP ACL では、4 つの ACE が自動的に ACL に追加されます。4 つの ACE とは、2 つのスタティック ACE、追加された IP 全拒否 ACE、および追加された全許可 ACE です。したがって、1 つの IP ACL のマスクの最少数は 5 です。残りの ACE で利用されるマスクの数を調べるには、8 つを超える ACE を持つ別々のマスクに対して 1 つを追加して、異なるマスクの数をカウントします。
12.2(31)SGA より前のリリースの IOS ソフトウェアを実行している Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 スイッチの場合、ACL は TCAM のプログラミング前には自動的に最適化されません。ACL の設定前に同様のマスクを持つ ACE をグループ化すると、マスクの利用率が向上する場合があります。
(注) Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 スイッチで Cisco IOS Release 12.2(31)SGA 以上にアップグレードしたあと、TCAM ACL 利用率は、独立した ACE の再順番付けのために低下することがあります。逆に、Cisco IOS Release 12.2(31)SG 以下にダウングレードすると、TCAM 利用率は上がることがあります。
TCAM プログラミング アルゴリズム
(注) Supervisor Engine 6-E では、TCAM プログラミング アルゴリズムは使用できません。
Cisco IOS Release 12.2(25)EWA 以降では、packed と scattered の 2 つの TCAM プログラミング アルゴリズムが Catalyst 4500 および 4900 シリーズ スイッチでサポートされます。packed モード アルゴリズムは、エントリのマスクが一致する場合、同じ 8 エントリ TCAM ブロックのエントリをプログラムします。現在のエントリのマスクが前のエントリのマスクと異なる場合、スイッチ ソフトウェアは、新しい 8 エントリ ブロックにエントリをプログラムします。マスクが変わらない場合、または設定の開始から終了まで ACL で 8 エントリごとにマスクが変わる場合、Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 シリーズ スイッチでは、TCAM が packed モードで完全に利用されます。
scattered モードでは、単一 ACL のエントリは、ACL が完全にプログラムされるまで、異なる 8 エントリ ブロックに分散されます。連続した ACL に最初の ACL と同じマスク パターンがある場合、Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 シリーズ スイッチの TCAM は、完全に利用されます。
Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 スイッチでの IP ソース ガードの設定には、scattered モードを推奨します。これは、VLAN 単位の ACL のマスク パターンが、IP ソース ガードに対して設定されたすべてのポートで同じためです。つまり、ARP パケットを許可し、ポート セキュリティが設定されていない場合はレイヤ 2 トラフィックを許可し、32 ビット マスクを持つ特定の送信元 IP アドレスからの IP トラフィックを許可し、不明を拒否し、さらにすべてを許可します。
(注) TCAM プログラミング アルゴリズムは、Cisco IOS Release 12.2(25)EWA または後続のメンテナンス リリースを実行している Supervisor Engine V-10GE および Catalyst 4948-10GE スイッチで設定できます。ただし、Supervisor Engine V-10GE および Catalyst 4948-10GE スイッチでは、ACL マスクが ACE 間で共有されていないため、プログラミング アルゴリズムが設定されているかどうかに関係なく、TCAM 利用率は同じになります。
(注) TCAM プログラミング アルゴリズムは、Supervisor Engine II-Plus-10GE または Cisco IOS Release 12.2(25)SG 以降を実行している Catalyst 4948-10GE スイッチでは設定できません。
(注) TCAM 利用率は、同じ TCAM プログラミング アルゴリズムを正常に設定したあとには変更しないでください。たとえば、2 回パックされたアクセスリスト ハードウェア エントリの設定は、TCAM 利用率に影響を与えません。ただし、同じ TCAM プログラミング アルゴリズムの連続する設定間に 1 つまたは複数のコマンドが実行された場合、TCAM 利用率は変化することがあります。
TCAM 利用率を変化させるのは、次のような場合です。
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実行コンフィギュレーションでの ACL または ACE の追加または削除
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ブートフラッシュ、TFTP サーバ、またはコンパクト フラッシュ メモリから実行コンフィギュレーションへの ACL 設定のコピーまたは再コピー
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TCAM プログラミング アルゴリズムの変更
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実行コンフィギュレーションの NVRAM への保存とスイッチのリロード
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Cisco IOS Release 12.2(31)SGA 以上での access-list hardware region <feature | qos> <input | output> balance <percent> コマンドを使用した、TCAM の機能 ACL または QoS リージョンのサイズ変更
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Cisco IOS Release 12.2(25)EWA に基づくイメージから Cisco IOS Release 12.2(31)SGA に基づくイメージへのアップグレード
これまでに述べたように、ACL をプログラムする際は、エントリおよびマスクの 2 種類のハードウェア リソースが消費されます。これらのリソースのいずれかが使い果たされると、ACL をそれ以上ハードウェアにプログラムすることはできません。
リソースを使い果たした場合は、次を参照します。
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「プログラミング アルゴリズムの変更」
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「TCAM リージョンのサイズ変更」
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「制御パケットのキャプチャのモード選択」
プログラミング アルゴリズムの変更
システム上のマスクが使い果たされても、エントリは使用できる場合、プログラミング方式を packed から scattered に変更すると、マスクが使用可能になり、ACL をハードウェアにさらにプログラムできるようになります。
(注) ACL プログラミング アルゴリズムを変更したり TCAM リージョンのサイズを変更したりすると、すべての ACL が一時的にハードウェアからアンロードされ、新しい TCAM パラメータに従って再びロードされます。再ロード プロセスが終了するまでは ACL は動作できません。
目的は、ACL エントリごとのマスク数を最小化することにより、TCAM リソースをさらに有効に使用することです。
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scattered または packed アルゴリズム採用時の TCAM 利用状況を比較 |
Switch# show platform hardware acl statistics utilization brief
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アルゴリズムを packed から scattered に変更 |
Switch(config)# access-list hardware entries scattered
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アルゴリズムを scattered から packed に変更 |
Switch(config)# access-list hardware entries packed
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(注) scattered アルゴリズムが設定されているかどうかを判別するには、show running-config コマンドを使用します。scattered が設定されている場合は、access-list hardware entries scattered が表示されます。
(注) TCAM プログラミング アルゴリズムのデフォルト設定は、packed です。
次の出力は、packed モードで稼働するスイッチで収集したものです。ACL エントリの 49 %だけをプログラムするために、89 %のマスクが必要であることがわかります。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# access-list hardware entries packed
01:15:34: %SYS-5-CONFIG_I: Configured from console by console
Switch# show platform hardware acl statistics utilization brief
Entries/Total(%) Masks/Total(%)
----------------- ---------------
Input Acl(PortAndVlan) 2016 / 4096 ( 49) 460 / 512 ( 89)
Input Acl(PortOrVlan) 6 / 4096 ( 0) 4 / 512 ( 0)
Input Qos(PortAndVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Input Qos(PortOrVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Acl(PortAndVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Acl(PortOrVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Qos(PortAndVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Qos(PortOrVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
次の出力は、アルゴリズムを scattered に変更したあとに収集したものです。エントリの 49% をプログラムするのに必要なマスク数が 49% に減少したことがわかります。
(注) シャーシ上のすべてのポートで DHCP スヌーピングおよび IP ソース ガードがイネーブルの場合は、scattered キーワードを使用する必要があります。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# access-list hardware entries scattered
01:39:37: %SYS-5-CONFIG_I: Configured from console by console
Switch# show platform hardware acl statistics utilization brief
Entries/Total(%) Masks/Total(%)
----------------- ---------------
Input Acl(PortAndVlan) 2016 / 4096 ( 49) 252 / 512 ( 49)
Input Acl(PortOrVlan) 6 / 4096 ( 0) 5 / 512 ( 0)
Input Qos(PortAndVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Input Qos(PortOrVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Acl(PortAndVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Acl(PortOrVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Qos(PortAndVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
Output Qos(PortOrVlan) 0 / 4096 ( 0) 0 / 512 ( 0)
TCAM リージョンのサイズ変更
TCAM は、異なる種類のエントリを保持するリージョンに分割されます。TCAM には、入力 ACL、出力 ACL、入力 QoS(Quality Of Service)、出力 QoS の 4 種類があります。それぞれが PortAndVlan リージョンと PortOrVlan リージョンに分割されます。デフォルトでは、PortAndVlan リージョンと PortOrVlan リージョンのサイズは同じです。
次の表に、エントリおよびマスク数をサポート対象のスーパーバイザ エンジンごとに示します。スーパーバイザ エンジンのエントリおよびマスク数が、それぞれの TCAM の種類について示されています。たとえば、入力機能 TCAM には 16,000 エントリが、出力機能 TCAM には 16,000 エントリがあります。
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Supervisor Engine III |
16,000 |
2,000 |
Supervisor Engine IV |
16,000 |
2,000 |
Supervisor Engine V |
16,000 |
2,000 |
Supervisor Engine II-Plus |
8,000 |
1,000 |
Supervisor Engine II-Plus-TS |
8,000 |
1,000 |
Supervisor Engine V-10GE |
16,000 |
16,000 |
Supervisor Engine II-Plus-10GE |
TBP |
TBP |
(注) Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 スイッチのマスクに対するエントリの比率が 8:1 であるため、マスク用の TCAM スペースは、エントリ用のスペースが消費される前に消費されることがあります。
(注) TCAM タイプのあるリージョンは満杯でも他のリージョンは空いていることがあります。このような場合、リージョンの空きエントリをエントリが必要な他のリージョンに移動することによって、リージョンのサイズを変更できます。リージョンのサイズを変更するには access-list hardware region { feature | qos } { input | output } balance コマンドを使用します。それぞれの TCAM には固有のリージョン バランスがあります。
(注) バランス値を高くすると、PortAndVlan リージョンのエントリが増え、PortOrVlan リージョンのエントリは減ります。バランス値を低くすると、PortAndVlan リージョンのエントリが減り、PortOrVlan リージョンのエントリは増えます。バランス値を 50 にすると、PortAndVlan リージョンと PortOrVlan リージョンの割り当ては同じになります。
(注) 特定の TCAM タイプでは PortAndVlan リージョンと PortOrVlan リージョンのエントリをシフトさせることができます(たとえば、入力 ACL TCAM PortOrVlan リージョンから入力 ACL TCAM PortAndVlan リージョンへ交換できます)。TCAM タイプでは、エントリをシフトすることはできません。
リージョンのサイズ変更による効果があるかどうかを調べるには、show platform hardware acl statistics utilization brief コマンドを使用します。
Switch# show platform hardware acl statistics utilization brief
Input Acl(PortAndVlan) 2346 / 8112 ( 29) 1014 / 1014 (100)
Input Acl(PortOrVlan) 0 / 8112 ( 0) 0 / 1014 ( 0)
Input Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
Input Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
Output Acl(PortOrVlan) 0 / 8112 ( 0) 0 / 1014 ( 0)
Output Acl(PortOrVlan) 0 / 8112 ( 0) 0 / 1014 ( 0)
Output Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
Output Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
上の出力は、入力 ACL PortAndVlan リージョンのマスクがなくなったものの入力 ACL PortOrVlan リージョンに空き容量があり、別の用途で利用できることを示しています。次に、PortAndVlan リージョンにエントリの 75% を割り当て、PortOrVlan リージョンに 25% を割り当てるように入力 ACL TCAM のリージョン バランスを変更する例を示します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# access-list hardware region feature input balance 75
リージョン バランスの調整後は、PortAndVlan リージョンに割り当てられたリソースは増え、PortOrVlan リージョンのリソースは少なくなります。
Switch# show platform hardware acl statistics utilization brief
Input Acl(PortAndVlan) 2346 / 12160 ( 19) 1014 / 1520 ( 67)
Input Acl(PortOrVlan) 0 / 4064 ( 0) 0 / 508 ( 0)
Input Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
Input Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
Output Acl(PortOrVlan) 0 / 8112 ( 0) 0 / 1014 ( 0)
Output Acl(PortOrVlan) 0 / 8112 ( 0) 0 / 1014 ( 0)
Output Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
Output Qos(PortOrVlan) 0 / 8128 ( 0) 0 / 1016 ( 0)
(注) デフォルト値に戻すには、access-list hardware region {feature | qos} {input | output} balance コマンドの no 形式を使用するか、バランスを 50 にします。同様の設定は QoS についても実行できます。
ACL による高 CPU のトラブルシューティング
完全にプログラムされた ACL のエントリに一致するパケットは、ハードウェアで処理されます。ただし、大型 ACL および IPSG の設定は、ACL が完全にプログラムされる前に、Supervisor Engine II-Plus-TS、IV、V、および Catalyst 4948 スイッチの TCAM マスクを消費することがあります。
部分的にプログラムされた ACL のエントリに一致するパケットは、CPU を使用してソフトウェアで処理されます。これにより、高 CPU 利用率が高くなったりパケットがドロップされることがあります。パケットが高 CPU 利用率のためにドロップされているかどうかを判別するには、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/hw/switches/ps663/products_tech_note09186a00804cef15.shtml
ACL または IPSG 設定がハードウェアで部分的にプログラムされている場合、Cisco IOS Release 12.2(31)SGA 以上にアップグレードし、TCAM リージョンのサイズを変更すると、ACL の完全プログラムが可能になることがあります。
(注) 使用されていない TCAM エントリの削除を完了するには、何回かの CPU プロセス レビュー サイクルがかかります。これにより、TCAM エントリまたはマスク利用率が 100% に近い場合、一部のパケットがソフトウェアで切り替えられます。
制御パケットのキャプチャのモード選択
(注) Supervisor Engine 6-E は、この機能をサポートしていません。
展開によっては、(CPU を犠牲にして)制御パケットをグローバルにキャプチャしてソフトウェアで転送するのではなく、ハードウェアでブリッジします。VLAN 単位のキャプチャ モード機能により、Catalyst 4500 シリーズ スイッチは、選択した VLAN でのみ制御パケットをキャプチャし、他のすべての VLAN についてはハードウェアでトラフィックをブリッジできます。
スイッチで VLAN 単位キャプチャ モードを採用すると、内部でグローバル TCAM キャプチャ エントリを部分的にディセーブルにし、スヌーピング機能またはルーティング機能のためにイネーブルになっている VLAN 上の機能固有キャプチャ ACL を付加します(すべての IP キャプチャ エントリ、CGMP、および他の IP 以外のエントリは、引き続きグローバル TCAM を介してキャプチャされます)。この機能は、特定の制御パケットを制御するので、内部 ACL がインストールされた VLAN でのみキャプチャされます。他のすべての VLAN では、制御トラフィックは CPU に転送されるのではなく、ハードウェアでブリッジされます。
VLAN 単位のキャプチャ モードにより、制御パケットにユーザ定義 ACL および QoS ポリサー(ハードウェア内)を適用できます。さらに、CPU に入力する集約制御トラフィックをコントロール プレーン ポリシングの対象にできます。
VLAN 単位キャプチャ モードを使用するとき、次の 4 つのプロトコル グループを VLAN 単位で選択できます。各グループで代行受信されたプロトコルの詳細を参考にしてください。
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IGMP スヌーピング ― CGMP、OSPF、IGMP、PIM、224.0.0.1、224.0.0.2、224.0.0.*
•
DHCP スヌーピング ― クライアントからサーバへ、サーバからクライアントへ、サーバからサーバへ
•
ユニキャスト ルーティング ― OSPF、RIP v2、224.0.0.1、224.0.0.2、224.0.0.*
•
マルチキャスト ルーティング ― OSPF、RIP v2、IGMP、PIM、224.0.0.1、224.0.0.2、224.0.0.*
グループの一部には複数の重複 ACE があるため(たとえば、224.0.0.* は、DHCP スヌーピング以外のすべてのグループに存在します)、特定のグループをオンにすると、他のグループからの一部のプロトコルの代行受信もトリガーされます。
VLAN 単位の 4 つのプロトコル グループのプログラミング トリガーは、次のとおりです。
•
IGMP スヌーピングは、指定 VLAN でグローバルにイネーブルにする必要があります。
•
DHCP スヌーピングは、指定 VLAN でグローバルにイネーブルにする必要があります。
•
ユニキャスト ルーティングはイネーブルに、SVI(またはレイヤ 3 物理)インターフェイスはアップになり、IP プロトコル アドレスで設定されている必要があります。これは、SVI インターフェイスがアップになり、プロトコル ファミリ アドレスが設定されると、インターフェイスはすぐにルーティング プロセスの一部になるためです。
•
マルチキャスト ルーティングはイネーブルにされ、マルチキャスト ルーティング プロトコルの 1 つがインターフェイスで設定されている必要があります(IGMP、PIMv1、PIMv2、MBGP、MOSPF、DVMRP、および IGMP スヌーピング)。
注意事項および制限事項
(注) VLAN 単位キャプチャ モードを設定する前に設定を調べ、目的の VLAN で必要な機能だけがイネーブルになっていることを確認する必要があります。
VLAN 単位キャプチャ モードには、次の注意事項および制限事項が適用されます。
•
VLAN 単位キャプチャ モードをイネーブルにすると、ACL/機能 TCAM のエントリがさらに消費されます。
使用可能な TCAM エントリ数は、スーパーバイザ エンジンの種類によって変わります。エントリ/マスク数により、ACL/機能 TCAM の利用率はさらに制限されます。
•
ある種の設定では、グローバル キャプチャ モードよりも早く VLAN 単位キャプチャ モードで TCAM リソースを消費することがあります(IP ソース ガードがいくつかのインターフェイス上、またはユーザ設定 PACL 上でイネーブルにされるなど)。
TCAM リージョンのサイズを変更し、設定に基づいて PortAndVlan または PortOrVlan リージョンに対してより多くのエントリを使用可能にできます。これにより、制限に達する前により多くのエントリをハードウェア内でプログラムできるようになります。TCAM リソースが消費されてしまうと、パケットはソフトウェア内で転送されます。
•
VLAN 単位キャプチャ モードでは、ACL が VLAN またはポート上で制御トラフィックを許可または拒否するように設定できます。
セキュリティ ACL は暗黙の拒否で終了されるため、機能(プロトコル)が動作するために必要な制御パケットを許可するように ACL が設定されていることを確認する必要があります。ただし、この規則はデフォルトの動作と同じです。
設定
制御パケットのキャプチャ モードを選択するには、次の作業を実行します。
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ステップ 1 |
Switch# conf terminal |
コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)# [no] access-list hardware capture mode [vlan | global] |
制御パケットのキャプチャ モードを選択します。 access-list hardware capture mode コマンドの no 形式は、キャプチャ モードをデフォルトのグローバルに戻します。 |
ステップ 3 |
Switch(config)# end |
イネーブル モードに戻ります。 |
次に、Catalyst 4500 シリーズ スイッチが、機能がイネーブルになっている VLAN でのみ制御パケットをキャプチャするように設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# access-list hardware capture mode vlan
次に、Catalyst 4500 シリーズ スイッチが、すべての VLAN で(デフォルト モードのスタティック ACL を使用して)制御パケットをグローバルにキャプチャするように設定する例を示します。
Switch# configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# access-list hardware capture mode global
キャプチャ モードがグローバルからパス管理に変更されると、スタティック CAM エントリは無効になります。これにより、制御パケットが代行受信されずに Catalyst 4500 シリーズ スイッチを通過して CPU に達するウィンドウ(時間)が儲けられます。この一時的な状況は、新しい VLAN 単位のキャプチャ エントリがハードウェアでプログラムされ次第復元されます。
VLAN キャプチャ モードを設定したら、個々の機能の show コマンドを調べ、適切な動作になっていることを確認する必要があります。VLAN 単位キャプチャ モードでは、無効になった CAM エントリは、show platform hardware acl entries static all コマンドの出力で非アクティブ(inactive)として表示されます。たとえば、非アクティブ エントリのヒット数は、無効になって機能がイネーブルになっている VLAN ごとに適用されているので、凍結されたままになります。
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50 PermitSharedStp |
Y |
3344 |
ControlPktsTwo |
51 PermitLoopbackTest |
Y |
0 |
ControlPktsTwo |
52 PermitProtTunnel |
Y |
0 |
ControlPktsTwo |
53 CaptureCgmp |
N |
440 |
ControlPktsTwo |
54 CaptureOspf |
N |
4321 |
ControlPktsTwo |
55 CaptureIgmp |
N |
0 |
ControlPktsTwo |
Supervisor Engine 6-E の TCAM プログラミングと ACL
Supervisor Engine 6-E の ACL および ACL ベースの機能をプログラムするときは、Mapping Table Entry(MTE)、プロファイル、TCAM 値/マスク エントリの 3 種類のハードウェア リソースを適用します。これらのリソースのいずれかが消費されてしまうと、ソフトウェア ベースの処理のために、パケットが CPU に送信されます。
(注) Supervisor Engine II-Plus から V-10GE までとは異なり、Supervisor Engine 6-E は、使用可能リソースを自動的に管理します。Supervisor Engine 6-E ではマスクが共有されないため、プログラミング アルゴリズムは 1 つだけです。リージョンが存在しないので、リージョンのサイズ変更は必要ありません。VLAN 単位パケット キャプチャ モードは違うように実装されるので、ディセーブルにはできません。
Supervisor Engine 6-E でリソースが消費されてしまった場合、設定の複雑さを軽減する必要があります。
ACL のレイヤ 4 演算
ここでは、レイヤ 4 ポート演算を含む ACL を設定する場合の注意事項および制約事項について説明します。
•
「レイヤ 4 演算の制約事項」
•
「レイヤ 4 演算設定時の注意事項」
•
「ACL 処理が CPU に与える影響」
レイヤ 4 演算の制約事項
次のタイプの演算子を指定できます。いずれも、ハードウェアのレイヤ 4 演算が 1 つ使用されます。
•
gt(geater than:より大きい)
•
lt(less than:より小さい)
•
neq(not equal:等しくない)
•
range(inclusive range:包含範囲)
Supervisor Engine 2-Plus から V-10GE までの場合、同じ ACL で異なる演算を 7 つ以上指定しないでください。この数を超えると、超過した各演算の影響を受ける ACE が、ハードウェアで複数の ACE に変換されることがあります。また、影響を受ける ACE がソフトウェアで処理される可能性があります。
Supervisor Engine 6-E では、レイヤ 4 演算数の制限は、それぞれの ACL の種類によって異なり、他の要素によっても変わることがあります。変更する要素としては、ACL が着信または発信トラフィックに適用されているかどうか、ACL がセキュリティ ACL かまたは QoS ポリシーの一致条件として使用されているかどうか、IPv6 ACL が圧縮フローラベル形式を使用してプログラムされているかどうか、などがあります。
(注) IPv6 圧縮フローラベル形式では、レイヤ 2 アドレス テーブルを使用して、ACL にある各 ACE の IPv6 送信元アドレスの一部を圧縮します。フローラベルで解放された余分なスペースは、さらに多くのレイヤ 4 演算をサポートするために使用可能です。この圧縮を使用するには、IPv6 ACL に、送信元 IPv6 アドレスの下位の 48 ビットの部分でのみマスクする ACE を含めることはできません。
一般的に、同じ ACL に含めることができるレイヤ 4 演算の最大数は次のようになります。
Direction Protocol Type Operations
------------------------------------------------
Input IPv6 Compressed Security 16
Input IPv6 Uncompressed Security 7
Input IPv6 Compressed QoS 12
Input IPv6 Uncompressed QoS 8
Output IPv6 Compressed Security 17
Output IPv6 Uncompressed Security 8
Output IPv6 Compressed QoS 12
Output IPv6 Uncompressed QoS 8
(注) 16 の演算がサポートされる場合、17 番めの演算によって、拡張がトリガーされます。
使用可能なレイヤ 4 演算数を超えた場合、超過した各演算により、影響を受ける ACE がハードウェアで複数 ACE に変換されることがあります。このような変換ミスにより、パケットはソフトウェアの処理のために、CPU に送信されます。
レイヤ 4 演算設定時の注意事項
レイヤ 4 演算子を使用するときは、次の注意事項に従ってください。
•
レイヤ 4 演算は、演算子またはオペランドが異なっていると、異なる演算であるとみなされます。たとえば、次の ACL には 3 つの異なるレイヤ 4 演算が定義されています。gt 10 と gt 11 は 2 つの異なるレイヤ 4 演算とみなされるためです。
(注) eq 演算子は、ハードウェアのレイヤ 4 演算を使用しないので、何回でも無制限に使用できます。
•
次の例のように、レイヤ 4 演算は、同じ演算子またはオペランドの組み合わせでも、送信元ポートに適用するか宛先ポートに適用するかによって異なる演算になります。
以下は、より詳細な例です。
... (dst port) gt 10 permit
... (dst port) gt 11 deny
... (dst port) neq 6 permit
... (src port) neq 6 deny
... (dst port) gt 10 deny
... (dst port) gt 20 deny
... (src port) range 11 13 deny
... (dst port) neq 6 permit
アクセス リスト 101 および 102 で使用しているレイヤ 4 演算は、次のとおりです。
•
アクセス リスト 101 のレイヤ 4 演算: 5
–
gt 10 permit および gt 10 deny は、どちらも同じ演算です。まったく同じで、どちらも宛先ポートに適用されます。
•
アクセス リスト 102 のレイヤ 4 演算: 4
•
レイヤ 4 演算の合計:8(2 つのアクセス リスト間で共用されるため)
–
neq6 permit は 2 つの ACL 間で共用されます。まったく同じで、どちらも同じ宛先ポートに適用されます。
•
使用しているレイヤ 4 演算について説明します。
–
レイヤ 4 演算 1 は、ACL101 から gt 10 permit および gt 10 deny を格納します。
–
レイヤ 4 演算 2 は、ACL101 から lt 9 deny を格納します。
–
レイヤ 4 演算 3 は、ACL101 から gt 11 deny を格納します。
–
レイヤ 4 演算 4 は、ACL101 および 102 から neq 6 permit を格納します。
–
レイヤ 4 演算 5 は、ACL101 から neq 6 deny を格納します。
–
レイヤ 4 演算 6 は、ACL1021 から gt 20 deny を格納します。
–
レイヤ 4 演算 7 は、ACL102 から lt 9 deny を格納します。
–
レイヤ 4 演算 8 は、ACL102 から range 11 13 deny を格納します。
ACL 処理が CPU に与える影響
ACL 処理は、次の 2 つの形で CPU に影響を与える可能性があります。
•
一部のパケットで、ハードウェア リソースを使い果たした場合、ACL との照合をソフトウェアで実行する必要があります。
–
「rst ack」と「syn fin rst」、「urq」、および「psh」以外の TCP フラグの組み合わせは、ハードウェアで処理されます。rst ack はキーワード established に相当します。他の TCP フラグの組み合わせは、ソフトウェアでサポートされます。
–
Supervisor Engine 2-Plus から V-10GE の場合、すべての演算をハードウェアで処理するには、ACL に指定するレイヤ 4 演算(lt、gt、neq、および range)を 6 つまでにする必要があります。7 以上のレイヤ 4 演算では、超過分の演算についてハードウェアで複数の ACE に変換しようとします。ハードウェアで変換できなかった場合、パケットはソフトウェアで処理されます。変換プロセスは、大量のレイヤ 4 演算のある大規模 ACL や、大量の ACL が設定されたスイッチで成功の可能性が低くなります。正確な限度は、その他に設定されている ACL の数や変換対象の ACL が使用する特定のレイヤ 4 演算によって異なります。eq 演算子は、レイヤ 4 演算を必要としないので、何回でも使用できます。
–
Supervisor Engine 6-E については、「レイヤ 4 演算の制約事項」を参照してください。
–
ACL 内のレイヤ 4 演算の合計数が 6 に満たない場合、任意の形で処理を分散させることができます。
次に例を示します。
次のアクセス リストは、すべてハードウェアで処理されます。
access-list 104 permit tcp any any established
access-list 105 permit tcp any any rst ack
access-list 107 permit tcp any synfin rst
アクセス リスト 104 および 105 は同じです。established は rst および ack の省略形です。
次のアクセス リスト 101 は、すべてソフトウェアで処理されます。
access-list 101 permit tcp any any syn
次のアクセス リスト 106 は、送信元演算が 4、宛先演算が 2 なので、ハードウェアで処理されます。
access-list 106 permit tcp any range 100 120 any range 120 140
access-list 106 permit tcp any range 140 160 any range 180 200
access-list 106 permit tcp any range 200 220
access-list 106 deny tcp any range 220 240
次のコードの場合、送信元演算と宛先演算が 3 つずつあるので、3 番めの ACE に対するレイヤ 4 演算は dst lt 1023 をハードウェアで複数の ACE に変換しようとします。変換できなかった場合、3 番めの ACE はソフトウェアで処理されます。
access-list 102 permit tcp any lt 80 any gt 100
access-list 102 permit tcp any range 100 120 any range 120 1024
access-list 102 permit tcp any gt 1024 any lt 1023
次のアクセス リスト 103 の場合も同様に、3 番めの ACE は dst gt 1023 をハードウェアで複数の ACE に変換しようとします。変換できなかった場合、3 番めの ACE はソフトウェアで処理されます。送信元ポートおよび宛先ポートの演算は同じように見えますが、異なるレイヤ 4 演算とみなされます。
access-list 103 permit tcp any lt 80 any lt 80
access-list 103 permit tcp any range 100 120 any range 100 120
access-list 103 permit tcp any gt 1024 any gt 1023
(注) source port lt 80 と destination port lt 80 は、異なる演算とみなされるので注意してください。
•
一部のパケットはアカウンティング目的で CPU に送信する必要がありますが、アクションはそのままハードウェアで実行されます。たとえば、パケットのログが必要な場合、ログ収集のためにコピーが CPU に送信されますが、転送(またはドロップ)はハードウェアで実行されます。ロギングによって CPU の処理速度が低下しますが、転送速度は影響を受けません。この状況が発生するのは、次のような場合です。
–
log キーワードが使用されている場合
–
出力 ACL でパケットが拒否された場合
–
入力 ACL でパケットが拒否され、ACL が適用されたインターフェイス上で ip unreachable がイネーブルの場合( ip unreachable は、すべてのインターフェイスにおいてデフォルトでイネーブル)
ユニキャスト MAC アドレス フィルタリングの設定
特定の VLAN にある MAC アドレスのユニキャスト トラフィックをすべてブロックするには、次の作業を行います。
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Switch(config)#
mac-address-table static
mac_address
vlan
vlan_ID
drop
|
特定の VLAN にある MAC アドレスのユニキャスト トラフィックをすべてブロックします。 MAC アドレスベースのブロッキングをクリアするには、このコマンドの no 形式を drop キーワードなしで使用します。 |
次に、VLAN 12 にある MAC アドレス 0050.3e8d.6400 のユニキャスト トラフィックをすべてブロックする例を示します。
Router# configure terminal
Router(config)# mac-address-table static 0050.3e8d.6400 vlan 12 drop
名前付き MAC 拡張 ACL の設定
(注) ここでの説明は、Supervisor Engine II-Plus から 6-E までに該当します。
VLAN および物理レイヤ 2 インターフェイスで IP 以外のトラフィックをフィルタリングするには、MAC アドレスおよび名前付き MAC 拡張 ACL を使用します。手順については、他の名前付き拡張 ACL の場合と同様です。アクセス リストの名前として番号を使用することもできますが、700 ~ 799 の MAC アクセス リスト番号はサポートされません。
(注) 名前付き MAC 拡張 ACL は、レイヤ 3 インターフェイスに適用できません。
mac access-list extended コマンドでサポートされている IP 以外のプロトコルの詳細については、『 Catalyst 4500 Series Switch Cisco IOS Command Reference 』を参照してください。
名前付きの MAC 拡張 ACL を作成するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Switch#
configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)#
mac access-list extended
name
|
名前を使用して MAC 拡張アクセス リストを定義します。 |
ステップ 3 |
Switch(config-ext-macl)# {
deny |
permit } {
any |
host
source MAC address | source MAC address mask } {
any |
host
destination MAC address | destination MAC address mask } [
protocol-family {
appletalk |
arp-non-ipv4 |
decnet |
ipx |
ipv6 |
rarp-ipv4 |
rarp-non-ipv4 |
vines |
xns }]
|
拡張 MAC アクセス リスト コンフィギュレーション モードでは、あらゆる( any )送信元 MAC アドレス、マスク付きの送信元 MAC アドレス、または特定の( host )送信元 MAC アドレス、およびあらゆる( any )宛先 MAC アドレス、マスク付き宛先 MAC アドレス、または特定の宛先 MAC アドレスに、 permit または deny を指定します。 (任意) • [ protocol-family { appletalk | arp-non-ipv4 | decnet | ipx | ipv6 | rarp-ipv4 | rarp-non-ipv4 | vines | xns }]
(注) Supervisor Engine 6-E では、IPv6 パケットはレイヤ 2 ACL 検索キーを生成しないため、Supervisor Engine II-Plus から V-10GE の MAC ACL に対して IPv4 パケットが一致しないのと同様に、MAC ACL で一致しません。したがって、ipv6 キーワードは Supervisor Engine II-Plus から V-10GE の MAC ACL では使用可能ですが、Supervisor Engine 6-E では使用できません。
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ステップ 4 |
Switch(config-ext-macl)#
end
|
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 5 |
Switch# show access-lists [number | name]
|
アクセス リストの設定を表示します。 |
ステップ 6 |
Switch(config)#
copy running-config startup-config
|
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
ACL 全体を削除するには、 no mac access-list extended name グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。名前付き MAC 拡張 ACL から ACE を個別に削除することもできます。
次に、DECnet Phase IV という EtherType のトラフィックのみを拒否し、その他のすべてのタイプのトラフィックを許可する、 mac1 という名前のアクセス リストを作成、表示する例を示します。
Switch(config)# mac access-list extended mac1
Switch(config-ext-macl)# deny any any decnet-iv (old) protocol-family decnet (new)
Switch(config-ext-macl)# permit any any
Switch(config-ext-macl)# end
Switch # show access-lists
Extended MAC access list mac1
deny any any decnet-iv (old) protocol-family decnet (new)
ハードウェア統計をイネーブルまたはディセーブルにするには、アクセス リストの ACE を設定する際に次のコマンドを入力します。
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Switch(config)# mac access-list extended mac1
Switch(config-ext-nacl)# hardware statistics
Switch(config-ext-nacl)# end
名前付き IPv6 ACL の設定
(注) ここでの説明は、Supervisor Engine 6-E に該当します。
Supervisor Engine 6-E は、ハードウェア ベースの IPv6 ACL をサポートし、レイヤ 3 インターフェイス上のユニキャスト、マルチキャスト、およびブロードキャスト IPv6 トラフィックをフィルタリングします。こういったアクセス リストは、IPv6 アドレスが設定されたレイヤ 3 インターフェイスでのみ設定できます。
名前付き IPv6 ACL を作成するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Switch#
configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)#
ipv6 access-list name
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名前を使用して IPv6 アクセス リストを定義します。 |
ステップ 3 |
Switch(config-ipv6-acl)# {deny | permit} {any | proto} {host ipv6-addr | ipv6-prefix} host ipv6-addr | ipv6-prefix}
|
各 IPv6 ACE を指定します。
(注) このステップは、ACL の複数 ACE を定義するときに繰り返すことがあります。
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ステップ 4 |
Switch(config-ipv6-acl)#
hardware statistics
|
(任意)IPv6 ACL のハードウェア統計をイネーブルにします。 |
ステップ 5 |
Switch(config-ipv6-acl)#
end
|
特権 EXEC モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
Switch# show ipv6 access-list
|
IPv6 アクセス リストの設定を表示します。 |
IPv6 ACL を削除するには、no ipv6 access-list name グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。また、IPv6 アクセス リストから個々の ACE を削除することもできます。
次に、1 つの特定送信元/宛先アドレスを持つ 1 つの IPv6 トラフィックのみを拒否するが、他のすべての種類の IPv6 トラフィックは許可する v6test という名前の IPv6 アクセス リストを作成および表示する例を示します。
Switch(config)# ipv6 access-list v6test
Switch(config-ipv6-acl)# deny ipv6 host 2020::10 host 2040::10
Switch(config-ipv6-acl)# permit any any
Switch(config-ipv6-acl)# end
Switch# show ipv6 access-list
deny ipv6 host 2020::10 host 2040::10 sequence 10
permit ipv6 any any sequence 20
ハードウェア統計をイネーブルにするには、アクセス リスト ACE を設定するときに、次のコマンドを入力します。
Switch(config)# ipv6 access-list v6test
Switch(config-ipv6-acl)# hardware statistics
Switch(config-ipv6-acl)# end
(注) ハードウェア統計は、デフォルトではディセーブルです。
レイヤ 3 インターフェイスへの IPv6 ACL の適用
IPv6 ACL をレイヤ 3 インターフェイスに適用するには、次の作業を実行します。
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ステップ 1 |
Switch#
configure terminal
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グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)#
interface interface-type
slot/interface
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設定するインターフェイスを指定します。
(注) interface-type は、レイヤ 3 インターフェイスである必要があります。
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ステップ 3 |
Switch(config-if)#
ipv6 traffic-filter ipv6-acl {in|out}
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IPv6 ACL をレイヤ 3 インターフェイスに適用します。 |
(注) IPv6 ACL は、Supervisor VI-E のハードウェアでのみサポートされます。
(注) IPv6 ACL は、レイヤ 3 インターフェイスでのみサポートされます。
次の例は、拡張名前付き IPv6 ACL simple-ipv6-acl を SVI 300 ルーテッド入力トラフィックに適用します。
Switch# configure terminal
Switch(config)# interface vlan 300
Switch(config-if)# ipv6 traffic-filter simple-ipv6-acl in
VLAN マップの設定
ここでは、次の内容について説明します。
•
「VLAN マップ設定時の注意事項」
•
「VLAN マップの作成および削除」
•
「VLAN への VLAN マップの適用」
•
「ネットワークでの VLAN マップの使用方法」
ここでは、VLAN マップを設定する方法について説明します。この方法は、VLAN 内でフィルタリングを制御する唯一の方法です。VLAN マップには方向がありません。VLAN マップを使用して、特定の方向のトラフィックをフィルタリングするには、特定の送信元または宛先アドレスが指定された ACL を追加する必要があります。VLAN マップ内に該当タイプのパケット(IP または MAC)に対する match コマンドがある場合、デフォルトでは、マップ内のどのエントリにも一致しないパケットはドロップされます。該当タイプのパケットに対する match コマンドがない場合、デフォルトでは、パケットが転送されます。
VLAN マップを作成して、1 つまたは複数の VLAN に適用するには、次の作業を行います。
ステップ 1
VLAN に適用する標準 IP ACL または拡張 IP ACL、または名前付き MAC 拡張 ACL を作成します。
ステップ 2
VLAN ACL マップ エントリを作成するには、 vlan access-map グローバル コンフィギュレーション コマンドを入力します。
ステップ 3
アクセス マップ コンフィギュレーション モードでは、 action として、 forward (デフォルト)または drop を任意で入力できます。また、 match コマンドを入力して、既知の MAC アドレスのみが格納された IP パケットまたは IP 以外のパケットを指定したり、1 つまたは複数の ACL(標準または拡張)とパケットを照合することもできます。match コマンドが指定されていない場合は、すべてのパケットにアクションが適用されます。match コマンドを使用すると、パケットを複数の ACL と照合できます。指定された ACL のいずれかにパケットが一致すると、アクションが適用されます。
(注) 該当タイプのパケット(IP または MAC)に対する match コマンドが VLAN マップにある場合でも、パケットがそのタイプに一致しない場合、デフォルトでは、パケットがドロップされます。該当タイプのパケットに対する match コマンドが VLAN マップ内になく、それに対するアクションが指定されていない場合、パケットは転送されます。
ステップ 4
VLAN マップを 1 つまたは複数の VLAN に適用するには、 vlan filter グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
(注) レイヤ 2 インターフェイスに ACL(PACL)が適用されているスイッチ上の VLAN には、VLAN マップを適用できません。
VLAN マップ設定時の注意事項
VLAN マップを設定する際は、次の注意事項に従ってください。
•
VLAN マップは IPv4 Address Resolution Protocol(ARP; アドレス解決プロトコル)パケットをフィルタリングしません。
•
ルーテッド VLAN インターフェイス(入力または出力)でトラフィックを拒否するように設定されたルータ ACL が存在せず、VLAN マップが設定されていない場合は、すべてのトラフィックが許可されます。
•
各 VLAN マップは一連のエントリで構成されます。VLAN マップのエントリの順序は重要です。スイッチに着信したパケットは、VLAN マップの最初のエントリに対してテストされます。一致した場合は、VLAN マップで指定されたアクションが実行されます。一致しなかった場合、パケットはマップ内の次のエントリに対してテストされます。
•
該当タイプのパケット(IP または MAC)に対する match コマンドが VLAN マップに 1 つまたは複数ある場合でも、パケットがそれらの match コマンドに一致しないと、デフォルトでは、パケットがドロップされます。該当タイプのパケットに対する match コマンドが VLAN マップ内にない場合、デフォルトでは、パケットが転送されます。
•
多数の ACL が設定されている場合は、システムの起動に時間がかかることがあります。
VLAN マップの作成および削除
各 VLAN マップは順番に並べられた一連のエントリで構成されます。VLAN マップ エントリを作成、追加、または削除するには、次の作業を行います。
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ステップ 1 |
Switch#
configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)#
vlan access-map
name [
number ]
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VLAN マップを作成し、名前と、任意で番号を付けます。番号は、マップ内のエントリの順序を表す数字です。 同じ名前の VLAN マップを作成すると、10 ずつ増分する番号が順に割り当てられます。マップを変更または削除するときは、目的のマップ エントリの番号を入力します。 このコマンドを入力すると、アクセスマップ コンフィギュレーション モードに変わります。 |
ステップ 3 |
Switch(config-access-map)#
action
{
drop
|
forward }
|
(任意)マップ エントリに対するアクションを設定します。デフォルトは転送です。 |
ステップ 4 |
Switch(config-access-map)#
match
{
ip |
mac }
address
{
name |
number }
[
name |
number ]
|
1 つまたは複数の標準または拡張アクセス リストに対してパケットを比較します(IP または MAC アドレスを使用)。パケットの比較は、対応するプロトコル タイプのアクセス リストに対してのみ行われます。IP パケットは、標準または拡張 IP アクセス リストに対して比較されます。IP 以外のパケットは、名前付き MAC 拡張アクセス リストに対してのみ比較されます。match コマンドが指定されていない場合は、すべてのパケットにアクションが実行されます。 |
ステップ 5 |
Switch(config-access-map)#
end
|
グローバル コンフィギュレーション モードに戻ります。 |
ステップ 6 |
Switch(config)#
show running-config
|
アクセス リストの設定を表示します。 |
ステップ 7 |
Switch(config)#
copy running-config startup-config
|
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
マップを削除するには、 no vlan access-map name グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。マップ内の単一のシーケンス エントリを削除するには、 no vlan access-map name number グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。デフォルトのアクションである転送を行うには、 no action アクセスマップ コンフィギュレーション コマンドを使用します。
VLAN マップでは、特定の permit または deny キーワードは使用されません。VLAN マップを使用してパケットを拒否するには、パケットと比較する ACL を作成して、アクションをドロップに設定します。ACL に permit を指定すると、一致とみなされます。ACL に deny を指定すると、一致しないという意味になります。
ACL および VLAN マップの例
特定の目的のための ACL および VLAN マップを作成する例を示します。
例 1
ここでは、パケットを拒否する ACL および VLAN マップを作成する例を示します。最初のマップでは、ip1 ACL(TCP パケット)に一致するすべてのパケットがドロップされます。最初に、すべての TCP パケットを許可し、それ以外のパケットをすべて拒否する ip1 ACL を作成します。VLAN マップには IP パケットに対する match コマンドが存在するので、デフォルトでは、どの match コマンドとも一致しないすべての IP パケットがドロップされます。
Switch(config)# ip access-list extended ip1
Switch(config-ext-nacl)# permit tcp any any
Switch(config-ext-nacl)# exit
Switch(config)# vlan access-map map_1 10
Switch(config-access-map)# match ip address ip1
Switch(config-access-map)# action drop
次に、パケットを許可する VLAN マップを作成する例を示します。ACL ip2 は UDP パケットを許可します。ip2 ACL と一致するすべてのパケットが転送されます。
Switch(config)# ip access-list extended ip2
Switch(config-ext-nacl)# permit udp any any
Switch(config-ext-nacl)# exit
Switch(config)# vlan access-map map_1 20
Switch(config-access-map)# match ip address ip2
Switch(config-access-map)# action forward
このマップでは、これ以前のどの ACL とも一致しないすべての IP パケット(TCP でも UDP でもないパケット)がドロップされます。
例 2
次の例の VLAN マップでは、デフォルトで IP パケットがドロップされ、MAC パケットが転送されるように設定されています。標準の ACL 101、名前付き拡張アクセス リスト igmp-match および tcp-match を適用して、次のように VLAN マップを設定します。
•
すべての UDP パケットが転送されます。
•
すべての IGMP パケットがドロップされます。
•
すべての TCP パケットが転送されます。
•
その他のすべての IP パケットがドロップされます。
•
すべての非 IP パケットが転送されます。
Switch(config)# access-list 101 permit udp any any
Switch(config)# ip access-list extended igmp-match
Switch(config-ext-nacl)# permit igmp any any
Switch(config)# ip access-list extended tcp-match
Switch(config-ext-nacl)# permit tcp any any
Switch(config-ext-nacl)# exit
Switch(config)# vlan access-map drop-ip-default 10
Switch(config-access-map)# match ip address 101
Switch(config-access-map)# action forward
Switch(config-access-map)# exit
Switch(config)# vlan access-map drop-ip-default 20
Switch(config-access-map)# match ip address igmp-match
Switch(config-access-map)# action drop
Switch(config-access-map)# exit
Switch(config)# vlan access-map drop-ip-default 30
Switch(config-access-map)# match ip address tcp-match
Switch(config-access-map)# action forward
例 3
次の例の VLAN マップでは、デフォルトで MAC パケットがドロップされ、IP パケットが転送されるように設定されています。MAC 拡張アクセス リスト good-hosts および good-protocols を適用して、次のように VLAN マップを設定します。
•
ホスト 0000.0c00.0111 および 0000.0c00.0211 からの MAC パケットが転送されます。
•
DECnet または Virtual Integrated Network Service(VINES)プロトコルファミリの MAC パケットが転送されます。
•
その他のすべての IP 以外のパケットがドロップされます。
•
すべての IP パケットが転送されます。
Switch(config)# mac access-list extended good-hosts
Switch(config-ext-macl)# permit host 000.0c00.0111 any
Switch(config-ext-macl)# permit host 000.0c00.0211 any
Switch(config-ext-nacl)# exit
Switch(config)# mac access-list extended good-protocols
Switch(config-ext-macl)# permit any any protocol-family decnet
Switch(config-ext-macl)# permit any any protocol-family vines
Switch(config-ext-nacl)# exit
Switch(config)# vlan access-map drop-mac-default 10
Switch(config-access-map)# match mac address good-hosts
Switch(config-access-map)# action forward
Switch(config-access-map)# exit
Switch(config)# vlan access-map drop-mac-default 20
Switch(config-access-map)# match mac address good-protocols
Switch(config-access-map)# action forward
例 4
次の例の VLAN マップでは、すべてのパケット(IP および IP 以外)がドロップされるように設定されています。アクセス リスト tcp-match および good-hosts を適用して、次のように VLAN マップを設定します。
•
すべての TCP パケットが転送されます。
•
ホスト 0000.0c00.0111 および 0000.0c00.0211 からの MAC パケットが転送されます。
•
その他のすべての IP パケットがドロップされます。
•
その他のすべての MAC パケットがドロップされます。
Switch(config)# vlan access-map drop-all-default 10
Switch(config-access-map)# match ip address tcp-match
Switch(config-access-map)# action forward
Switch(config-access-map)# exit
Switch(config)# vlan access-map drop-all-default 20
Switch(config-access-map)# match mac address good-hosts
Switch(config-access-map)# action forward
VLAN への VLAN マップの適用
1 つの VLAN マップを 1 つまたは複数の VLAN に適用するには、次の作業を行います。
|
|
|
ステップ 1 |
Switch#
configure terminal
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)#
vlan filter
mapname
vlan-list
list
|
VLAN マップを 1 つまたは複数の VLAN に適用します。 list には単一の VLAN ID(22)、連続した範囲(10 ~ 22)、または VLAN ID から構成されるストリング(12、22、30)を指定できます。カンマやハイフンの前後にスペースを挿入することもできます。 |
ステップ 3 |
Switch(config)#
show running-config
|
アクセス リストの設定を表示します。 |
ステップ 4 |
c Switch(config)#
copy running-config startup-config
|
(任意)コンフィギュレーション ファイルに設定を保存します。 |
(注) レイヤ 2 インターフェイスに ACL(PACL)が適用されているスイッチ上の VLAN には、VLAN マップを適用できません。
次に、VLAN マップ 1 を VLAN 20 ~ 22 に適用する例を示します。
Switch(config)# vlan filter map 1 vlan-list 20-22
ネットワークでの VLAN マップの使用方法
図42-3 に、一般的なワイヤリングクローゼットの構成を示します。ホスト X およびホスト Y は異なる VLAN 内にあり、ワイヤリング クローゼット スイッチ A およびスイッチ C に接続されています。ホスト X からホスト Y へのトラフィックは、スイッチ B によってルーティングされます。ホスト X からホスト Y へのトラフィックは、トラフィックのエントリ ポイントであるスイッチ A でアクセス コントロールできます。次の構成では、スイッチは VLAN マップと QoS 分類 ACL をサポートします。
図42-3 ワイヤリング クローゼットの構成
たとえば、HTTP トラフィックをホスト X からホスト Y へスイッチングしない場合は、スイッチ A に VLAN マップを適用し、ホスト X(IP アドレス 10.1.1.32)からホスト Y(IP アドレス 10.1.1.34)への HTTP トラフィックがスイッチ B にブリッジングされずに、すべてスイッチ A でドロップされるようにすることもできます。
最初に、HTTP ポートですべての TCP トラフィックを許可(一致)する IP アクセス リスト http を定義します。
Switch(config)# ip access-list extended http
Switch(config-ext-nacl)# permit tcp host 10.1.1.32 host 10.1.1.34 eq www
Switch(config-ext-nacl)# exit
次に、VLAN アクセス マップ map2 を作成し、http アクセス リストと一致するトラフィックがドロップされ、その他すべての IP トラフィックが転送されるようにします。
Switch(config)# vlan access-map map2 10
Switch(config-access-map)# match ip address http
Switch(config-access-map)# action drop
Switch(config-access-map)# exit
Switch(config)# ip access-list extended match_all
Switch(config-ext-nacl)# permit ip any any
Switch(config-ext-nacl)# exit
Switch(config)# vlan access-map map2 20
Switch(config-access-map)# match ip address match_all
Switch(config-access-map)# action forward
次に、VLAN アクセス マップ map2 を VLAN 1 に適用します。
Switch(config)# vlan filter map2 vlan 1
別の VLAN にあるサーバへのアクセスの拒否
図42-4 に、別の VLAN にあるサーバへのアクセスを制限する方法を示します。この例では、VLAN 10 内のサーバ 10.1.1.100 に対しては、次のようにアクセスが制限されています。
•
VLAN 20 内のサブネット 10.1.2.0/8 にあるホストのアクセスが禁止されています。
•
VLAN 10 内のホスト 10.1.1.4 および 10.1.1.8 のアクセスが禁止されています。
図42-4 別の VLAN にあるサーバへのアクセスの拒否
この手順では、別の VLAN にあるサーバへのアクセスを拒否するように VLAN マップを使用して ACL を設定します。VLAN マップ SERVER 1_ACL は、サブネット 10.1.2.0/8 内のホスト、ホスト 10.1.1.4、およびホスト 10.1.1.8 のアクセスを拒否します。一方、その他すべての IP トラフィックを許可します。ステップ 3 では、VLAN 10 に VLAN マップ SERVER1 を適用します。
このように設定するには次の手順を実行します。
ステップ 1
対応するパケットと照合し、許可する IP ACL を定義します。
Switch(config)# ip access-list extended SERVER1_ACL
Switch(config-ext-nacl))# permit ip 10.1.2.0 0.0.0.255 host 10.1.1.100
Switch(config-ext-nacl))# permit ip host 10.1.1.4 host 10.1.1.100
Switch(config-ext-nacl))# permit ip host 10.1.1.8 host 10.1.1.100
Switch(config-ext-nacl))# exit
ステップ 2
SERVER1_ACL と一致する IP パケットをドロップして、一致しない IP パケットを転送するこの ACL を使用して、VLAN マップを定義します。
Switch(config)# vlan access-map SERVER1_MAP
Switch(config-access-map)# match ip address SERVER1_ACL
Switch(config-access-map)# action drop
Switch(config)# vlan access-map SERVER1_MAP 20
Switch(config-access-map)# action forward
Switch(config-access-map)# exit
ステップ 3
VLAN 10 に VLAN マップを適用します。
Switch(config)# vlan filter SERVER1_MAP vlan-list 10.
VLAN アクセス マップ情報の表示
VLAN アクセス マップまたは VLAN フィルタに関する情報を表示するには、次のいずれかの作業を行います。
|
|
Switch#
show vlan access-map [
mapname ]
|
すべての VLAN アクセス マップまたは指定されたアクセス マップに関する情報を表示します。 |
Switch#
show vlan filter [
access-map
name |
vlan
vlan-id ]
|
すべての VLAN フィルタ、または指定された VLAN や VLAN アクセス マップに関する情報を表示します。 |
次に、 show vlan access-map コマンドの出力例を示します。
Switch# show vlan access-map
Vlan access-map "map_1" 10
Vlan access-map "map_1" 20
Vlan access-map "map_1" 30
(注) シーケンス 30 には match コマンドがありません。すべてのパケット(IP および IP 以外)はこれと照合されてドロップされます。
次に、 show vlan filter コマンドの出力例を示します。
VLAN Map map_1 is filtering VLANs:
ルータ ACL を VLAN マップと併用する方法
該当タイプのパケット(IP または MAC)に対する match コマンドが VLAN マップにある場合でも、パケットがそのタイプに一致しない場合、デフォルトでは、パケットがドロップされます。VLAN マップ内に match コマンドがなく、アクションが指定されていない場合、どの VLAN マップ エントリとも一致しないパケットは転送されます。
(注) 1 つのスイッチ上で、VLAN マップまたは入力ルータ ACL を組み合わせて使用することはできません。
ルータ ACL を VLAN マップと併用する場合の注意事項
ルータ ACL と VLAN マップを同じ VLAN 上に設定する必要がある場合は、次の注意事項に従ってください。
スイッチ ハードウェアは、方向(入力および出力)ごとに、1 回の検索を実行するので、ルータ ACL および VLAN マップを同じ VLAN に設定する場合は、これらを統合する必要があります。ルータ ACL を VLAN マップと統合すると、ACE の数が急激に増加することがあります。
できるだけ末尾のデフォルト アクションを除くすべてのエントリのアクションが同一となるように、ACL を記述します。次のいずれかの形式を使用して ACL を記述します。
permit...
permit...
permit...
deny ip any any
または
deny...
deny...
deny...
permit ip any any
ACL 内で複数の許可または拒否アクションを定義する場合は、それぞれのアクション タイプをまとめて、エントリ数を削減します。
レイヤ 4 情報を含む IP ACE と TCP/UDP/ICMP ACE がともに ACL 内に存在する場合に、フルフロー モードを指定する必要があるときは、レイヤ 4 ACE をリストの末尾に配置します。この結果、IP アドレスに基づくトラフィックのフィルタリングが優先されます。
VLAN に適用されるルータ ACL と VLAN マップの例
以下の例では、ルータ ACL および VLAN マップを VLAN に適用して、スイッチド パケット、ブリッジド パケット、ルーテッド パケット、およびマルチキャスト パケットへのアクセスを制御します。次の図では、それぞれの宛先に転送されるパケットを示します。ただし、パケットのパスが VLAN マップや ACL を示す回線と交差するポイントごとで、パケットを転送しないでドロップすることもできます。
ACL およびスイッチド パケット
図42-5 に、VLAN 内でスイッチングされるパケットを ACL が処理する方法を示します。VLAN 内でスイッチングされるパケットは、ルータ ACL では処理されません。
図42-5 スイッチド パケットへの ACL の適用
ACL およびルーテッド パケット
図42-6 に、ルーテッド パケットに ACL を適用する方法を示します。ルーテッド パケットの場合、ACL は次の順に適用されます。
1.
入力 VLAN の VLAN マップ
2.
入力ルータ ACL
3.
出力ルータ ACL
4.
出力 VLAN の VLAN マップ
図42-6 ルーテッド パケットへの ACL の適用
PACL の設定
ここでは、PACL を設定する方法について説明します。PACL は、レイヤ 2 インターフェイス上のフィルタリングを制御するのに使用されます。PACL は、レイヤ 3 情報、レイヤ 4 ヘッダー情報または IP 以外のレイヤ 2 情報に基づいて、レイヤ 2 インターフェイスのトラフィックをフィルタリングできます。
ここでは、次の内容について説明します。
•
「PACL の作成」
•
「PACL 設定時の注意事項」
•
「レイヤ 2 インターフェイス上での IP ACL と MAC ACL の設定」
•
「アクセス グループ モードを PACL と併用する方法」
•
「レイヤ 2 インターフェイス上でのアクセス グループ モードの設定」
•
「レイヤ 2 インターフェイスへの ACL の適用」
•
「レイヤ 2 インターフェイス上の ACL 設定の表示」
PACL の作成
PACL を作成して、1 つまたは複数のインターフェイスに適用するには、次の作業を行います。
ステップ 1
インターフェイスに適用する標準 IP ACL または拡張 IP ACL、または名前付き MAC 拡張 ACL を作成します。
ステップ 2
ip access-group または mac access-group interface コマンドを使用して、IP ACL または MAC ACL を 1 つまたは複数のレイヤ 2 インターフェイスに適用します。
PACL 設定時の注意事項
PACL を設定する場合は、次の注意事項に留意してください。
•
各方向に対して同一のレイヤ 2 インターフェイスに適用できるのは、多くても 1 つの IP アクセス リストと1 つの MAC アクセス リストだけです。
•
IP アクセス リストは、IP パケットだけをフィルタリングします。MAC アクセス リストは、IP 以外のパケットだけをフィルタリングします。
•
PACL の一部として設定できる ACL と ACE の数は、スイッチのハードウェア リソースにより制限されます。これらのハードウェア リソースは、システムに設定された各 ACL 機能(RACL、VACL など)で共有されます。ハードウェアに PACL をプログラミングするのに十分なハードウェア リソースがない場合、入力 PACL と出力 PACL のアクションが異なります。
–
入力 PACL では、一部のパケットがソフトウェア転送のために CPU に転送されます。
–
出力 PACL では、PACL がポート上でディセーブルに設定されます。
•
次の制限は、出力 PACL だけに関連します。
–
ハードウェアに PACL をプログラミングするのに十分なハードウェア リソースがない場合、出力 PACL はポートに適用されず、警告メッセージが表示されます。
–
出力 PACL がレイヤ 2 ポート上に設定されている場合、レイヤ 2 ポートが属する VLAN に VACL またはルータ ACL は設定できません。
レイヤ 2 ポートが属する VLAN 上に VACL またはルータ ACL が設定されている場合、出力 PACL はレイヤ 2 ポート上に設定できません。つまり、PACL と VLAN ベースの ACL(VACL およびルータ ACL)は、レイヤ 2 ポート上では相互に排他的です。
•
出力 IP ACL と MAC ACL ではロギングがサポートされていませんが、入力 IP ACL のロギング オプションはサポートされています。
•
アクセス グループ モードを使用して、その他の ACL との PACL の対話形式を変更できます。シスコのプラットフォームにおいて動作の一貫性を保つためには、デフォルトのアクセス グループ モードを使用します。
レイヤ 2 インターフェイス上での IP ACL と MAC ACL の設定
レイヤ 2 物理インターフェイスに適用できるのは、IP ACL または MAC ACL だけです。(番号付き、名前付き)標準 IP ACL、(番号付き、名前付き)拡張 IP ACL、および名前付き拡張 MAC ACL がサポートされています。
レイヤ 2 インターフェイス上に IP ACL または MAC ACL を適用するには、次の作業を行います。
|
|
|
ステップ 1 |
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)#
interface interface
|
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config-if)#
[no] {ip | mac } access-group {name | number| in| out}
|
レイヤ 2 インターフェイス上にアクセス グループ モードを設定します。no プレフィクスは、レイヤ 2 インターフェイスから IP ACL または MAC ACL を削除します。 |
ステップ 4 |
Switch(config)#
show running-config
|
アクセス リストの設定を表示します。 |
次に、すべての TCP トラフィックを許可し、暗黙的にその他すべての IP トラフィックを拒否する名前付き拡張 IP ACL simple-ip-acl を設定する例を示します。
Switch(config)# ip access-list extended simple-ip-acl
Switch(config-ext-nacl)# permit tcp any any
Switch(config-ext-nacl)# end
次に、送信元ホスト 000.000.011 をすべての宛先ホストで許可する、名前付き拡張 MACL simple-mac-acl を設定する例を示します。
Switch(config)# mac access-list extended simple-mac-acl
Switch(config-ext-macl)# permit host 000.000.011 any
Switch(config-ext-macl)# end
アクセス グループ モードを PACL と併用する方法
アクセス グループ モードを使用して、その他の ACL との PACL の対話形式を変更できます。たとえば、レイヤ 2 インターフェイスが VLAN 100 に属する場合、VACL(VLAN フィルタ)V1 は VLAN 100 上に適用され、PACL P1 がレイヤ 2 インターフェイス上に適用されます。この状況では、VLAN 100 上のレイヤ 2 インターフェイスのトラフィックに P1 と V1 がどのように影響するかを指定する必要があります。インターフェイス単位の方式では、access-group mode コマンドを使用して、下記に定義される動作のいずれかを指定できます。
次のモードが定義されています。
•
prefer port モード ― PACL がレイヤ 2 インターフェイス上に設定されている場合、PACL が有効になり、その他の ACL(ルータ ACL と VACL)を無効にします。レイヤ 2 インターフェイス上に PACL 機能が設定されていない場合、その他の適用可能な機能がこのインターフェイスに統合され、インターフェイス上に適用されます。これがデフォルトのアクセス グループ モードです。
•
prefer vlan モード ― ポートに VLAN ベースの ACL 機能が適用され、PACL が無効の場合は、VLAN ベースの ACL 機能が有効になります。レイヤ 2 インターフェイスに VLAN ベースの ACL 機能が適用できない場合、インターフェイス上の既存の PACL 機能が適用されます。
•
merge モード ― ハードウェアにプログラミングされる前に、適用可能な ACL 機能を統合します。
(注) 出力 PACL と、VACL およびルータ ACL は相互に排他的なので、アクセス グループ モードは出力トラフィック フィルタリングの動作を変更しません。
レイヤ 2 インターフェイス上でのアクセス グループ モードの設定
レイヤ 2 インターフェイス上にアクセス モードを設定するには、次の作業を行います。
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|
|
ステップ 1 |
|
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
Switch(config)#
interface interface
|
インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
Switch(config-if)#
[no] access-group mode {prefer {port | vlan} | merge}
|
レイヤ 2 インターフェイス上にアクセス グループ モードを設定します。no プレフィクスは、レイヤ 2 インターフェイスからアクセス グループ モードを解除します。 |
ステップ 4 |
Switch(config)#
show running-config
|
アクセス リストの設定を表示します。 |
次に、PACL 以外の機能を統合して、インターフェイス上に適用する例を示します。
Switch(config)# interface interface
Switch(config-if)# access-group mode prefer port
次に、ハードウェアにプログラミングされる前に、適用可能な ACL 機能を統合する例を示します。
Switch(config)# interface interface
Switch(config-if)# access-group mode merge
レイヤ 2 インターフェイスへの ACL の適用
レイヤ 2 インターフェイスに IP ACL および MAC ACL を適用するには、次のいずれかの作業を行います。
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|
Switch(config-if)# ip access-group ip-acl {in | out}
|
レイヤ 2 インターフェイスに IP ACL を適用します。 |
Switch(config-if)# mac access-group mac-acl {in | out}
|
レイヤ 2 インターフェイスに MAC ACL を適用します。 |
(注) Catalyst 4500 シリーズ スイッチ上で稼働する Supervisor Engine III および Supervisor Engine IV は、インターフェイス上の入力 PACL および出力 PACL の両方をサポートしています。
次に、名前付き拡張 IP ACL simple-ip-acl をインターフェイス FastEthernet 6/1 の入力トラフィックに適用する例を示します。
Switch(config)# interface fastEthernet 6/1
Switch(config-if)# ip access-group simple-ip-acl in
次に、名前付き拡張 MAC ACL simple-mac-acl をインターフェイス FastEthernet 6/1 の出力トラフィックに適用する例を示します。
Switch(config)# interface fastEthernet 6/1
Switch(config-if)# mac access-group simple-mac-acl out
レイヤ 2 インターフェイス上の ACL 設定の表示
レイヤ 2 インターフェイス上の ACL 設定に関する情報を表示するには、次のいずれかの作業を行います。
|
|
Switch# show ip interface [interface-name]
|
インターフェイス上の IP アクセス グループ設定を表示します。 |
Switch# show mac access-group interface [interface-name]
|
インターフェイス上の MAC アクセス グループ設定を表示します。 |
Switch# show access-group mode interface [interface-name]
|
インターフェイス上のアクセス グループ モード設定を表示します。 |
次に、IP アクセス グループ simple-ip-acl がインターフェイス fa6/1 の着信方向に設定されている例を示します。
Switch# show ip interface fast 6/1
FastEthernet6/1 is up, line protocol is up
Inbound access list is simple-ip-acl
Outgoing access list is not set
次に、MAC アクセス グループ simple-mac-acl がインターフェイス fa6/1 の着信方向に設定されている例を示します。
Switch# show mac access-group interface fast 6/1
Interface FastEthernet6/1:
Inbound access-list is simple-mac-acl
Outbound access-list is not set
次に、アクセス グループ統合がインターフェイス fa6/1 に設定されている例を示します。
Switch# show access-group mode interface fast 6/1
Interface FastEthernet6/1:
Access group mode is: merge
VLAN マップおよびルータを PACL と併用する方法
出力 PACL は、VACL または出力ルータ ACL との相互作用がありません(PACL 設定時の注意事項で説明した制限を参照)。ただし、入力 PACL のルータ ACL および VACL との相互作用は、 表42-1 に示されるアクセス グループ モードによって決まります。
表42-1 PACL、VACL、およびルータ ACL の相互作用
|
|
|
prefer port モード |
prefer vlan モード |
merge モード |
1. 入力ルータ ACL |
PACL が適用される |
入力ルータ ACL が適用される |
PACL、入力ルータ ACL(統合)の順で適用される(入力側) |
2. VACL |
PACL が適用される |
VACL が適用される |
PACL、VACL(統合)の順で適用される(入力側) |
3. VACL と入力ルータ ACL |
PACL が適用される |
VACL+ 入力ルータ ACL が適用される |
PACL、VACL、入力ルータ ACL(統合)の順で適用される(入力側) |
表42-1 に示される各 ACL タイプは、次に説明する別のシナリオで同様に使用されます。
シナリオ 1 :ホスト A は、SVI が設定された VLAN 20 のインターフェイスに接続されています。図42-7 で示すように、インターフェイスには入力 PACL が設定され、SVI には入力ルータ ACL が設定されています。
図42-7 シナリオ 1:入力ルータ ACL との PACL の相互作用
インターフェイス アクセス グループ モードが prefer port の場合、ホスト A からの入力トラフィックに適用されるのは入力 PACL のみです。モードが prefer vlan の場合、ルーティングを必要とするホスト A からの入力トラフィックに適用されるのは入力ルータ ACL のみです。モードが merge である場合、入力 PACL が最初にホスト A からの入力トラフィックに適用され、次に入力ルータ ACL がルーティングを必要とするトラフィックに適用されます。
シナリオ 2 :ホスト A は、VLAN 10 のインターフェイスに接続されています。図42-8 で示すように、VLAN 10 には、VACL(VLAN マップ)と入力 PACL が設定されています。
図42-8 シナリオ 2:VACL との PACL の相互作用
インターフェイス アクセス グループ モードが prefer port の場合、ホスト A からの入力トラフィックに適用されるのは入力 PACL のみです。モードが prefer vlan の場合、ホスト A からの入力トラフィックに適用されるのは VACL のみです。モードが merge の場合、入力 PACL が最初にホスト A からの入力トラフィックに適用され、次に VACL がトラフィックに適用されます。
シナリオ 3 :ホスト A は、VACL と SVI が設定された VLAN 20 のインターフェイスに接続されています。図42-9 で示すように、SVI には入力ルータ ACL が設定されていて、インターフェイスには入力 PACL が設定されています。
図42-9 シナリオ 3:VACL と入力ルータ ACL
インターフェイス アクセス グループ モードが prefer port の場合、ホスト A からの入力トラフィックに適用されるのは入力 PACL のみです。モードが prefer vlan の場合、VACL と入力ルータ ACL の統合結果がホスト A からの入力トラフィックに適用されます。モードが merge の場合、入力 PACL が最初にホスト A からの入力トラフィックに適用され、次に VACL がトラフィックに適用され、最後に入力ルータ ACL がルーティングを必要とするトラフィックに適用されます(つまり、入力 PACL、VACL、および入力ルータ ACL の統合結果がトラフィックに適用されます)。