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このドキュメントは、米国シスコ発行ドキュメントの参考和訳です。リンク情報につきましては、日本語版掲載時点で、英語版にアップデートがあり、リンク先のページが移動/変更されている場合がありますことをご了承ください。あくまでも参考和訳となりますので、正式な内容については米国サイトのドキュメントを参照ください。
Cisco ATA には、IP ネットワークを利用して Cisco IOS ゲートウェイとインターネットワーキング可能な FAX サービスのモードが 2 種類あります。それぞれのモードを FAX パススルー モードおよび FAX モードと呼びます。
FAX パススルー モードの場合、Cisco ATA は、FAX トラフィックを G.711 音声コーデックで符号化し、FAX が音声コールであるかのように、Voice Over IP(VoIP)ネットワークを通過させます。このモードでは、シスコ専用の FAX アップスピード方式が使用されます。
FAX モードの場合、Cisco ATA は、G.711 コーデックの使用のみに対応できるデバイスとして動作します。このため、コーデックの再ネゴシエーションや切り替えは必要ありません。その結果、リモート ゲートウェイに要求される機能や設定は最小になります。サポートする Cisco ゲートウェイで G.711 FAX アップスピードを使用できない環境では、FAX モードをお勧めします。
• 「Cisco ATA 186/188 FAX サービスのデバッグ」
(注) Cisco ATA という用語は、このマニュアルを通じて Cisco ATA 186 と Cisco ATA 188 の両方を示します。Cisco ATA 186 と Cisco ATA 188 に違いがある場合は、特に明記します。
FAX パススルー モードでは、コーデックの柔軟性を最大限に利用できます。たとえば、ユーザは任意の音声コーデックを使用して音声コールを設定し、FAX セッション用に G.711 コーデックに再ネゴシエーションできます。FAX パススルー モードを使用するには、まず Cisco ATA およびサポートする Cisco ゲートウェイを設定して、シスコ専用の G.711 FAX アップスピード方式に対応するようにします。次に、遠端ゲートウェイ(ゲートウェイ全体または Cisco ATA との FAX コールに使用されるダイヤル ピアのみ)で FAX リレーを無効にします。
FAX アップスピード方式を使用すると、音声コールには G.723 や G.729 のような低ビットレート コーデック、FAX コールには G.711 コーデックを使用できます。FAX コールの場合、Cisco ATA は、2100 Hz の CED トーンまたは V.21 プリアンブル フラグを検出し、切り替えの予告をピアツーピア メッセージ経由でリモート ゲートウェイに通知します。このタイプのメッセージは、RTP ストリーム内で Named Signaling Event(NSE)の形で搬送され、すべての FAX イベント シグナリングに使用されます。Cisco ATA は、NSE の開始や応答を行い、発信側または着信側のゲートウェイとして機能することが可能です。
(注) Cisco ATA では、標準準拠のプロトコル レベルのコーデック スイッチ要求も受信できますが、同様の要求の送信はできません。このため、Cisco ゲートウェイと相互運用するには、シスコ専用のコーデック スイッチを使用します。
• 「FAX パススルー モード用の Cisco ATA の設定」
• 「FAX パススルーを有効にする Cisco IOS ゲートウェイの設定」
AudioMode パラメータは 32 ビット値です。下位 16 ビットが Cisco ATA の Phone 1 ポートに適用され、上位 16 ビットが Cisco ATA の Phone 2 ポートに適用されます。
次に、FAX パススルー モードに対応した Cisco ATA の Phone 1 ポートの設定例を示します。
• ビット 0 = 1:G.711 無音圧縮(VAD)を有効にします。
• ビット 2 = 1:FAX の CED トーン検出、および検出時の切り替えを有効にします。
• ビット 4 = 1、ビット 5 = 0:DTMF 送信方式 = ネゴシエーションによってアウトオブバンド。
• ビット 6 = ビット 7 = 0:フックフラッシュ送信方式 = フックフラッシュの送信を無効にします。
(注) 例にある値 XXXX は、Cisco ATA の Phone 2 ポートに適用されます。
同じ値を Cisco ATA の Phone 2 ポート用に設定する場合、値は 0x0015XXXX のようになります。一方のポートの設定が他方のポートの設定に左右されることはありません。
ConnectMode パラメータは 32 ビット値です。このパラメータの設定は、Cisco ATA の両方の回線に適用されます。ConnectMode の設定は、AudioMode を FAX パススルー モード用に設定した後で行います。Cisco IOS ゲートウェイと相互運用する場合は、次の ConnectMode の設定を使用することをお勧めします。
FAX パススルー モードに関連するビットは、ビット 2 およびビット 7 ~ 15 だけです。例からこれらのビットだけを取り出して次に示します。
• ビット 2 = 0:G.711m-law/G.711A-law への FAX アップスピード用に RTP ペイロード番号 126/127 を使用します。FAX アップスピード用に RTP ペイロード番号 0/8 を使用する場合は、この値を 1 に設定します。
• ビット 7 = 0:FAX パススルーの冗長性を無効にします。このビットを 1 に設定すると、冗長性が有効になります。冗長性が有効な場合、Cisco ATA からパケットが 2 回ずつ送信されます。帯域幅と伝送時間のコストが大きいため、このオプションは、ネットワークの品質が低く、ネットワーク内のすべてのゲートウェイでこの機能がサポートされている場合にのみ使用してください。
• ビット {12, 11, 10, 9, 8} = {0, 0, 1, 0, 0}:NSE ペイロード タイプ番号 96 に対するオフセットを 4 に設定します。オフセットを 4 に設定すると、Cisco ATA からデフォルトで 100 の NSE ペイロード タイプ値が送信されます。オフセット値の有効範囲は 2 ~ 23(NSE ペイロード タイプ値は 98 ~ 119)です。使用する Cisco ゲートウェイに合せてこの値を設定してください。
一般に、MGCP ベースの Cisco ゲートウェイ(Cisco 6608 など)では、デフォルトで NSE ペイロード タイプ 101 が使用されます。H.323/SIP ベースの Cisco ゲートウェイでは、通常、NSE ペイロード タイプ 101 がデフォルトで使用されます。
• ビット 13 = 0:FAX パススルー アップスピード用に G.711m-law を使用します。FAX パススルー アップスピード用に G.711A を使用する場合は、このビットを 1 に設定します。
• ビット 14 = ビット 15 = 0:シスコ専用の方式を使用して、FAX パススルー モードを有効にします(推奨)。FAX パススルー モードを無効にするには、両方のビットを 1 に設定します。
Cisco ATA とネットワーク化するように IOS ゲートウェイを設定するには、次の手順を実行します。
ステップ 1 「FAX パススルー モードの有効化」
ステップ 2 「FAX リレー機能の無効化」
(注) IOS ゲートウェイのセットアップおよび機能の可用性については、マニュアル『Cisco Fax Services over IP』を参照してください。
サポートする Cisco ゲートウェイでは、システム レベルまたはダイヤルピア レベルのコマンドを使用して、FAX パススルー モードを有効にできます。
次のシステム レベル コマンドを使用して、FAX パススルー機能を有効にします。
modem passthrough NSE [payload-type number] codec {g711m/law | g711alaw} [redundancy] [maximum-sessions value]
• payload-type パラメータのデフォルトは 100 で、有効な値は 98 ~ 119 です。
NSE ペイロード番号は、Cisco ATA および Cisco ゲートウェイの両方で一致している必要があります。
• codec パラメータは、FAX が T1 トランク経由で送信される場合は G.711m-law、E1 トランク経由で送信される場合は G.711A-law でなければなりません。
• redundancy パラメータは、RFC 2198 パケットの冗長性を有効にします。これはデフォルトでは無効になっています。
• maximum sessions パラメータは、冗長性が有効な同時 FAX パススルー コールの数を定義します。デフォルトは 16 で、有効な値は 1 ~ 26 です。
voice service voip コマンドと modem passthrough nse コマンドを着信側ゲートウェイで使用して、FAX またはモデムのパススルーを NSE でグローバルに設定する場合は、それぞれの着信コールを VoIP ダイヤル ピアに関連付けて、FAX またはモデムのグローバルな設定を取得できるようにする必要があります。コールをダイヤル ピアに関連付けるには、 incoming called-number コマンドを使用して、着信コールが対応できる数字のシーケンスを指定します。次のコマンドを使用することで、すべてのコールを少なくとも 1 つのダイヤル ピアと対応させることができます。
ステップ 3 Cisco ATA では、ConnectMode パラメータのビット 14 と 15 をオフにします。この設定を行うと、シスコ専用の方式を使用して、FAX パススルー信号の送信および受信 FAX パススルー信号の検出が可能になります。
(注) NSE ペイロード タイプ番号、FAX パススルー コーデック(G.711m-law や G.711A-law)および冗長性のパラメータは、Cisco ATA とサポートする Cisco ゲートウェイで同じ設定を使用する必要があります。
FAX パススルー モードを有効にして、Cisco IOS ゲートウェイと、次のダイヤルピア レベル コマンドで指定した Cisco ATA との間の通信を実現できます。
modem passthrough {NSE [payload-type number] codec {g711mlaw | g711alaw} [redundancy] | system}
デフォルトの設定を使用する場合、ダイヤルピア FAX パススルーの設定は、voice service voip コマンドによって定義されます。system オプションを使用する場合、他のパラメータは指定できません。
NSE がダイヤルピア レベルの FAX パススルー コマンドで設定される場合、dial-peer コマンドでの FAX パススルーの定義は、voice service voip コマンドでの定義に優先します。
b. payload-type number、codec、および redundancy パラメータも使用できます。
modem passthrough NSE codec g711mlaw
これは、Cisco ATA で NSE ペイロード タイプ番号 100 および G.711m-law コーデックが使用され、FAX パススルー モードの冗長性が無効になることを意味します。
ステップ 3 ダイヤルピアを FAX パススルー用に設定する場合は、Cisco ATA と Cisco IOS ゲートウェイの間の着信コール用と発信コール用にそれぞれダイヤルピアを設定する必要があります。それには、destination-pattern と incoming-called number を指定します。destination-pattern は常に Cisco ATA を示し、incoming-called number は Cisco ATA でダイヤル可能なすべての番号に適用されます。
一部の IOS ゲートウェイでは、FAX リレーがデフォルトで有効になっていることがあります。FAX リレー機能を無効にしない場合、FAX またはモデムのパススルーが無効になり、FAX 伝送が失敗する可能性があります。次のコマンドを使用して、FAX リレーをダイヤルピア レベルまたはシステム レベルで無効にする必要があります。
FAX モードは、ネットワーク内のゲートウェイで FAX パススルー モードやダイヤルピアの設定がサポートされていない場合に使用します。
Cisco ATA の一方または両方の回線を G.711 だけの FAX モードに設定できます。このモードでは、Cisco ATA に接続されているファックス機と相手側のエンドポイントが直接通信できます。2 つのゲートウェイ間で FAX シグナリング イベントは発生しません。
• 「FAX モード用の Cisco IOS ゲートウェイの設定」
G.711 だけの FAX モードの操作には、AudioMode というパラメータの設定が必要です。
AudioMode パラメータは 32 ビット値です。下位 16 ビットが Cisco ATA の Phone 1 ポートに、上位 16 ビットが Phone 2 ポートに適用されます。次に、G.711 専用の FAX モードに対応した Cisco ATA の Phone 1 ポートの設定例を示します。
• ビット 0 = 0:G.711 無音圧縮(VAD)を無効にします。
• ビット 1 = 1:G.711 だけを使用し、低ビットレート コーデックは使用しません。
• ビット 2 = 0:FAX の CED トーン検出を無効にします。
• ビット 4 = 1、ビット 5 = 0:DTMF 送信方式 = ネゴシエーションによってアウトオブバンド。
• ビット 6 = ビット 7 = 0:フックフラッシュ送信方式 = フックフラッシュの送信を無効にします。
(注) 例にある値 XXXX は、Cisco ATA の Phone 1 ポートには適用されません。
同じ値を Cisco ATA の Phone 2 ポート用に設定する場合、値は 0x0012XXXX のようになります。一方のポートの設定が他方のポートの設定に左右されることはありません。
(注) AudioMode の設定によって、RxCodec、TxCodec、および LBRCodec という 3 つのパラメータの値が無効になります。たとえば、これら 3 つのパラメータがそれぞれ 0(G.723)に設定されている場合でも、AudioMode が 0x00120012 に設定されていれば、Cisco ATA では G.711 が使用されます。この設定によって、Cisco ATA から G.711m-law と G.711A-law の両方が、優先コーデックとしてピアの音声ゲートウェイに送信されます。
Cisco ゲートウェイ上で、次のコマンドを使用して、FAX リレーと FAX パススルーの両方を、ダイヤルピア レベルまたはシステム レベルで無効にします。
この項では、FAX サービスのデバッグに関連した次のトピックについて取り上げます。
表6-1 に、Cisco ATA で Cisco IOS ゲートウェイを介して FAX を使用している状況における、典型的な問題とその問題を解決するための処置を示します。
prserv は Microsoft Windows ベースの PC で動作するツールで、Cisco ATA から PC の IP アドレスやポートに送信されるデバッグ情報を取り込むログ サーバとして機能します。このデバッグ情報は、読み取り可能なテキスト ファイルに保存されます。
Cisco ATA からデバッグ情報を送信できるようにするには、次の手順に示すように、PC の IP アドレスや使用可能なポートを NPrintf 設定パラメータに設定する必要があります。
<IP address> は、PC の IP アドレスです。
<port> は、PC で未使用のポートです(1024 ~ 65535 の数字)。
(注) Cisco ATA Web 設定ページまたは TFTP ベースの設定方式を使用して、Nprintf パラメータを設定できます。
ステップ 2 デバッグの取り込みプログラム prserv.exe を操作するには、prserv プログラムを PC 上のフォルダに配置します。DOS プロンプトで、次のように入力します。
<port> は、選択したポート番号です。<port> を省略した場合、デフォルトのポート番号 9001 が使用されます。
Cisco ATA からのデバッグ情報を受信すると、prserv は DOS 画面に情報を表示すると同時に、<port>.log という出力ファイルに保存します。
デバッグ情報の取り込みが終了したら、DOS プロンプトで Ctrl キーを押した状態で C キーを押すことで、prserv を停止できます。ログ ファイルの名前を変更せずにプロセスを再起動した場合、新しいデバッグ情報はすべて元のファイルの末尾に追加されます。
prserv から取得したデバッグ ログは、単純な設定の問題を検出するためのものです。
(注) FAX イベントを包括的に解釈するには、rtpcatch ツール(「rtpcatch を使用した FAX の問題の診断」を参照してください)の使用が必要です。
表6-2 に、FAX セッションの分析に関連したログ イベントを示します。
Cisco ATA が FAX パススルー モードを使用するように設定されている場合は、任意の音声コーデックを使用して FAX コール セッションを確立できます。いったん音声コールが確立されたら、CED トーンや V.21 プリアンブル フラグによって、ファックス機の存在を示すことが可能です。その後、ゲートウェイから NSE パケットが送信されて、切り替えが開始されます。
(注) FAX パススルー モードの場合は、Cisco ATA のデバッグ ログをチェックして、着信側ゲートウェイであると同時に発信側ゲートウェイとしても機能していることを確認します。
Cisco ATA が FAX セッションの着信側ゲートウェイとして使用されている場合は、次の条件に該当することを確認してください。
• Cisco ATA から CED トーン イベントの NSE パケットが送信される。
• NSE パケットのトランザクション中に、エンコーダの G.711 への切り替えが発生する。
次に、着信側ゲートウェイのシナリオのデバッグ ログの例を示します。
(注) CED トーン イベントへの NSE の応答は必須ではありません。ゲートウェイによっては、NSE 応答が返信されないこともあります。
Cisco ATA が FAX セッションの発信側ゲートウェイとして使用されている場合は、次の条件に該当することを確認してください。
• Cisco ATA で CED トーン イベントの NSE パケットの受信および応答が行われる。
• NSE パケットの送受信で同じ NSE ペイロード タイプが使用される。
• NSE パケットのトランザクション中に、エンコーダの G.711 への切り替えが発生する。
次に、発信側ゲートウェイのシナリオのデバッグ ログの例を示します。
(注) ゲートウェイで旧式の IOS ソフトウェア イメージが使用されている場合、NSE パケットが送信されない可能性があり、代わりに、直接的なメカニズムによってコーデックの切り替えが行われることがあります。この場合は、NSE パケットのトランザクションではなく、コーデックの切り替えのイベントが発生します。
Cisco ATA で CED トーン イベントの NSE パケットが受信されず、コーデックの切り替えが発生しない場合、エラーの原因として次のようなことが考えられます。
• 着信側ゲートウェイが FAX/モデム パススルーで設定されていない。
• 着信側ゲートウェイで使用されている FAX パススルー モードに Cisco NSE 方式との互換性がない。
FAX セッションのログに正しい NSE パケットのトランザクションや G.711 アップスピードが記録されていても、セッションが失敗する場合は、次の条件に該当するかどうかをチェックしてください。
• Cisco ATA ソフトウェア イメージのバージョンが 2.14 以前である。
• Cisco ATA のモデル番号が ATA186-I1、ATA186-I2、ATA188-I1、または ATA188-I2 である。
Cisco ATA が FAX モードで設定されている場合は、G.711 コーデックだけが使用されます。Enable encoder デバッグ行および DPKT 1st デバッグ行に 0(G.711µ-law)または 8(G.711A-law)だけが表示されていることを確認する必要があります。次のデバッグ ログの例では、G.711µ-law が使用されています。
G.711 コーデックの数字コードがログに表示されていない場合は、Cisco ATA の AudioMode パラメータの設定をチェックする必要があります。
ログに正しい G.711 コーデックが表示されていても、FAX セッションが失敗する場合は、次の条件に該当するかどうかをチェックしてください。
• Cisco ATA ソフトウェア イメージのバージョンが 2.14 以前である。
• Cisco ATA のモデル番号が ATA186-I1、ATA186-I2、ATA188-I1、または ATA188-I2 である。
• 「FAX セッションに関する rtpcatch 出力の分析」
rtpcatch は、VoIP 接続について包括的な情報を提供するツールです。このツールは Microsoft Windows ベースの PC で動作し、Network Associates(NAI) Sniffer Pro から出力取り込みファイルを解析し、重要なパススルー イベントや FAX リレー イベントを特定する機能が備わっています。
• Sniffer Pro の取り込みファイルからセッション データを読み取る。
• RTP 統計情報(RTP パケットの数、RTP フレームの数、失われたパケットの数、無音圧縮期間中のフィラー パケットの数、および削除されたパケットの数など)を報告する。
ステップ 1 rtpcatch 用の作業ディレクトリを作成し、実行可能ファイル rtpcatch.exe をこのディレクトリに配置します。
ステップ 2 Network Associates Sniffer Pro の取り込みファイルをこのディレクトリにコピーします。
ステップ 3 このディレクトリの DOS プロンプトで、次のコマンドを入力します。
• <cap_file> は、NAI Sniffer の取り込みファイルです。
• <prefix> は、出力ファイルの名前の先頭に追加されるプレフィクスです。
rtpcatch の出力ファイルには、要約ファイルと音声ストリーム ファイルがあります。
<prefix> が指定されている場合、要約ファイルは <prefix>.sum ですが、指定されていなければ file.sum です。
ストリーム ファイルの名前には、00 で始まる整数タグが付いています。また、ストリーム ファイルには拡張子のタグも付きます。拡張子は、G.711A/G.711µ-law が pcm、G723.1 が 723、G729 が 729、T.38 が t38、Cisco FAX リレーの場合が cfr になります。
出力には、インターリーブされた全方向のイベント リストとして FAX summary 1、各方向のイベント リストとして FAX summary 2 が含まれます。レポートされるイベントには、音声コーデックの変更、NSE シグナリング、FAX リレーなどがあります。
• -port <port0> <port1>:このポートで送受信されたすべてのパケットを廃棄します。
NAI Sniffer の取り込みファイルに Cisco ATA の prserv パケットが含まれる場合、そのパケットが rtpcatch の分析の妨げになることがあります。一部の prserv パケットが NTE イベントや NSE イベントとして解釈される可能性があります。このような障害を回避するには、Cisco ATA のデバッグ出力を無効にするか(Nprintf 設定パラメータを 0 に設定)、prserv パケットをフィルタで除去するように NAI Sniffer を設定するか、または rtpcatch を -port オプション付きで実行します。
(注) rtpcatch は、単一の VoIP セッションを分析するときに最も役に立ちます。コマンドライン オプションは、任意の順序で入力できます。
出力は画面に表示され、file.sum というファイルに保存されます。
• [ 25]open file: 00.723, (G723) 2.213:10000 => 2.116:10002
rtpcatch が NAI Sniffer のパケット番号 25 に到達し、G.723 圧縮のデータで構成された音声ストリームを保存するために、00.723 という名前の新しいファイルを開いたことを示します。音声パスは、末尾が 2.213 の IP アドレスおよびポート 10000(<2.213:1000>)から開始し、末尾が 2.116 の IP アドレスおよびポート 10002 で終了します。
• [ 29] <00> 1 silence pkts from TS 1760 (seq# 3)
rtpcatch が音声パス <00> で単一の無音 RTP パケットを検出し、その無音パケットがタイムスタンプ 1760 で始まることを示します。これは、パケット番号 29、RTP シーケンス番号 3 で発生しています。
• [ 106] <02> 2 lost pkts from seq# 39
rtpcatch が音声パス <02> で 2 つの失われた RTP パケットを検出したことを示します。欠落したパケットはシーケンス番号 39 で始まっていました。これは、パケット番号 106 で発生しています。
• ------------ Summary --------------
Input file: faxpassthru.cap
<00.723>: (G723) 2.213:10000 => 2.116:10002
total 38 pkts(70 frames), lost 0 pkts, fill 7 silence pkts
入力ファイルの名前が faxpassthru.cap であることを示します。出力ファイル 00.723 には、G.723 圧縮のストリーム(<2.123:10000> ~ <2.116:10002>)が含まれ、rtpcatch によって 38 パケット(70 フレーム)が処理されています。失われたパケットは検出されず、7 つの無音パケットが見つかっています。
• ---------- FAX Summary 1 ----------
[ 25]<2.213=>2.116> Codec G723
[ 26]<2.116=>2.213> Codec G723
[ 101]<2.116=>2.213> Codec G711u/D
[ 102]<2.116=>2.213> NSE PT 100, EVT 192: Up-Speed, CED tone Detected
[ 103]<2.116=>2.213> NSE PT 100, EVT 193: ECAN OFF, Phase Reversal Detected
[ 105]<2.213=>2.116> NSE PT 100, EVT 192: Up-Speed, CED tone Detected
[ 107]<2.213=>2.116> Codec G711u/D
<2.213> および <2.216> から開始する音声ストリームが G.723 で圧縮されていることを示します。<2.116> からの音声ストリームが、パケット番号 101 で G.711µ-law にアップスピードされました。NSE シグナリング パケットが、パケット番号 102、103、および 105 で送信されました。最後に、<2.113> からの音声ストリームが G.711µ-law にアップスピードされました。
• ---------- FAX Summary 2 ----------
PATH: 2.213:10000 => 2.116:10002
[ 25]Codec G723
[ 105]NSE PT 100, EVT 192: Up-Speed, CED tone Detected
[ 107]Codec G711u/D
PATH: 2.116:10002 => 2.213:10000
[ 26]Codec G723
[ 101]Codec G711u/D
[ 102]NSE PT 100, EVT 192: Up-Speed, CED tone Detected
[ 103]NSE PT 100, EVT 193: ECAN OFF, Phase Reversal Detected
rtpcatch によって報告される音声ストリームのイベントには、次のようなものがあります。
rtpcatch によって報告される NSE イベントには、次のようなものがあります。
–イベント 32、FAX モード、CED トーン検出(RFC2833)
–イベント 34、モデム モード、ANSam トーン検出(RFC2833)
–イベント 203、モデム リレー モード、CM トーン検出
次の例は、ゲートウェイが次のモードで動作するように設定されている場合の正しい FAX イベントを示します。
FAX セッション全体にわたって両側で G.711 を使用している。
• 動的なペイロード タイプを使用して、<2.116> が G.711µ-law に切り替える。
• NSE シグナリング パケットが <2.116> から送信される。
• オプションの NE シグナリング パケットが <2.213> から送信される。
• 動的なペイロード タイプを使用して、<2.113> が G.711µ-law に切り替える。
(注) 一部の FAX 伝送では、EVT 193 が発生しないことがあります。
• 動的なペイロード タイプを使用して、<3.200> が G.711µ-law に切り替える。
• NSE シグナリング パケットが <3.200> から送信される。
• 動的なペイロード タイプを使用して、<2.53> が G.711µ-law に切り替える。
次の例は、失敗した FAX セッションの rtpcatch の出力を示します。<3.200> が ATA で、<2.53> が Cisco ゲートウェイです。
• <2.53> は発信側ゲートウェイで、<3.200> は着信側の Cisco ATA である。
• Cisco ATA と <2.53> ゲートウェイで G.723 コーデックを使用している。
• Cisco ATA が FAX モードまたは FAX パススルー モードで設定されていない。
• Cisco ATA が FAX 送信側のゲートウェイである場合、リモート ゲートウェイは FAX パススルー モード で設定されない。
• <2.53> は発信側ゲートウェイで、<3.200> は着信側の Cisco ATA である。
• 最初は Cisco ATA と <2.53> ゲートウェイで G.711 コーデックを使用している。
• <2.53> ゲートウェイから Cisco FAX リレー イベントのパケットが送信される。
• ゲートウェイで Cisco FAX リレー オプションが無効になっていない。
• <2.53> は発信側ゲートウェイで、<3.200> は着信側の Cisco ATA である。
• Cisco ATA は G.711µ-law にアップスピードし、G.711 アップスピードの NSE シグナリング パケットを送信する。
• <2.53> ゲートウェイは NSE シグナリング パケットに応答しない。
• ゲートウェイで FAX/モデム パススルー オプションが有効になっていない。
• FAX/モデム パススルーの NSE ペイロード タイプの設定が、Cisco ATA とゲートウェイで異なる。
• <2.53> は発信側ゲートウェイで、<3.200> は着信側の Cisco ATA である。
• Cisco ATA は G.711µ-law にアップスピードし、G.711 アップスピードの NSE シグナリング パケットを送信する。
• <2.53> ゲートウェイは G.711µ-law にアップスピードし、Cisco FAX リレー イベントのパケットを送信する。
• ゲートウェイで Cisco FAX リレー オプションが無効になっていない。
• <3.200> は発信側の Cisco ATA で、<2.53> は着信側ゲートウェイである。
• <2.53> ゲートウェイは NTE シグナリング パケットを送信し、G.711µ-law にアップスピードする。
• <3.200> の Cisco ATA も G.711µ-law に切り替えるが、NTE シグナリング パケットは送信しない。
• <2.53> ゲートウェイが NTE パケットを受信していないので FAX 伝送は失敗し、FAX コールがドロップされる。
• Cisco ATA では NTE シグナリング方式がサポートされておらず、ゲートウェイが NTE シグナリング方式を使用する必要がある。
• rtpcatch は、単一の VoIP セッションだけが含まれる取り込みファイルを分析するときに最適に機能する。
• rtpcatch では、G.711A、G.711µ-law、G.723、G.729、T.38、Cisco FAX リレー、モデム パススルー(冗長パケットの有無は関係なし)、RTCP パケット、および NSE パケットのみが検出される。