IP プロトコル
Cisco CallManager は、PSTN ゲートウェイ インフラストラクチャ内で、番号分析、ルーティング、および回線選択などのシグナリング タスクとコール制御タスクを実行します。これらの機能を実行するため、Cisco CallManager は、H.323、MGCP、SCCP、SIP など、業界標準の IP プロトコルを使用します。Cisco CallManager とこれらのプロトコルを使用すると、サービス プロバイダーは、PSTN とパケット ネットワーク間で音声コールとデータ コールをシームレスにルーティングできるようになります。
ここでは、次の 4 つの IP プロトコルについて説明します。
• 「H.323 プロトコル」
• 「メディア ゲートウェイ コントロール プロトコル(MGCP)」
• 「Skinny Client Control Protocol(SCCP)」
• 「Session Initiation Protocol(SIP; セッション開始プロトコル)」
H.323 プロトコル
International Telecommunications Union(ITU; 国際電気通信連合)は、パケット ネットワーク上のマルチメディア通信用に H.323 標準を開発しました。その結果、H.323 プロトコルは折り紙付きの ITU 標準となり、マルチベンダーの相互運用性をもたらしました。H.323 プロトコルにより、基となるパケット ネットワーク上のマルチメディア アプリケーション サービス、シグナリング、およびセッション制御のあらゆる性質が決まります。オーディオは H.323 ネットワーク上の標準ですが、ネットワークを拡張することでビデオとデータの両方を含めることもできます。H.323 プロトコルは、大規模エンタープライズ ネットワークに実装することも、既存のインフラストラクチャ上に配置することもできます。結果として、H.323 は価格的に手頃なソリューションとなりました。
H.323 プロトコルの基本コンポーネントは、端末、ゲートウェイ、およびゲートキーパーです(これで H.323 エンドポイントへのコール制御が可能です)。他のプロトコルと同様、H.323 もポイントツーポイント セッションやマルチポイント セッションに適用されます。ただし、MGCP と比較すると、H.323 の方が、ゲートウェイでの設定が増えます。
詳細については、次のトピックを参照してください。
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Cisco IOS H.323 ゲートウェイの追加」 の項
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 ゲートキーパーの設定」 の章
• 『 Cisco CallManager システム ガイド 』の「 Cisco CallManager トランク タイプの概要 」の章
• 『 Cisco CallManager システム ガイド 』の「 Cisco CallManager 音声ゲートウェイの概要 」の章
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「 トランクの設定」 の章
メディア ゲートウェイ コントロール プロトコル(MGCP)
MGCP を使用すると、Cisco CallManager でコール制御を行うときに、強力で柔軟性のある拡張可能なリソースを使用できます。Cisco CallManager は、MGCP を使用することで、リモート ゲートウェイのテレフォニー インターフェイス上でメディアを制御したり、リモート ゲートウェイから適切なデバイスにメッセージを配信したりします。
MGCP を使用すると、マルチサービス IP パケット ネットワークの端部にある音声とデータの通信デバイスを、コール エージェント(メディア ゲートウェイ コントローラ)でリモートから制御および管理できます。MGCP のアーキテクチャは集中型になっているため、音声ゲートウェイの設定と管理が簡単になり、ネットワーク内で複数の(冗長の)コール エージェントがサポートされます。MGCP には、メッセージ暗号化や認証などのセキュリティ メカニズムは用意されていません。
MGCP を使用することで、Cisco CallManager は、コール処理とルーティングを制御し、ゲートウェイに補助サービスを提供します。MGCP は、コール プリザベーション(フェールオーバーとフォールバック時にゲートウェイ上にコールが保持される)、冗長性、ダイヤル プランの単純化(ゲートウェイ上でダイヤルピア設定が必要ない)、フックフラッシュ転送、および保留音を提供します。MGCP によって制御されるゲートウェイでは、メディア終端ポイント(MTP)が、保留、転送、コール ピックアップ、コール パークなどの補助サービスを使用可能にする必要がありません。MGCP ゲートウェイは Cisco CallManager と交信できなくなった場合には、H.323 制御の使用へとフォールバックして、FXS、FXO、T1 CAS、および T1/E1 PRI インターフェイスの基本コール処理をサポートします。
詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の 「Cisco IOS MGCP ゲートウェイの追加」 の項を参照してください。
関連項目
• 「H.323 プロトコル」
• 「Skinny Client Control Protocol(SCCP)」
• 「Session Initiation Protocol(SIP; セッション開始プロトコル)」
Skinny Client Control Protocol(SCCP)
SCCP は、IP デバイスと Cisco CallManager 間で、シスコ独自のメッセージを使用して通信します。複数プロトコル環境でも SCCP は簡単に共存できます。Cisco IP Phone は、Cisco CallManager に SCCP クライアントとして登録、通信するデバイスの例です。登録時、Cisco IP Phone は Cisco CallManager から回線などの設定すべてを受信します。登録が完了すると、新しい着信コールが通知され、コールを発信できるようになります。SCCP プロトコルは、Message Waiting Indication(MWI; メッセージ受信のインディケータ)などの VoIP コール シグナリングおよび拡張機能に使用されます。
Cisco VG248 ゲートウェイは、Cisco CallManager に SCCP クライアントとして登録、通信するデバイスの別の例です。Cisco VG248 ゲートウェイの詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Cisco VG248 Analog Phone Gateway の追加」の項を参照してください。
関連項目
• 「H.323 プロトコル」
• 「メディア ゲートウェイ コントロール プロトコル(MGCP)」
• 「Session Initiation Protocol(SIP; セッション開始プロトコル)」
デジタル テレフォニー プロトコル
デジタル テレフォニー プロトコルは、信号だけを搬送する専用チャネルの common channel signaling(CCS; 共通チャネル信号)を使用します。T1 リンクでは、1 つのチャネルが信号を搬送し、その他のチャネルが音声またはデータを搬送します。最新世代の CCS は Signaling System 7(SS7)として知られ、監視やアドレッシングのほか、automatic number identification(ANI; 自動番号識別)などの各種サービスを提供します。
Integrated Services Digital Network(ISDN; サービス総合デジタルネットワーク)は、プライベートまたは公衆のネットワーク サービスへのユーザ アクセスに関する一組の国際標準です。ISDN はユーザに、回線ベースとパケットベースの両方の通信を提供します。
Cisco CallManger は、次の ISDN プロトコルをサポートできます。
• 「基本速度インターフェイス(BRI)」
• 「T1 一次群速度インターフェイス(T1 PRI)」
• 「E1 一次群速度インターフェイス(E1 PRI)」
• 「Q.Signaling(QSIG)」
Q.Signaling(QSIG)
企業ではさまざまなベンダーからの既存の通信機器を保持しているため、Q signaling(QSIG)プロトコル システムを使用すると、さまざまな通信機器間で相互運用を行い、機能を透過的に使用することができます。
QSIG プロトコルは、Private Integrated Services Network(PISN)のサービスおよびシグナリング プロトコルを定義する一連の国際標準です。これらの標準は、Integrated Services Digital Network(ISDN; サービス総合デジタルネットワーク)の概念を使用しており、ISO/IEC によって定義された International Standards for Open Systems Interconnection のフレームワークに準拠しています。QSIG プロトコルは、ISDN D チャネル音声シグナリングの変種として機能します。ISDN Q.921 および Q.931 標準は、PBX 相互接続の世界標準を規定する QSIG プロトコルの基盤となります。
QSIG プロトコルを使用すると、Cisco 音声スイッチング サービスが、QSIG プロトコルを使用して通信する PBX および主要システムに接続できるようになります。QSIG 基本コール設定では、Cisco デバイスは、WAN 全体で、Private Integrated Services Network Exchange(PINX)デバイスからの着信音声コールを、ピアの Cisco デバイスにルーティングできます。このピアの Cisco デバイスは、シグナリングおよび音声パケットを別の PINX デバイスに転送できます。PINX デバイスになるのは、QSIG プロトコルをサポートする PBX、主要システム、または Cisco CallManager サーバです。
基本 QSIG コールでは、PINX のユーザはリモート PINX のユーザにコールを発信できます。着信側は、コールの呼び出し音が鳴ると、発信側の名前または番号を受信します。発信側は、リモート PINX のユーザの電話機で呼び出し音が鳴ると、着信側の名前と番号を受信します。PBX ユーザとして使用可能な機能はすべてネットワーク全体で透過的に動作します。QSIG プロトコルは、PISN 用に定義されている補助的な追加のネットワーク機能を提供します。ただし、対応する QSIG 機能セットがコールの両端でサポートされていることが条件となります。
補助機能をネットワーク ユーザに対して使用可能にするには、ネットワーク内のすべての PBX が同一の機能セットをサポートしていることを確認します。
シスコでは、次の PBX ベンダーを対象に、Cisco CallManager QSIG 機能の動作確認を行いました。T1 または E1を使用する Lucent/Avaya Definity G3R、Avaya MultiVantage および Communication Manager、T1 または E1を使用する Alcatel 4400、E1を使用する Ericsson MD110、E1 または T1を使用する Nortel Meridian、T1 を使用する Siemens Hicom 300 E CS、E1を使用する Siemens Hicom 300 E、および Siemens HiPath 4000 です。
Cisco CallManager は、次の QSIG 機能をサポートしています。
• 「Annex M.1(QSIG のメッセージ トンネリング)」
ヒント Annex M.1 は、クラスタ間トランクを使用する Cisco CallManager クラスタのみをサポートしています。Cisco CallManager は、PBX に対して Annex M.1 をサポートしていません。
• 「QSIG の基本コール」
• 「Call Completion」
• 「自動転送」
• 「コール 転送」
• 「旧バージョンの QSIG プロトコル(ECMA)との互換性」
• 「Facility Selection and Reservation」
• 「ID サービス」
• 「メッセージ受信のインディケータ(MWI)サービス」
• 「パス変換」
Annex M.1(QSIG のメッセージ トンネリング)
Annex M.1 機能は、クラスタ間トランクを使用して、Cisco CallManager 間で H.323 シグナリング メッセージの非 H.323 プロトコル情報を転送(トンネリング)します。Annex M.1 は、QSIG コールと、QSIG コール独立シグナリング接続をサポートしています。Cisco CallManager Administration でクラスタ間トランクを設定すると、QSIG トンネリングが、Call Completion、自動転送、コール転送、ID サービス、メッセージ受信のインディケータ、およびパス変換の各機能をサポートするようになります。
ヒント ゲートキーパーを使用する場合は、ネットワーク内のすべてのゲートウェイに QSIG トンネリングを設定する必要があります。QSIG トンネリングをサポートしないゲートウェイがネットワーク内にあると、QSIG トンネリング用に設定されたクラスタ間トランクでコールが終了します。
Cisco CallManager で QSIG トンネリングをサポートするには、Cisco CallManager Administration の Trunk Configuration ウィンドウで、Tunneled Protocol ドロップダウン リスト ボックスから QSIG オプションを選択し、Path Replacement Support チェックボックスをオンにする必要があります。デフォルトでは、Tunneled Protocol ドロップダウン リスト ボックスのオプションは None に設定されています。QSIG Tunneled Protocol オプションを設定すると、Path Replacement Support チェックボックスが自動的にオンになります。Annex M.1 または QSIG トンネル型のトランク上でパス変換が必要なければ、チェックボックスをオフにしてもかまいません。
Tunneled Protocol フィールドを None に設定すると、Path Replacement Support チェックボックスは自動的にグレー表示されます。Tunneled Protocol フィールドを QSIG に設定した場合、Redirecting Number IE Delivery (Inbound)、Redirecting Number IE Delivery (Outbound)、または Display IE Delivery オプションは設定できません。
ヒント Cisco CallManager は、Annex M.1 に対してプロトコル プロファイル 0x91 の ROSE 符号化をサポートしていません。
QSIG の基本コール
QSIG 基本コールの設定を使用すると、プライベート ネットワークまたは virtual private network(VPN; バーチャル プライベート ネットワーク)全体で、発信側 PINX(PBX または Cisco CallManager)から別の PINX に音声接続を動的に確立できます。デジタル T1 または E1 一次群速度インターフェイス(PRI)トランクを使用して、QSIG プロトコルをサポートする必要があります。
Call Completion
次の Call Completion サービスは、Facility Selection and Reservation 機能を利用して、QSIG 対応のトランク上で Cisco Call Back 機能を提供します。
• Completion of Calls to Busy Subscribers(CCBS):発信側がビジー トーンを受信した場合、発信者は、通話中の宛先が電話を切って応対可能になったときにコールが完了するように要求できます。
• Completion of Calls on No Reply(CCNR):発信側に宛先から応答がない場合、発信側は、そのアクティビティが着信側の電話機で発生したときにコールが完了するように要求できます。
Cisco CallManager および Call Completion サービスは、Cisco CallManager クラスタ内または QSIG トランク上にあるサポート対象の Cisco IP Phone Model 7940、7960、および 7970 の CallBack ソフトキーを使用します。同様に、QSIG Call Completion サービスをサポートしているデバイスは次のとおりです。
• Cisco IP Phone Model 7905、7910、7912、7940、7960、7970
• Cisco VGC Phone、Cisco IP Communicator、および Cisco SCCP Phone
• サポート対象のデバイスにコールを転送する CTI ルート ポイント
Cisco CallManager サービスで機能する Callback Calling Search Space サービス パラメータを使用すると、発信側 PINX が、終端側 PINX 上の CTI デバイスにコール設定要求をルーティングできるようになります。この機能は、Cisco CallManager Attendant Console や Cisco IP Manager Assistant(IPMA)などの CTI アプリケーションをサポートしています。このサービス パラメータの詳細については、Service Parameter ウィンドウの上隅に表示される i ボタンをクリックしてください。
• QSIG トランク
Cisco CallManager Administration で Cisco Call Back 機能を設定する(『Cisco CallManager 機能およびサービス ガイド』の「 Cisco Call Back」 を参照)だけでなく、Cisco Technical Assistance Center(TAC)から指示を受けた場合は、Cisco Call Back サービス パラメータのデフォルト設定を更新する必要があります。Cisco Call Back サービス パラメータには、Connection Proposal Type、Connection Response Type、Callback Request Protection Timer、Callback Recall Timer、Callback Calling Search Space などがあります。これらのパラメータについては、Service Parameter ウィンドウの上隅に表示される i ボタンをクリックしてください。
Cisco Call Back サポートの詳細(たとえば、QSIG 対応のクラスタ内コールと Cisco CallManager クラスタ内コールに対する動作)については、『Cisco CallManager 機能およびサービス ガイド』の「 Cisco Call Back」 を参照してください。
自動転送
Cisco CallManager は、再ルーティングによる自動転送と、転送切り替えによる自動転送をサポートしています。再ルーティングによる自動転送が発生すると、発信側 PINX が、コールの受信者から要求を受信し、コールを別のユーザに自動転送します。システムにより、発信側と転送先ユーザ間に新しいコールが作成され、追加の CDR が生成されます。
Cisco CallManager Administration では、Cisco CallManager サービスは、Call Diversion by Reroute Enabled パラメータと Call Reroute T1 Timer パラメータを使用して、再ルーティングによる自動転送を実行します。再ルーティングによる自動転送を使用する場合は、サービス パラメータを i ボタン ヘルプで指定されている値に設定する必要があります。i ボタン ヘルプを表示するには、Service Parameter ウィンドウの上隅にある i ボタンをクリックします。サービス パラメータを設定しない場合は、自動的に、転送切り替えによる自動転送が発生します。
Cisco CallManager は、発信側 PINX にコールの自動転送を要求することはできませんが、制限 QSIG メッセージを終端して、コールの転送先電話番号を検証することができます。再ルーティングによる自動転送は、非 QSIG トランクをサポートしていません。ネットワークで同一のダイヤル プランを使用しない場合は、転送切り替えによる自動転送とパス変換を使用して、発信側ユーザと終端側ユーザ間のパスを最適化します。
着信コールの受信者と転送先ユーザが同一の PINX に存在する場合、Cisco CallManager は転送切り替えによる自動転送を使用します。再ルーティングによる自動転送が何らかの理由(たとえば、再ルーティングの時間切れ)で失敗した場合は、転送切り替えが発生します。
QSIG 転送補助サービスは、次のリストに示すように、よく知られた Cisco CallManager 自動転送機能に似た自動転送機能を提供します。
• Call Forward All(CFA)設定は、Call Forwarding Unconditional(SS-CFU)に対応します。
• Call Forward Busy(CFB)設定は、Call Forwarding Busy(SS-CFB)に対応します。
• Call Forward No Answer(CFNA)設定は、Call Forwarding No Reply(SS-CFNR)に対応します。
• Cisco CallManager は Call Deflection(SS-CD)をサポートしていません。
ネットワーク内の他の PBX が機能を透過的に使用できるようにするため、システムは転送コールに関する情報を、コールの設定および接続中に QSIG トランク経由で渡します。電話機のディスプレイには、発信側の名前/番号、最初の着信側の名前/番号、および最後のリダイレクト側の名前/番号の情報を表示し、転送コールの宛先を示すことができます。電話機に表示される内容は、コール ID 制限の影響を受ける可能性があります。詳細については、「ID サービス」を参照してください。
QSIG 補助サービスは、情報を提供して、転送コールからのボイスメールを最初の着信側のボイスメールボックスに残すことができます。ボイスメール設定が自動転送設定の設定値を上書きする場合があることに注意してください。
システムがコールをボイスメールボックスに自動転送する場合、Cisco CallManager は再ルーティングによる自動転送を起動しません。Q.SIG トランク上でボイスメール サーバへの接続が発生する場合、再ルーティングによる自動転送を使用するには、Directory Number Configuration ウィンドウで、該当する Coverage/Destination フィールドにボイスメール パイロット番号を入力し、Voice Mail チェックボックスをオフにする必要があります。
ヒント 複数の PINX 間でコールが転送される場合、転送ループが生じる可能性があります。コールがループ状態に陥ることや、長い転送チェーンに入ることを回避するには、Cisco CallManager サービスの Forward Maximum Hop Count サービス パラメータを設定します。このパラメータを 15 より大きくすると、QSIG 設定が国際標準に適合しなくなります。
コール 転送
Cisco CallManager は、参加によるコール転送だけをサポートしています。
ユーザが別のユーザにコールを転送すると、QSIG ID サービスにより、転送先の電話機に表示される着信側の名前および番号が変更されます。電話機に表示される内容は、コール ID 制限の影響を受ける可能性があります。
コールが別の PINX の発信者に転送される場合、コール転送補助サービスは、パス変換機能と対話してトランク接続を最適化します。パス変換の詳細については、「パス変換」を参照してください。
旧バージョンの QSIG プロトコル(ECMA)との互換性
CallManager と旧バージョンの QSIG プロトコルとの互換性を確立するには、ASN.1 Rose OID Encoding サービス パラメータと QSIG Variant サービス パラメータを設定します。
ヒント これらのパラメータの詳細については、Service Parameter ウィンドウの上隅に表示される i ボタンをクリックしてください。
QSIG Variant パラメータに ECMA を選択する場合は、ASN.1 Rose OID Encoding サービス パラメータに対して Use Global Value (ECMA) 設定を選択する必要があります。QSIG Variant パラメータに ISO を選択する場合は、ASN.1 Rose OID Encoding サービス パラメータに Use Local Value 設定を選択する必要があります。状況によっては、別の設定が必要になることがあります。
QSIG Variant サービス パラメータを設定する場合、Cisco CallManager がクラスタ間トランク上の QSIG トンネリング(Annex M.1)に対して ECMA をサポートしていないことを示す警告メッセージが表示されます。ECMA を使用するには、Trunk Configuration ウィンドウの Tunneled Protocol ドロップダウン リスト ボックスに None オプションが表示されていることを確認します。
Cisco Call Manager は、Annex M.1 を使用してクラスタ間トランク上で QSIG をトンネリングすることをサポートしています。Annex M.1 を設定するには、ASN.1 Rose OID Encoding を Use Global Valueless に、QSIG Variant を ISO (Protocol Profile 0x9F) に設定します。
Facility Selection and Reservation
Facility Selection and Reservation 機能を使用すると、混合ルート リストを使用してコールを発信することができます。混合ルート リストには、さまざまなプロトコルを使用するルート グループが含まれています。この機能は、次のタイプのファシリティを含む混合ルート リストをサポートしています。
• QSIG プロトコルを使用する E1 または T1 PRI トランク
• QSIG 以外のプロトコルを使用する E1 または T1 PRI トランク
• T1-CAS ゲートウェイ
• FXO ポート
• クラスタ間トランク
ヒント H.323 ゲートウェイに関するルート グループを、QSIG ルート グループを含むルート リストに追加することはできません。
ルート リストを設定する場合は、最初に QSIG ルート グループを設定し、次に、PSTN への代替接続として機能する非 QSIG ルート グループを設定します。プライベート ネットワークの QSIG ファシリティだけでなく、QSIG コールに関する追加のルート グループを含めたことを確認してください。コールに使用できる QSIG トランクがない場合、コールには PSTN 上の代替ルートが必要になります。
コールに QSIG ファシリティが必要となる場合、Cisco CallManager はルート グループを検索し、使用可能な最初の QSIG ファシリティを予約します。QSIG ファシリティを使用できない場合、Cisco CallManager は、非 QSIG ファシリティを使用して PSTN にフェールオーバーします。
コールに QSIG ファシリティが必要ない場合、Cisco CallManager はルート グループを検索し、使用可能な最初のファシリティを見つけます。
パス変換、メッセージ受信のインディケータ、および Call Completion 補助サービスでは、QSIG シグナリング適合要件を満たす QSIG ファシリティが必要です。上記のサービスのいずれかに使用可能な QSIG ファシリティがない場合、コールは QSIG シグナリング適合要件を満たさないため、機能は失敗します。
ID サービス
コールの呼び出し音が鳴り、コールが PINX に接続された場合、ID サービスを使用すると、発信者の名前/ID を終端側 PINX の電話機に表示し、同様に接続先の名前/ID を発信側 PINX の電話機に表示することができます。QSIG ID 制限を使用すると、Cisco CallManager と接続先 PINX 間でこの情報の表示を制御できるようになります。
サポートされている補助サービスはコールごとに適用され、コール ID 情報の表示設定はコールの両端で設定されます。Cisco CallManager には、電話機のディスプレイに表示される次の発信者 ID 番号(CLID)と発信者名(CNAM)の情報を制御する設定値が用意されています。
• Calling Line Identification Presentation/Restriction:発信側番号を表示する(CLIP)、または発信側番号の表示を制限する(CLIR)。
• Calling Name Identification Presentation/Restriction:発信側の名前を表示する(CNIP)、または発信側の名前の表示を制限する(CLIR)。
• Connected Line Identification Presentation/Restriction:接続回線の番号を表示する(COLP)、または接続回線の表示を制限する(COLR)。
• Connected Name Identification Presentation/Restriction:着信側の名前を表示する(COLP)、または着信側の表示を制限する(COLR)。
発信コール設定の設定値は終端 PINX に送信されます。終端 PINX では、設定値が上書きされる場合があります。接続先回線および名前の設定は、コールの終端側で設定されます。設定値の受信後、発信側 PINX は設定を上書きする場合があります。
ヒント 名前を制限した場合、ディスプレイには「Private」と表示されます。発信回線番号を制限した場合、ディスプレイはブランクのままになります。
すべてのコールについて情報の表示を許可または制限するには、Gateway Configuration ウィンドウのフィールドを設定します。または、コールごとに表示情報を制御するには、Route Patterns ウィンドウと Translation Patterns ウィンドウのフィールドを使用します。ゲートウェイの表示設定は、ルート パターンの設定を上書きします。変換パターンの表示設定は、ルート パターンの表示設定を上書きします。
Cisco CallManager は、「Alerting on ring」だけをサポートしています。そのため、QSIG Alerting Name を設定すると、電話機で呼び出し音が鳴っているときにコール名情報を送受信できます。Cisco CallManager Administration の Directory Number Configuration ウィンドウで、Alerting Name フィールドに共有および非共有の電話番号を設定します。共有電話番号の 2 つの電話機で呼び出し音が鳴ると、Alerting Name フィールドに入力した名前が終端側 PINX の着信側の電話機に表示されます。ただし、表示される情報は、変換パターン制限の影響を受ける場合があります。発信側 PINX の発信者の電話機に表示される情報は、ルート パターン制限の影響を受ける場合があります。
ヒント Alerting Name の ID 制限を設定するには、Connected Name 設定パラメータを設定します。
Alerting Name を設定しない場合、呼び出し音が鳴ると、発信側の電話機には電話番号だけが表示されます。着信側について設定する Display Name を設定した場合、コールが接続されると、発信側の電話機には Display Name が表示されます。Display Name または Alerting Name を入力しない場合、コール中に発信側の電話機に名前は表示されません。Alerting Name を次のデバイス タイプで使用することはできません。
• PRI トランク
• MGCP ゲートウェイの FXS/FXO ポート
• MGCP T1-CAS ゲートウェイ
メッセージ受信のインディケータ(MWI)サービス
QSIG ネットワークの PINX に、別の PINX のユーザにサービスを提供するボイスメール システムが接続されている場合、メッセージ センター PINX は別の PINX に次のメッセージ受信のインディケータ(MWI)信号を送信できます。
• MWI Activate:サービス対象ユーザの電話機へのメッセージをボイスメール システムが受信すると、別の PINX に信号を送信してそのユーザの電話機上の MWI を有効にする。
• MWI De-activate:関連するボイスメール システム内のメッセージをユーザが聞くと、信号を送信して MWI を無効にする。
(注) Cisco CallManager では、MWI の問い合せサービスはサポートされていません。
メッセージ センター以外の PINX は、MWI 信号を受信し、次の作業を実行することができます。
• MWI Activate:別の PINX から信号を受信し、サービス対象ユーザの電話機の MWI を有効にする。
• MWI De-activate:信号を受信し、サービス対象ユーザの電話機の MWI を無効にする。
ボイスメール システムが QSIG 接続または Cisco Messaging Interface(CMI)を使用して Cisco CallManager に接続されている場合、メッセージ受信のインディケータは QSIG ディレクティブに基づいて設定されます。
コールが別の番号に転送された後、ボイスメール システムに転送される場合、QSIG 補助サービスは、情報を提供して、ボイスメールを最初の着信側のボイスメールボックスに残すことができます。
メッセージ受信のインディケータ サービスは、Cisco CallManager Administration で設定されたメッセージ受信用の既存のダイヤル番号を使用するため、追加設定の必要はありません。
パス変換
QSIG ネットワークにおいて、コールが 3 番目の PINX の電話機にコール転送または自動転送された場合は、そのコールに対して、複数の PINX を経由する複数の接続が存在する可能性があります。パス変換機能は、コールの接続後に、中継 PINX(複数可)への接続を削除し、終端 PINX への新しいコール接続を作成します。
(注) Cisco CallManager が提供する PINX メッセージは、「requesting」と「cooperating」だけです。QSIG が設定されている場合、Cisco CallManager は、サードパーティ ベンダー PINX の「inviting」メッセージに応答します。ただし、Cisco CallManager は「inviting」メッセージを発信しません。
Cisco CallManager はパス保存をサポートしていません。
Cisco CallManager が起動するパス変換の対象は、参加によって転送されるコールと、転送切り替えによって自動転送されるコールだけです。複数のトランクを伴うコール(たとえば、電話会議)は、パス変換を使用しません。ただし、Tunneled Protocol ドロップダウン リスト ボックスで QSIG オプションを選択し、ゲートキーパーによって制御されるクラスタ間トランク、またはゲートキーパーによって制御されないクラスタ間トランクに対して Path Replacement Support チェックボックスをオンにした場合は、クラスタ間トランク上や、コール転送または自動転送に使用される他の QSIG クラスタ間トランクまたは PRI トランク上でパス変換が発生します。
CTI アプリケーションとパス変換を併用すると、パス変換を使用するコールのレッグには、コールの発信レッグとは異なる Global Caller ID が割り当てられます。コール転送または自動転送の後で、残る両端が同一の Cisco CallManager を使用した場合は、2 つ(パーティごとに 1 つ)の Global Caller ID が存在します。システムはどちらかの Global Caller ID を削除するため、コールの両端は同一の Global Caller ID を持ちます。
ヒント この項では、パス変換サービス パラメータの一部について説明します。サービス パラメータの完全なリストとパラメータの詳細については、Service Parameter ウィンドウの上隅に表示される i ボタンをクリックしてください。
QSIG プロトコルは内線番号または電話番号を渡しますが、変換または挿入された番号を渡さないため、同一のダイヤル プランを使用するネットワークでは、パス変換などの QSIG 機能を使用します。プライベート ネットワークのダイヤル プランで、一意でない電話番号が使用される場合は、PINX ID を利用してコールを再ルーティングする必要があります。PINX ID は、ネットワーク内のすべての PINX に一意の電話番号です。PINX ID が設定されている場合、パス変換機能は、「ID サービス」で説明している着信側または発信側の番号の代わりに、PINX ID を使用します。PINX ID を設定するには、Cisco CallManager Administration で次の作業を実行します。
• パス変換機能の PINX ID サービス パラメータ(複数可)を設定します(パス変換機能は Cisco CallManager サービスを使用します)。
• PINX ID だけを含むコール ピックアップ グループを作成します。
ヒント PINX ID コール ピックアップ グループは、PINX ID 専用にしてください。このコール ピックアップ グループに他の電話番号を追加しないでください。
Cisco CallManager には Path Replacement Calling Search Space サービス パラメータが用意されています。これを使用すると、要求側 PINX に設定メッセージをルーティングするために応答側 Cisco CallManager が使用するコール検索スペースを設定できます。このパラメータを設定しない場合は、最初の接続で使用したコール検索スペースが使用されます。
パス変換の設定値は、Cisco CallManager サービスの Service Parameter ウィンドウで設定します。パス変換サービス パラメータには、Path Replacement Enable、Path Replacement on Tromboned Trunks、Start Path Replacement Minimum Delay Time、Start Path Replacement Maximum Delay Time、Path Replacement PINX ID、Path Replacement Timers、Path Replacement Calling Search Space などがあります。これらのパラメータの情報を取得するには、Service Parameter ウィンドウに表示される i ボタンをクリックしてください。
パス変換のパフォーマンス カウンタを使用すると、パス変換の発生を追跡できます。パフォーマンス カウンタについては、『 Cisco CallManager Serviceability System Guide 』を参照してください。
パス変換機能では、コールごとに複数の CDR が生成されます。発信側 PINX の発信者に対する CDR や、パス変換が起動された PINX の着信側に対する CDR が生成されます。
(注) Cisco SoftPhone ユーザが打診転送を実行してコールを別の PINX に移動する場合、パス変換機能は有効ですが、直接(ブラインド)転送を実行する場合、パス変換機能は無効です。Cisco SoftPhone の詳細については、アプリケーションのバージョンに対応した Cisco SoftPhone マニュアルを参照してください。
Cisco CallManager との QSIG インターフェイス
Cisco CallManager で QSIG 機能をサポートするには、QSIG を Cisco CallManager に直接バックホールする必要があります。Cisco CallManager を QSIG ネットワークに相互接続する場合、MGCP ゲートウェイと、PISN への T1 または E1 PRI 接続が使用されます。MGCP ゲートウェイはコール接続を確立します。PRI バックホール メカニズムを使用することで、ゲートウェイは QSIG メッセージを Cisco CallManager に渡し、QSIG コールの設定と、コントロール機能への QSIG メッセージの送信を有効にします。
QSIG を使用するゲートウェイに H.323 経由で PBX を接続した場合、PBX 上の電話機と、Cisco CallManager に接続された IP Phone との間のコールで使用できるのは、基本的な PRI 機能だけになります。Calling Line Identification(CLID)と Direct Inward Dialing(DID; ダイヤルイン方式)の番号は、QSIG プロトコルを終了するゲートウェイだけが提供し、Cisco CallManager は提供しません。
関連項目
• 「基本速度インターフェイス(BRI)」
• 「E1 一次群速度インターフェイス(E1 PRI)」
• 「T1 一次群速度インターフェイス(T1 PRI)」