デバイス モビリティの概要
Cisco CallManager は、IP サブネットと、ロケーション情報を持つデバイス プールを使用して、デバイスのホーム ロケーションを判別します。システムは、IP サブネットをロケーションにリンクすることで、デバイスがホーム ロケーションまたはリモート ロケーションのどちらにあるのかを判別し、それに応じてデバイスを登録できます。
デバイス モビリティをサポートするには、デバイス プール構造を変更し、ロケーションからのユーザ情報とモビリティ情報を分離する必要があります。これによって、デバイス プールにはデバイス自身に関する情報とデバイス モビリティに関する情報が含まれます。共通プロファイルを追加することで、すべてのユーザに関連する情報を設定できます。ユーザに基づく情報を使用するには、各デバイスを共通プロファイルに関連付ける必要があります。
デバイス モビリティは、デバイス プールと共通プロファイル以外にも、デバイス モビリティ グループ、物理ロケーション、デバイス モビリティ情報を使用して、デバイス アイデンティティおよびローミングのプロパティと設定を判別します。
この項では、次のトピックの詳細について説明します。
• デバイス プールおよび共通プロファイル
• デバイス モビリティの設計
• デバイス モビリティ プロセス
デバイス プールおよび共通プロファイル
以前にデバイス プールに含まれていたパラメータは、デバイス自身とデバイス モビリティに関するパラメータのセット、およびユーザに関するパラメータのセットから構成されています。
[デバイス プール]ウィンドウには、次のパラメータがあります。
• Device Pool Name
• Cisco CallManager Group
• Date/Time Group
• Region
• SRST Reference
• Calling Search Space for Auto-registration
• Media Resource Group List
• Network Locale
• Device Mobility Group
• Location
• Physical Location
• Connection Monitor Duration
• Device Mobility Calling Search Space
• AAR Calling Search Space
• AAR Group
現在 Common Profile ウィンドウには、以前にデバイス プールに含まれていた次のパラメータが含まれています。
• Common Profile Settings
–Common Profile Name
–Softkey Template
–Network Hold MOH Audio Source
–User Hold MOH Audio Source
–User Locale
• Multilevel Precedence and Preemption (MLPP) Information
–MLPP Indication
–MLPP Preemption
–MLPP Domain
(注) すでに自動的に設定されているデバイス プールは、Cisco CallManager リリース 4.2 へアップグレードする際に、その一部として新しい構造に移行されます。
デバイス モビリティの設計
効率的なデバイス モビリティ構造を設計するには、最初に、どのように個別のデバイス モビリティ プロパティを持つ階層グループにネットワークを分割し、グループ間の適切な関連付けを作成するかを決定する必要があります。これは、デバイス モビリティ グループ、物理ロケーション、デバイス プール、およびサブネットに基づくデバイス モビリティ情報を使用して実行します。
デバイス モビリティ グループ
デバイス モビリティ グループは、地理的に見て最上位のネットワーク エンティティを表わします。デバイス モビリティ グループは、ネットワークの規模やスコープに応じて、国、地域、州または県、市などのエンティティを表わします。たとえば、世界規模のネットワークを持つ企業が個々の国を表すデバイス モビリティ グループを選択する場合もあれば、国内ネットワークまたは地域ネットワークを持つ企業が、州、県、または市を表すデバイス モビリティ グループを定義する場合もあります。
デバイス モビリティ グループ間でデバイスを移動すると、Cisco CallManager からは最上位での移動と見なされます。
物理ロケーション
物理ロケーションは、デバイス モビリティ グループの下に位置付けられる次の区分を表わします。物理ロケーションによって、特定の地理的なロケーションに関連するパラメータをその他のパラメータと区別することができます。たとえば、Music on Hold(MOH)サーバが、企業内の特定のオフィスまたはキャンパスにサービスを提供しているとします。デバイスが別のオフィスやキャンパスに移動し、Cisco CallManager に再登録した場合は、そのローミング ロケーションにある MOH サーバによってデバイスにサービスを提供する方が適しています。MOH などのサービスのアベイラビリティに応じて物理ロケーションを定義することで、デバイスが物理ロケーション間を移動しても、効率的で費用対効果の高いサービスの再割り当てを保証できます。ネットワーク構造とサービスの割り当てに応じて、市、企業キャンパス、またはビルを基準にして物理ロケーションを定義できます。
デバイス プール
デバイス モビリティ グループと物理ロケーションが明確化されたら、それらをデバイス プールに関連付けることができます。各デバイス プールには、デバイスに適用されるパラメータのセットが含まれます。デバイス モビリティ グループと物理ロケーションを追加することで、デバイス プールとそれらのエンティティを連携させることができます。
デバイス モビリティ情報
デバイス モビリティ構造の設計の最終ステップでは、デバイス モビリティ グループと物理ロケーションの情報を含むデバイス プールと、サブネットとを関連付けます。電話機が登録され IP アドレスを取得すると、システムはそのアドレスを、1 つ以上のデバイス プールに関連付けられたデバイス モビリティ サブネットと比較します。一致するサブネットが、デバイス モビリティを目的とした場合の、デバイスのホーム サブネットになります。
電話機の設定
デバイス モビリティ構造の準備が整ったら、モバイル用にプロビジョンされている IP 電話のデバイス モビリティ機能をオンにすることができます。
デバイス モビリティ プロセス
この項では、電話機の登録とデバイス モビリティのパラメータの割り当てを Cisco CallManager がどのように管理するかについて説明します。
初期化後、デバイス モビリティ機能は次のプロセスに従って動作します。
1. モバイル用にプロビジョンされている IP 電話の電話機デバイス レコードが作成され、電話機がデバイス プールに割り当てられます。電話機は Cisco CallManager に登録され、登録プロセスの一部で IP アドレスが割り当てられます。
2. Cisco CallManager は、デバイスの IP アドレスと、Device Mobility Info ウィンドウでデバイス モビリティ用に設定されたサブネットとを比較します。IP サブネット マスク内で一致するビット数が最大のものを最適の一致と見なします(最長一致規則)。たとえば、IP アドレス 9.9.8.2 は、サブネット 9.9.0.0/16 ではなくサブネット 9.9.8.0/24 に一致します。
3. 電話機レコードのデバイス プールと、一致するサブネット内のデバイス プールが一致した場合、システムは、その電話機がホーム ロケーションにあると見なし、電話機はホーム デバイス プールのパラメータを保持します。
4. 電話機レコードのデバイス プールが、一致するサブネットのデバイス プールと一致しない場合、システムは、その電話機をローミング中と見なし、再登録とデバイス パラメータの再適用を前提とします。 表19-1 に、考えられる状況とシステムの対応を示します。
表19-1 デバイス モビリティの状況と対応
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電話機のホーム デバイス プールの物理ロケーションが、一致するサブネットに関連付けられたデバイス プールの物理ロケーションと同じままである。
(注) 電話機はサブネット間を移動することがありますが、物理ロケーションと関連付けられたサービスは変わりません。
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システムは、電話機をローミング中ではないと見なし、電話機をホーム デバイス プールに登録したままにします。 |
一致するサブネットには 1 つのデバイス プールが割り当てられている。そのデバイス プールは電話機のホーム デバイス プールとは異なっており、物理ロケーションも異なっている。 |
システムは電話機をローミング中と見なします。一致するサブネットのデバイス プールのパラメータを使用して電話機を登録します。 |
物理ロケーションが異なっており、一致するサブネットには複数のデバイス プールが割り当てられている。 |
システムは電話機をローミング中と見なします。ラウンドロビン規則に従って、新しいデバイス プールが割り当てられます。ローミング デバイスがサブネットに登録されるたびに、使用可能なデバイス プール セット内の次のデバイス プールが割り当てられます。 |
物理ロケーションが、ホーム デバイス プールに対しては定義されているが、一致するサブネットに関連付けられたデバイス プールに対しては定義されていない。 |
物理ロケーションは変わらないため、電話機はホーム デバイス プールに登録されたままです。 |
物理ロケーションが、ホーム デバイス プールに対して定義されていないが、一致するサブネットに関連付けられたデバイス プールに対しては定義されている。 |
システムは、電話機が定義された物理ロケーションにローミング中であると見なし、一致するサブネットのデバイス プールのパラメータを使用してその電話機を登録します。 |
サブネットが更新または削除された。 |
残りのサブネットを使用して、ローミングおよびデバイス プールの割り当て規則が適用されます。 |
5. デバイス モビリティ グループ内で移動した場合の特殊な状況については、 表19-2 で説明します。
表19-2 デバイス モビリティ グループの状況と対応
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デバイスはローミングし、同じデバイス モビリティ グループ内だが異なるデバイス プールと物理ロケーションで再登録された。 |
システムは電話機をローミング中と見なします。一致するサブネットのデバイス プールのパラメータ(Device Mobility Calling Search Space、AAR Calling Search Space、および AAR Group を含む)を使用して電話機を再登録します。 |
デバイスはローミングし、異なるデバイス モビリティ グループ内の異なるデバイス プールと物理ロケーションで再登録された。 |
電話機には、ローミング デバイス プールのデバイス プール設定が割り当てられます。ただし、次のデバイス モビリティ パラメータは、デバイス レコードに指定された値を保持します。 • Device Mobility Calling Search Space • AAR Calling Search Space • AAR Group |
デバイスはローミングしており、ホーム デバイス プールまたはローミング デバイス プールに対してデバイス モビリティ グループが定義されていない。 |
電話機はローミング中と見なされるため、一致するサブネットのデバイス プールのパラメータ(Device Mobility Calling Search Space、AAR Calling Search Space、および AAR Group を含む)を使用して再登録されます。 |
Cisco CallManager デバイス モビリティのシステム要件
Cisco CallManager デバイス モビリティが機能するには、次のソフトウェア コンポーネントが必要です。
• Cisco CallManager 4.2 以降
• Microsoft Windows 2000
• Microsoft Internet Explorer または Netscape Navigator:
Netscape 4.7 と Netscape 6.7、および Internet Explorer 5.5 と Internet Explorer 6
Cisco CallManager デバイス モビリティをサポートしている電話機は、次のとおりです。
• Cisco IP Phone 7900 シリーズ
• Cisco IP Phone モデル 30 VIP
• Cisco IP Phone モデル 12 SP+
• Computer Telephony Integration(CTI; コンピュータ/テレフォニー インテグレーション)ポート
• Cisco IP Communicator
インタラクションおよび制限事項
デバイス モビリティ機能は、Cisco CallManager に登録されたデバイスの IP アドレスに依存しています。NAT/PAT を使用してデバイスに IP アドレスが割り当てられた場合、登録時に指定した IP アドレスとデバイスの実際の IP アドレスが一致しないことがあります。
IP Phone Configuration ウィンドウで Device Mobility Mode がデフォルトに設定されている場合は、Device Mobility Mode サービス パラメータによって、そのデバイスのデバイス モビリティ機能を有効にするかどうかが決まります。サービス パラメータの詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「サービス パラメータの設定」を参照してください。デバイスの設定の詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Cisco IP Phone の設定」を参照してください。
デバイス モビリティの設定チェックリスト
表 4-1 に、Cisco デバイス モビリティの設定手順を示します。
図 19-1 Cisco CallManager デバイス モビリティの設定チェックリスト
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ステップ 1 |
Service Parameters ウィンドウで Cisco CallManager サービスが有効になっていることを確認します。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「サービス パラメータの設定」 |
ステップ 2 |
Device Mobility Groups ウィンドウで、デバイス モビリティ グループを設定します。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「デバイス モビリティ グループの設定」 |
ステップ 3 |
Physical Location ウィンドウで物理ロケーションを設定します。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「物理ロケーションの設定」 |
ステップ 4 |
Device Mobility Info ウィンドウで使用可能なローミング サブネットを設定し、デバイス プールを割り当てます。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「デバイス モビリティ情報の設定」 |
ステップ 5 |
ローミングを許可するデバイスのモビリティ モードをオンにします。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Cisco IP Phone の設定」 |
ステップ 6 |
デバイス モビリティを使用するように電話機を設定します。 |
『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Cisco IP Phone の設定」 |
その他の情報
関連項目
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「デバイス プールの設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「サービス パラメータの設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「物理ロケーションの設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「デバイス モビリティ グループの設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「デバイス モビリティ情報の設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Cisco IP Phone の設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「共通プロファイルの設定」
その他のシスコ マニュアル
• Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド
• Cisco CallManager システム ガイド
• Cisco CallManager Serviceability システム ガイド
• Cisco CallManager トラブルシューティング ガイド