BAC の概要
BAC は、ブロードバンド サービス プロバイダーのネットワークに存在する Customer Premises Equipment(CPE; 顧客宅内装置)をプロビジョニングおよび管理する作業を自動化します。
BAC は高性能の機能を備えているため、何百万ものデバイスが存在するネットワークなど、実質的にどのような規模のネットワークにも適合するように BAC を拡大、縮小できます。また、BAC は分散アーキテクチャと集中管理を備えているため、ハイ アベイラビリティを実現できます。
BAC は、サービス プロバイダーが急激に成長しても対応できるように設計されています。この製品の対象となるユーザは、ハイブリッド ファイバ ネットワークおよび同軸ケーブル ネットワーク上に IP データ、音声、動画を配置する必要があるブロードバンド サービス プロバイダー(マルチプル サービス オペレータを含む)、インターネット サービス プロバイダー、および音声サービス プロバイダーです。
BAC には、冗長性やフェールオーバーなどの重要な機能があります。BAC の動作方法を制御できるプロビジョニング Application Programming Interface(API; アプリケーション プログラミング インターフェイス)を利用することにより、新しい環境または既存の環境に BAC を統合することができます。プロビジョニング API を使用すると、BAC でのデバイス登録、デバイス構成の割り当て、および BAC プロビジョニング システム全体の設定が可能です。
このリリースの主な機能として、DOCSIS 3.0 仕様に準拠した CPE のプロビジョニングと管理のサポートがあります。DOCSIS 3.0 には主要なサブセットとして IP バージョン 6(IPv6)が含まれているため、このリリースは DHCPv6 と DNSv6 をサポートしています。
テクノロジーと機能
この項では、このリリースの BAC がサポートするテクノロジーと機能について説明します。
• 「サポート対象のテクノロジーと標準」
• 「サポート対象のデバイス」
• 「機能と利点」
サポート対象のテクノロジーと標準
BAC では、ネットワークへプロビジョニング サービスを提供するために多くのテクノロジーのサポートが導入されました。次のようなテクノロジーがあります。
• DOCSIS 高速データ
• PacketCable 音声サービス(Secure ワークフローと Basic ワークフローの両方)
• ノンセキュア CableHome プロビジョニング
DOCSIS 高速データ
Data Over Cable Service Interface Specification(DOCSIS)は、ケーブル テレビのシステム ネットワーク上での高速データ配信に必要なケーブル モデムの機能を定義します。この機能により、MSO はインターネット常時接続を介してさまざまなサービスを提供できます。たとえば、ブロードバンド インターネット接続、テレフォニー、リアルタイムの対話型ゲーム、テレビ会議などのサービスを提供できます。
このリリースの BAC では、DOCSIS 1.0、1.1、2.0 のサポートの他に、DOCSIS 3.0 に準拠した CPE のプロビジョニングと管理を行います。DOCSIS 3.0 仕様は、第 3 世代の有線高速データ通信システム仕様を定義するもので、次の利点があります。
• IPv6 デバイスのプロビジョニング
• ネットワーク要素のアドレッシング機能の拡張
• チャネル ボンディングによるチャネル容量の増加
• ネットワーク セキュリティの強化
• マルチキャスト機能の拡大
• 新しいサービス オファリング
PacketCable 音声サービス
PacketCable 音声テクノロジーは、双方向ケーブル ネットワーク上で高度なリアルタイムのマルチメディア サービスの配信を可能にします。PacketCable は、ケーブル モデムがサポートするインフラストラクチャ上に構築され、IP テレフォニー、マルチメディア会議、対話型ゲーム、一般的なマルチメディア アプリケーションなど、幅広いマルチメディア サービスを可能にします。
PacketCable 音声テクノロジーにより、ブロードバンド ネットワークで、基本テレフォニー サービスや拡張テレフォニー サービスなどの付加的なサービスを提供できます。このようなサービスで、PacketCable は効率的かつコスト効果の高い方法です。
BAC は、PacketCable の Secure バリアントと Basic バリアントをサポートします。PacketCable Basic および PacketCable Secure は、Basic バリアントのセキュリティが簡略化されている点を除けば、ほとんど同じです。
(注) 現行の BAC では、PacketCable 仕様のバージョン 1.0、1.1、1.5 をサポートしています。
Euro-PacketCable サービスは、北米版 PacketCable 仕様に相当する欧州版です。両者の唯一の大きな違いは、Euro-PacketCable では異なる MIB が使用される点です。
CableHome
ノンセキュア CableHome 1.0 プロビジョニング(以下、ホーム ネットワーキング テクノロジー)は、既存の DOCSIS 標準上に構築され、住宅用ブロードバンド接続向け「プラグアンドプレイ」環境をサポートします。このような形態のホーム ネットワーキング テクノロジーには、CableHome をサポートする DOCSIS ホーム アクセス デバイスが含まれます。このデバイスはポータル サービスと呼ばれ、ホーム ネットワークのエントリ ポイントと見なされます。
サポート対象の標準
BAC サーバは、次の該当する Request for Comments(RFC)、プロトコル、標準、および Internet Engineering Task Force(IETF; インターネット技術特別調査委員会)草案に準拠しています。
• IPv6:RFC 2460(IPv6 仕様)、2461(近隣探索プロトコル)、2462(ステートレス アドレス自動設定)、2463(Internet Control Message Protocol(ICMP; インターネット制御メッセージ プロトコル))、3513(アドレッシング アーキテクチャ)に準拠しています。
• DHCPv6:RFC 3315(DHCPv6 仕様)、3633(IPv6 プレフィックス オプション)、3736(IPv6 用ステートレス DHCP サービス)、4014(Remote Authentication Dial-In User Service(RADIUS)リレー エージェント情報オプションの属性サブオプション)、4580(リレー エージェント加入者 ID オプション)、4649(リレー エージェント リモート ID オプション)、4704(DHCPv6 クライアント完全修飾ドメイン名(FQDN)オプション)に準拠しています。
• IPv4 と IPv6 の相互運用性:RFC 4038(IPv6 移行のアプリケーション)および 4472(IPv6 DNS に関する操作上の問題と考慮事項)に準拠しています。
• TFTP および ToD サーバ:RFC 868(タイム プロトコル)および 2349(TFTP ブロック サイズ オプション)に準拠しています。
さらに、BAC は次の該当する CableLabs 仕様および Comcast 仕様に準拠しています。
• DOCSIS 3.0 仕様
–CM-SP-SECv3.0-I04-070518
–CM-SP-PHY3.0-I04-070518
–CM-SP-MULPIv3.0-I04-070518
–CM-SP-OSSIv3.0-I03-070518
• DOCSIS 2.0 仕様 CM-SP-RFI2.0-I12-071206
• DOCSIS L2VPN 仕様 CM-SP-L2VPN-I06-071206
• PacketCable MTA デバイス プロビジョニング仕様 PKT-SP-PROV1.5-I03-070412
• CableHome CH-SP-CH1.0-I05-030801
• COMCAST-SP-RNG-200-ProvOSS-I04-070102
• OpenCable 仕様 OC-SP-HOST2.0-CFR-I13-070323
サポート対象のデバイス
このリリースの BAC では、次のプロビジョニングと管理をサポートします。
• IPv6 デバイス。次のものがあります。
–DOCSIS 3.0 準拠のケーブル モデム
–コンピュータ
–Set-top box(STB; セットトップ ボックス)
• ビデオ STB(特に進化途上の OpenCable アプリケーション プラットフォームに基づく RNG-200 STB)
• embedded Service/Application Functional Entities(eSAFE)デバイスのバリアント。混在 IP モードの PacketCable Multimedia Terminal Adapters(MTA; マルチメディア ターミナル アダプタ)などがあります。混在 IP モード MTA は、IPv6 組み込みケーブル モデムと IPv4 eMTA で構成される eSAFE デバイスです。このクラスのデバイスでは、ケーブル モデムにパケット テレフォニー、ホーム ネットワーキング、動画などの付加的機能が組み込まれています。
BAC は次のデバイス タイプのプロビジョニングを行います。
• DOCSIS 1.0、1.1、2.0 準拠のケーブル モデムと STB
• PacketCable バージョン 1.x 準拠の embedded Multimedia Terminal Adapter(eMTA; 組み込み型マルチメディア ターミナル アダプタ)
• CableHome 1.0 準拠のデバイス
• コンピュータ
機能と利点
BAC により、Multiple Service Operator(MSO; マルチプル サービス オペレータ)は、急速に変化するケーブル データ通信サービスへの需要に対応できます。BAC を使用して、次の利点を実現できます。
• 大幅なスケーラビリティ。BAC の Regional Distribution Unit(RDU)は、最大 6000 万台のデバイスをサポートできます。また、1 つのプロビジョニング グループは 200 万台のデバイスをサポートでき、そのうち 50 万台を Secure PacketCable デバイスにすることができます。
• バックエンド システムとの容易な統合。この統合には、次のような BAC メカニズムが使用されます。
–BAC Java API。すべてのプロビジョニング操作および管理操作を実行するときに使用できます。
–BAC パブリッシング拡張。RDU データを別のデータベースに書き込むときに便利です。
–SNMP エージェント。BAC の監視に関する統合を簡素化します。
–DPE コマンドライン インターフェイス(CLI)。「サービス」インターフェイスを介して DPE を要件に合せて設定できます。また、CLI を使用してコマンドをコピー アンド ペーストするとローカル構成を簡素化できます。
• 管理の向上
–プロパティ階層のプロビジョニング グループ プロパティ。デバイスのプロビジョニング グループのプロパティが含まれたことで、BAC プロパティ階層の柔軟性が向上します。
–プロビジョニング グループ機能。配備内のプロビジョニング グループに必要なデバイス タイプ サポートを制御できます。
• セキュリティの強化
–ユーザ設定可能な IP アドレスとポート。マルチパス設定、マルチインターフェイス バインディング、およびファイアウォール機能が提供されます。
–拡張 CMTS MIC 設定内容の DOCSIS 3.0。BAC が高度なハッシュ技術を使用してケーブル モデム設定ファイルの不正な変更や破壊を検出します。
–パスワード ポリシー。管理者のユーザ インターフェイスから RDU にアクセスできます。管理者のユーザ インターフェイスへのログインに使用するパスワードは、必ず 8 文字以上にします。
–HTTP over SSL(HTTPS)。セキュア SSL 接続を使用して管理者のユーザ インターフェイスにアクセスできます。
• トラブルシューティングと診断の強化
–デバイス トラブルシューティング。デバイスのトラブルシューティング用 ID を使用して、デバイスと BAC サーバとのインタラクションの詳細なレコードを提供します。この機能を使用すると、MAC アドレスまたは DHCP Unique Identifier(DUID)で特定される 1 台のデバイスに焦点を絞り、その診断情報を使用してより詳細に分析できます。
–診断スクリプトを使用したサーバ トラブルシューティング。BAC サーバに関するパフォーマンス統計情報を(具体的なタイプの統計情報まで)収集します。また、このリリースでは、サーバおよびシステムの設定データを収集するための多くのスクリプトを提供します。このデータはサポートで必要となる場合があります。追加のスクリプトを使用して、サポート用に診断データを組み込むことができます。