ROM モニタ
この付録では、Cisco Catalyst 4500 スイッチの ROM モニタ(ブートローダ プログラムとも呼ばれる)について説明します。ROM モニタ ファームウェアは、スイッチの電源オン時またはリセット時に起動します。このファームウェアは、ハードウェアの初期化とオペレーティング システム ソフトウェアの起動を支援します。ROM モニタは、消失したパスワードの回復、オンボード フラッシュ/リムーバブル ストレージ媒体/管理ポート上での IOS イメージの起動、ROMmon イメージ自体のアップグレードなど、特定の設定作業を実行するために使用します。スイッチ上に Cisco IOS ソフトウェア イメージがロードされていない場合は、ROM モニタがスイッチを起動します。
この章の内容は、次のとおりです。
• 「ROM モニタの設置」
• 「ROM モニタ コマンド」
• 「コマンドの説明」
• 「コンフィギュレーション レジスタ」
• 「ROM モニタの終了」
• 「デジタル署名」
(注) この章のスイッチ コマンドの構文および使用方法の詳細については、『Catalyst 4500 Series Switch Cisco IOS Command Reference』および次の URL の関連マニュアルを参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/ps6350/index.html
ROM モニタの設置
ROM モニタを使用するには、端末または PC をコンソール ポート経由でスイッチに接続する必要があります。ルータと PC または端末を接続するには、スイッチに付属の『Cisco Catalyst 4500 Switch Hardware Installation Guidet』でインストーレーションに関する章を参照してください。
次回の再起動時に ROM モニタ モードで起動するようにスイッチを設定するには、次の手順を実行します。
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ステップ 1 |
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特権 EXEC モードを開始します。 |
ステップ 2 |
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グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
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コンフィギュレーション レジスタをリセットします。 |
ステップ 4 |
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グローバル コンフィギュレーション モードを終了します。 |
ステップ 5 |
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新しいコンフィギュレーション レジスタ値でスイッチを再起動します。ルータは ROM モニタ モードのままで、Cisco IOS ソフトウェアを起動しません。 設定値が 0x0 である限り、コンソールから手動でオペレーティング システムを起動する必要があります。この付録の 「コマンドの説明」 の boot コマンドを参照してください。 スイッチが再起動すると ROM モニタ モードに入ります。新しく行が増えるごとにプロンプトの数字が増加します。 |
ROM モニタ コマンド
利用できるコマンドおよびオプションのリストを表示するには、ROM モニタ プロンプトで ? または help と入力します(コマンドは大文字と小文字が区別されます)。次に例を示します。
alias set and display aliases command
boot boot up an external process
clear clear configurations, use 'clear help' for more info
confreg configuration register utility
dev list the device table with physical device information
dir list filesystem information
gdb break into GDB debugger
help monitor builtin command help
history monitor command history
macstats print management port MAC statistics counters
meminfo main memory information
ping ping utility to determine network connectivity
repeat repeat a monitor command
set show/set environment vars, use 'set help' for more info
sprom serial eprom operations
unset unset a monitor variable
version display Rom Monitor version information
コマンドの説明
表 51-1 に、一般的に使用される ROM モニタ コマンドを示します。
表 51-1 一般的に使用される ROM モニタ コマンド
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ルータをリセットまたは初期化します。電源投入に似ています。 |
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スイッチ上の起動装置の ID を表示します。次に例を示します。
Logical Physical Partition Status Begin Size Drive
Number Number Number sector in Kb Name
------- -------- --------- ------ -------- -------- --------
1 0 1 1 81f0 824832 flash1:
2 0 2 1 19afa0 16384 flash2:
3 0 3 1 1a3190 142336 flash3:
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指定した装置のファイルを表示します。次に例を示します。
rommon 1 > dir bootflash:
Date Time Attribute Size Name
========== ===== ========== ========== ================
2010/04/14 18:15 lrwxrwxrwx 12 USER -> /flash1/USER
2010/04/16 17:54 drwxrwxrwx 4096 .rollback_timer
2010/04/14 18:16 drwxrwxrwx 4096 .compatibility
2010/04/15 17:54 -rw-rw-rw- 129168608 test.bin
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ROM モニタのブート コマンドの詳細については、『Cisco IOS Configuration Guide』および『Cisco IOS Command Reference』を参照してください 。 |
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フラッシュ メモリの最初のイメージを起動します。 |
コンフィギュレーション レジスタ
仮想コンフィギュレーション レジスタは Nonvolatile RAM(NVRAM; 不揮発性 RAM)内に存在し、他の Cisco スイッチ/ルータと同じ機能を持っています。仮想コンフィギュレーション レジスタは、ROM モニタまたはオペレーティング システムで表示または変更できます。ROM モニタでは、ビット単位の設定を可能にすることによって、コンフィギュレーション レジスタを変更することができます。
confreg コマンドを引数なしで入力すると、仮想コンフィギュレーション レジスタの内容と、各ビットの意味を指定することによって内容を変更するためのプロンプトが表示されます。新しい仮想コンフィギュレーション レジスタ値は NVRAM に書き込まれますが、スイッチをリセットまたは再起動するまで有効になりません。
コンフィギュレーション レジスタは次の要素の制御に使用することができます。
• コンソール ポートのボー レート
• 自動起動設定
• IOS システム設定の無視(パスワード回復に役立つ)
• 区切り文字シーケンス(Ctrl+C など)のイネーブル化/ディセーブル化
• 診断モードのイネーブル化/ディセーブル化
• その他のさまざまなネットワーク接続設定
次に、confreg コマンドの入力例を示します。
=> autoboot from: autoboot disabled
do you wish to change the configuration? y/n [n]: y
enable "diagnostic mode"? y/n [n]:
enable "use net in IP bcast address"? y/n [n]:
enable "load rom after netboot fails"? y/n [n]:
enable "use all zero broadcast"? y/n [n]:
enable "break/abort has effect"? y/n [n]:
enable "ignore system config info"? y/n [n]:
change console baud rate? y/n [n]: y
0 = 9600, 1 = 4800, 2 = 1200, 3 = 2400
4 = 19200, 5 = 38400, 6 = 57600 [0]: 5
change the boot characteristics? y/n [n]: y
1 = the first file from internal flash device
2 = commands specified in 'BOOT' environment variable
=> autoboot from: commands specified in 'BOOT' environment variable
do you wish to save this configuration? y/n [n]: y
You must reset or power cycle for new configuration to take effect
debug コマンド
次の ROM モニタ コマンドはデバッグ中に使用すると便利です。
• meminfo:メイン メモリと NVRAM のサイズを表示します。次に例を示します。
Main memory size: 2048 MB.
• ping:管理インターフェイス ポートのネットワーク接続状態を確認します。次に例を示します。
rommon 3 > ping 172.25.60.31
Host 172.25.60.31 is alive
• sprom:スイッチ上のさまざまな EEPROM の内容を表示します。次に例を示します。
sprom read linecard <modnum> [submodule]
sprom read muxbuffer <modnum>
sprom read powersupply <1..2>
• version:スイッチ上の ROM モニタのバージョンを表示します。次に例を示します。
Rom Monitor Program Version 15.0(1r)XO(SG1)
Compiled Sat 10-Apr-10 00:59 by BLD-k10_rommon.15.0_1r_SG1
Supervisor: WS-X45-SUP7-E Chassis: WS-C4507R-E
CPU Rev: 1.1, Board Rev: 8, Board Type: 101
CPLD Moka Rev: 7.0x2643.0x5956 Installed memory: 2048 MBytes
ROM モニタの終了
スタートアップ時またはリロード中に Cisco IOS イメージをフラッシュ メモリから起動するようにコンフィギュレーション レジスタの起動特性を設定する必要があります。内部のフラッシュ メモリと、'BOOT' IOS 環境変数(IOS boot system filename コマンドの入力時に設定される)で指定されたイメージのどちらかから最初のファイルを起動することができます。
次に、コンフィギュレーション レジスタを変更して、スイッチでフラッシュ メモリに保存された最初の Cisco IOS イメージを起動させる例を示します。
do you wish to change the configuration? y/n [n]: y
enable "diagnostic mode"? y/n [n]: n
enable "use net in IP bcast address"? y/n [n]:
enable "load rom after netboot fails"? y/n [n]:
enable "use all zero broadcast"? y/n [n]:
enable "break/abort has effect"? y/n [n]:
enable "ignore system config info"? y/n [n]:
change console baud rate? y/n [n]:
change the boot characteristics? y/n [n]: y
1 = the first file from internal flash device
2 = commands specified in 'BOOT' environment variable
=> autoboot from: the first file from internal flash device
do you wish to save this configuration? y/n [n]: y
You must reset or power cycle for new configuration to take effect
You must reset or power cycle for new config to take effect
その後で、スイッチがフラッシュ メモリ内の最初の Cisco IOS イメージを起動します。
デジタル署名
FIPS 140-3 標準に従って改ざんから保護するために、すべての起動可能イメージ(Rommon、Rommon アップグレード ユーティリティ、IOS、オフライン診断など)が暗号署名されています。イメージの起動時にこの署名が検査されます。署名が有効であれば、そのイメージの起動が許可されます。そうでない場合は、該当するエラー メッセージが表示され、イメージの起動が許可されません。署名照合が失敗する一番の原因は、ASCII モードでの FTP 転送や電子メール送信によるイメージの破損です(一部の電子メール クライアントはバイナリ ファイルの内容を変更することが知られています)。その他の原因として、破損したイメージや意図的に改ざんまたは偽造されたイメージが挙げられます。
署名照合が成功したイメージ起動の例を以下に示します。
rommon 2 > boot bootflash:cat4500e-universalk9.SSA.03.00.00.1.63.150.1.XO.bin
Checking digital signature
bootflash:/cat4500e-universal.SSA.03.00.00.1.63.150.1.XO.bin: Digitally Signed Release Software with key version A
署名照合が失敗したイメージ起動の例を以下に示します。
rommon 2 > boot bootflash:cat4500e-universalk9.SSA.03.00.00.1.63.150.1.XO.bin
Checking digital signature
Verification FAILED for image bootflash:/cat4500e-universal.SSA.03.00.00.1.63.150.1.XO.bin, REASON: [reason string]
デジタル署名の詳細については、次の URL を参照してください。
『Configuration Fundamentals Configuration Guide, Cisco IOS XE Release 3S』
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/ios_xe/fundamentals/configuration/guide/xe_3s/cf_xe_3s_book.html
『Cisco IOS Configuration Fundamentals Command Reference』
http://www.cisco.com/en/US/docs/ios/fundamentals/command/reference/cf_book.html