パーティションとコーリング サーチ スペースの概要
パーティションは、Directory Number(DN; 電話番号)と到達可能性に関して類似した特性をもつルート パターンをグループ化した論理グループから構成されています。通常、パーティションに入れられるデバイスは、DN やルート パターンなどです。これらのエンティティは、ユーザがダイヤルする DN に関連付けられます。分かりやすいように、通常のパーティション名は「NYLongDistancePT」、「NY911PT」のようにパーティションの特性を表すと便利です。
コーリング サーチ スペース は、コールを行う前にユーザが検索できるパーティションのリストから構成されています。コーリング サーチ スペースは、IP Phone、ソフト フォン、ゲートウェイなど、コールを行うデバイスがコールの処理をしようとする際に検索するパーティションを決定します。
(注) Cisco CallManager のリリース 4.1 からは、Partition および Calling Search Space メニュー項目が Route Plan メニューの Class of Control サブメニューに移動しています。Route Plan メニューの Class of Control サブメニューには、Time Period および Time Schedule メニュー項目もあります。
デバイスにコーリング サーチ スペースを割り当てると、そのコーリング サーチ スペースのパーティション リストは、そのデバイスが到達できるパーティションだけで構成されます。DN がコーリング サーチ スペースに存在しないパーティションにある場合は、すべてビジー シグナルを受信します。
パーティションとコーリング サーチ スペースは、次の特定の 3 種類の問題を解決します。
• 地理的なロケーションに基づくルーティング
• テナントに基づくルーティング
• ユーザのクラスに基づくルーティング
パーティションとコーリング サーチ スペースは、グローバル ダイヤル可能アドレス スペースを分割する手段になります。グローバル ダイヤル可能アドレス スペースは、Cisco CallManager が応答できるダイヤル パターン全体の集まりです。
パーティションは番号分析のパフォーマンスには大きく影響しませんが、コールを行うデバイスの検索スペース内に指定されたパーティションごとに、分析データ構造をたどる分析パスが余分に必要になります。番号分析プロセスは、コーリング サーチ スペース内のすべてのパーティションを検索して、最適な一致を見つけます。コーリング サーチ スペース内でパーティションがリストされる順序は、2 つの異なるパーティションで最適な一致が見つかった場合にだけ使用されます。パターンにパーティションが指定されていない場合、パターンはダイヤルされた番号を解決するためのヌル パーティションに入れられます。番号分析は常にヌル パーティションを最後に検索します。
Cisco CallManager のリリース 4.1 からは、パーティションをタイム スケジュールおよび時間帯と関連付けることができます。パーティションをタイム スケジュールおよび時間帯に関連付けると、パーティションおよびパーティションに関連付けられているコーリング サーチ スペースに入ってくるコールの time-of-day ルーティングを設定できます。詳細については、 「Time-of-Day ルーティング」 を参照してください。
IP Phone 回線とデバイス(IP Phone)自体の両方にコーリング サーチ スペースを設定する場合、Cisco CallManager は 2 つのコーリング サーチ スペースを連結し、回線コーリング サーチ スペースをデバイス コーリング サーチ スペースの前に置きます。同じルート パターンが 2 つのパーティション(回線コーリング サーチ スペースに含まれるパーティションと、デバイス コーリング サーチ スペースに含まれるパーティション)にある場合、Cisco CallManager は連結されたパーティション リストにある最初のルート パターンを選択します(この場合は、回線コーリング サーチ スペースに関連するルート パターン)。
(注) 同じコーリング サーチ スペースの一部であるパーティション、または同じ電話機に設定された別のコーリング サーチ スペースの一部であるパーティション内では、一致するパターンを設定しないことをお勧めします。この例では、コーリング サーチ スペースのパーティション順序を問題解決手段として使用し、予測ダイヤル プラン ルーティングに関連する問題を回避しています。
パーティションまたはコーリング サーチ スペースを設定する前に、電話番号(DN)はすべて <None> という名前の特別なパーティション内にあり、すべてのデバイスはこれも <None> という名前のコーリング サーチ スペースを割り当てられています。カスタムのパーティションおよびコーリング サーチ スペースを作成する場合、作成したコーリング サーチ スペースは <None> パーティションも含んでいますが、<None> コーリング サーチ スペースは <None> パーティションだけを含んでいます。
(注) コールを行うデバイスはすべて <None> パーティション内のダイヤル プラン エントリに明示的に接続できます。予期しない結果を避けるため、ダイヤル プラン エントリは <None> パーティションに置かないことをお勧めします。
例
コーリング サーチ スペースは、コールを行うデバイスがコールを確立する際に検索するパーティションを決定します。
たとえば、「Executive」という名のコーリング サーチ スペースには 4 パーティションがあると想定します。NYLongDistance、NYInternational、NYLocalCall、および NY911 です。また、別のコーリング サーチ スペース「Guest」には NY911 と NYLocalCall の 2 つのパーティションがあるとします。
電話機または回線に関連した Cisco IP Phone が Executive コーリング サーチ スペース内にある場合は、コールの開始時にパーティション NYLongDistance、NYInternationalCall、NYLocalCall、および NY911 が検索されます。この番号からコールを行うユーザは、国際通話、長距離通話、市内通話、および 911 の通話を行うことができます。
電話機または回線に関連した Cisco IP Phone が Guest コーリング サーチ スペース内にある場合は、コールの開始時に NYLocalCall パーティションと NY911 パーティションだけが検索されます。この番号からコールを行うユーザが国際番号にダイヤルしようとすると、一致が検出されず、コールはルーティングされません。
ガイドラインとヒント
パーティションおよびコーリング サーチ スペースを設定する際は、次のヒントとガイドラインに従ってください。
• パーティションにはパーティション自体の役目を簡単に説明する名前を使用してください。一般に、CompanynameLocationCalltypePT の形式を使用すれば十分なレベルの説明が得られ、また短い名前なのでパーティションを素早く容易に識別できます。たとえば CiscoDallasMetroPT は、ダラスにあるシスコのオフィスからフリーダイヤルの LATA 間コールを行うためのパーティションを示しています。
パーティション名と、許可されるパーティション数にパーティション名が与える影響の詳細については、「パーティション名の制限」を参照してください。
• ある特定の電話機で回線すべてのダイヤル特権が一定になるようにするには、電話機の各回線ではなく、IP Phone 自体にコーリング サーチ スペースを設定します。この例でユーザは、電話機の別の回線を選択してコール制限を避けることができません。
• IP Phone 回線に自動転送を設定する場合は、PSTN に到達可能なコーリング サーチ スペースを選択しないでください。この例でユーザは、長距離電話料金を避けるため、IP Phone 回線を長距離番号へ転送して IP Phone 市内番号をダイヤルすることができません。
Dependency Records
パーティションおよびコーリング サーチ スペースに関する特定の情報を検索するには、Cisco CallManager Administration Partition Configuration ウィンドウおよび Calling Search Space Configuration ウィンドウにある Dependency Records リンクをクリックします。Dependency Records がシステムで有効にされていない場合は、Dependency Records Summary ウィンドウにメッセージが表示されます。
パーティションの Dependency Records
パーティションの Dependency Records Summary ウィンドウには、パーティションを使用しているコーリング サーチ スペース、ルート パターン、電話番号に関する情報が表示されます。さらに詳細な情報を検索するには、レコード タイプをクリックして Dependency Records Details ウィンドウを表示します。
コーリング サーチ スペース
コーリング サーチ スペースの Dependency Records Summary ウィンドウには、コーリング サーチ スペースを使用している電話機、ゲートウェイ、ボイスメール ポート、デバイス プールに関する情報が表示されます。さらに詳細な情報を検索するには、レコード タイプをクリックして Dependency Records Details ウィンドウを表示します。
Dependency Records の詳細については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「Dependency Records へのアクセス」を参照してください。
パーティション名の制限
コール処理が内部で使用する calling search space(CSS; コーリング サーチ スペース)クローズにより、パーティションの最大数が制限されます。CSS クローズは、コーリング サーチ スペース内のパーティション名のリストで構成されます。コール処理が使用する CSS クローズは、デバイスの CSS と、そのデバイス(たとえば、電話機の回線)に関連付けられている電話番号(DN)またはルート パターンの CSS との組み合せで構成されます。
組み合せられた CSS クローズ(デバイスとパターン)の最大長は、パーティション名の間の区切り文字を含めて(たとえば、「partition 1:partition 2:partition 3」)、1024 文字です。CSS クローズでパーティション名が使用されるため、CSS 内のパーティションの最大数はパーティション名の長さによって異なります。また、CSS クローズはデバイスの CSS とルート パターンの CSS の組み合せであるため、個々の CSS の最大文字制限は 512(組み合せられた CSS クローズの制限である 1024 文字の半分)となります。
パーティションとコーリング サーチ スペースを作成する場合は、コーリング サーチ スペースに入れるパーティションの数に応じて、パーティションの名前を短くしてください。パーティション名が固定長の場合にコーリング サーチ スペースに追加できるパーティションの最大数の例については、『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』の「コール検索スペースの設定値」を参照してください。
参考情報
関連項目
• 「ルート プランの概要」
• 「Time-of-Day ルーティング」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「パーティションの設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「コール検索スペースの設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「時間帯(Time Period)の設定」
• 『 Cisco CallManager アドミニストレーション ガイド 』 の「タイム スケジュールの設定」
参考資料
• Cisco IP テレフォニー ソリューション リファレンス ネットワーク デザイン ガイド